スマホ認知症とは?主な5つの症状と対策、受診の目安を解説
「スマホ認知症」という言葉を耳にすると、スマートフォンの使い過ぎによって認知症になるように感じるかもしれません。しかし、スマホ認知症は正式な病名ではなく、スマートフォンの使用などを背景に、もの忘れや集中しにくさといった不調を感じている状態を表す通称として使われています。
本記事では、スマホ認知症の概要やスマホ認知症につながると考えられる原因や主な症状、日常で意識したい対策、受診の目安を解説します。「スマホの使い過ぎが原因かもしれない」と自己判断するのではなく、生活習慣を見直しながら、自分の状態を確認するための参考にしてください。
目次
スマホ認知症とは?

スマホ認知症は正式な病名ではなく、スマートフォンの使い過ぎで、もの忘れや集中しにくさなどの不調が気になる状態を指して使われる通称です。
医学的に「スマホ認知症」という診断名があるわけではなく、原因や症状、治療法が確立された疾患ではない点に注意が必要です。
また、スマートフォンの使用と認知機能との関連を調べた研究はありますが、スマートフォンの使用が認知症や認知機能低下を直接引き起こすと断定できるわけではありません。
そのため、「スマホ認知症かもしれない」と感じたときは、スマートフォンだけを原因と決めつけず、睡眠や運動など生活を振り返ることが大切です。
スマートフォンの使用と気になる不調には関連がある?

スマートフォンの使用と注意力や記憶などの認知機能には関連が報告されていますが、スマートフォンそのものが認知機能を低下させるとまでは断定できません。
一方で、長時間の使用によって睡眠時間が短くなったり、通知やSNSなどで注意が分散したりするなど、認知機能に影響する生活習慣につながる可能性があります。さらに、スマートフォンには計算、検索、予定管理、地図、ナビゲーションなど以前は自分で記憶したり考えたりしていた作業を代わりに行ってくれる機能があります。
そのため、スマートフォンへの依存度が高まることで、自分で思い出す、計算する、道順を考えるといった認知活動の機会が減る点に注意が必要です。
ただし、こうした「認知機能を使う機会の減少」が将来の認知症につながるかについては、現時点で明確な結論は出ていません。
スマホ認知症と言われるときに気になる5つの不調

「スマホ認知症」と呼ばれるときには、もの忘れや集中しにくさ、考えがまとまりにくいなど、さまざまな不調が気になることがあります。ここでは、気になる5つの不調を紹介します。
もの忘れが増えたように感じる
もの忘れはスマートフォンの使い過ぎが気になるときに挙げられる変化の1つです。人の名前や漢字、予定などがすぐに思い出せず、新しい情報を覚えにくい、数日前の出来事を思い出しにくいと感じる場合もあります。
スマートフォンの検索やリマインダー機能に頼ることで自分の記憶をたどる機会が減るおそれがあります。以前より忘れやすくなったと感じるときは、日々の使い方を振り返ることも意識しましょう。
集中力が続きにくくなる
「スマホ認知症」と呼ばれるときには、集中しにくくなる場合もあります。
仕事や家事の途中で別のことが気になったり、スマートフォンの通知を何度も確認したりして、ひとつの作業に集中しづらいと感じることがあります。
考えがまとまりにくくなる
スマートフォンを使いすぎていると、考えがまとまりにくくなる変化がみられるときがあります。スマートフォンから入る情報が多すぎ、何を優先するべきか判断しにくくなり、考えを整理しづらくなるためと考えられます。
人の名前や言葉が出にくく感じる
人の名前や言葉がすぐに出にくくなることも、みられる変化の1つです。会話の途中で人名や物の名前が思い出せず、言いたい内容をうまく言葉にできないため、返答に少し時間がかかる場合もあります。
また、会話の機会が少ない状態が続くと、言葉を選んで伝える力が低下するおそれがあります。
気分が不安定になりやすくなる
気分が不安定になりやすくなる変化もみられます。イライラしやすい、気分が落ち込みやすいなど、心の変化が目立つケースがあり、睡眠不足や目の疲れ、頭痛、首や肩のこりを伴うときもあります。
心と体の負担が重なると、集中しにくい、やる気が出にくいといった状態も起こりやすくなりがちです。早めに生活習慣を見直すことが助けになる可能性があります。
スマートフォンとの付き合い方を見直す方法

スマートフォンによる認知症や認知機能低下との因果関係は明確ではありませんが、睡眠や仕事、家族との時間などへの影響が気になる場合は、使い方を見直すことが大切です。ここでは、日常生活に無理なく取り入れやすい方法を紹介します。
スマートフォンの使用時間を決める
スマートフォンの使い過ぎを防ぐには、まず使用時間の把握が大切です。スクリーンタイム機能を使って1日の利用状況を確認すると、思った以上に長く見ていることに気づきやすくなり、見直しのきっかけになります。
食事中や就寝前など、あえて使わない時間帯を決めておくと、使う時間帯にメリハリをつけやすくなります。
仕事と育児を両立している方であれば、「昼休みの前半15分はスマートフォンを置く」「子どもを寝かしつけた後は見ない」といったルールが取り入れやすいでしょう。
スマートフォンの通知を減らす
通知を減らすと、無意識にスマートフォンを確認する回数を抑えやすくなります。通知が多いと、その都度スマートフォンに意識が向いてしまい、集中力が続きにくくなるおそれがあるため、必要のない通知をできるだけ削除するよう工夫してみましょう。
とくに、仕事中はSNSやニュースアプリの通知を切るだけで、作業への集中度が上がりやすくなります。
スマートフォンの機能に頼り過ぎない
スマートフォンの機能に頼り過ぎないことも、スマートフォンをうまく活用するうえで大切です。
具体的には、スマートフォンを使いたくなるシーンでも、意識して以下の工夫を取り入れてみましょう。
- 簡単な計算は暗算してみる
- 予定をすぐリマインダーに入れる前に覚えてみる
- 目的地までの道順を一度自分で考えてみる
- わからない言葉はすぐ検索せず、まず意味を考え、それでもわからなければ辞書を引いてみる
仕事の場面では、「会議前にスマートフォンをカバンにしまう」「タスクの優先順位は頭の中で一度整理してから検索する」といった意識が、自分で考える習慣を取り戻すきっかけになります。スマートフォンを使わないことが目的ではなく、自分で考える機会を完全にスマートフォンへ置き換えないことがポイントです。
人と直接会話する機会を増やす
スマートフォンを使う時間を減らすだけでなく、その時間を人との会話や外出、趣味などに置き換えることも大切です。対面で話す場面では、言葉を選ぶだけでなく、相手の表情や声の調子を受け取りながらやり取りするため、頭を幅広く使いやすくなります。
会話の中では、相手の反応に合わせて伝え方を調整する場面も増えるため、家族や友人と直接話す時間を持つことは、スマートフォン中心の過ごし方を見直すきっかけにもなるでしょう。
認知症などほかの病気が疑われるときの受診の目安

スマートフォンの使い方を見直しても、もの忘れや集中しにくさが続くときは、医療機関への相談を検討しましょう。
スマートフォンを使わない時間をつくったり、生活習慣を見直したりしても不調が続く場合は、認知症などほかの病気が背景にないか確認することが大切です。
相談先は以下が挙げられます。
- 脳神経内科
- 脳神経外科
- 老年内科(老年科)
- 心療内科
- 精神科
- もの忘れ外来
どこへ行けばよいか迷うときは、一度かかりつけ医に相談し、症状に応じた診療科を紹介してもらう方法も検討してみてください。
スマホ認知症に関するよくある質問
「スマホ認知症」という言葉について、認知症との違いやスマートフォンの使い方に関する疑問をQ&A形式で解説します。
スマートフォンの使い過ぎで若年性認知症のような症状が出ることはある?
スマートフォンの使い過ぎで、もの忘れや集中力の低下、考えがまとまりにくい感じなど、若年性認知症と似たように見える不調が出るケースはあります。
ただし、スマートフォンの使用が若年性認知症を引き起こすことが明らかになっているわけではありません。若年性認知症は、65歳未満で発症する認知症を指し、原因となる病気はアルツハイマー型認知症や血管勢認知症などさまざまです。
スマホ認知症はどれくらいで治ることがある?
「スマホ認知症」は正式な病名ではないため、どれくらいで改善するかという決まった期間はありません。
もの忘れや集中しにくさなどの不調が長く続く場合は、スマートフォン以外の原因がないか確認することも大切です。
スマホ認知症は10代や20代でも注意したほうが良い?
10代や20代でも、スマートフォンの長時間使用によって睡眠不足や集中しにくさなどの不調を感じる可能性があります。
スマートフォンを長時間使用する生活が続いている場合は、睡眠時間や日中の活動など、生活習慣との関係も考える必要があります。
スマホ認知症と似た症状の若年性認知症との違いは?
「スマホ認知症」は正式な病名ではなく、スマートフォンの使用などを背景に認知症に似た不調が気になるときに使われる言葉です。一方、若年性認知症は、65歳未満で発症する認知症を指します。
両者にはもの忘れや集中しにくさなど、似たような変化がみられる場合がありますが、症状だけで区別することは困難です。若年性認知症について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください
スマートフォンとの付き合い方を見直して脳の負担を減らそう
スマートフォンと認知機能の関係については研究が進んでいますが、スマートフォンの使用が認知症を引き起こすとする十分な証拠はありません。一方で、睡眠不足や注意の分散、自分で記憶・計算・判断する機会の減少など、日々の使い方が生活に影響する可能性はあります。
そのため、使用時間を確認する、通知を減らす、スマートフォンを使わない時間をつくる、自分で考えることなどを意識して確保するなど、無理のない範囲で見直してみましょう。
もの忘れや判断力の低下が続く場合や、仕事・家事に支障が出ている場合は、「スマホ認知症」と決めつけず、認知症などほかの病気の可能性も考えて医療機関へ相談することが大切です。
また、認知症についての基礎知識を知っておくと、今後の対応や環境の見直しを考える際のヒントになります。下記のページでわかりやすくまとめているので、あわせてご覧ください。
【参考文献】
The Lancet Neurology.The diagnosis of young-onset dementia Lancet Neurology
ScienceDirect.Digital media use and sleep in late adolescence and young adulthood an experience sampling study
監修者
浦上 克哉 教授
監修者
浦上 克哉 教授
日本老年精神医学会理事
日本老年学会理事
日本認知症予防学会専門医
1983年鳥取大学医学部医学科卒業
1988年同大大学院博士課程修了
1990年同大脳神経内科・助手
1996年同大脳神経内科・講師
2001年同大保険学科生体制御学講座環境保健学分野の教授(2022年まで)
2016年北翔大学客員教授(併任)
2022年鳥取大学医学部保健学科認知症予防学講座(寄付講座)教授に就任

