認知症の周辺症状とは?主な症状と受診の目安を解説
「最近、急に怒りっぽくなった」「理由もなく不安そうにしている」そんな親の変化に戸惑いを感じていませんか。認知症というと物忘れが注目されやすいものの、実際には感情や行動の変化が先に現れ、家族を悩ませるケースも少なくありません。
本記事では、認知症の周辺症状にあたる行動や心理の変化、主な特徴や代表的な種類、医療機関の受診を検討する目安をわかりやすく解説します。家族の思いがけない言動の背景が分かり、向き合い方が理解できるようになるでしょう。
目次
認知症の周辺症状(BPSD)とは?

認知症の周辺症状とは、BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)と呼ばれ、記憶障害や見当識障害などの中核症状を背景にして現れる行動面や心理面の変化を指します。
中核症状は多くの方に共通して現れますが、周辺症状はすべての人に必ず起こるものではありません。生活環境の変化や体調の乱れ、心理的な不安などが重なったときに出現しやすい傾向にあります。
周辺症状が強くなると、日常生活の調整が難しくなり、介護の負担が一気に増える場合もあるため、周辺症状の特徴を知り、早い段階での対応が重要です。
認知症の主な周辺症状の種類

認知症の周辺症状には、心理面や行動面にさまざまな変化が現れます。
代表的な症状の種類を整理し、それぞれの特徴を把握しておきましょう。
不安・抑うつ
周辺症状の中でも、不安や抑うつは比較的早い段階からみられる場合があります。理由のはっきりしない不安感や気分の落ち込みが続き、表情が乏しくなるケースも少なくありません。
活動への意欲が下がり、不眠や引きこもりが目立つようになると、生活全体のリズムが崩れやすくなります。安心できる声かけや、一定の生活リズムを保つ工夫が、症状の緩和につながると考えられています。
幻覚・錯覚
実際には存在しないものが見えたり、聞こえたりする状態が幻覚や錯覚です。認知症の中期以降に現れることが多く、本人の恐怖心や混乱を強めやすい特徴があります。
幻覚は視覚だけでなく、以下の形で現れる場合もあります。
- 幻聴
- 幻味
- 幻臭
- 幻触
本人にとっては現実の出来事に感じられるため、否定せず気持ちを受け止める対応が必要です。
妄想・せん妄
物を盗られたと感じる妄想は、代表的な周辺症状です。荷物を置き忘れた事実を思い出せず、身近な人が盗んだと疑ってしまう背景があります。
体調の悪化や環境の変化によって意識が混乱し、以下の状態になる「せん妄」が加わる場合もあります。
- 時刻が分からない
- 現在地が分からない
- イライラする
認知症の被害妄想の詳細は、下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にご覧ください。
徘徊・多動
目的なく歩き回ったり、落ち着きなく動き続けたりする行動は、徘徊や多動と呼ばれます。認知症の中期以降に目立ちやすく、介護者のケアの負担が大きくなりやすい症状です。
外出時の安全確保や、鍵の管理方法の工夫など、生活環境に合わせた対策が求められます。
認知症の徘徊の原因や対策は、下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
暴言・暴力
感情の調整が難しくなり、暴言や攻撃的な行動が出現する場合があります。不安や恐怖、体調不良が引き金となるケースが多くみられます。
本人の意思だけでは暴言や暴力を抑えることは難しいため、周囲の理解と関わり方の工夫が欠かせません。
認知症の暴言や対策の詳細は下記の記事で説明しているので、こちらもぜひ参考にしてください。
認知症の周辺症状がみられる時期

不安や抑うつは、認知症の初期段階から現れる場合があります。一方で、幻覚や妄想、徘徊などは中期以降に目立ちやすく、介護が必要になる場面が増えていきます。
重度の認知症では、寝たきりになったり、意思疎通が難しくなったりなど、自宅での介護が難しいケースも増えてくる時期です。
ただし、周辺症状の進行の速さや、みられる症状の組み合わせには個人差がある点には注意してください。
認知症の周辺症状が疑われるときに病院を受診する目安

年齢による変化や一時的な体調不良と認知症の初期症状の区別が難しい場合は、医療機関を受診してください。
とくに以下の5つの症状がみられる場合は注意が必要です。
- もの忘れがひどくなる
- 時間や場所が分からなくなる
- 判断力や理解力が低下する
- 身の回りのことができなくなる
- 感情の起伏が激しくなる
早めの医療機関の受診で、症状に合わせた対応や治療をおこないやすくなります。
ただし、医療機関の受診を拒否するケースも多いため、「物忘れ外来に行こう」とそのまま伝えるのではなく、「最近眠れないって言っていたから、一度健康診断に行ってみようか」と、本人が気にしている体の不調を入り口にするのがコツです。
生活の質を保ちながら過ごせる期間を延ばすためにも、認知症の疑いがある場合は早めに相談しましょう。
認知症の疑いがある際のチェック方法の詳細は、下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にご覧ください。
認知症の周辺症状の対応・治療法

認知症の周辺症状への対応は、薬物療法と非薬物療法を組み合わせておこなわれます。薬物療法は、おもに脳機能の低下に伴う症状の進行を緩やかにする目的で実施するされることがあります。
副作用が現れる場合があるため、様子を注意深く観察して変化や気になること、違和感などがある場合は早めに主治医に相談してください。
また、認知症の方は自身での服薬の管理が困難なため、家族や訪問看護師が協力して、規則的な服薬を支援する必要があります。
非薬物療法では、脳への刺激や身体活動を通じた生活の安定を目指します。非薬物療法の例は以下のとおりです。
| 認知機能訓練 | 記憶や注意、問題解決力などに焦点を当てた課題をおこなう |
|---|---|
| 運動療法 | 有酸素運動や筋力トレーニング、平衡感覚の訓練などをおこなう | 認知リハビリテーション | 日常生活で失われた機能を補う方法の確立を目標とする |
症状の程度によっては、自宅や外来での対応が難しくなり、入院治療を選択する場合もあります。
認知症の症状を抑える方法の詳細は下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にご覧ください。
認知症の周辺症状に関するよくある質問
認知症の周辺症状に関するよくある疑問を整理しました。周辺症状をより詳しく理解するための参考にしてください。
周辺症状が悪化する原因は?
周辺症状は中核症状に加えて、以下の身体的不調や不安、焦りなどの精神的なストレスが重なると強まりやすい傾向にあります。
- 引っ越しや入院などの環境変化
- 痛み
- 便秘
- 脱水
- 睡眠不足
発熱や感染、転倒の後に急に混乱が増える場合は、認知症の進行だけでなくせん妄も起こり得るため、医療機関の受診を早めに検討してください。
服薬の開始や増量、飲み合わせの変更があった場合は、お薬手帳を用意して医師に経過を説明し、睡眠や食事の乱れも合わせて共有すると判断材料が増えます。
中核症状と周辺症状の具体的な違いは?
中核症状は脳の働きの低下で起こる認知機能の障害で、以下の症状が含まれます。
- 記憶障害
- 見当識障害
- 理解・判断力の低下
- 実行機能障害
- 失語・失認・失行
中核症状は脳の機能低下によって発生し、周辺症状は中核症状を背景に行動面や心理面に現れる変化といった点が異なります。
周辺症状は環境や体調の影響を受けやすく、同じ人でも日によって強さが変わるため、経過を記録して医療者へ共有すると整理しやすくなります。
認知症の周辺症状の治療は薬物療法しかない?
周辺症状の対応は薬物療法だけではなく、生活環境の調整や関わり方の工夫を組み合わせて進めます。
光や音の刺激、予定の急な変更、痛みや便秘などの不調が引き金になることもあるため、原因を探しながら安心できる生活リズムを整え、必要に応じて介護サービスの活用が大切です。
薬を用いる場合も、効果と副作用のバランスを医師が評価し、必要性が低ければ減量や中止を検討するため、自己判断で増減せず受診時に困り事を具体的に伝えてください。
周辺症状かも…と思ったらアプリで認知機能をチェック
認知症の周辺症状と思われる変化の中には、せん妄、うつ病、甲状腺の病気、ビタミン不足など、適切な治療で改善が期待できる原因が含まれる場合があります。
なお、ベルコメンバーズアプリは、スマートフォンで認知機能を簡単に確認できることが特徴です。
認知機能のチェック結果は総合的な評価だけでなく、項目ごとの結果や専門家監修のコメントも表示されるため、日々の変化を振り返る参考として活用できます。
また、過去のチェック結果を自動的に記録するため、認知機能の推移をグラフで確認できます。現状の認知機能の把握や脳トレの成果のチェック、医療機関の受診を検討するきっかけなどに活用してください。
【参考文献】
「認知症診療ガイドライン2017」日本神経学会
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