認知症の最後まで残る記憶とは?感情が残り続ける理由とケアに活かす方法

認知症の最後まで残る記憶とは?感情が残り続ける理由とケアに活かす方法

「家族の名前は忘れたのに、昔の歌は歌詞を見ずに歌える」
「さっき食べたことは忘れても、あの時のご飯が美味しかったという思い出は語る」

認知症のご家族と接する中で、このような現象に驚かれたことはないでしょうか。
認知症によって記憶は失われていきますが、頭の中が白紙になってしまうわけではありません。記憶には消えやすいものと残りやすいものがあり、特に「感情」は最後まで心に残り続けると言われています。
本記事では、認知症になっても最後まで残る記憶の種類と、感情が残り続ける理由、残りやすい記憶を活かしたケア方法について解説します。

認知症で最後まで残る記憶とは

認知症で最後まで残る記憶とは

認知症の症状の一つに記憶障害がありますが、忘れやすい記憶と残りやすい記憶があります。認知症で残りやすい「昔の記憶」「手続き記憶」「感情」について説明します。

昔の記憶

認知症では最近の記憶は忘れても、比較的、昔の記憶は残りやすいと言われます。記憶の残りやすさの違いは、記憶の保管場所が新しい記憶と古い記憶で異なるためです。

新しい記憶(即時記憶、近時記憶)は、脳の海馬で一時的に整理されます。アルツハイマー型認知症では、最初にこの海馬が萎縮するため、新しい情報の入り口が閉ざされ、さっき食べたことを覚えられなくなります。

海馬で整理された記憶が時間をかけて脳の表面の大脳皮質へと移され、長期保存されるのが昔の記憶(遠隔記憶)です。大脳皮質は病気が進行しても比較的遅くまで機能が保たれるため、幼少期の思い出や現役時代の活躍などは残りやすくなります。

手続き記憶

言葉で説明できる記憶(エピソード記憶、意味記憶)とは別に、身体で覚えた手続き記憶は海馬ではなく小脳や大脳基底核という部位が深く関わっています。海馬の萎縮の影響を受けにくく、「あいさつはできる」「慣れ親しんだ家事はこなせる」というケースは手続き記憶が残っているからです。

手続き記憶は、ほかにも以下のような動作があります。

  • 楽器の演奏
  • 編み物
  • 洗濯物を畳む
  • スポーツ
  • 自動車の運転 など

ただし、技術的な動作自体は身体が覚えていても、判断力や注意力が低下している場合もあります。周りの注意が必要な状況や、二つのことを同時に行う場面では、遂行自体が難しかったり、事故などの危険を伴ったりする場合もあるでしょう。

ご本人のできることを尊重しつつ、危険がないように周囲のサポートや必要に応じて専門機関へ相談することが大切です。

最後まで残る感情

最後まで残る感情

19世紀のフランスの心理学者テオデュル・リボーは、記憶の消失には一定の順序があることを発見しました。これはリボーの法則と呼ばれています。

リボーは、人間の記憶はランダムに消えるのではなく、「新しいものから古いものへ」「複雑なものから本能的なものへ」という順序で失われていくと提唱しました。リボーの学説を紹介した論文では、人間の知性を「皮(表層)」、感情を「核(中心)」に例えて説明しています。

記憶・判断・理性などの知性は、心の表面的な部分に過ぎず、知性は進化の過程や個人の人生において後から獲得された新しい機能です。一方で、感情や欲求は、人間が生物として生きるための中核です。

感情や欲求は知性が生まれる前から存在する土台であり、心の大部分を占めていて頑丈なため、記憶などの知性が失われても、最後まで人の奥底に残り続けると述べられています。

感情が記憶よりも残る理由とケアに活かす方法

感情が記憶よりも残る理由とケアに活かす方法

記憶が薄れていっても、心の奥にある「感情」は最後まで働き続けます。ここでは、感情が記憶よりも残り続ける理由と、その特徴をふまえた関わり方について紹介します。

記憶が消えても感情は残る

脳の奥にある扁桃体は「快・不快」「安全・危険」「好き・嫌い」といった本能的な感情を司る部位です。海馬がダメージを受けても、隣にある扁桃体は比較的保たれていることが多く、感情は最後まで働き続けます。

例えば、介護者がイライラして強い口調で接した場合、本人は「なぜ怒られたのか」という背景はすぐに忘れてしまいます。しかし、「この人は怖い」「嫌な気持ちにさせられた」という不快な感情だけは理由のない不安として残ってしまうのです。

不安や不快な感情が残らないように、笑顔で接し、楽しい時間を共有すれば、何をしたかは忘れても「この人といると安心する」「気持ちよく過ごせる」というプラスの感情は残ります

感情に届く接し方

言葉の意味理解が衰えた時にコミュニケーションに役立つのは非言語メッセージです。スウェーデン発祥のタクティールケアは、手足や背中を柔らかく包み込むように触れるケア手法です。皮膚への心地よい刺激は、脳内でオキシトシンの分泌を促し、ストレスを減少させるとされています。

温かい手のひらに包み込まれる安心感によって穏やかな気持ちになり、感情に響くケアです。医療現場だけでなく、家庭でも気持ちを通わせるスキンシップとして活用されています。大事なポイントは望まない方には無理に行わないことです。

日々の変化に気づくためのツール

認知症では記憶が薄れても、感情は最後まで残りやすいと言われています。
昔の思い出や身体で覚えた動作が保たれるのも、大脳皮質や小脳などが比較的機能し続けるためです。そして、出来事を忘れても、その時の安心や不安といった感情は心に残り、日々の表情や行動に影響します。

大切なのは、こうした小さな変化に気づける環境をつくることです。近年は、日々の状態を気軽に記録できるアプリも増えてきました。

「ベルコメンバーズアプリ」には認知機能チェックを記録・振り返りできる機能があり、変化に気づく手がかりとして役立ちます。ご家族の見守りの一つとして、日常に取り入れてみてはいかがでしょうか。

【参考】

・池田学 認知症診断に必要な 記憶障害の臨床

・日本神経学会 認知症疾患治療ガイドライン 2017

・野上俊夫 感情の心理 (リボーの學說)

・日本スウェーデン福祉研究所 タクティール®ケアとは

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