認知症で着替えない・臭いに困ったら|理由と無理なくできる対応法
「認知症の家族が、服を着替えない」
「同じ服を着続けるので、臭いが気になる」
認知症のご家族が介護する中で、このような悩みに直面する方もいらっしゃるのではないでしょうか。
認知症になると、服を着替えなくなるという行動は認知症の症状の影響による場合もあり、家族を困らせたいからではありません。
この記事では認知症の方が服を着替えない理由と、家族ができる対応法についてご紹介します。
目次
認知症で臭いが気になるのに服を着替えない理由

認知症の方が着替えない背景には、さまざまな理由があります。認知症でみられる症状との関連も踏まえて説明します。
着替え方がわからない
認知症になると、実行機能が低下しやすくなります。実行機能とは、計画を立てて段取りよく物事を進める力です。実行機能は認知症の主な症状とされており、認知症の診断において評価項目の一つに含まれています。
一見、着替えは簡単そうに見えますが、次のようないくつもの手順が必要です。
- 服を選ぶ
- 前後を確認する
- 順番に着る
- ボタンを留める
実行機能が低下すると、複数の手順を頭の中で整理することが難しくなり、着替え方がわからなくなることがあります。その結果、着替え自体を避けてしまうことも起こり得ます。
汚れや臭いを自覚できない
アルツハイマー型認知症では、認知機能が低下して自分自身の状態を正しく認識できなくなる症状も特徴の一つです。判断力の低下や失認と呼ばれる認知症の症状によって、服が汚れていることや洗濯・着替えが必要なことに気づきにくくなる場合があります。
そのため、周りから見ると汚れていても、本人は「問題ない」と感じており、臭いがしていても服を着替えない状況につながってしまうのです。
着替えるのが面倒・疲れる
認知症になると、意欲の低下が現れることがあります。意欲が下がると、身だしなみに関心が薄れたり、自分から行動を起こさなくなったりする変化が見られます。そのため、着替えの必要性を感じにくくなり、「面倒」と思ってしまう方も少なくありません。
また、認知症に伴う抑うつ状態があると、活動量が減り、疲れやすくなったり集中力が続かなかったりといった状態にも陥りやすくなります。そのため、着替えのような一連の動作が負担に感じられ、途中でやめてしまうケースも考えられるでしょう。
認知症の症状については、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。
認知症で服を着替えないとどうなる?臭い・衛生面への影響

同じ服を長く着続けると、家族や介護者としては臭い問題や衛生面も気になりますよね。ここでは、着替えないことで生じやすい影響について解説します。
臭いが強くなる(雑菌の繁殖)
人の皮膚からは毎日、汗や皮脂、古い角質などが分泌されています。尿・便失禁がある場合は、下着に汚れが残ることもあるでしょう。同じ服を着続けると、これらの汚れが衣類にたまり、雑菌が繁殖しやすくなり、臭いが徐々に強くなっていきます。
さらに、高齢者は皮脂の性質の変化による加齢臭や失禁の影響、体温調整機能の低下などが重なることで、臭いがこもりやすい傾向にあります。衛生面を保つためにも、こまめな着替えや洗濯が大切です。
皮膚トラブルが起きやすい
長時間同じ服を着続けていると、衣類の中が蒸れやすくなり、かゆみや湿疹、皮膚の感染症などにつながりやすくなります。
高齢者は皮膚の再生能力が低下しやすいため、刺激に弱く、皮膚が傷つきやすいのが特徴です。そのため、かゆみを我慢できずにかきむしり、傷から細菌が入り込んでしまうリスクも考えられます。
また、認知症は身体だけでなく、生活にも大きな影響を与えます。生活面への影響については、下記の記事でも解説しているので、ぜひご覧ください。
認知症で服を着替えない・洗濯しないときの対応法

認知症の症状が原因で着替えなくなったとわかっていても、できれば衛生的に過ごして欲しいものです。ここでは、着替えない・洗濯をしないときの対応を紹介します。
「着替える」ではなく「選んでもらう」
認知症により、判断力や意欲が低下している場合には、声かけしても着替えられない場合もあるでしょう。しかし、選択肢があると動きやすくなることがあります。
たとえば、以下の声かけや方法では、認知症の方がご自身で選びやすくなる場合もあります。
- 「着替えましょう」という声かけではなく、2種類の服を用意して「どちらにしますか?」と選んでもらう
- 服を手に取りやすい場所に置いたり、ご本人の好みの服を用意したりする
一部だけ着替える
集中力が低下している場合、服も下着もすべて着替えるのが難しいこともあるかもしれません。その場合は、「上着だけ」「下着だけ」など、部分的に着替える方法もあります。介護する側は、完璧を目指さず、柔軟に対応することが大切です。
タイミングを変える
声をかけるタイミングを工夫すると、着替えがスムーズにいくケースもあります。着替えは意外と体力を使う行為です。ご本人がテレビを見ているときや眠そうなときは断られやすいので、本人のペースを尊重しましょう。
声をかけるタイミングとして、以下の工夫が考えられます。
- 本人が元気なときに声をかける
- 入浴後やデイサービスの前など、活動の区切りとなる時間帯を見計らって声をかける
本人が元気なときに声をかける
入浴後やデイサービスの前など、活動の区切りとなる時間帯を見計らって声をかける
着替えやすい服に変更する
片麻痺や関節の動きづらさがあると、腕を通す・体をひねるといった動作が難しくなり、服をスムーズに着られないこともあります。また、認知症による実行機能の低下から、着替えの手順が複雑なだけでも大きな負担になります。できるだけ簡単に着られる服を用意しましょう。
たとえば、次のような衣類が便利です。
- 前開きシャツ
- よく伸びる素材
- ボタンではなく面ファスナーで留められるもの
- ウエストがゴムのズボン
着替えのハードルを下げることで、本人の負担が軽くなり、拒否が和らぐこともあります。
認知症の家族との関わり方については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。
認知症の症状を理解することが、介護の負担を軽くする
臭いが気になるのに服を着替えないのは、認知症の症状が影響している場合もあります。
「どうして着替えてくれないの?」「臭いが気にならないの?」という気持ちが、認知症の症状を知ることで「もしかすると着替えること自体が難しいのかもしれない」と思えるようになると、介護する側の負担も少し軽くなるかもしれません。
認知症の基礎を知ることは、本人の状態を理解し、介護者自身の負担を減らすことにもつながります。
認知症についてさらに詳しく知りたい方は、ぜひ「認知症の基礎知識」のページもご覧ください。ひとりで抱え込まず、少しずつできる工夫を重ねながら、無理のない介護の形を見つけていくことが大切です。
【参考文献】
厚生労働省:介護予防マニュアル(改訂版:平成24年3月)について|資料7-1 認知症と軽度認知機能障害について
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