「虫が見える」という幻覚はレビー小体型認知症?症状や家族ができる対応法
ふとした時に、親御様が「そこに虫がいる!」と、何もない場所を指差して怖がることはありませんか。否定しても納得してもらえず、対応に疲れ果てている方もいるかもしれません。
実は、「黒い虫が見える」などの幻覚の原因は、「レビー小体型認知症」特有の幻覚である「幻視(げんし)」の可能性があります。ただし、虫が見えるからといってすべてが認知症であるとは限りません。もし認知症が背景にある場合には、早期に気づき、適切な対応をとることで、本人の不安を和らげることにもつながります。
この記事では、レビー小体型認知症の幻視の症状や家族としてできる具体的な対応法についてご紹介します。
目次
「虫が見える」幻覚は認知症のサイン?

認知症にはいくつか種類がありますが、日本では、最も多い「アルツハイマー型認知症」に次いで多いのが「レビー小体型認知症」です。
レビー小体型認知症の特徴は、実際には存在しないもの(人や虫、動物など)が、あたかも目の前に実在するかのようにリアルに見えてしまう幻覚症状です。このような幻覚を「幻視(げんし)」とよびます。
幻視(げんし)はレビー小体型認知症の初期症状
幻視は、レビー小体型認知症特有のもので、患者さんのおよそ8割という非常に高い頻度でみられる症状です。また、レビー小体型認知症の診断基準のひとつにもなっています。
幻視は目の異常ではなく、脳が情報処理をする過程で起こる機能障害です。目から入った視覚情報は、脳の後ろ側にある「後頭葉」で処理されます。レビー小体型認知症の場合、後頭葉の血流や代謝が低下しやすく、視覚情報の処理がうまくいかず、結果として幻視の症状が現れると考えられています。
アルツハイマー型認知症では初期症状として物忘れが多い一方で、レビー小体型では幻視が多くみられるのが特徴です。さらに、レビー小体型認知症では初期には記憶障害が目立たない場合も多いため、認知症の症状だと気づかれないケースも少なくありません。
見えやすい幻視のパターン
レビー小体型認知症で見えやすい幻視の具体的な内容として多いのは、人・動物・虫などです。下記のような具体的な訴えが多く、虫を手でつかもうとしたり、何もないところに話しかけたりなどがみられやすくなります。
- 子供が部屋で遊んでいる
- 部屋の隅に猫がいる
- 布団の上に虫が這っている
レビー小体型認知症以外の認知症の種類については「認知症の4種類の特徴と症状|発症割合の高い4つを紹介」の記事で詳しく解説しています。
「幻視」以外に現れやすい症状

レビー小体型認知症では幻視以外にも、さまざまな症状がみられます。ここでは、幻視以外の具体的な症状について、詳しく解説します。
動作の遅さや手足の震え(パーキンソニズム)
レビー小体型認知症では幻視に加えて、パーキンソニズムと呼ばれる症状が早期からみられることも特徴のひとつです。下記のようなパーキンソン病に似た症状がみられ、転倒の危険があるため注意が必要です。
- 動作が緩慢になる(遅くなる)
- 安静時に手足が震える(振戦)
- 歩行障害により転びやすくなる
注意力や実行機能の低下
幻視のほかに、初期症状として注意力の低下や実行機能(遂行機能)の障害が現れることがあります。次のような症状は、家事や仕事が滞り、ご本人だけでなく周囲にも影響が及ぶ可能性があります。
- 注意力の低下: 注意が散漫になる、一点をじっと見つめる、ぼんやりと過ごす様子がみられる。
- 実行機能の障害: 計画を立てたり、物事を順序立てて行動したりすることが難しくなる。
寝言がひどい・暴れる(レム睡眠行動障害)
幻視などの症状が出る何年も前から、以下のような、「レム睡眠行動障害」と呼ばれる症状が睡眠時にみられるケースも少なくありません。
- 寝ている間に大声で寝言を言う
- 殴る・蹴るなどの激しい動きがみられる
認知症の症状を抑える方法について「認知症の症状を抑える方法は主に3つ!治った例や家族の対応ポイント」の記事でご紹介しています。記事内の内容をぜひ参考にされてみてください。
家族ができる「幻視」への対応法

家族ができる対応法をお伝えします。
ご本人の訴えをいったん受け止める
「虫が見える」といった幻視に関する発言に対して、まずはありのままを受け止めてあげることがご本人の安心感につながり、お互いが穏やかに過ごすためには大切です。
不快な気持ちに寄り添う
「虫がいるのね。気持ち悪いね」と相手の気持ちに共感する言葉かけをおこなうだけで、ご本人は「自分の辛さを分かってもらえた」と安心感を抱きやすくなります。
影ができにくい環境に整える
幻視は辺りが薄暗くなる夕方から夜にかけて現れやすくなります。部屋や廊下の照明をいつもより明るめに調整し、暗がりでできる「影」で不安が強くならないよう、安心できる環境を作りましょう。
否定・感情的な対応を避ける
幻視に対して、「何も見えない」「それは錯覚だ」と強く否定したり、感情的に対応したりすると、ご本人の混乱を招き状態を悪化させる可能性があります。認知症への対応は「否定しない」ことが基本です。
認知症の方への接し方については「認知症の方への適切な接し方!ポイントと5つの具体例」でもご紹介しているので、ぜひご覧ください。
認知機能チェックアプリを使ってみませんか?

認知症は、何らかの症状が出てから対応するのではなく、健康なうちから現状を把握し、変化にいち早く気づくことが適切な対処につながります。
レビー小体型認知症の場合は、幻視や歩行の不安定さ、激しい寝言といったサインが、生活に大きな支障が出る前から現れることがあります。その前に起こる目に小さな変化に気づけるように、客観的な目で記録しておくことが大切です。
「ベルコメンバーズアプリ」の認知機能チェックは、スマートフォンで手軽に認知機能チェックを行えるアプリです。日本認知症予防学会の代表理事である浦上克哉教授が監修しており、定期的に使うことで「いつもと違う」というサインを早期に見つけるきっかけとなります。
認知症やMCI(軽度認知障害)は、早めに対策を始めることで、進行を遅らせたり、生活環境を整えたりすることが可能です。親御様の健やかな毎日を守るために、健康管理の一つとして「ベルコメンバーズアプリ」で認知機能チェック習慣を始めてみるのはいかがでしょうか。
セルフチェックを紹介している「最近忘れっぽくなったと感じたら!認知症セルフチェックや対策法を紹介」もあわせてご覧ください。
【参考文献】
政府広報オンライン:知っておきたい認知症の基本
Ian G McKeit et al.Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies Neurology.2017;89(1):88–100
日本神経学会:認知症診療ガイドライン2017
Lewy Body Dementia: Causes, Symptoms, and Diagnosis
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