認知症介護でイライラするのはなぜ?原因や5つの対処法、ストレスを溜めないコツを解説

認知症介護でイライラするのはなぜ?原因や5つの対処法、ストレスを溜めないコツを解説

「さっきも言ったでしょ」「何度も同じことを言わせないで」

認知症介護では、何度説明しても伝わらないと感じ、イライラしてしまう家族は少なくありません。認知症介護研究・研修仙台センターが家族介護者2,358人を対象に行った調査では、精神的な負担を強く感じている介護者は全体の42.9%です。感じているイライラは、性格や愛情の問題ではなく、多くの介護者が経験している自然な反応と言えます。

この記事では、認知症介護でイライラが起こる原因と今から試せる5つの対処法、ストレスを溜め込まないための支援先を紹介します。自分がイライラしてしまう理由が分かり、感情的になりそうな場面でも一呼吸おいて対応できるようになるでしょう。

目次

認知症介護でイライラしやすい場面

認知症介護でイライラしやすい場面
「またか」とイライラを感じる瞬間には、いくつかの共通パターンがあるようです。具体的には、以下の場面です。

  • トイレの介助が大変である
  • 食事を食べたのに「まだ食べていない」と言われる
  • ひとり歩きするため夜中に何度も起こされる
  • 物を盗られたと疑われる
  • 相談できる相手や場所が少なく将来への不安を感じる
  • ケアマネジャーやスタッフへの対応や関わりに不満がある

「怒鳴ってしまった」「優しくできない」と自己嫌悪になる家族は少なくありません。

認知症介護では、多くの方が精神的な負担を感じています。イライラするのは特別なことではなく、介護を続ける中で誰にでも起こり得ることです。

認知症介護でイライラが強くなりやすい原因

認知症介護でイライラが強くなりやすい原因
イライラには、いくつかの理由が関係していると考えられています。原因を知ることで、感情的になる前に対応を変えられる場合があります。

同じ話や質問を何度も繰り返されるため

記憶を一時的に保存する脳の部位の働きが低下すると、数分前の出来事や体験したことを覚えられなくなります。

本人にとっては「初めて聞いた内容」になっている可能性が高く、悪気があって繰り返しているわけではありません。それでも家族にとって、同じ説明を何度も重ねる負担は小さくないものです。

介護が終わりの見えない状態になりやすいため

認知症の介護は、いつまで続くのか見通しが立てにくいという特徴があります。

「この先どうなるのか」という不安を抱えながら、日々の負担が積み重なっていくケースも少なくありません。「今は介護できるが症状が進んだら難しくなる」「施設の空きがあるのか」など、具体的な見通しが立たないことが不安の原因になっています。

先が見えない状態が続くと、家族の休息の時間を確保しづらくなり、心身の余裕がすり減っていくことがあります。

仕事や家事との両立が難しいため

内閣府の調査では、家族の介護・看護を理由とした離職者は1年間で約10.6万人にのぼり、そのうち75.3%が女性です。仕事や家事と介護を並行すると、自分の時間が削られやすく、精神的な余裕がなくなりやすい傾向があります。

「介護度が進んだら仕事をどこまで減らせるのか」「仕事を辞めないといけなくなったら生活できるのか」という不安を抱えながら働いている方もいるでしょう。離職を選ぶ家族が一定数いることからも、両立の難しさがうかがえます。

家族が介護に協力してくれないため

介護の負担が一人に偏ると、孤独感を抱えやすくなる場合があります。

「自分だけが頑張っている」「誰も手伝ってくれない」という不公平感は、家族間のトラブルに発展することもあるようです。協力体制が整っていない家庭ほど、イライラが蓄積しやすい状況に置かれやすいと考えられます。

本人に気持ちが伝わらないため

注意したことを、本人がすぐに忘れてしまう場面も少なくありません。

コミュニケーションが思うように成立しないと、家族は無力感を抱きやすくなります。「何度言っても伝わらない」という経験が積み重なることで、感情のコントロールが難しくなっていくケースもあります。

認知症介護でイライラして限界を感じたときの5つの対処法

認知症介護でイライラして限界を感じたときの5つの対処法
原因を踏まえたうえで、実際にイライラを感じた場面で試しやすい方法を紹介します。

「6秒ルール」でカッとなった瞬間をやり過ごす

数を数える、深呼吸をするなどを試すだけでも、衝動的な言動を防ぎやすくなります。

アンガーマネジメントの考え方では、怒りの感情が強くなる時間は6秒程度だといわれています。

怒りを感じて物事の判別がつかなくなっても、6秒ほど経つと理性が働いて客観的に判断できるようになる可能性があります。実践のきっかけとして取り入れやすい目安です。

一度その場を離れて気持ちを落ち着かせる

感情的になりそうなときは、その場を離れて物理的な距離を取ることを優先してください。

別室へ移動したり、一時的にその場を離れたりすることで、感情的な対応を防げる場合があります。落ち着いてから本人のもとへ戻ることで、冷静に対応できるようになるでしょう。

完璧な介護を目指さない

「今日は食事を準備できた」「事故なく一日を過ごせた」など、できたことに目を向けるだけで、介護を無理なく続ける力につながります。

イライラするのは、介護が下手だからではありません。疲労や睡眠不足、仕事や家事との両立などが重なれば、誰でも心の余裕を失うことがあります。

「優しく接しなければ」「怒ってはいけない」と自分を責めてしまう家族もいますが、認知症介護は長期間に及ぶため、完璧に対応し続けるのは難しいと知っておくことが大切です。

介護の悩みを誰かに話して吐き出せるような場所を作る

家族や友人に話すだけでも、気持ちが整理され、心の負担が軽くなることがあります。

介護をしている家族の中には、「家族だから頑張らないといけない」「イライラするなんて自分は失格だ」と、自分を責め続けてしまう方も少なくありません。

一人で抱え込むほど、不安やストレスは大きくなりがちです。話す相手が見つからない場合は、地域包括支援センターや家族会、介護者交流会などを利用する方法もあります。

怒鳴ってしまった後は自分を責めすぎない

感情的になってしまうのは、介護の負担が積み重なった結果として起こる反応と考えられます。

多くの家族が同じような経験をしているようです。一人で抱え込まず、今後の対応方法を見直すきっかけとして捉えてみてください。

認知症介護でイライラしたときにやってはいけない対応

認知症介護でイライラしたときにやってはいけない対応
対処法と合わせて、避けたい対応も知っておくとよいでしょう。

感情的に怒鳴る

怒鳴る行為は、認知症の方を不安にさせ、不安や混乱、興奮につながることがあります。

繰り返されることで、本人との信頼関係に影響が及ぶこともあると考えられています。怒りを感じたときは、前述の「6秒ルール」やその場を離れる方法を試してみてください。

本人を責めたり無理に訂正したりする

認知症の方に「さっきも言ったでしょ」「どうして覚えていないの?」と強く伝えても、本人は病気によって忘れているため改善は期待しにくいとされています。

むしろ、不安や混乱が強くなり、興奮や拒否につながることもあります。

間違いを正すことよりも、「そう思ったんだね」「一緒に確認してみよう」など、安心できる声かけを意識すると落ち着いて対応しやすくなるでしょう。

一人で抱え込んで自己嫌悪になる

介護の悩みを抱え続けると、疲労が深刻化しやすくなる可能性があります。

放置すると、介護うつにつながるリスクも否定できません。実際に、認知症の高齢の親族と同居している介護者の55%がうつ病を経験していることが示されました。早めに周囲へ相談することが、自分を守る行動になるでしょう。

認知症介護のイライラを減らすために利用したいサービス

認知症介護のイライラを減らすために利用したいサービス
イライラする背景には、介護負担の大きさが関係していることもあります。サービスをうまく活用することで、負担を軽減できる場合があります。

地域包括支援センターに相談する

地域包括支援センターは、介護の相談窓口として無料で利用できます

介護保険サービスの案内だけでなく、サービスを利用する費用負担や家族の悩みについても対応してもらえることがあります。どこに相談すればよいかわからないときの入り口として、利用しやすい窓口です。

ケアマネジャーに相談する

今のケアプランがイライラの原因と合っていない場合、ケアマネジャーに相談することで負担が軽くなるケースがあります。

ケアマネジャーは、介護計画の作成やサービス利用の調整を担う専門職です。困りごとは率直に伝えてみるとよいでしょう。

デイサービスやショートステイを利用する

家族の休息時間を確保する手段として、以下のような介護サービスを活用できます。

  • デイサービス
  • ショートステイ
  • 訪問介護

先述した認知症介護研究・研修仙台センターの調査によると、最初に利用した介護保険サービスとしてはデイサービスが1,826件(77.4%)と多く、取り入れやすいサービスと言えます。実際に利用した家族からは、安心できたという声もあります。

サービスを使うことに後ろめたさを感じる方もいるかもしれませんが、介護を継続するための選択肢のひとつです。本人にとっても、他者との関わりが社会参加の機会になります。

認知症介護のイライラに関するよくある質問

ここでは、認知症介護でのイライラに関して多くの方が抱く疑問をまとめました。

Q1.認知症の母にイライラして優しくできないのはひどいことでしょうか?

多くの家族が同じような感情を経験しているようです。介護負担による自然な反応と考えられており、自分を責めすぎる必要はありません。

Q2.認知症の方に怒鳴ってしまった場合はどうすればよいですか?

まずは、自分の気持ちを落ち着かせることが先決です。必要以上に自分を責めず、今後の対応方法を見直すきっかけとして捉えてみてください。

Q3.認知症介護でストレスが限界になったらどうすればよいですか?

一人で抱え込まず、家族や専門職に相談してみてください。介護サービスの利用を検討することも、状況を改善する手段のひとつです。

Q4.認知症の本人もイライラしやすくなるのはなぜですか?

認知症が進行すると、脳の働きの変化によって感情のコントロールが難しくなることがあると言われています。本人も状況をうまく理解できないもどかしさを抱えている可能性があり、それが言動として表れることがあるようです。

認知症介護でイライラしたときは一人で抱え込まないことが大切

認知症介護でのイライラは、性格の問題ではなく、多くの家族が経験する反応と考えられています。原因を知り、6秒ルールやその場を離れるといった対処法を取り入れることで、感情的な対応を防ぎやすくなります。

それでも限界を感じたときは、地域包括支援センターやケアマネジャー、介護サービスなどを頼る方法もおすすめです。一人で抱え込まず、周囲の力を借りながら介護を続けていきましょう。

イライラの背景にある認知症そのものについて理解を深めておくことも、日々の対応のヒントになります。症状の特徴や進行のしかたなど、基礎的な知識は以下のページで詳しく解説しています。

【参考文献】

認知症介護研究・研修仙台センター:認知症の家族等介護者支援に関する調査研究事業

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター:あたまとからだを元気にするMCI予防ハンドブック

内閣府:令和8年版高齢社会白書

日本アンガーマネジメント協会:変われた理由は、アンガーマネジメント

PubMed.Depression in family members caring for a relative with Alzheimer’s disease

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