認知症の進行による生活への影響|段階別の目安と早まる要因も解説
親に認知症の診断が出ると「これからどう進むの?」「いつまで今の生活が送れるのだろう?」と不安が強くなりますよね。認知症の進行には個人差がありますが、生活機能の変化を段階的に知ることで、必要な備えが見えてきます。
ここでは、進行の目安や速度を左右する要因、家族が準備すべきタイミングをわかりやすく解説します。
目次
認知症の進行は日常生活で何ができるかで考える

認知症の進行は、日常生活で何ができているかでとらえることが大切です。認知症は記憶や判断力の低下により、生活機能が少しずつ失われていきます。
とくに、認知症全体の約67%を占めるアルツハイマー型認知症*1では、こうした変化がもの忘れから始まることが多くみられます。ここでは、生活の変化に沿って3つの段階に分けて見ていきましょう。
1.軽いもの忘れが目立ち始める段階(軽度)
一人で生活できるけれども、うっかりミスが増えるのが特徴です。初期の認知症では記憶障害や段取りの低下などが起こり、スケジュール管理や家事の手順に支障が出始めます*2。
具体例としては、次のとおりです。
- 待ち合わせの時間や場所をよく間違える
- 同じものを何度も買うようになった
- 薬の飲み忘れが増える
外見上は元気でも、生活の小さなずれが増えてきたら、認知症の初期段階に入っている可能性があります。
認知症と加齢によるもの忘れの違いについて詳しく知りたい方は「認知症ともの忘れを見分ける方法とは?もの忘れがひどいときのチェック方法」をご覧ください。
2.生活の管理が難しくなる段階(中等度)
日常生活の多くで、見守りや手助けが必要になります。記憶障害に加えて、判断力や段取りの低下が進むからです*2。
具体的には、次のような症状が挙げられます。
- お金の管理ができず、支払いミスが増える
- 季節に合った服を選べない
- 薬が自分では飲めなくなる
トイレや自分の部屋がわからなくなったり、近所で道に迷ったりするのも、よく見られる症状です。家族や周囲のサポートを意識的に取り入れる時期といえるでしょう。
3.常に支援が必要になる段階(重度)
食事や排泄、着替えなどの基本的な生活動作を自分で行うことが難しくなり、常に介助と見守りが必要になる段階です。言葉の理解や発語ができなくなり、家族との会話や意思疎通が困難になります*2。
たとえば、次のような行動がみられるようになります。
- 自分で食事や水分が摂れなくなる
- 失禁が増え、排泄の介助が必要になる
- 歩行が不安定になり転倒しやすい
昼夜逆転が起きたり、家族の顔がわからなくなったりすることも少なくありません。安全を守るため、継続的な介護や医療の支援が欠かせない段階といえます。
認知症の進行速度が早まる主な要因とは?

ここでは、認知症の進行速度に影響する主な要因を見ていきましょう。
1.認知症の種類による違い
認知症の進行速度は、病気の種類によって大きく異なります。認知症とは、脳の障害される部位や原因が異なる複数の疾患の総称です*2。それぞれ症状の出方や、進み方に特徴があります。
| アルツハイマー型認知症 | もの忘れから始まり、数年かけて生活機能が低下する |
|---|---|
| 血管性認知症 | 脳梗塞・脳出血などをきっかけに、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら階段状に進行する |
| レビー小体型認知症 | 認知機能の変動や幻視・転倒が早期からみられ、日によって状態が大きく変わることがある |
| 前頭側頭型認知症 | 記憶よりも、性格変化や行動の異常が先に目立つ |
認知症の種類について詳しく知りたい方は「認知症の4種類の特徴とは?症状を知って認知症にならないようにしよう」をご覧ください。
2.身体の状態
身体の状態が不安定なほど、認知症は進行しやすくなります。加齢により脳の回復力が低下し、持病や体調不良が重なると認知機能の低下が進みやすくなるためです。
具体的には、以下が挙げられます。
- 脱水や栄養不良
- 発熱や感染症
- 糖尿病・高血圧などの慢性疾患
耳の聞こえ(難聴)や睡眠障害なども、認知機能を低下させる要因です。体調管理や早めの治療が、症状の悪化を招きにくい生活環境づくりにつながると考えられます。
難聴と認知症の関係については「難聴と認知症の関係とは?リスクが高まる理由と今日からできる対応」をご覧ください。
3.生活習慣や環境
生活習慣や環境も、認知症の進行に影響します。脳への刺激が少ない生活や急な環境変化は、混乱や意欲低下を招きやすいためです。
たとえば、次のような状態が挙げられます。
- 運動や外出の機会が少ない
- 会話や社会的交流が減る
- 引っ越しや入院など慣れない環境
生活リズムの維持や人との関わりをもつことが、症状の安定につながります。
認知症の進行から考える見守りと備えのタイミング

認知症は、一人で安全に生活できているかが見守りの目安になります。もの忘れが増え、服薬や金銭管理にミスが出始めた段階は、自立しているように見えても事故やトラブルのリスクが高まる時期です。
家の中で迷う、大事な約束を忘れるといった変化があれば、見守りの導入を検討しましょう。家族が今すぐできる備えとして、連絡手段の確保、受診や介護サービスの相談などがあります。早めに準備しておくことで、急な変化にも落ち着いて対応できます。
認知症の進行を理解し、早めに備えましょう
認知症の進行は、生活機能の変化に合わせて3段階の目安があります。ただし、進行速度は、認知症の種類や環境によっても異なります。大切なのは今の状態を正しく把握し、一歩先の備えを早めに始めることです。
不安は一人で抱え込まず、専門家に相談しましょう。どこに相談すればいいのか迷っている方は、ベルコメンバーズアプリのコンシェルジュサービスをご活用ください。
監修者
浦上 克哉 教授
監修者
浦上 克哉 教授
日本老年精神医学会理事
日本老年学会理事
日本認知症予防学会専門医
1983年鳥取大学医学部医学科卒業
1988年同大大学院博士課程修了
1990年同大脳神経内科・助手
1996年同大脳神経内科・講師
2001年同大保険学科生体制御学講座環境保健学分野の教授(2022年まで)
2016年北翔大学客員教授(併任)
2022年鳥取大学医学部保健学科認知症予防学講座(寄付講座)教授に就任
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