認知症予防で脳トレは効果ない?研究結果や効果的な取り組み方を解説
「脳トレは認知症予防に効果ないって聞いたけど本当?」「親に脳トレのドリルを買ったけど、意味ないのかな?」
そう感じている方も多いのではないでしょうか。脳トレについては、特定の認知機能や訓練した課題の成績が向上する可能性を示した研究がある一方で、認知症の発症を予防できるとまでは、現時点で言い切れないのが現状です。
この記事では、研究結果をもとに、脳トレで期待できること・期待しすぎないほうがよいことを整理します。脳トレを「認知症予防の特効策」と考えるのではなく、毎日の生活にどう取り入れればよいかが分かるでしょう。
目次
脳トレは認知症予防に効果ないと言われる理由

脳トレが「認知症予防に効果ない」と言われるのは、脳トレをしたことで認知症になりにくくなると、はっきり証明されているわけではないためです。ここでは、脳トレと認知症予防の関係について、研究結果をもとに解説します。
脳トレだけで認知症を予防できる科学的根拠は十分ではない
脳トレだけで認知症を予防できると証明した研究は、現時点では十分ではありません。
1万1,430人を対象にした海外の研究では、記憶力・推論力などを鍛える課題に6週間取り組んだ結果、訓練した課題の成績は向上したものの、訓練していない課題への効果は確認できなかったと報告されています。
世界保健機関(WHO)のガイドラインでも、脳トレを含む認知トレーニングは「認知症のリスクを低減するために行ってもよい」という条件付きです。脳トレを効果がないと否定するのではなく、十分な根拠がまだ確立していないと理解する必要があります。
脳トレで伸びる能力は内容によって異なる
脳トレでは、取り組んだ内容に関連する能力を使う機会になります。しかし、一つの課題が上達したからといって、すべての認知機能が向上するとは限りません。
例えば、計算問題を繰り返せば計算に慣れ、パズルを続ければ、パズルを解く力が高まる可能性があります。
そのため、「脳トレをすれば認知症を防げる」と考えるより、「ある特定の認知機能を使う機会になる」と捉えるほうがいいでしょう。
それでも脳トレが役立つと考えられている理由

脳トレだけで認知症を予防できるとは言えませんが、認知機能を使う習慣づくりや知的活動の一つとして取り入れるきっかけにはなります。
認知機能を使う機会を増やせる
脳トレでは、普段の生活で意識しにくい認知機能を使います。
計算問題では数字を覚えておく力を、間違い探しでは注意力を、パズルでは判断力や空間認識の力を使います。脳トレは、「これをすれば認知症を防げる」という点ではなく、考える・覚える・判断するといった認知機能を意識的に使う時間をつくれることが特徴です。
外出や趣味の機会が減っている場合には、毎日の生活に知的活動を取り入れる一つの選択肢になるでしょう。
知的活動を楽しめるきっかけになる
脳トレに限らず、読書や楽器演奏、ボードゲームなど、楽しみながら頭を使う活動があります。
海外の研究では、認知機能に問題のない469名を追跡した結果、読書・楽器演奏・ボードゲームなどを週2回以上行っていた人は、週2回未満の人と比べて、その後に認知症になった割合が少なかったと報告されています。
ただし、この研究だけで「知的活動をすれば認知症を予防できる」と結論づけることはできません。知的活動を続ける人には、健康状態や生活習慣など、ほかの違いがある可能性もあるためです。
楽しめる内容ほど続きやすいため、趣味の延長として取り組める方法を選ぶとよいでしょう。
家族とのコミュニケーションにも役立つ
家族と一緒に取り組むことで、会話が生まれやすくなります。
問題を出し合ったり、答えを一緒に考えたりする時間は、それ自体が楽しい時間になるでしょう。東北大学の研究では、音読や計算にコミュニケーションを組み合わせると、脳の司令塔にあたる前頭前野がより活性化することが示されています。
なお、WHOのガイドラインでは、社会活動と認知症リスク低減の関連について十分なエビデンスはないとされています。
ただし、社会参加や人とのつながりは健康や幸福と強く結びついており、生涯を通じて支えられるべきものとの位置づけです。認知症予防のためというより、本人と家族が楽しく過ごす時間として取り入れてみてください。
自宅で取り入れやすい脳トレ

脳トレは、新しいことを考える機会があり、無理なく続けられる内容を選ぶことが大切です。同じ問題ばかり繰り返すよりも、計算や漢字、音読など異なる種類を組み合わせると、脳への刺激に変化をつけられます。ここでは、自宅で始めやすい脳トレを紹介します。
計算・漢字・間違い探しの問題
計算や漢字の書き取りは、記憶力や注意力を使う代表的な脳トレです。
足し算・引き算でも、数字を一時的に覚えながら解くため、作業記憶を使います。漢字の書き取りは思い出す力を、間違い探しやパズルは注意力や集中力を働かせる内容です。
同じ問題の繰り返しでは刺激が減りやすくなるため、計算・漢字・間違い探し・しりとりなど、本人が興味を持てる内容を選び、楽しみながら頭を使う時間として取り入れることが大切です。
音読や読書
声に出して読む音読は、複数の機能を同時に使える方法です。
音読では、文字を読む・声に出す・自分の声を聞くという動作を同時に行います。読書も知的活動のひとつとして、脳への刺激につながると考えられています。
クイズやゲーム
クイズやゲームも、楽しみながら考える機会をつくれる活動です。
言葉を使うクイズ、数字を使うゲーム、記憶を使うゲームなど内容によって使う認知機能は異なります。
「認知症予防に効果があるゲーム」を探すより、本人が「またやりたい」と思えるものを選ぶほうが現実的です。
ベルコでも、計算や言葉、記憶を使うクイズを公開しています。認知症予防の効果を期待するためだけではなく、毎日の生活に楽しく考える時間を取り入れる方法の一つとして活用してみてください。
ベルコのまいにち体操
体を動かしながら頭も使う「まいにち体操」は、運動と認知機能を使う機会を同時につくれます。
脳トレだけを続けるよりも、運動と組み合わせるほうが認知症予防として取り入れやすいと考えられます。
まいにち体操は、体を動かしながら数を数えたり、左右で異なる動きをしたりするなど、運動と認知課題を同時に行える点が特徴です。椅子に座ったままできる動きも含まれているため、体力に自信がない方でも無理なく続けられます。
脳トレを生活に取り入れるポイント

脳トレは、認知症予防のために義務のように続けるより、本人が楽しめる知的活動として生活に取り入れることが大切です。
本人が楽しめる内容を選ぶ
好きだと感じる内容を選ぶことが、継続するうえで重要です。
計算が苦手な方に計算ドリルを勧めても、苦痛になるだけで長続きしません。パズルが好きな方はパズルを、言葉が得意な方はクロスワードをというように、得意・不得意に合わせて選びましょう。「やらされている」と感じる状態では、かえってストレスになってしまいます。
難しすぎない問題から始める
少し考えれば解ける程度の難易度が、ちょうどよい目安になります。
難しすぎる問題は「自分にはできない」という気持ちにつながり、意欲を失わせてしまうことがあります。逆に簡単すぎても刺激になりません。
「解けた」という成功体験を積み重ねながら、慣れてきたら少しずつ難易度を上げていく進め方が理想的です。
運動や食事と組み合わせる
脳トレに取り組む場合も、それだけに認知症予防を期待するのではなく、運動や食事などと組み合わせてみることが大切です。
WHOのガイドラインでは、身体活動は認知機能低下や認知症のリスク低減のために推奨されています。また、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の管理、禁煙、過度な飲酒を避けることなども重要です。
脳トレはあくまで取り組みのひとつと位置づけ、生活習慣全体で認知症予防に取り組む必要があります。
家族が認知症予防で脳トレを勧めるときの注意点

家族が脳トレを勧める際には、本人の気持ちへの配慮が欠かせません。
本人の意思を尊重して無理にやらせない
本人がやりたがらない場合は、無理に勧めないことが大切です。
「認知症予防のためだから」と押しつけると、本人は自分の認知機能を疑われているように感じ、ショックを受けることがあります。嫌がる様子が見られたら、別の方法を検討しましょう。散歩や料理、趣味の活動なども脳を使う機会になります。
間違いを責めて自尊心を傷つけないようにする
正解できたかどうかより、取り組んだこと自体を大切にしましょう。
「そこ違うよ」「前もできなかったよね」といった言葉は、本人の自信を奪ってしまいます。間違いを指摘するより、「よく思い出せたね」「今日も続いているね」と、できたことに目を向けた声かけを心がけてください。楽しい時間だと感じられることが、継続につながります。
一緒に楽しむことを意識する
家族も一緒に参加することで、脳トレが楽しい時間になります。
「見ている」「やらせる」立場ではなく、同じ問題を一緒に解いたり、競い合ったりすると、自然と会話が生まれます。孫と一緒にクイズを出し合うなど、世代を超えて楽しめる方法もあるでしょう。
認知症予防の脳トレに関するよくある質問
脳トレと認知症予防について、多くの方が気になる疑問をQ&A形式でまとめました。
Q1 脳トレは毎日やったほうがいいですか?
毎日取り組まなければならないという根拠はありません。
無理に毎日続けようとすると負担になり、かえって長続きしないことがあります。認知症予防のために回数を増やすよりも、「1日10分」「週に数回」など、本人が楽しめるペースで生活に組み込むことが重要です。
Q2 スマホゲームでも脳トレになりますか?
考えながら操作するゲームであれば、認知機能を使う活動のひとつになります。
ただし、前述の研究のとおり、ゲームの成績が上がることと日常生活の認知機能が向上することは別と考えられています。認知症予防の効果を期待しすぎず、楽しみのひとつとして取り入れるとよいでしょう。
Q3 脳トレだけで認知症は予防できますか?
脳トレだけで認知症を予防できると、現時点では断定できません。
WHOのガイドラインでは、認知トレーニングよりも身体活動のほうが高い推奨レベルとされています。運動・食事・睡眠などの生活習慣とあわせて取り組むことが大切です。
Q4 若いうちから脳トレをする意味はありますか?
若いうちから脳トレをすれば認知症を予防できるとは言えないのが現状です。
ただし、若いうちから、読書や趣味、学習などを通じて認知機能を使うことは、生活を豊かにする活動と言えます。
認知症のリスクを考えるうえでは、知的活動だけでなく、身体活動や生活習慣病の管理、禁煙など、生活全体にも目を向けることが重要です。
認知症予防は脳トレだけに頼らず生活習慣全体を見直そう
計算や漢字、パズル、読書などを通して、考える・覚える・判断するといった認知機能を使う機会になります。
一方で、脳トレによって認知症の発症を予防できると断定することもできません。
そのため、「認知症を防ぐために脳トレをしなければならない」と考えるより、本人が楽しめる知的活動の一つとして取り入れることがおすすめです。
運動や健康管理など、生活全体にも目を向けながら、脳トレは毎日の生活を楽しむ選択肢として活用しましょう。
認知機能の変化が気になる場合は、脳トレの成績だけで判断せず、日常生活での変化にも目を向けることが大切です。気になる変化が続く場合は、医療機関や地域包括支援センターなどに相談してください。
また、認知機能の変化に早めに気づくためには、定期的に自分の状態を確認することも大切です。ベルコメンバーズアプリでは、認知機能を手軽にチェックできるため、日頃の状態を確認するセルフチェックとして活用できます。ただし、セルフチェックは認知症を診断するものではありません。結果にかかわらず、認知機能や日常生活に気になる変化がある場合は、医療機関などに相談しましょう。脳トレや体操などの取り組みとは別に、自分の状態を確認する習慣として取り入れてみてください。
【参考文献】
厚生労働省:MCIハンドブック
PubMed.Putting brain training to the test
厚生労働省老人保健健康増進等事業:認知機能低下および認知症のリスク低減WHOガイドライン
PubMed.Leisure activities and the risk of dementia in the elderly
政府広報オンライン:脳を活性化して認知症を予防、改善する「学習療法」
鳥取大学医学部附属病院:認知症予防は 40 代から脳を鍛える とりだい流「8つの知的活動」



