脂質異常症は認知症のリスクになる?関係や対策を解説

脂質異常症は認知症のリスクになる?関係や対策を解説
脂質異常症の家族にもの忘れをはじめとした様子の変化がみられると「コレステロール値が認知症に関係しているのではないか」と不安に感じることも多いのではないでしょうか。

脂質異常症は中年期において将来的な認知機能の低下や認知症との関連が指摘されていますが、脂質異常症の方が必ず認知症になるわけではありません。

本記事では、脂質異常症と認知症の関係や、アルツハイマー型認知症・血管性認知症との関連、LDL・HDLコレステロールの影響、脂質異常症を管理する方法などを解説します。脂質異常症と認知症の関係を正しく理解し、本人の年齢や健康状態に合わせた管理を続けることで、将来の健康を意識する際の参考になるでしょう。

脂質異常症は認知症のリスクになる?

脂質異常症は認知症のリスクになる?

脂質異常症と認知症の関係は、発症する年代によって考え方が異なります。中年期と高齢期に分けて、それぞれの関連を確認しておきましょう。

中年期の脂質異常症は認知症リスクと関連する

中年期の脂質異常症は、将来の認知機能低下や認知症の発症リスクと関連すると考えられています。とくに中年期の高LDLコレステロールは、後年のアルツハイマー型認知症を含む認知症との関連が報告されているため、早い段階から脂質の状態を把握しておくことが大切です。

WHO(世界保健機関)のガイドラインでも、中年期の脂質異常症の管理は、認知機能低下や認知症のリスク低減を目的として検討して良いとされています。

ただし、認知症は脂質異常症以外にも高血圧や糖尿病、喫煙、運動不足など複数の要因も関係するとされているため、生活習慣全体の見直しも重要です。

高齢期の脂質異常症との関係は明確になっていない

高齢期の脂質異常症と認知症の関係は、中年期ほど明確ではありません。高齢になってからのコレステロール値と認知症発症との関連は明確ではなく、数値だけを見て認知症リスクを判断するのは難しいとされています。

とくに、高齢者の脂質管理では認知症への影響だけでなく以下の項目も確認しましょう。

  • 脳梗塞や心筋梗塞などの心血管疾患
  • 栄養状態
  • 体重
  • 服用中の薬
  • その他の持病

食事量が落ちている高齢者では、過度な食事制限が低栄養につながる可能性もあるため、医師と相談のうえで食事の量や内容の管理が重要です。

脂質異常症が認知症に関係すると考えられる理由

脂質異常症が認知症に関係すると考えられる理由

脂質異常症が認知症と関連すると考えられる理由の一つに、動脈硬化や脳血管障害があります。血液中のLDLコレステロールが高い状態などが続くと動脈硬化が進みやすくなり、脳梗塞をはじめとする脳血管障害のリスクが高まる場合があります。脳の血管や組織が損傷すると、認知機能に影響が及ぶ可能性もあるでしょう。

また、コレステロールを含む脂質代謝とアルツハイマー型認知症との関連についても研究が続けられています。しかし、脂質異常症が直接認知症を引き起こすとまでは分かっていません。

認知症には加齢や遺伝、生活習慣など多くの要因が関係するため、脂質異常症だけを原因として捉えないようにしましょう。

脂質異常症と関連するとされる認知症の種類

脂質異常症と関連するとされる認知症の種類

脂質異常症は、すべての認知症と同じように関係するわけではありません。

脂質異常症との関連が指摘されるおもな認知症の種類を確認しておきましょう。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、記憶をはじめとする認知機能が徐々に低下していく認知症の一つです。中年期の高LDLコレステロールや高コレステロール血症と、後年のアルツハイマー型認知症を含む認知症の発症リスクとの関連を報告した研究があります。

一方で、コレステロール値とアルツハイマー型認知症の関係にはまだ未解明の部分があり、脂質異常症になったからといってアルツハイマー型認知症を必ず発症するわけではありません。

脂質異常症と診断された場合は、血圧や血糖などを含めた健康管理を続けることが大切です。

アルツハイマー型認知症の詳細は下記の記事で紹介しているので、ぜひ参考にご覧ください。

血管性認知症

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって脳の組織が損傷し、認知機能が低下する認知症です。脂質異常症は動脈硬化や脳梗塞のリスク因子の一つであり、脳血管障害を介して血管性認知症と関連する可能性があります。

血管性認知症の予防を意識する際は脂質異常症だけでなく、高血圧や糖尿病、喫煙などの影響も無視できません。健康診断で脂質や血圧、血糖の異常を指摘された場合は放置せず、必要に応じて医療機関へ相談し、本人の状態に合った管理を続けましょう。

血管性認知症の特徴は、下記の記事で詳細をまとめているので参考にご覧ください。

コレステロールの種類による認知症との関係

コレステロールの種類による認知症との関係

コレステロールにはLDLコレステロールとHDLコレステロールの2種類があり、認知症との関連についてもそれぞれ研究されています。コレステロールと認知症の関係を種類別に見ていきましょう。

LDLコレステロールと認知症の関係

LDLコレステロールは、一般に「悪玉コレステロール」と呼ばれる脂質の一つです。体内で重要な役割を担っていますが、血液中で増え過ぎると血管壁にたまりやすくなり、動脈硬化を進める要因とされています。

中年期の高LDLコレステロールがアルツハイマー型認知症と関連するとの研究もあります。

WHO2026年版では、認知機能低下や認知症のリスクを減らす目的で、中年期の脂質異常症を管理することを条件付きで推奨している状況です。ただし、エビデンスの確実性は低く、LDLコレステロールを下げれば認知症を予防できるとまでは言えません。

HDLコレステロールと認知症の関係

HDLコレステロールは、一般に「善玉コレステロール」と呼ばれ、血管壁にある余分なコレステロールを回収して肝臓へ運ぶ働きを担っています。

通常は低HDLコレステロール血症が脂質異常症の診断項目の一つです。一方で、HDLコレステロールと認知症の関係は十分に解明されていません。

ただし、高HDLコレステロールは体内の炎症を引き起こす可能性が考えられており、動脈硬化の進行につながる恐れもあります。

HDLコレステロールについて「善玉だから高いほど良い」「高いと認知症になる」と判断せず、LDLコレステロールや中性脂肪、年齢、持病なども踏まえて管理することが大切です。

認知症予防を意識する際に脂質異常症を管理する3つの方法

認知症予防を意識する際に脂質異常症を管理する3つの方法

認知症予防を意識する際は、脂質異常症をはじめとした持病の管理も大切です。日常生活で取り組みやすい3つの方法を紹介します。ただし、ここで紹介する方法は対応の一例であり、症状に不安を感じる、あるいは普段と違う変化があるときは、迷わず医療機関に相談してください。

食生活を見直す

脂質異常症を管理するためには、日々の食生活を整えることが大切です。肉の脂身やバターなど飽和脂肪酸を多く含む食品に偏らないようにし、以下の食品を取り入れながらバランスの良い食事を心がけましょう。

  • 魚
  • 大豆製品
  • 野菜
  • 海藻
中性脂肪が高い方は、糖質やアルコールの量を控えることも重要です。

ただし、高齢者では食事量の減少や体重減少が起こりやすく、厳しい食事制限によって低栄養を招く恐れがあります。認知症のある人では、食事の好みや食べられる量が変わる場合もあります。

自己判断で食事量や食事内容を無理に変更するのではなく、年齢や栄養状態、治療内容に合わせた調整が求められます。なお、認知症予防を意識する際の食事は下記の記事で説明しているので、参考にご活用ください。

適度な運動を続ける

ウォーキングをはじめとする有酸素運動は、脂質異常症の管理に取り入れられる方法の一つです。継続的に体を動かす習慣は、体重管理に加えて血圧や血糖などの生活習慣病の管理にも役立ちます。また、WHOのガイドラインでは認知症の予防を意識するうえでも、適度な運動が推奨されています。

高齢者や持病がある人では、若い人と同じ運動量を目指す必要はありません。転倒しやすい、息切れがある、関節に痛みがあるなど高齢者の身体状態によって適した運動は異なります。

散歩や日常生活の中で体を動かす方法も含め、無理なく続けられる内容を選びましょう。運動制限を受けている方や体調に不安がある方は、開始前に医師へ確認してください。

なお、気軽に取り入れられる運動や実践のポイントは、下記の記事で紹介しているので参考にご覧ください。

定期的に検査を受ける

脂質異常症は、自覚症状がほとんどないまま進行する恐れがあります。現在の状態を把握するには、健康診断や医療機関の血液検査で以下の数値を確認しましょう。

  • LDLコレステロール
  • HDLコレステロール
  • 中性脂肪

過去の検査結果と比較すると、数値の変化も把握しやすくなります。脂質の異常を指摘された場合は放置せず、必要に応じて医療機関への相談を検討してください。

脂質異常症と認知症に関するよくある質問

脂質異常症と認知症に関するよくある質問を整理しました。

脂質異常症の薬と認知症の関係は?

脂質異常症の治療薬には複数の種類があり、代表的なものとしてLDLコレステロールを低下させるスタチンがあります。

スタチンは、服用すると認知症になる、あるいは認知症を悪化させるという因果関係は確認されていません。一方、認知症リスクを低下させる可能性も研究されていますが、現時点では十分なエビデンスがあるとは言えません。

脂質異常症の薬は、心血管疾患や脳血管疾患への影響も考慮して処方されます。すでにスタチンを服用している場合も、自己判断で中止したり、減量したりしないように注意しましょう。認知機能の変化や副作用が気になるときは、医師や薬剤師に相談してください。

コレステロールを下げると認知症になる?

コレステロールを下げること自体が認知症の原因になるとは確認されていません。むしろ中年期の高LDLコレステロールについては、後年の認知症発症リスクとの関連が指摘されています。

ただし、認知症予防を意識する際、むやみにコレステロールを下げれば良いというわけではなく、年齢や健康状態に合った管理が重要とされています。

「コレステロールを下げると認知症になる」という情報だけをもとに食生活や服薬内容を変更せず、医師に相談したうえで、適切に対応しましょう。

認知症と診断された後も脂質異常症の治療は必要?

認知症と診断された後でも、脂質異常症の治療が必要なケースがあります。

脂質異常症は動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞などと関係するため、認知症の有無だけで治療を中止するものではありません。一方、高齢者では年齢や認知症の進行度、生活機能、栄養状態、ほかの疾患などによって治療の目的や優先順位が変わるケースがあります。

服用する薬が多いときは、飲み間違いや副作用にも注意してください。家族が受診に付き添える場合は、現在の薬や体調の変化、食事量などを医師へ伝えましょう。具体的な治療の方針や治療薬の選択、用量などは本人の状態を踏まえて医師と相談することが大切です。

認知症だけでなく脂質異常症の適切な管理も大切

脂質異常症は、認知機能低下や認知症と関連すると考えられる研究結果がある一方で、脂質異常症がある人すべてが認知症になるわけではありません。

認知症予防を意識する際は、コレステロール値だけに注目するのではなく、食生活や運動習慣、血圧、血糖なども含めた健康状態の管理が重要とされています。

なお、認知症や脂質異常症と診断されたときは、自己判断で食事や服薬の内容を変更せず、医師に相談したうえで本人の状態に合わせた対応を心がけましょう。

認知症についての基本的な知識を整理しておくと、今後の健康管理や家族の対応を考える際の参考になります。下記の記事で分かりやすくまとめているので、あわせてご覧ください。

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