公的年金制度は、20歳から60歳の人が保険料を納め、高齢者の老後生活を支える制度です。
公的年金制度には、国民年金(基礎年金)と厚生年金という2つのカテゴリーがあります。
本記事では、公的年金の種類や目的、厚生年金と国民年金の違い、公的年金を受給する際の注意点を解説します。
公的年金制度の目的
公的年金制度は、20歳以上60歳未満の現役世代が支払った保険料を財源として、高齢者などの年金給付に充てる制度です。
公的年金制度の目的は、「世代と世代の支え合い」にあります。[注1]
現役世代のうちは元気でも、将来的に自分や家族が加齢によって衰えたり、病気や事故で障害を負ったりして、自立した暮らしができなくなる可能性があります。
こうしたリスクを個人の力だけで対処するには限界があります。
そこで設けられたのが公的年金制度です。
現役世代が保険料を負担し、自立した暮らしが困難な人に年金を給付することで、将来のリスクに社会全体で備えられます。
公的年金制度がなければ、高齢者の家族を自分の仕送りで支えたり、老後資金を自分で貯蓄したりしなければなりません。
公的年金制度によって、貯蓄や仕送りができない方も安心して老後生活を送ることができます。
[注1] 厚生労働省「教えて!公的年金制度 公的年金制度はどのような仕組みなの?」
厚生年金と国民年金の違い
公的年金制度というと、「20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度」というイメージがあるかもしれません。
しかし、20歳以上のすべての人が加入しなければならないのは、公的年金制度に含まれる「国民年金(基礎年金)」です。
公的年金制度には、国民年金のほかに「厚生年金」があり、国民年金と厚生年金の2階建て構造になっています。
「国民年金」は20歳以上60歳未満のすべての人が加入する年金で、第1号被保険者(国民年金のみの加入者)は毎月定額の保険料(2023年時点で16,520円)を負担します。[注2]
支給開始年齢は65歳で、保険料を納付した期間に応じて支給額が決まります。
たとえば、20歳から60歳まで保険料を納付した場合、満額の支給(2023年時点で毎月約6.6万円)を受けることが可能です。[注3]
「厚生年金」は国民年金と違って、会社などで働く人が加入する年金です。保険料は毎月の給料の18.3%(2017年以降)で、勤務先がその半額を負担します。[注4]
支給開始年齢は60歳からですが、段階的な引き上げが決まっており、2025年度からは65歳(女性は2030年度から)になります。[注5]
[注3]日本年金機構「令和5年4月分からの年金額等について」
公的年金の種類
公的年金には、国民年金(基礎年金)と厚生年金の2つのカテゴリーがありますが、公的年金の給付は合計「6種類」に分けられます。
公的年金制度は高齢者だけでなく、事故や病気で障害を負った方や、家族を亡くした遺族の方にも給付を行っているためです。
厚生労働省によると、公的年金の給付の種類は以下の表のとおりです。[注6]
種別 | 基礎年金 | 厚生年金 |
---|---|---|
老齢 | 老齢基礎年金 保険料を納めた期間などに応じた額 |
老齢基礎年金 保険料を納付した期間や賃金に応じた額 |
障害 | 障害基礎年金 障害等級に応じた額(子がいる場合には加算あり) |
障害厚生年金 賃金や加入期間、障害等級に応じた額 |
遺族 | 遺族基礎年金 老齢基礎年金の満額に子の数に応じて加算した額 |
遺族厚生年金 亡くなった方の老齢厚生年金の3/4の額 |
先ほどの国民年金(基礎年金)や厚生年金の説明は、厳密には老齢基礎年金、老齢厚生年金のことを指します。
障害年金は、障害によって自立した暮らしが送れない人を対象とした年金制度で、65歳未満の方でも受給できます。
障害基礎年金の場合は障害等級に応じた金額、障害厚生年金は障害を負うまでの賃金や加入期間が考慮され、障害等級に応じた金額が支給されます。
遺族年金は、国民年金や厚生年金の加入者が亡くなったとき、その配偶者や家族に支給される年金です。
亡くなった方が国民年金に加入していた場合は遺族基礎年金、厚生年金に加入していた場合は遺族厚生年金が支給されます。
公的年金の受給額
公的年金の受給額は、日本年金機構のホームページに掲載されています。
法改正によって年金額が変動する可能性があるため、定期的にホームページを確認しておきましょう。
以下の表は令和5年4月分(6月15日支払い分)の年金額です。[注3]
項目 | 令和5年度(月額) | 令和4年度(月額) |
---|---|---|
国民年金(老齢基礎年金) ※満額の場合 |
66,250円 | 64,816円 |
厚生年金 ※夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額 |
224,482円 | 219,593円 |
なお、国民年金の支給額は67歳以下の方を前提としています。
68歳以上の方の場合、国民年金の満額支給額は「66,050円」です。
また、厚生年金の支給額は、平均的な収入(月額換算43.9万円で、40年間就業した場合)の人を想定しています。
公的年金に関する注意点
公的年金は支給開始年齢を繰り上げたり、繰り下げたりすることができます。
繰り上げ受給、繰り下げ受給にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、事前によく検討しましょう。
公的年金に関する注意点を「2つ」紹介します。
公的年金は「繰り上げ」受給を申請できる
家計の変動などの理由で、公的年金(老齢年金)を早くもらいたい場合は、繰り上げ受給を申請できます。
通常の場合、公的年金は65歳からしか受け取れませんが、60歳まで1ヵ月単位で支給開始年齢を繰り上げられます。
ただし、繰り下げ受給にはデメリットもあり、年金を早くもらえる代わりに支給額が減額されます。
減額される金額は生年月日によって変わりますが、減額率は1ヵ月当たり0.4%または0.5%です。[注7]
公的年金の繰り下げ受給を行っている人の割合は、国民年金(基礎年金のみ)が26.1%、厚生年金が0.5%と、国民年金の受給者の割合が多くなっています。[注8]
[注8] 生命保険文化センター「老齢年金を繰上げ・繰下げ受給している人の割合はどれくらい?」
公的年金は「繰り下げ」すると増額される
一方、公的年金は支給開始年齢を繰り下げ(遅くする)こともできます。
繰り下げ受給を申請する場合、支給開始年齢を最大75歳まで1ヵ月単位で遅らせることが可能です。
繰り下げ受給のメリットは、年金の受給が遅れる分、支給額が多くなる点です。
支給額は1ヵ月当たり0.7%増額され、75歳まで繰り下げると84%分の増額になります。[注9]
生命保険文化センターによると、繰り下げ受給の割合は国民年金が1.8%、厚生年金が1.0%となっています。[注8]
【まとめ】年金(厚生年金・国民年金)の仕組みを理解して老後生活への備えを
老後に受け取れる年金は、「国民年金」と「厚生年金」の2種類に分けられます。
国民年金を受給するには、20歳から60歳にかけて保険料を納付する必要があります。
また、厚生年金は会社員・公務員の方を対象とした年金であり、それ以外の人は受給することができません。
安定した老後生活を送るためには、公的年金制度の仕組みを理解することが大切です。
特別養護老人ホームを始めとした公的施設の場合、年金をやりくりするだけで施設を利用できます。
老人ホーム探しに興味がある方は、「あなたらしく」をぜひご活用ください。
将来の年金も老人ホームも、早い段階から情報収集することが大切です。