定年後は認知症になりやすい?退職後に気をつけたい生活習慣と対策
「定年退職したら、ボケるのが早くなるって本当?」「父が退職してから、家にこもりがちで心配」
そう感じている方に向けて、定年と認知症の関係を解説します。定年退職と認知機能低下・認知症リスクの関係については研究結果が一致しておらず、定年退職そのものが認知症の原因になるとは明らかになっていません。ただし、定年後は外出や人と話す機会、体を動かす量などが大きく変わることがあります。
この記事では、定年と認知機能の関係について研究で分かっていることと、退職後に見直したい生活習慣を解説します。読み終えたころには、定年後の暮らしで何に気をつければよいかが見えてくるでしょう。
目次
定年後は認知症になりやすい?

定年退職そのものが認知症の原因になるとは、現時点では分かっていません。ただし、定年をきっかけに生活が大きく変わることには注意が必要です。
定年と認知機能の関係を調べた研究がある
定年退職と認知機能の関係については、複数の研究が行われていますが、結果は一致していません。
2021年に発表された23件の縦断研究をまとめたメタ解析では、退職による全般的な認知機能への悪影響は認められず、記憶に関する能力への影響も小さいと報告されています。
一方、2025年に発表された22件の縦断研究をまとめた系統的レビューでは、退職後の認知機能が低下したり、認知機能の低下速度が速くなったり、認知症リスクが高くなったりする傾向が報告されています。
ただし、社会的・人口学的な要因や退職前の仕事内容などによって結果が異なることも示されている点に注意が必要です。
このように、退職と認知機能の関係については研究結果が分かれており、「定年退職したから認知症になる」とは言えません。ただし、退職をきっかけに仕事で得ていた人との交流や身体活動、認知的な刺激などが減る場合もあるため、定年後の生活の変化に目を向けることが大切です。
定年後は生活リズムや活動量が変化することがある
定年後は、それまで当たり前だった生活の枠組みがなくなり、暮らし方が大きく変わります。たとえば、次のような変化が起こることがあります。
- 決まった時間に家を出る必要がなくなり、外出の機会が減る
- 職場の同僚と話す機会がなくなり、人と会話する回数が減る
- 通勤で歩いていた分の運動量がなくなる
- 起きる時間や寝る時間がばらつき、生活リズムが乱れやすくなる
- 「仕事」という役割がなくなり、やることを見つけにくくなる
これらの変化が重なると、活動量が低下して、生活が活発ではなくなることがあります。定年そのものより、こうした生活の変化に気を配る必要があります。
定年後に認知症予防のために意識したい生活習慣

定年後の生活の変化に対して、意識して取り入れたい習慣を紹介します。
定年後も外出する機会をつくる
出かける用事を意識してつくることで、体を動かす機会と人と接する機会を保てます。
買い物を自分の担当にする、毎朝決まったコースを散歩する、図書館や公民館に立ち寄るなどの用事で構いません。「週に何回」と決めなくても、生活の中に出かける理由があると、自然と外に出やすくなります。
ただし、外出すれば認知症を防げるというわけではありません。生活が不活発になることを避ける工夫として取り入れてみてください。
無理のない範囲で身体を動かす
体を動かす習慣は、認知症のリスクを下げるために特に重視されている取り組みです。
WHO(世界保健機関)のガイドラインでは、認知症のリスクを下げる取り組みのなかで、運動が強くすすめられています。ウォーキングやラジオ体操、庭仕事など、続けやすいものから始めましょう。通勤がなくなった分、意識して歩く時間をつくることが大切です。
仕事以外にも「役割」や「楽しみ」を持つ
趣味や家庭での役割など、仕事に代わる「やること」を一つ持つことが、定年後の生活を整える支えになります。
具体的には、以下のような方法があります。
- 趣味を始める
- 家事の一部を担当する
- ボランティアに参加する
- 地域の活動に顔を出す
- 学び直しに挑戦する
仕事を続けるという選択肢もあります。「役割を持てば認知症を防げる」というわけではありませんが、生活に目的や楽しみがあることは、毎日の充実につながります。本人が心地よいと感じられるものを選びましょう。
定年後に認知症リスク低減のために見直したい生活習慣

WHOのガイドラインでは、認知症のリスクを下げるために、次のような生活習慣の見直しがすすめられています。
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 運動不足になっていないか確認する | 通勤がなくなると、1日の歩数は大きく減ります。まずは自分がどれくらい動けているかを把握してみましょう。 |
| バランスのよい食事を心がける | 魚や野菜を取り入れ、主食・主菜・副菜をそろえることが基本です。一人で食べる機会が増えると簡単に済ませがちになるため注意しましょう。 |
| 喫煙をやめる | たばこをやめることは、運動と並んで強くすすめられています。吸っている方は、禁煙外来などの相談先を利用する方法もあります。 |
| お酒の量を見直す | WHOは健康のためにすすめられるお酒の量はないという立場をとっています。時間に余裕ができた分だけ量が増えていないか確認してみてください。 |
| 高血圧や糖尿病の治療を続ける | 高血圧や糖尿病などを適切に管理することも、認知症のリスク低減につながります。会社の健康診断がなくなった場合は、自治体の健診を利用して、定期的に体の状態を確認しましょう。 |
| 読書やゲームなど頭を使う習慣を持つ | 読書やゲーム、人との会話など日常的に頭を使う活動も、認知症のリスクを下げる取り組みの一つとしてすすめられています。 |
なお、睡眠については、認知症のリスクを下げる効果があるかどうか、まだはっきりとは分かっていません。ただし体調を整えるうえで大切なため、起きる時間をそろえる、朝に日光を浴びるなど、無理のない範囲で生活リズムを保ちましょう。
これらは一つだけ取り組むよりも、複数を組み合わせて見直すほうが効果が期待できるとされています。
定年後も働けば認知症を予防できる?

定年後も働き続ければ、認知症を予防できるとは限りません。
日本の50歳以上の人を対象に、退職の仕方と認知機能の関係を調べた研究があります。この研究では、退職していない人と比べて、完全に退職した人や転職を伴う部分的な退職をした人では、認知機能に明らかな差はみられませんでした。
一方、同じ勤務先で働く時間を減らす部分的な退職では、認知機能との関連がみられました。
このように、退職するかどうかだけで認知機能への影響を判断できず、この研究から「働き続ければ認知症を予防できる」と結論づけることもできません。
認知症が心配だからという理由だけで、無理に仕事を続ける必要はありません。仕事を辞めた後も、趣味やボランティア、家庭での役割など、自分に合った形で人との交流や活動の機会を持つことを考えてみましょう。
定年後に「もの忘れ」が気になったときの対処法

定年後にもの忘れが増えたと感じたとき、どう考えればよいかを解説します。
年齢によるもの忘れと認知症の違い
年齢によるもの忘れと認知症では、忘れ方に違いがあります。
年齢によるもの忘れは、体験の一部を忘れるのが特徴です。「朝ごはんに何を食べたか思い出せない」といった状態で、ヒントがあれば思い出せることが多く、忘れている自覚もあります。
一方、認知症では体験したこと自体を忘れてしまうことがあります。「朝ごはんを食べたことを覚えていない」という状態で自覚がないことも少なくありません。日常生活に支障が出ているかどうかも、見分けるうえでの目安になります。
同じことを何度も聞くようになった
同じ質問を短時間に繰り返すようになったときは、様子を見ておきたいサインです。
「今日は何曜日だっけ」と何度も聞く、さっき伝えた予定を再び尋ねるといった場面が増えていないか振り返ってみてください。本人が同じ質問を繰り返していることに気づいていない場合もあり、指摘すると気分を害してしまうこともあるため、責めずに見守ることが大切です。
予定や約束を忘れることが増えた
約束や通院を忘れることが増えた場合も、注意したい変化の一つです。
カレンダーやメモで管理していたのに、それでも予定を守れなくなってきたときは、生活への影響が出始めている可能性があります。支払いを忘れる、薬を飲み忘れるといったことが重なる場合も同様です。
以前できていたことが難しくなった
長年慣れ親しんだことがうまくできなくなったときは、変化のサインかもしれません。
料理の手順が分からなくなる、家電の操作に手間取る、車の運転でヒヤリとすることが増えるなど、これまで問題なくできていたことに変化がないか確認してみましょう。
生活に支障が出ている場合は医療機関に相談する
日常生活に支障が出ている場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じてもの忘れ外来や、精神科・心療内科など認知症の患者さんに対応している専門の窓口を紹介してもらう方法があります。どこに相談すればよいか迷う場合は、お住まいの地域包括支援センターでも相談できます。
もの忘れの背景には、認知症以外の病気や薬の影響が隠れていることもあるため、「年のせい」と決めつけず、気になる変化があれば相談してみてください。
定年後の認知症についてよくある質問
定年後の認知症について、多くの方が気になる疑問をQ&A形式でまとめました。
Q1.定年すると認知症になりやすいですか?
定年退職そのものが認知症の原因になるとは分かっていません。
ただし、定年後に外出や運動、人と話す機会が大きく減ると、生活が不活発になりやすくなります。定年という出来事より、その後の過ごし方に目を向けることが大切です。
Q2.定年後に急にもの忘れが増えたら認知症ですか?
もの忘れが増えたからといって、必ずしも認知症とは限りません。
加齢による変化のほか、環境の変化による気分の落ち込みや、睡眠不足、薬の影響が関係していることもあります。日常生活に支障が出ている場合は、かかりつけ医に相談してみましょう。
Q3.認知症になると退職勧告されることがありますか?
認知症になったからといって、ただちに退職を求められるわけではありません。
症状や仕事内容によっては、安全面などを踏まえて、業務内容や勤務時間の変更、就業継続について話し合うことがあります。
仕事を続けることに不安がある場合は、本人の希望や症状を踏まえて勤務先と相談しましょう。必要に応じて、主治医や産業医などに相談する方法もあります。
定年後の生活を見直して認知症のリスクを減らしましょう
定年退職そのものが認知症の原因になるとは分かっていません。
ただし、定年をきっかけに外出や運動、人との会話が減ることはあります。大切なのは、定年という出来事に不安を感じることではなく、その後の暮らし方を整えることです。
体を動かす習慣を保ち、食事やお酒の量、血圧や血糖の管理を続けることが、認知症のリスクを下げるうえで役立つとされています。まずは、毎日の散歩や健診の受診など、始めやすいものから取り入れてみてください。
自分の認知機能の状態が気になる方は、定期的に確認する習慣を持つのも一つの方法です。ベルコメンバーズアプリでは、認知機能を手軽にチェックできるため、生活習慣の見直しとあわせて活用してみてください。






