内閣府の令和4年版高齢社会白書によると、総人口に占める高齢者(65歳以上人口)の割合は28.9%です。[注1]
一人暮らしをする「独居老人」の割合も増えており、新たな社会問題となっています。
一人暮らしの高齢者は、どのような問題を抱えているのでしょうか。また、独居老人の生活を支えるため、どのようなサービスを利用すればよいのでしょうか。
本記事では、一人暮らし高齢者が知っておくべき問題や支援サービスを紹介します。
一人暮らしの高齢者は増えている?
一人暮らしをしている65歳以上の高齢者のことを「独居老人」または「独居高齢者」と呼びます。高齢者の一人暮らしは、社会的な孤立を防ぐためのサポートが必要です。
内閣府の令和4年版高齢社会白書によると、独居老人は男女ともに増加傾向にあります。1980年の調査では、一人暮らしの高齢者の割合は、男性4.3%、女性11.2%にとどまっていました。
しかし、令和2年の国勢調査をみると、独居老人の割合は男性15.0%、女性22.1%に上昇しています。[注2]
特に女性の場合、65歳以上の高齢者の5人に1人が一人暮らしをしているのが現状です。
国立社会保障・人口問題研究所は発表している「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2018(平成30)年推計」によると、一人暮らしの高齢者の割合は今後も上昇をつづけ、2040年には男性20.8%、女性24.5%に達するといわれています。[注3]
家族や親族が一人暮らしの高齢者が抱える問題を知り、早めに自治体などにサポートを依頼することが大切です。
一人暮らしの高齢者が抱える問題
一人暮らしの高齢者が抱える問題は、大きく分けて3つあります。
- 食事のバランスが偏り、栄養状態が悪化する
- 認知症をはじめとした病気の発見が遅れる
- 特殊詐欺などの被害に遭いやすくなる
一人暮らしの高齢者は、自分で生活上の問題をすべて対処しなければならないため、食生活の偏りや認知症の進行などのリスクが生じます。一人暮らしの高齢者が抱える困難について理解し、対策を考えることが求められます。
食事のバランスが偏り、栄養状態が悪化する
一人暮らしの高齢者は、主に年金で生活している人が多く、生活費が不足しているケースも少なくありません。生活が困窮すると、最低限の食事になり、バランスが偏って栄養状態が悪化する恐れがあります。
また、健康状態の悪化により、自分で満足に食事を用意できなくなることが増えるかもしれません。
いざというときに備えて、栄養バランスのよい食事をとれる仕組みを整えておくことが大切です。
認知症をはじめとした病気の発見が遅れる
一人暮らしをしている高齢者は、病気やケガの発見が遅れます。特に認知症は自分では症状を自覚しにくく、気がついたときには治療が難しい状態になっているケースも少なくありません。
また、社会的に孤立した独居老人は、病気が悪化したときに周りに人がおらず、孤独死につながってしまう恐れがあります。
内閣府の令和4年版高齢社会白書によると、令和2年に発生した孤立死と考えられる事例(※東京23区内における一人暮らしで、65歳以上の人の自宅での死亡者数)は、4,238件発生しています。[注4]
一人暮らしをしている高齢者の生活を見守り、異変を感じたらすぐに対処できるような仕組みが必要です。
特殊詐欺などの被害に遭いやすくなる
近年、一人暮らしの高齢者をターゲットとしたオレオレ詐欺や預貯金を騙し取る詐欺などの特殊詐欺や、消費生活に関するトラブルが増加しています。内閣府の令和4年版高齢社会白書によると、令和3年中の特殊詐欺の認知件数は1万4,461件で、そのうち88.2%に当たる1万2,708件が高齢者(65歳以上)をターゲットにしたものでした。
また、全国の消費生活センターに寄せられた相談のうち、契約当事者が65歳以上のものは約25万件に達しています。[注5]
一人暮らしの高齢者は周りに相談できる人がおらず、特殊詐欺の巧妙な手口に騙され、多額の金銭をだまし取られるケースが増えています。特に認知症が進行している方は判断能力が低下しているため、悪質な契約トラブルにも注意が必要です。
家族との同居または近居が難しい場合は、自治体の支援やサービスを受けることも検討しましょう。
一人暮らしの高齢者を支えるサービス
一人暮らしの高齢者を支えるサービスとして、自治体が提供している高齢者向けの支援サービスのほか、見守り・安否確認サービス、高齢者向け宅食サービス、介護(介護予防)サービスなどがあります。
こうしたサービスを利用すれば、高齢者の一人暮らしをより安全で快適なものにすることが可能です。それぞれのサービスの特徴やメリットを紹介していきます。
見守り・安否確認サービスを利用する
自治体や民間の見守りサービスを利用すれば、一人暮らしの高齢者の生活を見守り、異変が生じたらすぐに対処することが可能です。自治体が実施している見守りサービスの例として、東京都の区市町村や地域包括支援センターが連携した「見守りネットワーク」が挙げられます。
また、民間のサービスでは、高齢者の自宅にセンサーや非常ボタンを設置し、室内に異常がないかモニタリングしたり、非常時に緊急通報を行ったりするものがあります。高齢者の家族の方は、スマートフォンのアプリなどを通じて、高齢者の生活の様子を遠方から見守ることが可能です。
高齢者向け宅食サービスを利用する
一人暮らしの高齢者の食生活改善のため、高齢者向けの宅食サービスもあります。宅食サービスとは、高齢者の栄養バランスを考慮し、食事を自宅に宅配してくれるサービスのことです。
栄養状態の偏りを解消できるだけでなく、定期的に宅配事業者が高齢者の自宅を訪れることで、安否確認につながるのがメリットです。
介護(介護予防)サービスを利用する
介護保険を利用し、訪問介護や訪問リハビリサービスを利用することも検討しましょう。介護施設に通うデイサービスと違って、ケアスタッフが高齢者の自宅に訪問し、生活のサポートを行うのが特徴です。
ただし、介護保険制度を利用できるのは、要介護認定を受けた人のみです。[注6]介護保険の対象者かどうか判断できない場合は、お住まいの自治体の地域包括支援センターに相談しましょう。
地域包括支援センターでは、専門の社会福祉士やケアマネジャーなどから、生活上のアドバイスを受けることもできます。
【まとめ】高齢者の一人暮らしの問題点を知り、適切なサービスを利用しよう
高齢者の一人暮らしには、食生活の偏り、認知症の進行、特殊詐欺などの被害などの問題があります。一人暮らしをしている独居老人の割合は男女ともに増えており、対策が必要です。
一人暮らしの高齢者を支えるため、自治体の支援サービスや民間の見守り・安否確認サービス、高齢者向けの宅食サービスなど、生活上の困難に合わせたサービスを利用しましょう。
また、老人ホームも適切なサービスの候補としてあげられます。老人ホームへの入居を検討する際には、多くの施設の中から比較ができる「あなたらしく」に相談するのがおすすめです。
[注1]内閣府「令和4年版高齢社会白書(第1章 高齢化の状況 第1節 1)」
[注2] 内閣府「令和4年版高齢社会白書(第1章 高齢化の状況 第1節 3)」
[注3]国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2018(平成30)年推計」
[注4] 内閣府「令和4年版高齢社会白書(第1章 高齢化の状況 第2節 3)」
[注5]内閣府「令和4年版高齢社会白書(第1章 高齢化の状況 第2節 3)」