認知症で食べたことを忘れるときの対応は?原因と6つの対処法を解説

認知症で食べたことを忘れるときの対応は?原因と6つの対処法を解説

認知症の家族が食べたことを忘れて、「何度も食事を求められてどう対応すればよいのか分からない」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

認知症では、食事をした記憶が残りにくくなったり、満腹感を自覚しにくくなったりすることで、食後でも「ご飯を食べていない」と訴えるときがあります。こうした訴えに毎回どう対応すべきか悩んでいる家族は少なくありません。

本記事では、認知症で食事した事実を忘れる主な原因や具体的な対応、注意が必要な食事に関する行動、医療機関へ相談する目安を解説します。本人の感じ方や不安に配慮した対応を取り入れることで、食事をめぐるやり取りの負担を軽減しやすくなるでしょう。

目次

認知症で食べたことを忘れる主な3つの原因

認知症で食べたことを忘れる主な3つの原因

認知症で食べた事実を忘れる背景には、記憶や満腹感、不安などの3つが関係しています。本人の訴えを理解するうえで、それぞれの原因を整理しておきましょう。

食べたこと自体の記憶がなくなる

認知症では直前の出来事を覚えにくくなり、食事をした事実そのものが抜け落ちる場面がみられることがあります。食事内容がはっきりしないのではなく、食事自体をしていないと感じやすい点が特徴です。

本人の中では食事をしていないと思っているため、家族が事実を説明しても納得しにくく、何度も訴えを繰り返す場合があります。

満腹感を自覚しにくいため空腹感を抱きやすい

認知症では十分に食事をとっていても、満腹感を自覚しにくくなるケースがあります。食事量が適切であっても満腹感が伴わないため、食べたという実感が生まれにくく、すぐに空腹感を覚えてしまいます。

記憶障害と満腹感の低下が同時に起こると、食事を終えた直後でも「食べていない」との思いが強まりがちです。

不安から食事に意識が向きやすくなる

「ご飯を食べていない」と訴える背景には、空腹だけでなく不安が関係していることが考えられます。食べ物をもらえないと感じると食事への意識が強まり、何度も確認したり強い言葉で訴えたりするケースがあります。

本人にとっては不安を訴えている状態であり、周囲が否定するとかえって被害感が強まりかねません。こうした不安への対応は、後述の「盗食」などの行動を未然に防ぐうえでも重要です。

認知症で食べたことを忘れるときに避けたい対応

認知症で食べたことを忘れるときに避けたい対応

食事を済ませた直後に「まだ食べていない」と言われると、否定したり説明を重ねたりしてしまいがちです。しかし、こうした対応は本人の不安を強め、やり取りをこじらせる原因になることがあります。対処法を実践する前に、まず避けたい対応を確認しておきましょう。

「さっき食べたでしょ」と否定する

食べた事実を否定すると、本人は「信じてもらえない」「責められた」と感じやすくなります。

認知症による記憶障害では、食事をした記憶が本人にはないため、事実を突きつけても納得してもらえません。否定されたという感覚だけが残り、不安や怒りが強まるケースがあります。

毎回長く説明しようとする

「さっき〇時に食べたから、次は〇時間後で大丈夫」といった丁寧な説明は、認知機能が保たれていれば有効です。

しかし、認知症の方は、説明の内容を記憶にとどめておくことが難しいため、長く話すほど混乱が深まりやすくなります。やり取りが長引くことで本人の焦りが増し、訴えがさらに強くなる悪循環に陥りがちです。

感情的に声を荒げる

毎回同じ訴えが続くと、介護する側も疲弊して感情的になってしまうことがあります。

しかし、強い口調や怒った表情は、言葉の内容よりも先に本人に伝わります。「怖い」「怒られた」という感覚が残ると、その後の不安や興奮が収まりにくくなり、対応がさらに難しくなるでしょう。

感情的になりそうなときは、「少し待っていてね」と伝えて、その場をいったん離れて気持ちをリセットすることも立派な対応のひとつです。介護者が追い詰められないよう、完璧に対応しようとしすぎないことも長く介護を続けるうえで重要です。

認知症で食べたことを忘れるときの6つの対応・対処法

認知症で食べたことを忘れるときの6つの対応・対処法

食事した事実を忘れているときは、強く否定せず落ち着いた対応が求められます。本人の不安を和らげながら、状況に合った対処法を取り入れましょう。

ただし、ここで紹介する方法は対応の一例であり、様子に不安を感じたり普段と違う変化がみられるときは、迷わず医療機関への相談を検討してください。

落ち着いて事実を伝える

食事を済ませたかどうかを確認されたときは、まず落ち着いた口調で事実を短く伝えましょう。本人の状況や関係によって異なりますが、丁寧な説明によって納得につながるときもあります。

ただし、説明を受け入れられないケースも少なくありません。やり取りが長引くほど不安が強まりやすいため、納得が得られないときは早めに別の対応へ切り替えましょう。

強く否定せず安心できる言葉をかける

発言をそのまま否定すると、不安や不信感が高まりやすくなります。事実を伝える際も、相手の気持ちを尊重した伝え方が重要です。

食事の準備を進める様子を見せる、少し待ってもらうなど、安心できる見通しを伝えると気持ちが落ち着くことがあります。「もうすぐ用意しますね」「一緒に確認してみましょう」など、穏やかな言葉と声のトーンを意識するだけでも、本人の受け取り方が変わります。

認知症の方への接し方は、下記の記事でも紹介しているので参考にご覧ください。

別の話題や活動に誘ってみる

食事への意識が強くなっているときは、別の話題や行動に誘ってみましょう。テレビを見る、会話を切り替えるなど、ほかの事柄に意識を向けることで気持ちが落ち着くときもあるでしょう。

「ご飯はまだ?」「お腹が空いた」などの訴えを繰り返すときは、食後の時間帯に散歩や好きな音楽を取り入れるなど、気分が切り替わりやすい流れをあらかじめ作っておくことも有効です。

食器をすぐに片付けずに置いておく

食後の茶碗やコップをしばらく残しておくと、食事を済ませたかどうかを思い出す手がかりになります。また、説明する際、食後の事実が見てわかる状況なら、言葉だけよりも伝えやすい点もメリットです。

食後に食器を少しの時間残しておく際は、衛生面に注意しつつ、片付けるタイミングを工夫してみましょう。

1回の食事量と食事の回数を見直す

1回の食事量をやや減らして回数を増やすことで、「ご飯はまだ?」という訴えへの対処になるときもあります。こまめに食事の機会を設けることで、「次の食事まで時間が空きすぎている」という不安を和らげやすくなります。

栄養の偏りや食べ過ぎに注意しながら、無理のない範囲で量や回数を調整してみてください。

少量の飲み物や軽食で気持ちを整える

少量の軽食や飲み物を提供することで、「自分の訴えを聞いてもらえた」という安心感から、本人の気持ちが落ち着くことがあります。

おにぎりや果物、温かい飲み物など、手軽に用意できるものを活用しましょう。

認知症の方で注意が必要な食事に関するその他の行動

認知症の方で注意が必要な食事に関するその他の行動

認知症の方では、食事の記憶が抜け落ちる以外にも注意したい行動があります。安全面や健康面への影響を防ぐために、起こりやすい事柄を把握しておきましょう。

過食|満腹感が得られず食事をとりつづけること

過食が続く場合は、食べ物を目につく場所に置かないことが有効です。認知症では満腹感を得にくく、食べた記憶も抜け落ちやすいため、視界に食べ物があると手を伸ばし続けてしまいやすいためです。

体重増加や栄養バランスの偏りにつながる可能性があるため、過食がみられるときは早めの対処が欠かせません。

異食|食べ物以外を口に入れること

「異食」は食べ物ではない物を口に入れる行動で、誤飲や窒息、体調悪化につながる可能性があるため注意が必要です。認知症の方が異物を口に入れないよう、手の届く範囲に物を置かない工夫が欠かせません。

食べ物以外の物を飲み込んだときや、苦しそうな様子が見られるときは早急に医療機関に相談しましょう。

盗食|冷蔵庫や棚から食べ物を盗み食いすること

「盗食」は、食べ物をもらえないと感じる不安や空腹感から、冷蔵庫や棚から食べ物を盗み食いする行動です。とくに夜間など周囲の目が届きにくい時間帯に起こりやすい傾向にあります。

盗食では単に食べたいという欲求だけでなく、安心を求める気持ちが含まれるケースがあります。

本人を強く責めると不安が増し、かえって行動が強まる可能性があります。食品の保管場所や食べ方の工夫で、盗食につながりにくい環境を整えてみてください。

認知症の方の食事に関する行動で医療機関への相談を検討する目安

認知症の方の食事に関する行動で医療機関への相談を検討する目安

食事にかかわる変化が急に強くなった場合は、体調の変化や別の要因が関係している可能性があります。以下のいずれかに当てはまる場合は、早めにかかりつけ医への相談を検討してください。

  • 食事に関する訴えや行動が急に強くなった・変化した
  • 過食・異食・盗食によって体調や安全面に影響が出ている
  • 体重の急激な増減がみられる
  • 家族だけでの対応に限界を感じている

認知症の方の様子を普段からよく確認し、変化がみられるときは医療機関への相談を検討しましょう。

認知症で食べたことを忘れる際の対応に関するよくある質問

認知症で食べたことを忘れる際の対応に関するよくある質問を整理しました。

認知症で「ご飯を食べてない」というときは施設で対応できる?

認知症の方が「ご飯を食べていない」と訴えるときは、介護施設への相談で負担を軽くできる場合があります。

介護施設では食後の声かけや本人が落ち着いて食事できる環境づくりなど、専門的な視点での支援を受けられる点が特徴です。家族の負担が大きくなっていると感じているときは、介護施設への相談を検討してみてください。

なお、認知症の方の施設入所を検討するタイミングは、下記の記事で紹介しているため確認することをおすすめします。

アルツハイマー型認知症で食べたことを忘れるのはよくある症状?

アルツハイマー型認知症では、直前の出来事を覚えにくくなる特徴があり、食事をした事実を忘れるケースがあります。

ただし、アルツハイマー型認知症には個人差があり、すべての人に同じような症状が見られるわけではありません。「ご飯を食べていない」との訴えが急に強くなったときは、ほかの原因が隠れている可能性もあるため、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。

食べた記憶がない状態は認知症のサイン?

食事をした事実を忘れる状態は、認知症でみられる記憶障害の1つです。加齢によるもの忘れでは食事内容を忘れがちになりますが、食べた事実自体を忘れることは少ないとされています。

ただし、もの忘れだけで認知症とは断定できないため、気になる変化が続く場合は、自己判断せず専門機関への相談を検討する必要があります。

認知症で食べたことを忘れているときは落ち着いた対応が大切

認知症で食べたことを忘れる場合は本人の気持ちに配慮した対応が求められます。ただし、過食や異食、盗食などがみられるときや、食事に関する変化が急に強くなったときは、早めにかかりつけ医に相談しましょう。

また、認知症の基礎知識を整理しておくと、食事をはじめとした悩みへの対応策を考える際の参考になります。下記の記事でわかりやすくまとめているため、あわせてご覧ください。

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