認知症ケアのユマニチュードとは?4つの柱と5つのステップ
「認知症の家族に声をかけても、なかなか応じてもらえない…」
「着替えや入浴を嫌がるとき、どのように接したらよいのかわからない」
認知症の方との日々の関わりに、難しさを感じている家族の方もいるでしょう。
ユマニチュードは、相手の尊厳を大切にしながら関係を築くための、体系的なケア技法です。
本記事では、認知症ケアにおけるユマニチュードの考え方や「4つの柱」「5つのステップ」、家庭で取り入れる際の注意点を解説します。
目次
認知症ケアで用いられるユマニチュードとは

ユマニチュードは、ケアを受ける人の尊厳を大切にし、「見る・話す・触れる・立つ」の4つの柱を基本としたケア技法です。イヴ・ジネスト氏とロゼット・マレスコッティ氏により開発されました。
ユマニチュードは、認知症の方だけを対象としたケア技法ではありません。ケアを受ける人に「あなたを大切に思っている」と伝わるように、「見る・話す・触れる・立つ」を組み合わせて関わり、
関係性を築き、本来の力を活かす方法です。
認知症ケアにおいても、入浴や排泄などの日常生活の介助だけでなく、コミュニケーションや関係づくりにもユマニチュードの考え方が用いられています。視線を合わせる、声をかける、触れるといったユマニチュードの複数の技法を組み合わせた認知症の方に対するコミュニケーションを検討した研究報告もあります。
次に、ユマニチュードの基本となる4つの柱を具体的にみていきましょう。
認知症ケアで意識したいユマニチュードの4つの柱

認知症ケアで実践されているユマニチュードは、4つの柱のうち、どれか一つだけを行うのではなく、見ることと話すこと、話しながら触れることなど、複数の方法を組み合わせます。
見る
相手の正面から、同じ目の高さで、近い距離から見る方法です。ベッドに横になっている方と話すときは、立ったまま見下ろすのではなく、姿勢を低くして視線の高さを合わせます。
相手が顔をそらしているときに、無理に目を合わせるのではなく、表情や視線を確かめながら、本人の反応に合わせて位置を調整します。
話す
穏やかで大きすぎない声を使い、前向きな言葉を選ぶ方法です。返事がない場合も黙ったまま介助を進めず、「今から右腕に袖を通しますね」など、行っているケアを言葉にするのが特徴です。ユマニチュードでは、この方法を「オートフィードバック」と呼びます。
命令するような言い方を避け、これから何をするのかを伝えながら、本人の反応を待つことを意識します。
触れる
手のひらなどの広い面を使い、ゆっくりと触れるのが基本です。腕や手首を急につかむのではなく、上腕や背中、肩などから触れ始めます。
着替えや移動の介助では、身体を支えるために手を添える場面でも、必要以上につかまず、触れる前に声をかけることを意識します。
立つ
立つ力のある方に対して、洗面や着替えなど、日常のケアのなかで本人の能力を生かすという考え方です。ユマニチュードでは、立つことを人間らしさや尊厳に関わる要素として捉えています。
ただし、立つことを一律に求めるものではありません。本人の体調や身体機能、周囲の環境にあわせて考えます。
ユマニチュードでケアを行う際の5つのステップ

ユマニチュードでは、一連のケアについて、5つのステップで組み立てます。着替えや入浴、おむつ交換など、介助そのものだけでなく、ケアの前後も含めて関係を築く手順です。
1.出会いの準備
ノックや声かけによって、自分の来訪を知らせ、相手の反応を待ちます。突然部屋に入ったり、背後から近づいたりせず、相手の領域に入る許可を得る段階です。
2.ケアの準備
すぐにケアを始めず、あいさつや会話を交わして関係をつくります。そのうえで、これから行うケアについて説明し、本人の合意を確かめます。
3.知覚の連結
「見る」「話す」「触れる」を組み合わせながら、実際のケアを行う段階です。穏やかな声をかけながら、ゆっくり触れるなど、言葉と動作が矛盾しないようにします。
4.感情の固定
ケアが終わった後に「お風呂に入ってさっぱりしましたね」など、お互いに良い時間を過ごしたことを振り返ります。
5.再会の約束
「またお昼に来ますね」など、次に会う予定を伝えてから別れます。ケアが終わった途端、何も言わずに立ち去るのではなく、次の関わりにつなげる段階です。
認知症ケアにユマニチュードを取り入れる際の注意点

ユマニチュードを認知症ケアに取り入れる際は、「見る・話す・触れる・立つ」といった技法を一律に当てはめるのではなく、本人の状態に応じて関わることが大切です。ユマニチュードに関する研究もおこなわれていますが、研究報告については、研究ごとに対象者や方法が異なるため、内容を踏まえて理解する必要があります。
本人の反応や身体状態に合わせる
家族が日々のケアにユマニチュードを取り入れる際は、本人の意思や反応、身体状態に合わせることを意識します。たとえば、目を合わせる、触れる、立つといった方法を嫌がる様子がある場合や痛みがある場合、安全に実施することが難しい場合には、無理にはおこないません。
研究による検証はまだ限られている
認知症の方を在宅で介護する家族を対象とした研究では、家族がユマニチュードの研修を受け、その後の経過が調査されています。研究では、研修前と比べて、3か月後に家族の介護負担を示す尺度の点数が低下しました。
ただし、この研究では研修を受けていない家族との比較は行われていないため、確認された変化がユマニチュードによるものとは断定できません。研究報告は、対象者や研究方法も踏まえて捉えることが必要です。
ユマニチュードとバリデーションの違い

ユマニチュードと同じく、認知症の方との関わりに用いられるケアの方法の一つに「バリデーション」があります。どちらも本人の尊厳を大切にするケアの方法ですが、ケアの組み立て方に違いがあります。
ユマニチュードでは、前述したように4つの柱と5つのステップを組み合わせた関わりとなる一方、バリデーションは本人の言葉や行動の背景に着目します。背景にある感情を受け止め、言語・非言語の技法を用いてコミュニケーションを図る方法です。
バリデーションについて以下の記事で、詳しくご紹介しています。
認知症の方の尊厳を大切にするユマニチュード
ユマニチュードは「見る・話す・触れる・立つ」の4つの柱と、ケアの前後を含む5つのステップから構成されるケア技法です。
認知症の方と関わる中で大切なのは、技術を形だけで行うことではなく、本人の意思や反応、身体状態を確かめることです。ユマニチュードを知ることは、日々の声のかけ方や接し方を振り返り、認知症の方を尊重する関わりについて考えるきっかけになるかもしれません。
認知症の症状や接し方の基本を知りたい方は、「認知症の基礎知識」のページもあわせてご覧ください。
【参考文献】
Humanitude International.L’Humanitude
慶應義塾大学病院 看護部:ユマニチュード®
PMC.Technical Challenges for Smooth Interaction With Seniors With Dementia: Lessons From Humanitude™ Sumioka H, Shiomi M, Honda M, et al. Front Robot AI. 2021;8:650906.
PMC.The effect of a multimodal comprehensive care methodology for family caregivers of people with dementia Kobayashi M, Honda M. BMC Geriatr. 2021;21:434.




