混合介護とは、介護保険サービスと介護保険外サービスを合わせたサービスのことです。
もともとは、保険内サービスと保険外サービスは明確に区分されていましたが、最近では規制緩和の動きが広がりつつあります。
混合介護の規制が緩和された場合、どのような影響があるのでしょうか。
この記事では混合介護について、そのメリットやデメリットを詳しく解説していきます。
混合介護とは保険内サービスと保険外サービスを同時利用すること
介護サービスには、費用の一部が介護保険でまかなわれる「介護保険サービス」と、全額自己負担となる「介護保険外サービス」の2種類があります。
従来、これらは別々に提供されるのが一般的でしたが、近年、両者を組み合わせた「混合介護」という形態が注目されています。
例えば、訪問介護の場合、食事や排泄の介助は介護保険サービスとして提供されるのが一般的です。
しかし、利用者の家族のための調理や洗濯、庭の手入れといったサービスは、介護保険の対象外でした。
混合介護では、これまで対象外だったサービスも、介護保険サービスと同時に、有料で提供できるようになります。
これにより、利用者はより幅広い、きめ細やかなケアを受けられるようになります。
介護保険サービスについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
『【一覧表あり】介護保険サービスとは?サービス内容や自己負担額について』
⇒ ご参照ください。
混合介護に関する規制緩和の流れ
これまで、要介護認定を受けた方の多くは、介護保険の範囲内で利用できるサービスを中心に受けてきました。
しかし、近年では、より多様なニーズに対応するため、介護保険外サービスを求める声も高まっています。
こうした状況を受け、国は混合介護の規制緩和を進めています。
2018年4月、厚生労働省は混合介護に関するルールを見直しました。
主な変更点としては、介護保険サービスと介護保険外サービスを明確に区別すること、サービス内容を文書で記録すること、そして利用者の同意なしに介護保険外サービスを提供しないことなどが定められました。
東京都豊島区は、混合介護のモデル地区として選定され、2018年から保険内サービスと保険外サービスを一体的に提供する試みが行われています(※)。
また、介護保険サービスに付加価値をつけた部分への料金上乗せも検討されましたが、現時点では、特定の介護職員の指名料や繁忙期の時間指定料などの追加料金徴収は認められていません。
しかし、今後の規制緩和によって、これらの料金設定も可能になる可能性があります。
超高齢化が進む日本では、介護ニーズはますます増加していくでしょう。
より多くの人々が適切な介護を受けられるよう、介護保険制度の見直しを含め、さまざまなルールの整備が国家の急務となっています。
介護サービスの利用者やその家族、そして介護事業者は、混合介護の規制緩和の動向や、価格設定の自由化について、今後も注視していく必要があるでしょう。
混合介護のメリット
混合介護の導入は、利用者とその家族、そして介護事業者にとって、それぞれに大きなメリットがあります。
ここでは、主な「3つのメリット」をご紹介します。
必要なサービスを受けられる
混合介護の最大のメリットは、介護保険の枠にとらわれず、より幅広いサービスを利用できる点です。
これまで、介護保険外のサービスが必要な場合、別途手配する必要がありました。
混合介護なら、必要なサービスをまとめて依頼できるため、利便性が大きく向上します。
例えば、これまで介護保険では対応できなかった、ペットの散歩や趣味のサポート、外出時の付き添いなども、混合介護であれば依頼できます。
これにより、利用者は、より自分らしい生活を送りながら、必要な介護サービスを受けることができるようになります。
介護する家族の負担が和らぐ
介護保険サービスだけではカバーしきれない部分を、家族が補っているケースも少なくありません。
特に、仕事と介護を両立されている方にとっては、大きな負担となっていることもあります。
混合介護によって利用できるサービスが増えれば、家族の負担を軽減し、介護離職を防ぐことにもつながります。
具体的には、調理や洗濯、掃除といった家事全般を、介護保険サービスと組み合わせて依頼することで、家族の介護負担を大幅に減らすことが可能です。
また、定期的な見守りサービスを利用することで、遠方に住む家族も安心して生活できるでしょう。
介護事業者のサービスの質が高まる
混合介護は、介護事業者にとってもメリットがあります。
介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせることで、より効率的なサービス提供が可能になり、収益性の向上が期待できます。
また、事業者間の競争が促されることで、サービス全体の質が向上し、ひいては介護業界全体の発展にも貢献すると考えられます。
介護保険サービスのみを提供していた事業者が、新たに保険外サービスを提供することで、利用者ニーズにきめ細かく対応できるようになり、顧客満足度の向上が期待できます。
また、他事業者との差別化を図るために、独自のサービスを開発する動きも出てきており、介護業界全体の活性化にもつながっています。
混合介護のデメリット4つ
混合介護には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
ここでは、主なデメリットを「4つ」解説します。
費用面の心配がある
混合介護では、介護保険外サービスを利用することになるため、費用負担が増加する可能性があります。
介護保険サービスは自己負担が1割程度ですが、保険外サービスは全額自己負担です。
サービスによっては高額になる場合もあるため、事前に料金を確認することが重要です。
高齢者の自立が阻害される可能性がある
混合介護によって手厚いケアを受けられる反面、過度なサービス利用は、高齢者の自立を妨げる可能性も否定できません。
介護予防の観点からは、できる限り自身の力で日常生活を送ることが大切です。
サービス利用の際には、自立支援を考慮した適切なケアプランを作成することが重要になります。
不要サービスが提供されるリスクがある
利用できるサービスが増えることで、本当に必要なサービスを見極めるのが難しくなる場合があります。
悪質な事業者による不必要なサービス契約の勧誘などにも注意が必要です。
特に、認知症の方などは判断力が低下している場合があるため、家族やケアマネジャーなどと相談しながら慎重に検討しましょう。
現場の負担が増える可能性がある
混合介護の普及は、介護サービスの多様化につながる一方、介護現場の負担を増加させる可能性もあります。
サービスの種類が増えることで、管理業務が煩雑になるだけでなく、利用者ごとに異なるサービスを提供するための調整も必要です。
人手不足が深刻な介護現場では、負担が増加し、サービスの質が低下する懸念も生じます。
ここまで、混合介護の意味や規制緩和が広がりつつあることを解説しました。
混合介護は、幅広くきめ細かい介護サービスを提供できる一方で、費用面や自立を阻害するリスクなどの注意点も指摘されています。
老人ホームを利用予定の方にとっても、業界全体にとっても大きな変化となることが予想されるため、今後も動向を注視することが大切です。
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