認知症で思い込みが激しいときの対処法は?ポイントや相談の目安を解説

認知症で思い込みが激しいときの対処法は?ポイントや相談の目安を解説

「何度説明しても疑いが消えない」「物を盗まれたと言い張る」など、認知症で思い込みが激しいときの対処法に悩んでいませんか。

認知症は物忘れが中心と思われがちですが、実際には妄想や強い思い込みといった症状が現れる場合もあり、思い込みへの対応に悩む場面は少なくありません。

本記事では、認知症で思い込みが激しいときの対処法について、種類別の対応方法やかかわり方のポイント、医療機関へ相談する目安まで整理して解説します。

思い込みの背景を理解することで、落ち着いた対応のヒントや家族の負担を軽減する方法が見えてくるでしょう

【種類別】認知症でみられる思い込みが激しいときの対処法

【種類別】認知症でみられる思い込みが激しいときの対処法

認知症でみられる思い込みはいくつか種類があり、状況に合わせた対応が求められます。まずは思い込みの種類ごとの特徴と対処法をまとめました。

ただし、ここで紹介する方法は選択肢の1つであり、不安を感じたり思い込みがより激しくなる場合は、迷わず医療機関に相談しましょう。

物盗られ妄想|気持ちに寄り添って一緒に探す

物を盗まれたと訴えられたときは、強く否定せず困っている気持ちを受け止める対応が重要です。頭ごなしに否定すると不信感が強まり、家族との関係が悪化するおそれがあります。

まずは落ち着いたトーンで話を聞き、最後に使った場面や置いた可能性のある場所を1つずつ確認しましょう。引き出しやかばんの中を一緒に探すことで安心感につながります。

見つかった際には、疑われたことを責めず「見つかって良かった」と声をかけてみてください。

見捨てられ妄想|つぎの予定を具体的に伝える

認知症の置いていかれるという思い込みには、見通しのなさが影響している場合があります。帰宅時間や外出時間を具体的に伝え、家族がいつ戻るのかを明確にすることで対処しましょう。

カレンダーや時計を使い、予定を目で確認できるようにすると理解しやすくなります。不安が強い日は短時間の外出にとどめるなど、負担を軽減する工夫も大切です。

嫉妬妄想|関係性への不安を受け止める

配偶者の浮気を疑うなどの嫉妬妄想の背景には、関係が失われる不安があると考えられます。そのため、疑いを否定するよりも、本人の気持ちをまずは受け止めましょう。

日頃から感謝や信頼を言葉で伝え、安心できる時間を積み重ねることが大切です。誤解を招きやすい行動は避け、落ち着いた説明を心がけてください。

感情の揺れに振り回されすぎず、一定の態度で接することが大切です。

被害妄想|不安の内容を言葉にしてもらう

「誰かに悪口を言われている」といった被害妄想がみられるときは、詳しい内容を言葉にしてもらい、丁寧に聞き取りましょう。何をされたと感じているのか整理することで、不安の正体が見えやすくなるためです。

人間関係や環境の変化がなかったかを一緒に振り返り、被害妄想の背景を確認してください。とくに、孤立が続くと不安が強まりやすいため、信頼できる家族や支援者につなぐことも重要です。

認知症の被害妄想の詳細は、下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にご覧ください。

迫害妄想|話題を穏やかに切り替える

誰かに危害を加えられる、悪口を言われているなどの訴えがある場合は、まず恐怖や被害感の強さを受け止めましょう。

事実ではないと強く否定すると、理解してもらえないという思いが強まり、本人の興奮や家族との対立につながる場合があります。

今は安全であることを落ち着いた声で伝えつつ、安心できる環境であるかを一緒に確認することが大切です。落ち着いたタイミングで別の話題や活動へ切り替え、意識を穏やかな方向へ向けましょう。

散歩や軽い家事、好きなテレビ番組などに意識を移すことで、不安が和らぐ場合もあります。

幻視|怖さを否定せず受け止める

実在しない人や物が見える幻視がみられる場合は、怖さを否定せずに受け止めましょう。見えている内容を無理に打ち消すと混乱が強まることがあります。

照明や影の状態を確認し、見間違いが起きにくい環境に整え、夕方以降に症状が強まる場合は、明るさを保つ工夫が有効です。

夜間に幻視や興奮、注意散漫などがみられる「夜間せん妄」の詳細は下記の記事で説明しているので、参考にご活用ください。

幻聴|静かな環境に移動する

声が聞こえる幻聴がみられるときは、テレビやラジオを止めたり、外の音が聞こえにくい静かな環境に移動したりといった対策をとりましょう。

どのような声が聞こえているのか、本人の話に耳を傾けて不安を和らげることも大切です。また、服薬状況や睡眠不足など体調の変化がないかも確認してください。

帰宅願望|帰る準備を手伝い気持ちを落ち着ける

帰りたいと強く訴える帰宅願望がみられる場合は、帰る準備を手伝い、本人の気持ちを落ち着かせることが大切です。具体的には、上着や靴などの準備が挙げられます。

あわせて、帰りたい理由や思い出の場所について丁寧に聞くことで、本人の不安感を抑えることにもつながります。

自宅を自分の家ではないと思い込んでいる場合でも、行動を制限したり発言を否定したりするとかえって帰宅願望が強くなるおそれがあるため、本人の気持ちや帰りたいと感じる理由を丁寧に聞くことを意識しましょう。

認知症で思い込みが激しいときの対処のポイント

認知症で思い込みが激しいときの対処のポイント

認知症で思い込みが激しいときの対処のポイントを解説します。

認知症の方とのかかわりの中での基本的な対応を確認しておきましょう。

本人の発言を否定しない

認知症で思い込みが強いときは、発言をすぐに否定しないように注意してください。事実と異なる内容であっても、強く言い返すと不安や怒りが高まり、思い込みが悪化するおそれがあります。

まずは最後まで話を聞き、困惑や恐怖といった感情を受け止め、話にうなずきながら耳を傾けると、落ち着きを取り戻しやすくなります。

思い込みは認知症の症状の一部であり、家族への攻撃ではありません。話を聞くときは「責められている」と受け取らず、病気による変化と理解して接することで、介護する際の精神的負担の軽減につながります。

気持ちに共感する

認知症で思い込みが強い場面では、気持ちに共感するかかわりが欠かせません。困りごとや不安に耳を傾けずに訂正を急ぐと、孤立感が深まりやすくなります。

不安や恐怖を感じている点を言葉で受け止め、穏やかな表情と落ち着いた声で応じることが大切です。相手の話を途中で遮らず、最後まで静かに聞くことで安心感につながります。

感情を理解しようとする態度が伝わると、緊張がやわらぎ、落ち着いたやり取りへとつながるでしょう。

短い言葉で伝える

認知症で思い込みが強いときは、短い言葉で伝えることが重要です。長い説明や複雑な表現は混乱を招きやすく、かえって不安を高める場合があります。

簡潔で分かりやすい言葉を選び、一度に多くの情報を伝えず、区切りながらゆっくり話しましょう。簡潔に伝えつつも、落ち着いた声のトーンで話すことで、不安感を和らげることにつながります。

安心できる環境を整える

認知症で思い込みが強い場合は、安心できる環境を整えることが重要です。生活リズムが乱れたり急な予定変更が重なったりすると、不安が高まりやすくなります。

また、起床や食事の時間をできるだけ一定に保ち、急な環境変化を避けましょう。物の置き場所を固定すると、探し物による混乱や疑いの軽減が期待できます。

そのほかにも照明を明るく保ち、強い音の刺激を減らすなど、落ち着いて過ごせる空間づくりが、不安の緩和につながるでしょう。

1人で抱え込まない

認知症で思い込みが激しい状況に直面したときは、1人で抱え込まないことが重要です。対応が長期化すると、家族の心身の負担が大きくなり、冷静な判断が難しくなる場合があります。

家族や周囲に状況を共有し、早めに支援や協力を求めてください。介護負担が重いと感じたら、意識して休息を取り、介護への気力を回復させることも必要です。

介護サービスや専門の相談窓口を活用し、具体的な対応方法について助言を得ると、不安の軽減につながります。

認知症で思い込みが激しいときに医療機関に相談する目安

認知症で思い込みが激しいときに医療機関に相談する目安

認知症で思い込みが急に強まった場合は、医療機関への相談を検討しましょう。これまでと様子が大きく異なる変化がみられるときは、体調や薬が影響している可能性もあります。

日常生活に支障が出て転倒や外出トラブルなど安全面に不安がある場合も、早めの受診が望ましいです。また、介護する側の心身の負担が限界に近いと感じたときも、無理を重ねず専門家に相談しましょう

認知症で思い込みが激しいときの負担を軽減する方法

認知症で思い込みが激しいときの負担を軽減する方法

認知症で思い込みが激しいときは、介護する家族の負担が重くなりやすいです。

家族だけで抱え込まないための対策を把握しておきましょう。

地域包括支援センターに相談する

認知症で思い込みが強く家族の負担が大きい場合は、地域包括支援センターへ相談することが有効です。地域の総合相談窓口として、利用できる支援制度や具体的な活用方法を教えてもらえます。

地域包括支援センターでは、介護保険サービスの申請や手続きなどのアドバイスも期待できます。

介護サービスを利用する

認知症で思い込みが強い場合は、介護サービスの利用も検討しましょう。家族だけで対応を続けると疲労が蓄積し、冷静なかかわりが難しくなる場合があるためです。

デイサービスを活用すると、生活に適度な刺激や交流の機会が生まれ、気分転換につながります。家族が休息できる時間もショートステイの活用で確保できます。

専門家のアドバイスを受けながら介護環境を整えることで、より安心して過ごせる時間が増えるのです。

認知症対応型デイサービスは、下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にご覧ください。

認知症での激しい思い込みに関するよくある質問

認知症での激しい思い込みに関するよくある質問を整理しました。より詳しく理解するための参考にしてください。

認知症の妄想や思い込みは治る?

認知症の妄想や思い込みは完全に消えるとは限りませんが、適切な対応で落ち着く場合があります

症状の背景には不安や環境変化が関与することが多く、生活環境の調整やかかわり方の見直しなどの非薬物療法で対応するケースが一般的です。興奮や危険性が強い場合には、医師の判断で抗精神病薬などの薬物療法を検討する場合もあります。

認知症で思い込みが激しいのは薬のせい?

認知症で思い込みが急に強まった場合、体調の変化や服薬内容が影響している可能性があります。とくに、認知症治療薬のNMDA受容体拮抗薬(脳内の神経伝達物質に作用する認知症治療薬の一種)には妄想や攻撃性などの精神症状の副作用に注意が必要です。

ただし、思い込みが激しくなった場合、自己判断での服薬中止は控えてください。思い込みをはじめ、認知症の症状に急な変化がみられた際は、早めに医療機関に相談しましょう。

妄想や作り話に疲れる場合はどうするべき?

妄想や作り話への対応に疲れを感じた場合は、家族や支援機関に協力を求めましょう。1人で抱え込むと、介護する側の心身の負担が蓄積し、冷静な対処が難しくなるためです。

介護サービスの活用で、認知症の方と一時的に距離を取り、休息の時間を確保することで心身を整えやすくなります。

また、認知症の方や家族、専門職の方で構成される「認知症の人と家族の会」に参加すると、同じ立場の方と情報交換できるほか、悩みや不安を分かち合うことも可能です。

施設の利用を検討するタイミングは下記の記事で紹介しているので、ぜひ参考にご覧ください。

認知症で思い込みが激しいときはむやみに否定しないことが大切

認知症で思い込みが激しい場合は、むやみに否定せず本人の感情に寄り添うことを意識しましょう。ただし、急に症状がみられた場合や症状が悪化した場合は、体調や薬の影響が関係している可能性があるため、医療機関への相談を検討してください。

認知症の思い込みへの対応は家族だけで抱え込まず、必要に応じて地域包括支援センターや介護サービスを活用して、心身の負担を抑えることが大切です。

また、認知症の基礎知識や症状の特徴については、下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にご覧ください。

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