認知症で行方不明になったら?家族がまずやるべき対応4つと原因・予防策を解説

認知症で行方不明になったら?家族がまずやるべき対応4つと原因・予防策を解説

「家族が外出したまま戻ってこないことがあったけどどうしたら良い?」「認知症による行方不明はなぜ起こるのか分からない」と悩んでいませんか。

認知症による行方不明は、単なるもの忘れではなく、記憶や判断にかかわる機能の変化が影響するとされています。原因を理解せずに対応すると発見が遅れるおそれがあるため、適切な初動と事前の対策が欠かせません。

本記事では、認知症で行方不明につながる主な原因や、発生時の具体的な対応、再発を防ぐための予防策を解説します。行方不明になる原因と対策をあわせて把握しておくと、万が一の際にも落ち着いて対応しやすくなるでしょう。

認知症の方が行方不明になったときに優先してやるべき4つの対応

認知症の方が行方不明になったときに優先してやるべき4つの対応
認知症による行方不明が発生したときは、発見までの時間を短縮するために、状況に応じた迅速な対応が求められます。具体的な対応の流れを確認していきましょう。

身近な場所を確認する

認知症の方を探す際は、まずは自宅周辺や日頃の生活圏を確認しましょう。以下のような本人にとって馴染みのある場所へ向かうケースもあります。

  • 普段の散歩コース
  • よく立ち寄っていた店
  • 公園
  • 最寄り駅
  • 昔の通勤経路

行方不明の方を探す際は、最後に姿を見た場所と時間、服装や持ち物の状況を整理すると、移動先の可能性を絞り込みやすいとされています。

徒歩に限らず、自転車や公共交通機関の利用も想定し、これまでの行動パターンを手がかりに捜索範囲を広げる意識も重要です。

警察に相談する

認知症による行方不明は、家族だけで解決しようとせず、できるだけ早く警察に連絡することが重要です。時間の経過とともに移動範囲が広がる可能性があり、事故や体調悪化につながるおそれがあります。

警察への相談時は、本人の外見や服装、持ち物などの情報を伝えると捜索の精度が高まりやすいとされています。とくに本人の姿を確認できる写真があれば、顔立ちや外見の特徴を具体的に共有しやすくなるでしょう。

近隣住民に情報を共有する

近隣住民への情報共有は、目撃情報が集まりやすくなる手段の1つです。事情を知らない場合は異変として認識されにくいため、事前に状況を伝えておく必要があります。

以下の項目をまとめて伝えると、捜索の際に参考になりやすいとされています。

  • 年齢
  • 服装
  • 身長
  • 歩き方の特徴
  • 行きそうな場所

認知症の方は質問にうまく答えられないおそれがあるため、見た目と行動の特徴をあわせた共有も重要です。

近隣住民だけでなく、商店やコンビニ、駅周辺の施設などにも情報を共有し、協力の依頼も検討してみましょう。

ケアマネジャーや地域の相談窓口に相談する

ケアマネジャーや地域包括支援センターは、本人の生活状況や外出傾向を把握している場合があるため、相談先の1つとして挙げられます。認知症の方が足を運びやすい場所や今後の対応などのアドバイスをもらえる可能性がある点も相談のメリットです。

また、再発防止に向けた環境調整や見守り方法の見直しについても相談できるため、発見後の対応にも役立ちます。

認知症で行方不明につながると考えられる主な原因

認知症で行方不明につながると考えられる主な原因
認知症による行方不明は、記憶や判断機能の低下が複合的に影響して起こると考えられています。どのような要因が行方不明につながるのか、主な原因を確認していきましょう。

記憶障害による道迷い

認知症では直前の目的や移動経路を保持しにくくなり、外出中に何をしに来たのか分からなくなることがあります。

目的を思い出そうとして移動を続けるうちに、現在地の把握が難しくなり、行方不明になるケースです。単なるもの忘れとは異なり、行動の前後関係ごと抜け落ちる場合があるのが認知症の特徴です。

見当識障害による位置認識の低下

見当識障害があると、現在地や時間、周囲の状況を結びつけて現状を把握することが難しくなるとされています。見当識障害によって現在地や状況が分からなくなると、以下の行動が困難になるおそれがあります。

  • 来た道をたどる
  • 家族に連絡する
  • 周囲の人に道を尋ねる

状況に応じた対処ができないままひとり歩きを続けた結果、発見までに時間がかかり、その間に事故や転倒のリスクも高まりやすいです。

帰宅しようとする行動

認知症では短期的な記憶よりも古い記憶が残りやすい傾向にあり、現在の住まいを自宅と認識できず、昔住んでいた家へ帰ろうとして外出するケースがあります

すでに家にいることを説明しても「帰宅したい」と感じている本人は状況を理解できず、帰宅願望がより強まる例もあります。

帰宅願望を単なるわがままではなく、認知機能の変化にもとづく行動として理解しておくと、柔軟な対処につながるでしょう。

不安や焦りによる移動

状況理解が難しくなることで不安や焦りが強まり、安心できる場所や人を探そうとして移動を続けることも、認知症の方の行方不明の原因として考えられます。

焦りが強い状態では周囲の働きかけに反応しにくく、移動を優先する行動につながりやすいです。

不安が強くなると外出行動も繰り返しやすくなるため、日常的に安心感を得られる環境の整備やかかわり方の工夫が求められます

認知症の方との接し方の詳細は下記の記事で解説しているので、参考にご覧ください。

過去の生活習慣を再現する行動

過去に繰り返していた行動が残り、出勤や買い物、迎えなどを目的にした外出によって、認知症の方が行方不明になるとされる例もあります。

過去の生活の流れを把握しておくと、外出先の傾向を推測する際のヒントに活用できます。過去の勤務先やよく利用していた場所を、行方不明になった際の捜索の手がかりとして確認しておくと良いでしょう。

ひとり歩きを含む認知症の周辺症状(BPSD)は下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にご覧ください。

認知症で行方不明になっても見つかりにくい理由

認知症で行方不明になっても見つかりにくい理由
認知症による行方不明は、行動の特徴や環境条件が重なることで発見までに時間がかかる場合があります。どのような要因が発見の遅れにつながるのか、主な理由を確認していきましょう。

想定以上に遠くへ移動するため

認知症の方は徒歩でも長距離を移動するケースがあり、短時間で想定より遠くまで離れてしまう場合があります。どうすればよいかわからず不安となり必死で歩き続けていることで、結果的に広範囲へ移動してしまう傾向が見られます。

家族が「近くにいるはず」と考えて捜索範囲を限定すると、発見が遅れかねません。実際の行動範囲は想定より広がる可能性があるため、捜索の初期段階から範囲を広く捉える視点が求められます。

交通機関を利用することがあるため

認知症の方の移動は徒歩に限らず、バスや電車、タクシーなどの交通機関を利用するケースもあります。

交通機関で移動している場合、自宅の近くでは発見しにくく、捜索に時間がかかりやすくなります。

認知症の方が行方不明になった際は、捜索範囲を徒歩圏内に限定せず、最寄りの駅やバス停、タクシー乗り場周辺の確認も忘れずにおこないましょう。

発見されにくい場所にいることがあるため

行方不明となった場合、人目につきにくい場所に移動していることがあります。とくに以下の場所に移動している場合は人通りが少なく、発見までに時間がかかる傾向にあります。

  • 空き地
  • 路地
  • 河川敷
  • 山間部

また、体力の低下や疲労によってその場から動けなくなるケースもあり、周囲に気づかれにくい状況が生じます。発見までの時間が長引くほど、転倒や体調悪化などのリスクが高まる点にも注意が必要です。

独居や初動の遅れなどが起こる場合があるため

独居の場合は外出に気づくまでに時間がかかりやすく、捜索開始が遅れやすい点に注意が必要です。同居している場合でも、夜間や家族が不在の時間帯には同様の状況が起こるおそれがあります。

初動が遅れると、移動範囲が拡大しやすく発見が困難になりやすいです。日頃から外出の傾向や生活リズムを把握し、ひとり歩きに気づきやすい環境を整えておくことが大切です。

認知症での行方不明防止として考えられる予防策

認知症での行方不明防止として考えられる予防策
認知症による行方不明は、事前の備えによってリスクを抑えやすくなります。日常生活の中で取り入れやすい予防策について、具体的に見ていきましょう。

ドアの鍵を二重にする

玄関の鍵を二重にすると、外出に気づくまでの時間を確保しやすくなります。ドアを開けて自宅から出ていくまでに時間がかかることで、家族が異変に気づくまでの猶予が生まれます。

ただし、外から施錠して出られなくする方法は安全面や心理面の問題が生じやすく、適切とはいえません。鍵の設置位置を工夫する、開閉時に音が出る仕組みを組み合わせるなど、1人で外出する前に気づきやすい環境づくりを意識すると良いでしょう。

見守りカメラや離床センサーを設置する

見守りカメラや離床センサーを設置すると、外出の兆候を早い段階で把握しやすくなります。

とくに玄関や寝室に設置しておくと、早い段階でひとり歩きに気づきやすくなるでしょう。また、通知機能があるモデルなら、家族が別室にいる場合や夜間でも状況の把握や行方不明の早期対処につながる場合もあります。

カメラやセンサーの設置は本人の外出を強制的に止めず、行動への早期対処が可能な点が特徴とされています。見守りの負担を軽減しながら、安全性を高める対策として設置を検討してみましょう。

身の回りの物品に氏名や連絡先を記載する

衣類や持ち物に氏名や連絡先を記載しておくと、保護された際に家族へ連絡がつながりやすくなります

とくに外出時によく持ち運ぶ物には、連絡先や氏名などの記載を心がけましょう。

  • 衣類の裏側
  • バッグ

身の回りの物品に情報を記載する方法は、特別な機器を必要とせず、すぐに実施できる点が強みです。

SOSネットワークに登録する

SOSネットワーク(自治体の見守りネットワーク)は、行方不明時に行政や福祉関係者、地域住民などが連携して情報を共有するための仕組みです。

防災無線やメール配信などを通じて情報が伝わる仕組みが整っている地域もあり、家族だけで探す場合と比べて、捜索範囲を広げやすくなります。

多くの自治体では事前登録が必要となるため、早めの登録を検討しておきましょう。ひとり歩きや行方不明の発生後に対応を考えるだけでなく、事前の予防や準備も欠かせません。

GPS機器を活用する

位置情報を取得して現在地を確認できるGPS機器を活用すると、外出時の居場所を把握しやすくなり、早めの対応につながる場合があります。

GPS機器には、靴に内蔵するタイプや小型端末として持ち歩くタイプなどがあり、日常生活の中で継続的に使用しやすい製品もあります。

本人に持たせるだけでなく、使えるように充電状況や使い方の確認も欠かせません。

認知症の方の行方不明に関するよくある質問

認知症の方の行方不明に関するよくある質問をまとめました。より詳しく理解するための参考にしてください。

行方不明になった認知症の方が見つかりやすい場所はどこ?

行方不明になった認知症の方は、これまでの生活歴や行動パターンに沿った場所で発見されやすい傾向にあります。発見されやすいとされる場所の具体例は以下のとおりです。

  • 自宅周辺の道路や公園
  • よく利用していた店舗
  • 最寄り駅
  • 過去の通勤経路

本人にとって馴染みのある環境は安心感につながるため、意識せず足が向きやすいと考えられています。

一方で、徒歩に限らず公共交通機関や自転車を利用する場合もあるため、想定より広い範囲に移動している可能性も無視できません。

生活歴や過去の行動を手がかりにしつつ、周辺施設や交通経路を含めた捜索範囲の検討が重要です。

認知症の行方不明後の生存率はどのくらい?

認知症の行方不明後の正確な生存率は明らかになっていません

警察庁の「令和6年における行方不明者届受理等の状況」によると、認知症での行方不明者は総数が18,121人で、所在確認ができた方は16,942人、死亡確認された方は549人とされています。

数値上は約93%が所在確認されている計算になりますが、この数値がそのまま認知症の方の行方不明後の生存率を示しているとは断定できません。

所在が確認されるケースでも、事故や体調悪化により死亡が確認される事例も報告されています。発見までの時間が長くなるほどリスクが高まる傾向にあるため、早期対応、早期発見を心がけることが重要です。

認知症の方の行方不明には事前の対策が重要

認知症による行方不明は、記憶障害や見当識障害などの影響で発生するとされているため、原因を理解したうえでの対策が重要です。行方不明が起きた場合は、身近な場所の確認や警察への相談など、状況に応じて迅速な対応が求められます。

日常的な見守りや環境の工夫、地域の仕組みの活用によって、行方不明の予防につながることがあります。認知症の方の行方不明に備える際は、家族だけで抱え込まず、専門職や地域の支援を取り入れながら、安全に配慮した体制の整備が大切です。

また、認知症に関する基本的な情報を把握しておくと、行方不明に限らずトラブルへの対応の参考になります。下記の記事で認知症の基礎知識をわかりやすくまとめているので、あわせてご覧ください。

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監修者 浦上 克哉 教授

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浦上 克哉 教授

日本認知症予防学会代表理事
日本老年精神医学会理事
日本老年学会理事
日本認知症予防学会専門医

1983年鳥取大学医学部医学科卒業

1988年同大大学院博士課程修了

1990年同大脳神経内科・助手

1996年同大脳神経内科・講師

2001年同大保険学科生体制御学講座環境保健学分野の教授(2022年まで)

2016年北翔大学客員教授(併任)

2022年鳥取大学医学部保健学科認知症予防学講座(寄付講座)教授に就任

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