認知症の被害妄想はなぜ起こる?対処法や家族に向けられる理由も解説
認知症になると「財布を盗られた」「悪口を言われた」などの被害妄想が現れ、家族が責められてしまうことがあります。つらい言葉が続くと、心が折れそうになることもあるでしょう。
本記事では、被害妄想が起こる原因、家族に向けられやすい理由や背景、今日からできる対処法、受診の目安と相談先をわかりやすく解説します。
目次
なぜ認知症で被害妄想が起こるのか|脳の変化と病型の特徴

認知症では、脳の働きが低下することで、次のような中核症状が現れます*2。
- 記憶障害:なくした理由を思い出せず、誰かに盗られたと誤って結び付けやすい
- 見当識障害:時間・場所・人がわからなくなり、不安が強まる
- 判断力の低下:状況を読み違え、些細なことが妄想のきっかけになる
病型による特徴も影響します。アルツハイマー型では記憶障害が中心で物盗られ妄想がみられやすく、レビー小体型認知症では誤認や幻視が起こりやすくなります。
前頭側頭型では感情の抑制が難しく、強い思い込みが前面に出やすい点が特徴です。脳の変化と中核症状が重なることで、不安や誤解から被害妄想が生じやすくなります。
アルツハイマー型認知症の原因については「認知症の原因物質であるアミロイドβとは?溜まる3つの原因や排出方法紹介」でも詳しく解説していますので、参考にご覧ください。
認知症の被害妄想が家族に向けられやすい理由

認知症では、記憶障害・判断力の低下や見当識障害が重なり、出来事を正しく理解できなくなります。不安から被害的な思い込みにつながりやすく、身近にいる家族は行動を説明することが多くなるため、矛先が向けられやすくなります。
ある研究では、認知症の人が妄想を抱いた際、多くの家族が説明や同調、受け流すなど、手探りで対応していると報告されています*1。よくみられる被害妄想は、次のとおりです。
- 物盗られ妄想:置き場所を忘れ、盗られたと思い込む
- 被害的な誤解:陰口を言っている、仲間外れにされていると感じる
- 食事への不信感:食べ物に毒が入っていると疑う
- 誤認:家族を別人と勘違いし、敵意を向ける
脳の変化による症状だと理解することが、介護負担の軽減につながります。
認知症の被害妄想ではない可能性も|せん妄・うつ病など

認知症のように見えても、急に妄想が始まった場合は、別の原因が隠れていることがあります。高齢者は、感染症や脱水、薬の副作用などをきっかけに起こるせん妄により、急激な混乱や誤認が生じ、家族を疑う言動が突然現れることがあります。
また、うつ病では心気妄想や罪業妄想がみられることがあり、認知症とは異なる対応が必要です*3。
さらに、記憶や日常生活が保たれたまま、被害的な思い込みだけが続く妄想性障害も、高齢者にみられる疾患です*3。妄想が急に始まったり、いつもと様子が違うと感じたりする場合は、早めの受診を検討しましょう。
今日からできる認知症による被害妄想の対処法

被害妄想の対処法は、本人の不安をやわらげることが基本です。行動・心理症状(BPSD)は、環境要因やストレスが関わって起こるため、落ち着ける声かけや環境調整が推奨されています。
不安に寄り添い否定しない
被害妄想が出ているとき、正面から否定すると、かえって不安を強めてしまいます。まずは「怖かったね」「心配になったんだね」と気持ちに寄り添い、安心できる雰囲気をつくることが大切です。
相手の言葉をすぐ否定せず「一緒に探してみようね」と落ち着いた声でゆっくり対応するだけでも、混乱がやわらぐことがあります。
対応のポイントは「認知症の方への適切な接し方!ポイントと5つの具体例」でも詳しく解説していますので、参考にご覧ください。
生活環境を整える
被害妄想は、ちょっとした物の置き忘れや生活リズムの乱れがきっかけになることがあります。たとえば、次のような工夫が役に立ちます。
- よく使う物の置き場所を決める
- 部屋の明るさを一定にする
- 生活動線をシンプルにする
「ここに置いておくと安心だね」など、本人の不安をやわらげる声かけも有効です。混乱を生みやすい状況を少しずつ減らし、環境を整えることで、不安を招きにくくなります。
介護者の負担を軽くするセルフケア
認知症の被害妄想に日々向き合う家族は、強いストレスや疲労を抱えやすく「隠れた患者」と呼ばれることもあります。デイサービスやショートステイを活用するなど、外部の力も活用しましょう。ご自身の心身を守ることも不可欠なケアです。
認知症の被害妄想が続くときの受診の目安と相談先

被害妄想が続いている、急に怒りっぽくなったという場合は、早めに専門家へ相談しましょう。まずは、かかりつけ医で身体の不調や薬の影響がないか確認してもらうことが大切です。必要に応じて、もの忘れ外来や認知症専門医を紹介してくれます。
また、地域包括支援センターは、認知症に関する相談を受け付けている総合窓口です。介護のアドバイスや専門機関との連携も行っています。
認知症の被害妄想に悩んだときは一人で抱え込まず相談を
認知症の被害妄想は、脳の変化や不安が重なって起こります。否定せずに寄り添い、環境を整えながら対応することが大切です。
つらさを感じたときは、一人で抱え込まず専門家へ相談しましょう。ベルコメンバーズアプリでは、状況に合わせて相談先を紹介しています。迷ったときは、お気軽にご利用ください。
【参考文献】
*1 Cohen-Mansfield, J., & Golander, H. (2021). Responses and interventions to delusions experienced by community-dwelling older persons with dementia. Journal of Geriatric Psychiatry and Neurology, 35(5), 627–635.
*2 厚生労働省:政策レポート.認知症を理解する.(最終閲覧日:2025年11月22日)
*3 国立長寿医療センター:認知症と鑑別が必要な精神疾患.(最終閲覧日:2025年11月22日)
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