認知症とてんかんの関係とは?症状の違いや発作が起きたときの対応を解説

認知症とてんかんの関係とは?症状の違いや発作が起きたときの対応を解説
「認知症の親が、急にぼーっとして呼びかけに答えなくなった。1〜2分で元に戻ったけれど、本人はそのことを覚えていない」

こんな場面に出会い、認知症が進んだのではと不安になった方もいるでしょう。実は、認知症の進行ではなく、てんかん発作によって起きている可能性もあります。認知症の人はてんかんを起こすリスクが高いとされ、しかも高齢者のてんかん発作はけいれんを伴わないことが多いため、認知症と見分けにくいのです。

この記事では、認知症とてんかんの関係、症状の違い、発作が起きたときに家族ができる対応などを解説します。読み終えるころには、家族の突然の変化にも落ち着いて対応し、医療機関に相談しやすくなるでしょう。

目次

認知症とてんかんにはどのような関係がある?

認知症とてんかんにはどのような関係がある?

認知症の人は、てんかん発作を起こすリスクが高くなるとされています。ただし、認知症があれば必ずてんかんになるわけではありません。ここでは、リスクがどの程度なのか、てんかんが認知症と間違われやすい理由を見ていきます。

認知症の人はてんかんを起こすリスクがある

アルツハイマー型認知症の人は、一般の高齢者よりてんかんを合併しやすいと報告されています。

福岡県久山町の調査では、65歳以上の人のてんかん有病率は1.06%でした。これに対し、アルツハイマー型認知症の人のてんかん合併は1.3〜6.1%と報告されています。

その理由としては、脳にたまる異常なたんぱく質「アミロイドβ」が、記憶をつかさどる海馬の神経を興奮しやすくし、発作の起点になりうると考えられています。

てんかんの症状が認知症と間違われることもある

高齢者のてんかんはけいれんが目立たないことがあり、認知症の症状と間違われる場合があります。たとえば、次のような形で現れることがあるとされています。
  • 数分ほど、ぼーっとする
  • 呼びかけへの反応がなくなる
  • 発作のあと、その間の出来事を覚えていない
こうした一時的な変化は、家族の目には「もの忘れ」や「ぼんやり」に映りがちです。実際に、てんかんが認知症と誤認されたり、認知症に合併したてんかんが見過ごされたりすることがあると専門医の解説でも指摘されています。

認知症とてんかんの違いは?症状を比較

認知症とてんかんの違いは?症状を比較

認知症の症状が月・年単位でゆっくり進むのに対し、てんかん発作は突然始まり、短い時間で元に戻ることが多いとされています。主な違いを表にまとめました。
比べるポイント 認知症 てんかん発作
始まり方 気づかないうちに少しずつ始まる 前ぶれなく突然始まる
続く時間 月・年単位で続き、ゆっくり進む 多くは数分以内でおさまる
元に戻るか 元の状態には戻りにくい 発作がおさまると元の様子に戻ることが多い(ぼんやりが続くこともある)
呼びかけへの反応 多くの場合、反応できる 反応しなくなることがある
記憶 出来事を忘れることが増えていく 発作中の記憶がない
ただし、これはあくまで目安です。レビー小体型認知症のように日や時間帯で調子に波が出る認知症もあり、両方が同時に起きている場合もあるため、見た目だけで見分けるのは難しいでしょう。気になる様子があれば、家族だけで判断せず医療機関に相談してください。

認知症にみられる主な症状

認知症の症状は、月・年単位で少しずつ目立ってくるのが特徴です。代表的な症状は次のとおりです。
  • 最近の出来事を忘れる
  • 同じ話を繰り返す
  • 日常生活での判断が難しくなる
  • 料理や家計の管理など、慣れた作業ができなくなる
  • 時間や場所がわからなくなる
「ここ数か月、冷蔵庫に同じ食材が何個も入っている」のように、時間をかけた変化として気づかれることが多いでしょう。ただし、レビー小体型認知症では日や時間帯によって調子に波が出ることがあり、「波がある=てんかん」とは言い切れません。

てんかん発作にみられる主な症状

てんかん発作は突然始まり、多くは短い時間でおさまるのが特徴です。主な症状には次のようなものがあります。
  • 急に意識がなくなる
  • 一時的に反応しなくなる、ぼーっとする
  • 手足がけいれんする
  • 手足や顔が突っ張る
高齢者のてんかんでは、けいれんを伴わない発作と、全身のけいれん発作などのタイプがあるとされています。

認知症と間違えやすいてんかん発作に注意

認知症と間違えやすいてんかん発作に注意

認知症の人に起きるてんかん発作は、けいれんを伴わないものが多く、家族も気づきにくいとされています。ここでは、家族が実際に目にしやすい場面に沿って、見逃されやすい発作の特徴を紹介します。

けいれんがない「非けいれん性」の発作もある

てんかん発作には、けいれんを伴わない「非けいれん性」のものもあります。

日本てんかん学会のガイドラインによると、高齢者のてんかん発作は非けいれん性のものが多く、症状が軽く多彩なため、診断が難しいことも多いとされています。全身のけいれん発作だけがみられる人は全体の約4分の1で、若い人(約65%)より少ないという報告です。

「てんかん=全身けいれん」と考えていると見過ごしやすいため、「けいれんしていないから、てんかんではない」と自己判断しないことが大切です。

突然ぼーっとして反応しなくなることがある

けいれんのない発作では、突然ぼーっとして、呼びかけに反応しなくなったり、動作が止まったりすることがあります。

たとえば、食事中に箸が止まり、目がうつろになったり、包丁を持ったまま手が止まり、話しかけても返事がなかったりといった場面が考えられます。

口をもぐもぐさせるなどの動きを伴うこともありますが、高齢者ではこうした動きが目立たないことも多いため見過ごされがちです。

発作後に一時的な混乱や記憶障害がみられることもある

発作が終わってもしばらくぼんやりしたり、混乱したりすることがあります。日本てんかん学会のガイドラインでは、数時間から数日続くこともあるとされています。

認知症に合併するてんかんは、側頭葉(こめかみの奥にある、記憶にかかわる部分)から始まる発作が多く、本人は発作中のことを覚えていないのが特徴です。こうした様子は、認知症の進行と受け取られやすいでしょう。

てんかんの診断方法は?認知症と見分けるための検査

てんかんの診断方法は?認知症と見分けるための検査

認知症の人にてんかんが疑われるときは、家族から聞いた発作の様子と、脳波などの検査をあわせて、てんかんかどうかを判断します。1つの検査だけでは決まらないため、それぞれの役割を知っておくと、受診のときに慌てずに済むでしょう。

本人や家族から発作の状況を聞く

診断の手がかりになるのは、発作を見ていた家族の話です。本人は発作中のことが分からないことが多く、医師は見ていた人から様子を聞くことが大切とされています。

発作が始まった時間や続いた長さ、そのときの様子を撮った動画などがあると、医師に状況が伝わりやすくなります。

受診先に迷ったら、まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて脳神経内科やてんかんの専門医を紹介してもらうとよいでしょう。自分で探す場合は、「てんかん専門医 地域名」で検索すると見つけやすくなります。

脳波検査を行う

てんかんの診断で最も重要とされるのが、脳の電気的な活動を調べる脳波検査です。発作のような症状があるときに、脳波にてんかんに特徴的な波が出ていないかを確認します。

ただし、国内の高齢者のてんかん70例の研究では、脳波でてんかんに特徴的な異常が見つかったのは約7割でした。てんかんがあっても、脳波で異常が出ない人もいるということです。眠っている間まで記録すると、異常をとらえやすくなるとされています。

MRIなどの画像検査を行うこともある

MRIなどの画像検査は、発作の原因になっている脳の病気がないかを調べるために行われます。

日本てんかん学会のガイドラインによると、高齢になって初めて起きるてんかんの原因は脳卒中などの脳の血管の病気が最も多く、30〜40%を占めます。そのほか、頭のけがや認知症なども原因の一つです。

前述の国内の研究では、MRIで原因となる異常が見つからない人もいました。「MRIで異常なし=てんかんではない」とは限らない点は、知っておきたいところです。

認知機能の検査だけでは判断できない場合がある

認知機能の検査で点数が下がっていても、それだけで認知症と決められない場合もあります。実際に、てんかんの人がもの忘れ外来を受診することもあり、次のような場合は脳波検査を行うことが重要だとされています。
  • もの忘れが一時的である
  • 経過からてんかんが疑われる
  • 出来事の記憶が抜けているのに、記憶の検査では正常の結果が出る
受診の際は、家庭での様子の変化を家族から医師に伝えるようにしましょう。

認知症の人にてんかん発作が起きたときの対応

認知症の人にてんかん発作が起きたときの対応

認知症の人にてんかん発作が起きたら、まずけがを防ぎ、発作の時間と様子を確かめましょう。発作の多くは自然におさまるとされていますが、長く続く場合や繰り返す場合は救急車を呼ぶよう案内されています。

まず本人の安全を確保する

まずは、本人がけがをしないよう周りを整えましょう。日本てんかん協会は、次のような対応を挙げています。
  • 危険な物や場所から遠ざける
  • けがをしないように頭の下にクッションなどを入れる
  • 衣服の襟元をゆるめ、ベルトやメガネをはずす
  • 体を揺する、大声をかける、押さえつける、口に物を入れることはしない
  • けいれんがおさまったら体を横向きにする
ぼーっとしたまま歩き回るような発作では、無理に止めると思わぬ抵抗をされることがあります。少し距離を保って付き添い、周りの危険な物を片づけましょう。

発作の時間や症状を確認する

安全を確保したら、発作の様子を確認しましょう。本人は発作中のことが分からないことが多いため、家族の記録が診断の手がかりになります。日本てんかん協会が紹介している観察のポイントは次のとおりです。
  • 発作が起きた時間ときっかけとなったものはなかったか
  • 意識はあったか
  • けいれんがあった場合、体のどこから始まったか
  • けいれんがない場合は、どんな様子だったか
  • 発作はどのくらい続いたか
  • 顔色や唇の色など体の変化はなかったか
  • 発作後の様子はどうであったか
  • けがはなかったか
可能であれば、スマートフォンで発作の様子を動画に残すことも勧められています。ただし、撮影よりも安全の確保が優先です。

長く続く場合や危険な症状がある場合は救急要請する

日本てんかん協会が「医師による処置が必要」とする次のような発作では、ためらわずに救急車を呼びましょう。
  • 1回のけいれん発作が5分以上続き、止まらない
  • 発作と発作の間に意識が戻らないまま、発作を繰り返す
  • けいれんの有無にかかわらず、意識が曇る発作が短い間隔で繰り返す
転倒してけがをした場合も、救急車を呼ぶよう案内している自治体があります。初めての発作は、別の病気がきっかけのこともあるため、おさまったあとでも早めの受診をおすすめします。

認知症とてんかんを併発した場合の治療

認知症とてんかんを併発した場合の治療

認知症とてんかんを併発した場合も、抗てんかん薬で発作を抑えるのが治療の基本です。ただし、認知症の高齢者では、薬の選び方や量に配慮が必要とされています。

てんかんには抗てんかん薬による治療が基本とされている

抗てんかん薬の治療は、年単位で続くことが多いとされているため、診断が確実でてんかんの発作を繰り返すおそれがあり、本人や家族が治療の必要性を理解したうえで始めるのが基本です。薬は少ない量から始めて、少しずつ増やしていきます。

高齢者の場合は、薬による治療によって発作がおさまる割合は約90%と報告されています(成人全体では70〜80%)。高齢者は発作によって体や心に受ける影響が大きいため、適切な治療が大切です。

認知症がある場合は薬の副作用にも注意する

以前から使われている抗てんかん薬の中には、認知機能に影響するものや、眠気が出やすいものがあり、高齢者では注意が必要とされています。一方、新しいタイプの薬は、少しずつ増やすなどの工夫をすれば、比較的副作用が少ないと考えられています。

眠気やふらつきは薬の量が多すぎるときに出やすく、量の調節で和らぐこともあるようです。

受診の際はお薬手帳を持参し、気になる変化があっても自己判断で中止せず、主治医に相談してから決めましょう。

認知症の家族に「いつもと違う」と感じたら確認したいこと

認知症の家族に「いつもと違う」と感じたら確認したいこと

認知症の家族に「いつもと違う」と感じたら、認知症なのかてんかんなのかを家族だけで判断せず、気づいた変化を記録して医療機関に相談しましょう。日頃から、「もの忘れが増えていないか」「呼びかけても反応しない時間がないか」など確認しておくと安心です。

気になる様子があったときは、日付と時間、何をしていたときだったかをメモしておくと、受診の際に医師へ伝えやすくなります。

ベルコメンバーズアプリでは、認知機能をチェックできます。アプリでてんかんを見分けられるわけではありませんが、定期的にチェックしておくと、自分や家族の変化に気づくきっかけにもなるでしょう。

認知症とてんかんに関するよくある質問

認知症とてんかんについてよく寄せられる3つの疑問にお答えします。

Q1.認知症になるとてんかんになりやすいですか?

認知症、特にアルツハイマー型認知症の人は、一般の高齢者よりもてんかんを起こすリスクが高いとされています。ただし、認知症の人すべてにてんかんが起こるわけではありません。

Q2.認知症の人が突然ぼーっとするのはなぜですか?

認知症の症状としてぼんやりすることもありますが、てんかん発作など別の原因が隠れているかもしれません。数分以内に元に戻る、その間だけ記憶がない、といった様子があれば、てんかん発作も疑われるため、医療機関に相談しましょう。

Q3.てんかんは知能を低下させますか?

てんかんがあるからといって、必ず知能が低下するわけではありません。ただし、側頭葉から始まるてんかんでは、記憶の働きに影響が出ることがあるとされています。特に、病気の期間が長い、発作の回数が多いといった場合は、記憶障害が起きやすいようです。

認知症とてんかんの関係を知り、普段から変化を確認しよう

認知症の人は、一般の高齢者よりもてんかんを起こしやすいとされています。高齢者のてんかん発作はけいれんを伴わないことが多く、突然ぼーっとする、反応しなくなるといった様子は、認知症の進行と間違えられやすいものです。

発作が起きたときは、まず本人の安全を確保し、発作の時間や様子を記録しましょう。けいれんが5分以上続く場合、意識が戻らないまま発作を繰り返す場合などが救急車を呼ぶ目安になります。

普段の様子を知っておくことが、治療できる病気に気づく助けになるでしょう。認知症の種類や症状について基本から知りたい方は、「認知症の基礎知識」もあわせてご覧ください。

【参考文献】

PMC.Prevalence of adult epilepsy in a general Japanese population: The Hisayama study

日本内科学会雑誌:認知症とてんかん(109巻8号, 1533~1538, 2020)

レビー小体型認知症家族を支える会:レビー小体型認知症介護ハンドブック

公益社団法人日本てんかん協会:診断と治療

日本てんかん学会:高齢者のてんかんに対する診断・治療ガイドライン

日本老年医学会雑誌:高齢者てんかんの診断と治療(58巻4号, 529-532, 2021)

公益社団法人日本てんかん協会:発作の介助と観察

PubMed.Clinical characteristics and treatment responses in new-onset epilepsy in the elderly

日本神経学会:認知症疾患診療ガイドライン2017

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