認知症の薬の副作用とは?種類別の症状や対応・注意点を解説
「認知症の薬を飲み始めてから食欲が落ちた」「以前よりも落ち着きがなくなった気がする」など、認知症の薬を服用した後の変化に不安を感じていませんか。
認知症の治療薬は症状の調整を目的に使用されますが、体質や体調によっては副作用が現れる場合があります。認知症の進行による変化と、薬の影響の見分けがつきにくいことも少なくありません。
本記事では、認知症の薬にみられる主な副作用や薬の種類ごとの特徴、副作用が出やすいケース、疑われた際の対応や注意点について整理して解説します。治療薬の副作用について正しく理解しておくことで、体調の変化に落ち着いて対応できるようになるでしょう。
目次
認知症の薬にみられる主な副作用

認知症の治療では、症状の進行を緩やかにすることや日常生活への影響を調整することを目的に薬が用いられます。しかし、認知症の方の体質や体調、併用薬の状況によって副作用が現れる場合があります。認知症の薬にみられる主な副作用について、詳しく見ていきましょう。
消化器症状
認知症治療薬では、吐き気や下痢、食欲不振などの消化器症状が飲み始めたばかりの頃にみられることがあります。食事が十分に取れなくなると体力低下につながるため、日常生活への影響に注意が必要です。
消化器症状は一時的に落ち着く場合もありますが、症状の強さや持続期間には個人差があります。食事量の低下が続くと体重減少を招くことがあるため、消化器症状脱水や栄養状態の悪化にも注意してください。
精神症状
不安感や落ち着きのなさ、興奮などが精神面の変化として現れる場合があります。もともとの消化器症状認知症の症状と重なることが多く、見分けが難しい点が特徴です。
認知症の進行による変化と副作用による変化を区別するためには、症状が出始めた時期や薬の変更時期を丁寧に振り返りましょう。服用開始や用量変更の前後で変化があったかどうかを確認することが重要です。
循環器症状
一部の認知症治療薬では、脈が遅くなる、立ち上がった際に血圧が下がるなど循環器系への影響が報告されています。徐脈が進むと、消化器症状めまいや失神の原因となる可能性があります。
立ちくらみやふらつきを感じる場合があり、高齢の方では転倒につながる危険性が指摘されており、転倒は骨折や寝たきりの要因になり得るため、慎重な観察が欠かせません。
もともと心臓の病気がある場合や脈が遅い傾向にある場合は、循環器症状の副作用にとくに注意する必要があります。
認知症の薬の種類ごとに起こる副作用

認知症の治療薬にはいくつかの種類があり、作用の仕組みが異なるため副作用の傾向も異なります。
代表的な認知症の薬の特徴と副作用を把握しておきましょう。
コリンエステラーゼ阻害薬
コリンエステラーゼ阻害薬は、アセチルコリンの働きを保つことで消化器症状認知機能を支える目的で使用されます。
副作用には、以下の症状がみられる場合があります。
- 吐き気
- 下痢
- 不整脈
- めまい
服用開始時や増量時に副作用が出やすい傾向にあるため、導入期は慎重に経過を観察する必要があります。
NMDA受容体拮抗薬
NMDA受容体拮抗薬は、神経細胞の過剰な興奮を抑えることで症状の安定を図る認知症治療薬です。
副作用には、以下の症状がみられる場合があります。
- 眠気
- めまい
- 転倒
- 頭痛
- 浮腫
また、体内からの排出に時間がかかる場合があり、影響が持続するケースもあります。高齢で腎機能が低下している場合はとくに注意が必要です。
抗アミロイドβ抗体薬
抗アミロイドβ抗体薬は、アルツハイマー病の原因になっている物質(アミロイドβ)を除去する作用がある認知症治療薬です。
抗アミロイドβ抗体薬は脳内の変化に関連した副作用が報告されており、注射後には以下の反応がみられる場合があります。
- 頭痛
- 寒気
- 発熱
- 吐き気
また、使用を始めてから数ヶ月で以下の副作用が現れる場合もあります。
- 脳が腫れる
- 脳に少量の出血が生じる
抗アミロイドβ抗体薬は上記の副作用がみられる可能性があるため、医療機関での慎重な観察や経過の評価が必要です。
認知症の薬の副作用が出やすいケース

認知症の薬の副作用には個人差がありますが、状況によって副作用が見られやすいケースがあります。
副作用が出やすい場合を理解しておき、早期対応を心がけましょう。
高齢の方が服用する場合
加齢により薬の分解や排出機能が低下すると、薬の影響を受けやすくなるだけでなく、少量の薬でも副作用が出やすいとされています。
ふらつきや転倒など日常生活動作への影響が生じることがあり、生活環境の安全確認も欠かせません。骨折予防の観点からも慎重な観察が求められます。
肝機能や腎機能の低下が薬の作用や副作用に影響する場合があるため、定期的な検査が重要です。
多剤を服用する場合
複数の薬を併用している場合、それぞれの薬の作用が重なり合い、副作用が現れやすくなることがあります。とくに中枢神経系に作用する薬同士を併用すると、眠気やふらつきなどが強く出る可能性があります。
認知症治療薬に加えて、睡眠薬や抗不安薬、抗うつ薬などを服用している場合は注意が必要です。
さらに、体調変化が起きた際に、どの薬が影響しているのか判断が難しくなる点も問題となります。副作用が疑われる場合は、現在服用しているすべての薬を医師や薬剤師に情報を共有して相談しましょう。
服用開始直後の場合
体が薬に慣れていない時期は、副作用が現れやすいとされています。とくに導入初期は変化を見逃さないようにしましょう。
消化器症状などが一時的に出る場合があり、数日から数週間で落ち着く例があります。ただし症状が強い場合は早めの相談が不可欠です。服用を開始したタイミングや服用量を変えた時期と副作用の出現が重なることが多いため、状況を整理することも大切です。
認知症の薬の副作用が疑われるときの対応

認知症の薬の副作用が疑われる場合は、状況を整理したうえで医療機関に相談してください。状況を正確に伝えることで、適切な治療を受けられるようになります。
まず、どのような症状がいつから現れたのかを時系列で整理し、服用開始や増量のタイミングと重なっていないかを確認すると、副作用かどうかを判断しやすくなります。
とくに発熱や意識障害、強いめまいなど緊急性が疑われる症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
認知症の薬の副作用がみられた際の注意点

認知症の薬の副作用がみられた際は、適切な対処が求められます。
事前に注意点を把握しておき、副作用がみられた際の準備をしておきましょう。
精神状態の変化は薬の副作用の可能性がある
不安や興奮などの精神的変化が認知症の薬の副作用として現れる場合があります。認知症の進行と誤解されやすいため、焦って自己判断で服薬を中止しないよう注意してください。
また、感情の起伏や行動の変化を具体的に記録しておくと、医師が状態を判断しやすくなります。精神面の変化をすべて病状の進行と決めつけず、薬の影響の可能性も含めて医療機関に相談しましょう。
認知症の方との接し方の詳細は、下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にご覧ください。
自己判断で服薬を中止しない
副作用が疑われる場合でも、自己判断での服薬中止は避けてください。急な服薬の中断により、症状が不安定になる可能性があるためです。
副作用が疑われるときは、症状の経過や生活への影響を整理したうえで医療機関に相談してください。用量の調整や薬剤変更は医師の判断にもとづいておこなうことが、適切な対応につながります。
認知症の薬の副作用に関するよくある質問
認知症の薬の副作用に関するよくある疑問を整理しました。より深く認知症治療薬の副作用を理解するための参考にしてください。
認知症の薬は飲まないほうがいい?
認知症の薬を飲むべきかどうかは、一律に判断できるものではありません。症状の程度や生活への影響、本人や家族の希望を踏まえて総合的に検討する必要があります。
認知症治療薬は進行を止める薬ではなく、症状の変化を調整することを目的に使用されます。
認知症の薬物治療では、副作用の可能性と得られる効果のバランスを考慮しながら、医師と十分に話し合うことが大切です。
飲み続けると認知症になりやすい薬はある?
一部の研究では、強い抗コリン作用を持つ薬剤の長期使用と認知症発症リスクとの関連が報告されています。ただし、この研究は、実際に薬を飲んでもらって影響を確かめたものではなく、過去の診療記録などをもとに関連性を調べた調査です。従って、薬が直接の原因で認知症になったと証明されたわけではありません。
もともとの基礎疾患や重症度が影響している可能性も指摘されており、因果関係は明らかになっていないのが現状です。服用中の薬に不安がある場合は、自己判断で中止せず、医師や薬剤師に相談してリスクと必要性を確認すると安心できるでしょう。
糖尿病の薬と認知症の関係は?
2型糖尿病治療薬のメトホルミンの使用者と認知症リスクを解析した研究では、メトホルミンを使用した患者の認知症リスク低下が示唆されました。ただし、因果関係は明確でないため、引き続き研究がおこなわれています。
また、糖尿病による血糖変動も認知機能に影響すると指摘される要因です。低血糖が続くと注意力低下や意識変化が起こる場合があります。薬の影響だけでなく、血糖管理の状況全体を確認する必要があるため、生活習慣の見直しも大切です。
認知症の薬をやめるとどうなる?
認知症の薬を中止すると、症状に変化がみられる場合があります。状態が安定していた人で混乱や意欲低下が目立つようになるケースもあれば、大きな変化がみられないこともあります。
ただし、現れた変化が薬の中止によるものか、病状の進行によるものかを区別するのは簡単ではありません。服薬の中止や減量を検討する場合は、症状の経過や生活への影響を整理したうえで医療機関に相談し、段階的に調整しましょう。
認知症の薬の副作用がみられたときは医師に相談しましょう
認知症の薬は症状の調整に役立つ一方で、副作用が現れる可能性があります。体調の変化を見逃さず、早めに医療機関に相談しましょう。
家族が変化に気づき、具体的な情報を共有できれば適切な対応につながります。安心して治療を続けるためにも、疑問や不安は遠慮なく相談しましょう。
また、認知症の基礎知識は下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にご覧ください。
監修者
浦上 克哉 教授
監修者
浦上 克哉 教授
日本老年精神医学会理事
日本老年学会理事
日本認知症予防学会専門医
1983年鳥取大学医学部医学科卒業
1988年同大大学院博士課程修了
1990年同大脳神経内科・助手
1996年同大脳神経内科・講師
2001年同大保険学科生体制御学講座環境保健学分野の教授(2022年まで)
2016年北翔大学客員教授(併任)
2022年鳥取大学医学部保健学科認知症予防学講座(寄付講座)教授に就任
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