ピアノは認知症予防に効果がある?研究結果や3つの取り組み方、家族のサポートを解説

ピアノは認知症予防に効果がある?研究結果や3つの取り組み方、家族のサポートを解説

「ピアノは認知症予防にいいって聞くけど、本当?」「高齢になってから始めても意味があるのかな」

そう感じている方に向けて、ピアノと認知症予防の関係を解説します。ピアノだけで認知症を防げるわけではありませんが、両手や指先を使いながら楽譜を読むピアノの演奏は、複数の脳の働きを同時に使う知的活動として注目されています。

この記事では、ピアノが認知症予防につながると考えられる理由や取り組み方、高齢から始める方法、家族のサポートのポイントなどを解説します。読み終えたころには、ピアノを無理なく生活に取り入れるヒントが見つかるはずです。

ピアノは認知症予防に効果がある?

ピアノは認知症予防に効果がある?

ピアノは、認知機能を使う知的活動のひとつとして、認知症予防に役立つ可能性があります。

スペインのバルセロナ大学の研究では、音楽経験のない高齢者が4か月間ピアノトレーニングを受けたところ、他の余暇活動を行ったグループと比べ、実行機能や情報処理速度などのテストで改善が見られたと報告されました。

また、京都大学の研究でも、平均73歳の高齢者66人が鍵盤ハーモニカを4か月練習した結果、言語に関する記憶力が向上したとされています。

ただし、対象人数は限られており、演奏だけで認知症を予防できると証明されたわけではありません。運動や食事などの生活習慣とあわせて取り入れることが大切です。

ピアノが認知症予防につながると考えられる理由

ピアノが認知症予防につながると考えられる理由

ピアノの演奏には、脳を複合的に使う要素が多く含まれています。

指先を使うことで脳を刺激している

両手の指を別々に動かすピアノ演奏は、脳の広い範囲を使う動作です。

手や指は、脳の運動をつかさどる領域と広く結びついているとされ、指先を細かく動かすことが脳への刺激につながると考えられています。ピアノを弾く際には、右手と左手で異なる動きをするうえ、10本の指を独立して動かします。
この「左右で違う動きを同時に行う」という動作が、脳を幅広く働かせることにつながるとされているのです。

楽譜を読みながら演奏するため記憶力や集中力を使う

楽譜を見て演奏することは、いくつもの情報を同時に処理する作業です。

演奏中は、楽譜の音符を読み取り、先の展開を予測しながら、今出している音を耳で確認します。さらに、指の動かし方を記憶し、リズムやテンポも意識しなければなりません。

こうした複数の作業を同時に行うことは、体を動かしながら頭を使う「二重課題」にあたり、記憶力・注意力・判断力を同時に働かせる機会になります。

音楽を楽しみながら続けることができる

好きな曲を弾く楽しさは、知的活動を長く続けるうえで必要です。

認知症予防では、一時的な取り組みよりも継続が重要とされています。ピアノは趣味として長く楽しめるため、「予防のため」と気負わずに知的活動を習慣化しやすい点が魅力です。弾きたい曲があるという気持ちそのものが、続ける原動力になるでしょう。

認知症予防におすすめのピアノの取り組み方

認知症予防におすすめのピアノの取り組み方

ピアノを認知症予防に取り入れるなら、無理なく楽しく続けられる進め方を意識しましょう。

初心者は簡単な曲から始める

童謡や唱歌など、親しみやすい曲から始めることが継続のコツです。

いきなり難しい曲に挑戦すると、思うように弾けずに嫌になってしまうことも珍しくありません。誰もが知っている簡単な曲なら、ピアノを弾けたときの達成感を得やすく、次への意欲につながります。「〇〇のところまで弾けるようになった」「もうすぐで1曲弾けるようになるぞ」という成功体験を積み重ねていきましょう。

毎日、短時間で負担がないようにする

長時間まとめて弾くよりも、短時間を継続するほうが習慣にしやすくなります。

疲れを感じるまで練習すると、翌日に「またやらなければ」という負担になってしまいがちです。本人が気持ちよく続けられる時間を目安にして、疲れる前に切り上げるくらいがちょうどよいでしょう。毎日続けることを優先し、無理のない範囲で取り組むことが大切です。

新しい曲に挑戦する

同じ曲を弾き続けるより、ときどき新しい曲に挑戦するほうが脳への刺激になるためおすすめです。弾き慣れた曲は、考えなくても指が動くようになり、脳を使う場面が減っていきます。

定期的にレパートリーを増やし、新しい楽譜に取り組むことで、記憶・注意・判断など複数の認知機能を使う機会が保たれます。難易度を少しずつ上げていくのもよいでしょう。

高齢者でもピアノは始められる?

高齢者でもピアノは始められる?

ピアノは、高齢になってから始めても十分に楽しめる趣味です。

60代・70代からでも遅くない

ピアノを始めるのに、年齢による遅すぎるということはありません。

実際に、60代・70代からピアノを始める人は少なくありません。前述のバルセロナ大学などの研究も、音楽経験のない高齢者を対象にしたものです。

上達のスピードより「続けること」に意味があるため、自分のペースで楽しむことが大切です。シニア向けの初心者教材や教室も充実しており、無料体験レッスンを受けられるところもあるため、まずは雰囲気を感じてみましょう。

電子ピアノやキーボードから始める

本格的なピアノがなくても、電子ピアノやキーボードで気軽に始められます。

電子ピアノやキーボードは、本格的なピアノに比べて場所を取らず、価格帯も幅広く選べます。音量を調整したりイヤホンを使ったりできるため、マンションやアパートでも周囲を気にせず練習しやすい点も魅力です。

家族が認知症予防でピアノを勧めるときのポイント

家族が認知症予防でピアノを勧めるときのポイント

家族がピアノを勧める際は、本人が楽しめることを最優先にしましょう。

無理に練習させない

本人が乗り気でないときに、無理に練習させないことが大切です。

「認知症予防のために弾いて」と強制すると、かえってストレスになり、続かなくなってしまいます。本人の「弾いてみたい」という気持ちを尊重し、楽しめる範囲で取り組んでもらいましょう。気が向かないときは休んでも問題ありません。

好きな曲を選ぶようにする

本人の思い出の曲や好きな曲を選ぶと、演奏への意欲が高まります。

若い頃によく聴いた曲や、思い出のある曲は、弾いてみたいという気持ちを引き出しやすくなります。家族が「この曲どう?」と一方的に決めるのではなく、本人の興味を尊重して選ぶことが、長続きにつながります。

家族と一緒に楽しむ

家族が演奏を聴いたり一緒に歌ったりすることで、ピアノが楽しい時間になります。

一人で黙々と練習するより、家族が聴いて「上手だね」「懐かしい曲だね」と声をかけるほうが、張り合いが生まれます。

演奏に合わせて一緒に歌えば、コミュニケーションの時間にもなります。こうした交流そのものが、本人にとっての楽しみになるでしょう。

ピアノが難しい人におすすめの認知症予防

ピアノが難しい人におすすめの認知症予防

ピアノが合わない場合でも、認知症予防に取り組む方法はたくさんあります。

適度な運動を習慣にする

運動は、認知症予防において特に重要とされている取り組みです。

WHO(世界保健機関)のガイドラインでも、身体活動は認知機能低下のリスク低減のために強く推奨されています。

ウォーキングやラジオ体操など、無理なく続けられる運動から始めてみましょう。ピアノと組み合わせると、体と頭の両方を使う習慣になります。

バランスのよい食事を心がける

魚や野菜を中心としたバランスのよい食事も、認知機能の維持に役立つとされています。

特定の食品に偏らず、主食・主菜・副菜をそろえることが基本です。偏った食生活を避け、生活習慣全体を整えることが、認知症予防につながります。

歌や音読など知的活動を取り入れる

歌や音読も、ピアノと同じように脳を使う知的活動です。

好きな歌を口ずさんだり、本や新聞を声に出して読んだりすることも、脳への刺激になります。ピアノにこだわらず、本人が無理なく続けられる方法を選ぶことが大切です。

ピアノと認知症予防に関するよくある質問

ピアノと認知症予防について、多くの方が気になる疑問をQ&A形式でまとめました。

Q1.ピアノは毎日弾いたほうがいいですか?

毎日でなくても構いません。

大切なのは長く続けることなので、無理のないペースで取り組みましょう。週に数回続けることで知的活動の習慣につながります。疲れた日は休んでも問題ありません。

Q2.ピアノは独学でも認知症予防の効果はありますか?

独学でも、楽譜を読み両手で演奏することは脳を使う活動になります。

教室に通うと交流の機会も生まれますが、独学の教本や動画を活用して自宅で楽しむ方法もあります。自分に合った形を見つけてみましょう。

Q3.電子ピアノでも認知症予防になりますか?

電子ピアノでも、指先を使い楽譜を読む動作は同じであるため、脳への刺激が期待できます。場所や音の面で始めやすいため、初心者が気軽に取り組むにはむしろ向いているといえるでしょう。

Q4.ピアノを聴くだけでも効果がありますか?

音楽を聴くこと自体にもリラックス効果などがあるとされています。

しかし、演奏することで得られる「両手を動かす」「楽譜を読む」といった脳への刺激は、聴くだけでは得られません。可能であれば、聴くだけでなく実際に弾いてみることをおすすめします。

ピアノを楽しみながら認知症予防を続けよう

ピアノは、それだけで認知症を防ぐものではありませんが、指先・記憶・集中を同時に使う知的活動として、取り入れる価値があります。上達を目指すことよりも、音楽を楽しみながら続けることが重要です。

高齢から始めても、電子ピアノからでも構いません。運動や食事などの生活習慣とあわせて、日々の楽しみのひとつにしてみてください。

日々の認知機能の変化に気づくためには、定期的なセルフチェックも役立ちます。ベルコメンバーズアプリでは、認知機能を手軽に確認でき、取り組みの成果を振り返る目安として活用できます。ピアノなどの習慣と合わせて、ぜひ活用してみてください。

【参考文献】

PubMed.Effects of music learning and piano practice on cognitive function, mood and quality of life in older adults

京都大学:楽器訓練で高齢者の認知機能が向上することを確認 -訓練による脳活動の変化を高齢者で初報告-

日本脳神経外科学会:ペンフィールドのホムンクルス

国立長寿医療研究センター:日常的な活動と認知症予防

令和元年度 厚生労働省老人保健健康増進等事業「海外認知症予防ガイドラインの整理に関する調査研究事業WHO ガイドライン『認知機能低下および認知症のリスク低減』邦訳検討委員:認知機能低下および認知症のリスク低減WHOガイドライン

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