認知症予防に必要な睡眠時間は?何時間寝ればいいか研究結果をもとに解説
「睡眠不足だと認知症になりやすい」と聞くと、「では何時間寝ればいいの?」と気になる方は少なくありません。
実際には、何時間眠ると認知症を予防できるという明確な基準はありません。短すぎる睡眠や長すぎる睡眠と認知症リスクの関連が報告されています。
この記事では、国内外の研究結果と厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」をもとに、睡眠時間と認知症の関係を解説します。自分や家族の睡眠をどこから見直せばよいのかが分かるようになるでしょう。
目次
認知症予防に必要な睡眠時間は?

認知症予防を考えるうえで「何時間寝ればよい」という明確な基準はありません。研究では、短すぎる睡眠や長すぎる睡眠と認知症リスクとの関連が報告されています。
認知症予防に「何時間寝ればよい」という明確な基準はない
久山町研究では、5〜6.9時間の睡眠をとっている人を基準とすると、5時間未満では認知症リスクが2.64倍、10時間以上では2.23倍でした。
ただし、これは睡眠時間と認知症発症との関連を示したもので、短時間・長時間睡眠が認知症を引き起こすと証明したものではありません。厚生労働省も高齢者について具体的な睡眠時間の下限を示しておらず、個人差を踏まえて必要な睡眠を確保することを重視しています。
睡眠時間の確保だけで認知症を予防できるわけではない
認知症リスクの低減を考えるときは、睡眠時間だけでなく、睡眠によって十分に休めたかどうかも確認することが大切です。厚生労働省は、睡眠によって休養がとれた感覚を「睡眠休養感」としています。
同じ6時間の睡眠でも、朝すっきり起きられる人と、夜中に何度も目が覚めて疲れが残る人では、睡眠の状態は異なります。高齢者は睡眠時間の数字だけにこだわらず、朝の休養感や日中の眠気、生活への影響も確認しましょう。
認知症予防と睡眠時間の関係

ここでは、短時間・長時間・睡眠の質に分けて研究結果を整理します。
短時間睡眠と認知症リスクには関連がある
短時間睡眠と認知症リスクの関連は複数の研究で報告されています。先述した久山町研究では、5時間未満の睡眠で認知症リスクが2.64倍でした。
ただし、「睡眠が短いから認知症になる」とは限りません。別の研究では、6時間以下の睡眠と認知症の関係は、10年以内の調査では見られましたが、10年を超える調査でははっきりしませんでした。短時間睡眠が認知症の原因ではなく、認知症の初期変化によって睡眠が短くなっている可能性もあります。
長時間睡眠と認知症リスクにも関連がある
長時間の睡眠も、認知症の発症リスクが高くなることと関連しています。
2024年に実施された研究でも、9時間以上の睡眠は、10年以下の調査では2.20倍、10年を超える調査では1.74倍、認知症リスクが高いという結果でした。ただし、長く眠る背景に病気や活動量の低下などが隠れている可能性もあります。「長く寝ることが認知症の原因」と決めつけず、体調の変化にも目を向けることが大切です。
認知症予防のために睡眠の質を高める方法

認知症予防を目的にするなら、睡眠時間の数字だけにこだわるのではなく、毎日の生活リズムを整えることが現実的です。厚生労働省も高齢者に対して、睡眠休養感を高めるため、生活習慣や睡眠環境を見直すことを勧めています。
毎日できるだけ同じ時間に起きる
睡眠リズムを整えるため、起床時刻を大きく変えないようにしましょう。
前日に眠れなかったからといって翌朝に長時間寝床にいると、その夜の寝つきに影響することがあります。起床時刻をある程度そろえ、朝に日光を浴びたり、日中と夜間のメリハリをつけたりすることが大切です。
日中に適度な運動をする
日中の身体活動は、睡眠を整えるだけでなく、認知機能の低下や認知症リスクを考えるうえでも重要です。
WHOは、認知機能低下のリスクを減らす目的で身体活動を推奨しています。散歩や買い物、掃除など無理なく続けられる活動から始めましょう。運動だけでなく、日中に座りっぱなしにならないことも意識するとよいでしょう。
昼寝や夕方以降の長い仮眠を避ける
高齢者では、長時間の昼寝によって夜間の睡眠が妨げられることがあります。厚生労働省も、日中の長時間の昼寝を避け、活動的に過ごすことを勧めています。
日中に眠気を感じても、長時間眠るのは避けましょう。特に夕方以降の居眠りは、夜の睡眠に影響する可能性があるため注意が必要です。
寝る前のカフェインや飲酒を控える
夕方以降のカフェインや寝酒は、睡眠の質を下げる可能性があります。
カフェインには覚醒作用があるため、夕方以降はコーヒーや紅茶などの摂取量に注意が必要です。また、アルコールは一時的に寝つきをよくするように感じても、夜間の睡眠を不安定にすることがあります。
「眠るためにお酒を飲む」という習慣がある場合は、睡眠のためにも見直してみましょう。睡眠の質を高める飲み物の選び方については、以下の記事も参考にしてください。
「寝ても疲れが取れない」ときは睡眠時間以外にも注目

十分な時間寝ているのに日中の眠気が強い、朝起きても休養感がないという場合は、睡眠時間を増やすだけでは改善しないことがあります。
睡眠時無呼吸症候群や不眠症など、睡眠そのものに問題が隠れている可能性もあるためです。特に高齢者では「年齢のせい」と考えず、以前と比べて睡眠の状態が変化していないか確認しましょう。
夜中に何度も目が覚める
夜中に何度も目が覚める場合は、その原因を確認する必要があります。
高齢者では夜間頻尿、痛み、かゆみ、室温、薬の影響など、さまざまな原因が考えられます。何度も目覚める状態が続き、日中の眠気や生活への支障がある場合は、かかりつけ医などに相談しましょう。
日中に強い眠気がある
夜に十分寝ているにもかかわらず、日中に強い眠気がある場合は注意が必要です。
「食後に少し眠くなる」程度なら珍しくないかもしれませんが、テレビを見ているとすぐ眠ってしまう、読書中に強い眠気を感じるなど、日中の眠気が生活に影響している場合は原因を調べた方がよいでしょう。特に車の運転をする人や自転車に乗る人は安全にも関わるため、眠気を放置しないことが大切です。
いびきや呼吸が止まる場合は睡眠時無呼吸症候群に注意
大きないびきや、寝ている間に呼吸が止まる様子がある場合は、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。
国立長寿医療研究センターの「MCIハンドブック」では、睡眠時無呼吸症候群のある人は、ない人と比べて認知症のリスクが約2.4倍になると紹介されています。
本人には自覚がないことも多いため、家族が気づいた場合は重要な情報です。いびき、呼吸停止、日中の強い眠気などがあれば、呼吸器内科や耳鼻咽喉科、睡眠外来といった睡眠時無呼吸症候群に対応している医療機関への相談を検討しましょう。
認知症予防につながる睡眠習慣を身につけよう

認知症予防のために大切なのは、「◯時間寝る」と数字だけを目標にすることではありません。
起床時刻を大きくずらさない、朝に光を浴びる、日中に体を動かす、長い昼寝を避けるなど昼夜のメリハリを整えることが基本です。
さらに、睡眠だけに頼らず、定期的な運動習慣や栄養バランスの良い食事摂取、生活習慣病の管理なども含めて認知症予防を考えましょう。WHOも身体活動や健康的な食生活などを認知機能低下・認知症リスク低減の取り組みとして推奨しています。
認知症予防と睡眠時間に関するよくある質問
ここでは、認知症予防と睡眠時間に関するよくある質問にQ&A形式で回答します。
Q1 睡眠不足では認知症になりますか?
睡眠不足と認知症リスクの関連は報告されていますが、「睡眠不足だから認知症になる」とは言い切れません。
「以前より眠れなくなった」という変化が続く場合は、睡眠時間だけでなく体調や睡眠障害の可能性にも目を向けましょう。
Q2 8時間以上寝ると認知症になりやすいですか?
8時間以上の睡眠そのものが認知症を引き起こすとまでは分かっていません。
研究では、9時間以上などの長時間睡眠と認知症リスクとの関連が報告されています。ただし、長時間睡眠の背景に病気や活動量の低下などがあり、それらが認知症リスクと関係している可能性も否定できません。
また、厚生労働省は高齢者に対して、必要な睡眠時間を確保しながら、床上時間が8時間以上にならないことを一つの目安としています。
Q3 昼寝をしすぎると認知症になりますか?
長時間の昼寝と認知症リスクの関連は報告されていますが、「昼寝をすると認知症になる」という意味ではありません。
高齢者では、長時間の昼寝が夜間の睡眠を妨げる可能性があるため、日中の長時間の昼寝を避けるよう勧めています。 眠気がある場合は短時間の仮眠にとどめ、夕方以降の居眠りを避けることを意識しましょう。
睡眠時間だけにこだわらず質のよい睡眠で認知症予防しよう
認知症予防について「何時間寝ればよい」という明確な答えはありません。研究では短時間・長時間睡眠と認知症リスクの関連が報告されていますが、因果関係まで明らかになっているわけではありません。
高齢者では、必要な睡眠を確保しながら床上時間を長くしすぎず、朝の休養感を確認することが大切です。起床時刻を整える、朝に光を浴びる、日中に活動する、長い昼寝を避けるなど、無理なく続けられる習慣から始めてみましょう。
また、強いいびきや呼吸停止、日中の強い眠気、睡眠状態の急な変化がある場合は、睡眠時間の調整だけで済ませず、医療機関への相談を検討してください。


