認知症の中核症状とは?日常生活での具体例や周辺症状(BPSD)との違いを解説
「親のもの忘れが増えたけれど、認知症の中核症状なの?」と不安に感じる方もいるでしょう。認知症の中核症状には、記憶障害や見当識障害、判断力の低下などがあります。
ここでは、具体例を中心に、中核症状が日常生活にどのように現れるのか、周辺症状(BPSD)との違い、家族ができる対応をわかりやすく解説します。
目次
認知症の中核症状とは?

認知症の中核症状とは、脳の働きが低下することで現れる認知機能の障害を指します。日本神経学会の「認知症疾患診療ガイドライン2017」では、中核症状を「認知機能障害」と表記しています。
主な中核症状は、次のとおりです。
- 新しい出来事を覚えにくくなる(記憶障害)
- 時間や場所がわかりにくくなる(見当識障害)
- 物事を理解し、判断する力が低下する
- 手順を考えて行動することが難しくなる(実行機能障害)
- 言葉や動作、物の認識が難しくなる(失語・失行・失認)
現れる症状や程度は、認知症の原因となる病気や進行の段階などによって異なります。本人がわざと忘れたり、努力を怠ったりしているわけではありません。
まずは行動の背景に、認知機能の変化が関係している場合もあると知ることが大切です。
認知症の主な中核症状と日常生活での具体例

中核症状は、日常生活のさまざまな場面に現れます。どのような場面で本人が困っているのかを、症状ごとに見ていきましょう。
1.記憶障害
記憶障害(新しく経験した出来事や聞いたことを覚えにくくなる症状)では、たとえば午前中に誰かが訪ねてきても、午後には訪問そのものを忘れている場合があります。一方で、昔の出来事は比較的覚えていることが多いです。
家族が「さっき説明した」と伝えても、本人には聞いた記憶が残っていない場合があるため、初めて聞く内容のように感じられることもあります。
2.見当識障害
見当識障害(時間や場所、人との関係などを把握しにくくなる症状)では、たとえば、昼寝から目覚めたときに、朝なのか夕方なのかわからなくなることがあります。季節の感覚が曖昧になり、気候に合わない服を選ぶ場合もあるでしょう。
また、入院先や宿泊先を自宅だと思い、家にいるときと同じように行動することもあります。本人には今いる場所を正しく把握しにくいため、周囲が説明しても戸惑いが続く場合があります。ただし、一時的な勘違いだけで認知症とは判断できません。
見当識障害について詳しく知りたい方は「認知症について認知症の見当識障害とは?もの忘れとの違いや接し方のポイントを解説」をご覧ください。
3.理解・判断力の低下と実行機能障害
理解・判断力が低下すると、たとえば郵便物の内容を読めても「いつまでに何をすればよいのか」「どこへ連絡すればよいのか」などを整理しにくくなる場合があります。一度にいくつかのことを伝えられると、何から始めればよいか迷うこともあるでしょう。
実行機能障害(手順を考えて行動しにくくなる症状)では、外出の準備やゴミの分別など、複数の工程がある作業に時間がかかったり、途中で手順がわからなくなったりする場合があります。
4.失語・失行・失認
失語では、最初に相手が話している内容が分かりにくくなり(感覚性失語)、次いで言葉が出にくくなります(運動性失語)。たとえば、物の名前が出にくくなり「あれ」「それ」と表現することが増え、言いたいことがあっても適切な言葉が浮かびにくくなる場合があります。
初期の段階では自発的な会話ができているため、実際には内容が十分に伝わっていなくても、周囲が変化に気づきにくいことがよくあります。
失行では、体を動かす力があっても、歯ブラシを手にしたあとに何をすればいいかわからないなど、一連の動作を進めにくくなる場合があります。
失認は視力などに大きな問題はなくても、たとえば目の前にあるコップを見て、それが何なのかわからない場合があります。
周囲には「話を聞いていない」「やり方を忘れた」ように見えても、こうした認知機能の障害が関係していることがあります。
認知症の中核症状と周辺症状(BPSD)の違い

認知症では中核症状に加えて、認知症の行動・心理症状(BPSD)がみられることがあります。BPSDは、一般に「周辺症状」とも呼ばれてきました。
以下に、中核症状と周辺症状の違いをまとめました。
| 種類 | 特徴と主な症状 |
|---|---|
| 中核症状 | 認知機能の低下によって現れる。記憶障害、見当識障害、判断力の低下など |
| 周辺症状(BPSD) | 行動や心理面の症状として現れる。不安、妄想、興奮など |
たとえば、物をしまった場所を忘れることは、記憶障害にあたります。そこに不安や体調、生活環境、周囲との関わりなどが重なると「誰かに盗られた(もの盗られ妄想)」と訴える場合があります。
BPSDの現れ方や程度には個人差があります。本人を責めず、症状が現れた状況や困りごとの背景を考えることが大切です。
認知症の周辺症状については「認知症の周辺症状とは?主な症状と受診の目安を解説」も参考にご覧ください。
認知症の中核症状が気になるときに家族ができること

気になる変化が見られたときは、本人を責めず、いつから、どのような場面で起きているかを記録しておきましょう。受診や相談の際に、普段の様子を伝えやすくなります。
認知症かどうかを家庭だけで判断することはできません。気になる変化が続いている場合や、生活に支障が出ている場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターへの相談を検討しましょう。
どのような変化に注意すればよいか迷う方は「家族のための認知症チェックリスト|日常で気づきたいサインと対応」も参考にしてみてください。
認知症の中核症状を知り、行動の背景を理解しましょう
認知症の中核症状には、記憶障害や見当識障害、実行機能障害などがあります。症状が日常生活にどのように現れるかを知ると、本人の行動を性格や努力の問題と捉えず、困りごとの背景を考えやすくなります。
気になる変化が続く場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターへの相談を検討しましょう。認知症の種類や予防、もの忘れとの違いなど全体像を知りたい方は「認知症の基礎知識|初期症状・種類・予防・もの忘れとの違いを解説」も参考にしてみてください。
監修者
浦上 克哉 教授
監修者
浦上 克哉 教授
日本老年精神医学会理事
日本老年学会理事
日本認知症予防学会専門医
1983年鳥取大学医学部医学科卒業
1988年同大大学院博士課程修了
1990年同大脳神経内科・助手
1996年同大脳神経内科・講師
2001年同大保険学科生体制御学講座環境保健学分野の教授(2022年まで)
2016年北翔大学客員教授(併任)
2022年鳥取大学医学部保健学科認知症予防学講座(寄付講座)教授に就任


