認知症ケアにおけるバリデーションとは?期待できる3つの効果やテクニックを解説
「バリデーションとはどのような方法なのだろうか」「認知症ケアに取り入れると何が変わるのか」と疑問に感じていませんか。
認知症の方との接し方に悩み、声かけのたびに戸惑う人は少なくありません。同じ話の繰り返しや強い思い込みに、どう応じればよいか迷うこともあるでしょう。
そのような場面で役立つのが、感情を尊重して受け止めるバリデーションです。気持ちに寄り添った対話を重ねることで、安心感や信頼関係を築きやすくなります。
本記事では、認知症ケアにおけるバリデーションの意味や期待できる効果、具体的なテクニック、実践時の注意点を解説します。バリデーションを正しく理解して日々の対応に活かすことで、認知症の方との穏やかなコミュニケーションを築きやすくなるでしょう。
目次
認知症ケアに重要なバリデーションとは?

バリデーションは、認知症の方が感じている世界を尊重するコミュニケーション方法です。現実を正そうとして行動を修正させるのではなく、その人が体験している世界や感じている事実を尊重し、まず受け止めることを大切にします。
思いや感情に寄り添い、敬意をもって耳を傾けることで、認知症の方の不安が和らぎやすくなります。安心できる関係が育つことで、感情を表現しやすくなり、自身の存在が認められていると実感しやすくなるでしょう。
認知症ケアとしてのバリデーションに期待される3つの効果

認知症ケアとしてのバリデーションに期待できる効果を整理しました。バリデーションを取り入れるメリットを見ていきましょう。
ストレスや不安の軽減
バリデーションは、ストレスや不安の軽減に役立つとされています。発言や感情を否定せず受け止めることで、緊張や混乱が高まりにくくなるためです。
不安の訴えが繰り返される場面でも、バリデーションを活用すると落ち着きを取り戻すきっかけになる場合があります。
周辺症状(BPSD)の緩和
バリデーションを認知症ケアに取り入れると、周辺症状(BPSD)が緩和されることがあります。認知症の方の感情に寄り添うことで、緊張や不安を和らげられることが理由と考えられます。
バリデーションでは、認知症の方と接する際に、刺激を抑えながら本人の感情に目を向けるため、穏やかな対応が可能です。
認知症の周辺症状の詳細は、下記のページで解説しているので、参考にご覧ください。
コミュニケーションの円滑化
バリデーションは、コミュニケーションの円滑化に役立つことがあります。本人の言葉を起点に対話を進めるため、スムーズに会話を進められます。
また、発言の正確さよりも感情に目を向けることで、話しやすい雰囲気が生まれるほか、家族や支援者も意図を探りやすくなり、状況に応じた対応を選びやすくなるでしょう。
バリデーションの活用で良好な関係性を保ちやすくなると、結果として日々の認知症ケアも進めやすくなります。
認知症ケアでのバリデーションのポイント

認知症ケアでバリデーションを用いる際は、いくつかのポイントを押さえることが大切です。効果的にバリデーションを実施するためにも、各ポイントの詳細を把握しておきましょう。
傾聴する
傾聴は本人の言葉を遮らず最後まで聞き、内容の正しさよりも感情の動きに目を向けることです。
表情や声量、呼吸の速さなどの変化にも注意を払うと、言葉にならない思いに気づきやすくなります。聞き取れない部分を流さず、繰り返しや言い換えで確認する工夫も必要です。
丁寧に話に耳を傾けることで、「理解されている」という安心感を覚えやすくなるでしょう。
共感する
共感は本人の感情や表情などを読み取り、抱えている感情や悩みに理解を示すことです。ただし、発言内容に同意するのではなく、あくまで感情へ寄り添うことで、本人も安心できるでしょう。
早口や大声を避け、落ち着いたトーンで語りかけてみてください。
受容する
発言をすぐに否定せず、本人がそのように感じている現実を受容することが重要です。
被害的な内容や事実と異なる発言があった場合でも、強く訂正すると不安や怒りが高まることがあります。バリデーションを用いて、感情に目を向けることで良好な関係の維持につながるでしょう。
また、認知症の方の行動を制限しすぎないよう注意してください。危険がない範囲で行動の自由度を残すことも受容の一種です。
誘導しない
認知症の方との対話では、結論へ急がず、本人が話したい順序で言葉を紡げるよう配慮し、自分の中にある答えや正解に誘導しないことが求められます。
途中で話を遮ったり、望む答えを引き出そうとする質問を重ねたりすると、不信感や不満が強まるかもしれません。説得や指示で動かそうとするよりも、本人の気持ちに寄り添い、落ち着くまでじっくりと待つ姿勢が大切です。
評価しない
「正しい」「間違い」や「できる」「できない」などの尺度で測る言い方は、認知症の方の自尊心を傷つける可能性があるため、評価せずありのままを受け止めましょう。
安心して取り組める行動を一緒に選び、できていることをしっかりと認めてください。結果として、認知症ケアや身体活動などにも前向きに取り組めるようになる場合もあります。
また、発言や行動を改めてもらいたい場合は、直接的な表現を控え、穏やかなトーンや表現で伝えることを意識しましょう。
嘘をつかない
嘘をつかないことは、信頼関係を保つうえで重要です。場当たりの作り話は一時的に落ち着いたように見えても、後から矛盾が生じると混乱や不信感を強める場合があります。
認知症の方の発言や行動について、訂正が必要な場面でも頭ごなしに否定せず、感情に寄り添いながら伝え方を工夫し、納得できる着地点を探る必要があります。
また、危険な行動がみられるときは曖昧にせず、落ち着いて状況を説明することで、理解を促しましょう。
認知症ケアでのバリデーションに活用できるテクニック

認知症ケアでのバリデーションを実施する際、役立つテクニックがいくつか存在します。バリデーションを取り入れる際の参考に、各テクニックを見ていきましょう。
オープンクエスチョン
オープンクエスチョンは「はい」「いいえ」で答えられる質問ではなく「どう感じているのか」「何が心配なのか」など回答の自由度が高い質問です。
感情の背景を引き出すためにオープンクエスチョンは効果的なテクニックです。幅のある問いかけによって、本人の考えや気持ちを丁寧に探ることができます。
ただし、厳しい口調や詰問のような話し方は認知症の方にストレスや不安感を与えかねないため、落ち着いたトーンで対話することが重要です。
リフレージング
リフレージングは、相手の言葉を短くまとめて返し、理解が合っているかを確かめる対話のテクニックです。
本人の発言をやわらかく言い換えて伝えることで、感情や考えの整理を助けやすくなります。強い表現や混乱した語りも受け止めながら整えると、安心して話を続けやすくなるでしょう。
ただし、同じ言葉をそのまま繰り返すと不自然に感じられる場合があるため、相手の反応を見ながら、自然なタイミングで取り入れることが大切です。
レミニシング
レミニシングは、安心できる過去の思い出を話題にして心を落ち着かせる方法です。
得意だった仕事やこれまでの役割などを振り返ることで、自分らしさを思い出しやすくなります。写真や音楽をきっかけにすると会話が広がり、穏やかな表情が見られることもあるでしょう。
ただし、つらい記憶につながりそうな場合は無理に続けないように注意が必要です。認知症の方の様子を見ながら話題を柔軟に切り替えましょう。
センタリング
センタリングは、自分の気持ちを整えてから相手と向き合うためのテクニックです。
声をかける前に深呼吸をおこない、緊張や焦りを落ち着かせることで、安定した状態で対話を始めやすくなります。立ち位置や身体の向きを意識し、威圧感を与えない距離を保ちましょう。
ただし、感情が高ぶったまま無理にかかわろうとすると、不安が相手に伝わる可能性があります。落ち着かないときは一度間を置き、心を整えてから再開することをおすすめします。
アイコンタクト
アイコンタクトは、視線を通じて安心感を伝える対話のテクニックです。目線の高さを合わせ、やさしい表情で話を聞くことで、関心を向けていることが伝わりやすくなります。
アイコンタクトを活用する際は、相手の様子を見ながら自然な範囲で視線を合わせるよう注意しましょう。また、視線だけでなく柔らかな表情を心がけると、穏やかなやり取りにつながりやすくなります。
ミラーリング
ミラーリングは、相手の話し方や動きにさりげなく合わせて親近感を育てるテクニックです。
話す速さや声の大きさを近づけると、安心してやり取りしやすくなります。身ぶりや身体の向きを自然にそろえることで、会話に一体感が生まれやすくなるでしょう。
ただし、誇張した真似は不自然さを与える恐れがあります。あくまでさりげない範囲で、ミラーリングのテクニックを取り入れると効果的です。
タッチング
タッチングは、穏やかな触れ合いによって安心感を伝える方法です。手をやさしく包むなどの接触は、言葉だけでは伝えきれない思いを補いやすくなります。ただし、突然触れると驚きや不安を与えることがあるため注意が必要です。
視線や声かけで合図を送り、反応を確かめてからおこなうことが大切です。触れられることを嫌がる様子があれば無理をせず、別の方法でかかわるようにしましょう。
認知症ケアでバリデーションが効果的な介護の事例

認知症ケアでどのようなときにバリデーションが役立つのか整理しました。
バリデーションが効果的なシーンを把握して、効果的に活用しましょう。
「家に帰りたい」と訴える場合
「家に帰りたい」と訴える場面では、まず気持ちを受け止めることが重要なため、バリデーションが効果的です。帰れないと強く訂正すると混乱や不安が生じやすく、帰宅願望がさらに高まる恐れがあります。
言葉の裏には、寂しさや安心できる場所を求める思いが隠れている場合があります。感情に焦点を当てて話を聞くと、気持ちを落ち着かせることにつながるでしょう。
また、現在の住まいを否定せず、安心できる記憶や大切な存在について穏やかに話を広げることも大切です。
不安を繰り返し訴える場合
不安を繰り返し訴える場面では、その都度気持ちを受け止めることが大切なため、傾聴や共感を意識した対応が効果的です。
同じ不安を繰り返し訴える場合は、見通しが立たない心配や孤独感が隠れている場合があります。言葉そのものよりも感情の動きをくみ取り、落ち着いて受け止めることを意識しましょう。
さらに、家族や支援者の間で情報を共有し、対応にばらつきが出ないよう調整することも大切です。
怒りや混乱が強い場合
怒りや混乱が強い場合には、強く否定したり正しい方向に誘導せず、まずは話に落ち着いて耳を傾けましょう。共感の言葉を重ねることで緊張がやわらぎ、感情の落ち着きを取り戻しやすくなる可能性があります。
また、感情が安定した後に状況の整理も大切です。感情の高ぶりが続いたり、対応に疲労したりする場合は、医療機関への相談も検討することが望ましいでしょう。
認知症ケアでのバリデーションの注意点

認知症ケアでバリデーションを活用する際は、いくつかの注意点があります。バリデーションを実践する前に、各注意点を把握しておきましょう。
本人の状態に合わせて柔軟に対応を変更する
バリデーションを実施する際は、本人の状態に合わせて柔軟に対応を変更しましょう。体調や時間帯によって本人の受け取り方は変化するため、同じ方法に固執すると、期待した効果が得られない可能性があります。
とくに、疲労や痛みがある場合、また騒音などの環境刺激が強い状況では、落ち着いて話を聞く余裕が生まれにくくなります。バリデーションを取り入れる際は、まず周囲の条件を整えることを優先しましょう。
なお、興奮やせん妄が疑われるときは無理をせず、医療機関へ状態を共有することも大切です。
自分1人で負担を抱え込まないようにする
自分1人で負担を抱え込まないことは、バリデーションを続けるうえで大切です。バリデーションによる対応が長時間に及ぶと、自身に疲労が蓄積し、冷静な対応が難しくなる場合があります。
家族や職員間で役割分担をおこなうほか、地域包括支援センターや介護サービスなどを活用して認知症の方の介護にかかる負担を分散できます。
もし、介護に強いストレスや疲労を感じるときは、周囲に協力を求めたり、外部のサービスを活用したりして、休息を優先すると負担を軽減できるでしょう。
バリデーションと認知症に関するよくある質問
バリデーションと認知症に関するよくある質問を整理しました。
バリデーションとユマニチュードの違いは?
バリデーションとユマニチュードは、目的や重視する点が異なります。バリデーションは、本人の発言や行動の背景にある感情を受け止める対話中心のアプローチです。
一方、ユマニチュードは以下の具体的な技術を段階的に用い、身体的自立も支援する方法とされています。
- 見る
- 話す
- 触れる
- 立つ
バリデーションはおもに言葉や感情への対応に焦点を当てますが、ユマニチュードは身体動作を含めた総合的な接し方を体系化しており、目的に応じた使い分けが大切です。
バリデーション療法は認知症の治療に役立つ?
バリデーション療法は、認知症を治す医療行為ではなく、不安や混乱の軽減、関係性の維持など、日常生活を支えるための接し方として位置づけられています。
認知症ケアの一環としてバリデーション療法が取り入れられる場合もありますが、実際の治療は医療機関での診察にもとづいた治療を優先することが望ましいです。
認知症の症状を抑える方法の詳細は、下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひチェックしてみてください。
バリデーションを正しく理解して認知症ケアに役立てましょう
バリデーションは安心感や信頼関係を築くうえで役立つコミュニケーション法です。
ただし、認知症の方への接し方に関する悩みを1人で抱え込むと心身の負担が大きくなりやすいため注意する必要があります。家族や介護職員と情報を共有し、地域包括支援センターや介護サービスを活用しながら、無理のない体制を整えることが大切です。
また、興奮やせん妄が疑われる場合や、急な症状の変化がみられる場合は、医療機関への相談を検討するのも1つの方法です。
なお、認知症の基礎知識や症状の特徴については、下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にご覧ください。
【参考文献】
PubMed.「Validation therapy (VT) in nursing home residents with dementia: a randomized controlled study.」
ScienceDirect.「The effect of expressive physical touch on patients with dementia.」
【公式】日本ユマニチュード学会:「ユマニチュードとは」
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