認知症の徘徊はなぜ起こる?家庭でできる対策と「探さない」の正しい意味
認知症の方が外へ出て行ってしまう徘徊は、ご家族にとって大きな心配事です。記憶障害や不安などの症状が背景にあるため、正しい理解と対策が大切です。
本記事では、なぜ徘徊が起こるのか、日常の工夫で予防できる具体的な対策や日中の過ごし方、行方不明になったときの適切な対応をわかりやすく解説します。
目次
認知症の徘徊はなぜ起こるのか?

認知症の徘徊は、記憶障害や見当識障害などの中核症状に、心理的要因(不安・孤独感)や環境要因が重なることで起こりやすくなります*1。
記憶障害が進むと、新しく聞いたことを保持できず、目的を忘れたまま外に出てしまう場合があります。さらに見当識障害が進行すると、時間や季節、場所の感覚があいまいになり、徘徊につながることがあります。
たとえば、次のような行動です。
- 自宅のトイレの場所がわからなくなる
- 近所で迷子になる
- 遠くの実家に歩いて帰ろうとする
また、理解力や判断力の低下によって、環境の変化や不安を正しく解釈できなくなることも影響します。複数の症状が重なり、目的のすり替わりや不安の高まりが徘徊という形で現れやすくなるのです。
認知症の徘徊を防止する3つの対策

ここでは、認知症の徘徊を防止する具体的な対策を紹介します。
1.玄関まわりを工夫する
まずは玄関まわりを工夫し、外出のハードルを上げることが大切です。たとえば、次のような方法があります。
- センサー付きドアベルや補助鍵を設置する
- 見えない場所に靴をしまう
- 本人が興味のある物を玄関に飾り、注意をそらす
センサーや補助鍵を設置すると、外出しようとした際に家族が気づきやすくなります。
また、靴が視界に入ると「外に出よう」という意図を刺激することがあるため、玄関収納にしまうと効果的です。視覚的な環境調整は、徘徊の抑制に役立つと報告されています*2。
2.夜間の環境を調整する
夜間はとくに徘徊が起こりやすいため、環境の調整が不可欠です。暗闇は見当識を低下させ、迷子につながりやすくなります*1。たとえば、次のような対策が役立ちます。
- トイレまでの動線に足元灯やセンサーライトを設置する
- 寝室にカレンダーや大きな時計を置き、日付・時間を確認しやすくする
- 滑りにくいマットを敷いて、転倒を防ぐ
照明は影ができにくい明るさに調整し、安心して移動できる環境を整えましょう。明るさや安全性の工夫で夜間の不安を軽減し、徘徊のリスクを下げられます。
3.声掛けを工夫する
声掛けの工夫も、徘徊予防の重要なポイントです。否定したり、急かしたりする声掛けは避けましょう。次のような安心感を与える言葉が効果的です。
- 心配なことがありますか?
- ここにいてもらえると安心です
- 今は夜なので、明るくなったら一緒に行きましょう
「どこかへ行かなければ」と思っている背景には、不安があることがほとんどです。気持ちを受け止める対応が、徘徊行動の軽減につながります。
認知症の方への声掛けについては「認知症の方への適切な接し方!ポイントと5つの具体例」でも詳しく解説していますので、こちらも参考にご覧ください。
認知症の徘徊を予防する日中の過ごし方

徘徊の原因の1つは、日中の活動量が不足し生活リズムが乱れることです。適度な活動を取り入れることで睡眠の質が整い、夕方以降の落ち着きにもつながります。
- 散歩や軽い体操:気分転換だけでなく、体内時計を整える効果がある
- 簡単な家事の手伝い(洗濯物を畳むなど):役割をもつことで安心感が生まれ、不安の軽減につながる
- デイサービスの利用
デイサービスは、専門職のサポートのもとでレクリエーションや機能訓練、他者との交流ができるため、精神面の安定と適度な疲労感が得られるでしょう。日中に安全に過ごせる機会を確保することは、夜間の徘徊を軽減し、睡眠の質改善にも役立ちます*2。
認知症の徘徊を「探さない」は誤解

認知症の徘徊者を「探さないほうがいい」という表現は、誤解されがちです。正しくは、家族だけで探し回らないという意味です。
行方不明は時間との勝負であり、発見までの時間が長いほど死亡リスクが高まることが報告されています*3。姿が見えないと気づいたら、まず次の順番で対応しましょう。
- 自宅周辺を短時間探す
- 見つからなければすぐに110番通報する
- 地域包括支援センターや自治体の徘徊SOSにも連絡を入れる
実際、行方不明者の約半数は、家族以外の第三者が偶然発見しています*3。家族だけで探そうとすると、発見が遅れる可能性があります。ためらわずに、公的機関や地域の協力を求めましょう。
徘徊の不安を抱え込む前に、安全な環境という選択肢も
玄関まわりや声かけを工夫しても、家族だけで見守り続けることが難しくなるケースもあります。
専門スタッフが24時間常駐する環境であれば、本人も家族も安心して過ごしやすくなる場合があります。「今すぐ施設に」ということではなく、いざというときの選択肢として、どんな環境があるかを知っておくことが、気持ちの余裕にもつながるでしょう。
ベルコの老人ホーム紹介サービス「あなたらしく」では、ご本人が安心して暮らせる住まいについて相談できます。まずは、施設選びのポイントを知ることから始めてみませんか。
【参考文献】
*1 厚生労働省:政策レポート.認知症を理解する.(最終閲覧日:2025年11月25日)
*2 一般社団法人日本作業療法士協会:作業療法ガイドライン認知症,(最終閲覧日:2025年11月25日)
*3 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所:認知症による行方不明.(最終閲覧日:2025年11月25日)
