認知症の「初期・中期・後期」とは?進行段階ごとの特徴とケアのポイント
認知症は単一の病気ではなく、記憶や判断力、実行機能など高次脳機能が徐々に低下していく一連の病態です。認知機能の低下は、初めは気付きにくい小さな変化として現れ、やがて日常生活に支障をきたすようになります。
一般的には、認知症は初期(軽度)、中期(中度)、後期(重度)という進行の段階に分けられ、進行段階ごとに特徴がみられます。特徴を踏まえたケアのポイントもお伝えしていますので、日々のケアや今後の見通しの参考になれば幸いです。
目次
認知症の進行段階とは?「初期・中期・後期」について

認知症の進行段階として一般的に用いられているのは、初期(軽度)、中期(中等度)、後期(重度)の3段階です。この区分は、症状の重症度だけでなく、日常生活への影響の程度や支援の必要性を把握するための目安となります。
進行段階は、認知機能検査の結果や生活動作の変化など、複数の視点から分けられます。区分の考え方のベースとなっているのが、認知症の中で最も多い割合を占めるアルツハイマー型認知症の進行モデルです。
段階分けの指標として、主に以下の点が参考にされています。
- 認知機能の変化:MMSE(Mini-Mental State Examination_、ADAS(Alzheimer’s Disease Assessment Scale)、長谷川式簡易知能評価スケール (HDS-R)などの認知機能検査におけるスコアの変化。
- 日常生活の自立度:IADL(服薬管理、金銭管理、交通機関の利用などの手段的日常生活動作)や、ADL(食事・排泄・移動などの日常生活動作)において、どの程度の介助が必要かという日常生活能力の障害の程度。
初期は記憶障害が中心となり、中期では言語障害や空間認識の低下が目立つようになります。後期は、認知機能に加えて身体機能の低下も見られるようになるのが特徴です。以下の表に初期・中期・後期の特長をまとめました。
| 項目 | 初期(軽度) | 中期(中等度) | 後期(重度) |
|---|---|---|---|
| 日常生活(ADL) | 金銭管理や服薬管理などの複雑な家事が難しくなるが、身の回りのことはできる | 着替え、入浴、排泄など、生活全般に介助が必要になる | 食事・移動・排泄など、すべての動作に全面介助を要する |
| 記憶・見当識 | 直前の会話を忘れる、物の名前が出てこない | 自宅の住所や知人の名前を忘れる、時間や場所がわからなくなる | 家族の判別や状況の理解が難しくなる |
進行段階は、できなくなっていくことのみを示すものではありません。現在の状態を整理し、今後の備えやケアを考えるためにも活用できるものです。
認知症「初期(軽度)」に見られやすい特徴

認知症の初期段階は、日常生活の大部分を自立して送れる一方で、記憶障害を中心に認知機能の低下が見られ始める時期です。身体機能に大きな問題はありませんが、これまで当たり前にできていた家計管理や家事、交通機関の利用などの複数の工程を必要とする家事動作などで支障が出始めます。
MCI(軽度認知障害)との違い
認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)の状態では、物忘れなどの記憶障害がみられるものの、家事や家計管理などの日常生活動作への影響はまだ見られていない場合が多い段階です。初期段階へ移行すると、単なる物忘れを超えた生活への支障をきたし始めます。
初期の具体的な症状と生活への影響
初期に見られる主な症状は次のとおりです。
- 記憶力の低下:直前の会話の内容を忘れる短期記憶の低下や、人や物の名前がすぐに出てこないといった症状がみられます。
- 実行機能の低下:金銭管理が難しい、料理の段取りが悪くなる、毎日服用する薬の管理が困難になる、といった複数の工程や判断を要する動作に支障をきたすようになります。また、以前に比べて整理整頓が難しくなったり、物事を計画的に進められなくなったりすることも少なくありません。
- 心理・社会性の変化:自身のできなくなったことを受け入れられず否定的になったり、不安から社会との交流を避けたりすることがあります。
初期のケアのポイント
初期は、認知機能が低下し始めても、感情や自尊心などは保たれています。そのため、できないことへの焦燥感や不安を否定せず、本人の気持ちに寄り添う関わりが初期の段階では重要です。
認知症初期にわがままだと感じてしまう理由については「認知症の初期症状はわがまま?早く対処すべき3つの理由とその対処法」で解説しています。
認知症中期(中等度)に見られやすい特徴

認知症の中期(中等度)は、日常生活の多くの場面で具体的な介助を必要とし、 要介護状態になる方が増える時期です。認知機能の低下がさらに進行し、身体的には元気であっても「一人での外出」や「一人暮らし」「安全な在宅生活」の維持が困難になります。
中期の具体的な症状と生活への影響
中期に見られる主な症状は次のとおりです。
- 記憶力と見当識の障害:自分の住所や電話番号、親しい知人の名前を忘れるなど、記憶障害が顕著になります。また、「ここはどこか」「今は何時か」がわからなくなるため、帰り道がわからず迷子になるリスクが高まります。
- 失行・失認:物の使い方が分からなくなる失行、目の前のものが何か認識できない失認などが現れます。以前は得意だった動作が急にできなくなるケースも少なくありません。
- BPSD(行動・心理症状): 抑うつ、怒りっぽさ、興奮、徘徊、妄想などの症状(BPSD)は、中期に目立つ傾向にありますが、認知症の進行段階に関わらず現れることがあります。ご家族の負担に直結しやすいため、一人で抱え込まず、早めに認知症を専門とする医師やケアマネジャーに相談することが大切です。
中期のケアのポイント
中期では、食事や入浴、排泄といった基本的な日常生活動作(ADL)にもサポートが欠かせません。介護者の負担が急増するため、介護者だけで頑張るのではなく、介護サービスを積極的に活用し、社会全体で支える体制を整えることが必要です。
認知症の症状で接し方が難しいと感じたときのポイントを知りたい方は「認知症の方への適切な接し方!ポイントと5つの具体例」もご参考ください。
認知症「後期(重度)」に見られやすい特徴

認知症の後期(重度)は、身体機能の低下も生じ、生活のすべてに全面的な介助を要する時期です。意思疎通が困難になり、一日の大半を寝たきりで過ごす状態になります。
後期の具体的な症状と生活への影響
後期に見られる主な症状は次のとおりです。
- 言語機能の低下:会話が難しくなり、単語などでの返答が多く、周囲の呼びかけに対する反応も徐々に乏しくなります。
- 身体機能の著しい低下:活動性の低下に伴う筋力低下などにより、歩行や座位保持が困難になります。嚥下(飲み込み)機能も低下するため、誤嚥性肺炎などの合併症にも注意が必要です。排泄のコントロールも難しくなります。
- 状況理解の低下:自分の置かれている状況が理解できなくなるといった状態に至ります。
後期のケアのポイント
後期では、苦痛の緩和、尊厳の保持が優先されます。たとえ言葉を交わせなくても、声かけややさしく身体に触れるなどの非言語的なコミュニケーションで、本人が穏やかに過ごせる環境を整えましょう。
どのタイミングで施設を考えたらいいか迷った際には「認知症の親を施設に入れるタイミングと注意点を徹底解説」がヒントになるかもしれません。
適切な相談先とケアにつなげるために
「ベルコメンバーズアプリ」には、認知機能チェックを定期的に行い、その結果を記録・振り返りできる機能が搭載されています。
日常の中で感じる「いつもと違う」という感覚を記録として残しておくと、日々の変化を整理しやすくなります。また、ご家族の見守りの一環としてアプリを取り入れることで、変化に早く気づき、適切な専門機関に相談するための備えにもなるでしょう。
大切なご家族の現状を把握し、将来にわたって穏やかな生活を支えるためにもアプリで認知機能チェック習慣を始めてみるのはいかがでしょうか。
認知症予防のためのプリントもご活用ください。
【参考文献】
Rebecca Omlor et al.Anticipatory Guidance in Dementia Across the Stages #455.J Palliat Med. 2023;26(5):727–729
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター:認知症の重症度はどのようにして決まりますか?
Alzheimer’s Association Stages of Alzheimer’s
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