家族との話し合いや介護の役割分担、介護方法の決定、介護費用の工面など、親の介護では事前に準備すべきことが多くあります。
とくに、家族間で介護の負担割合が異なると、トラブルの原因になりやすいため注意が必要です。
本記事では、「親の介護で準備すべきこと」、「家族の役割分担の方法」、「介護のときに活用できる制度」を解説します。
親の介護に関して準備すべきこと
親の介護はいつ必要になるかわかりません。
そのため、できれば親が元気なうちに、どのように介護してほしいか要望を確認しておくとよいでしょう。
ここでは、親の介護に必要な「事前準備」を解説します。
在宅介護か施設介護か確認する
まずは、親の介護が必要になったとき、在宅介護と施設介護、どちらで進めるか確認しましょう。
「在宅介護」は介護費用を抑えられる点がメリットです。
しかし、家の構造や親の状態、親族が近くに住んでいないときは介護が難しいこともあります。
介護者の負担も大きいため、仕事や育児との両立方法も検討しなければいけません。
「施設介護」は、24時間介護サービスが受けられるなど、安全性が高い点がメリットです。
反面、介護費用が高額になり、理想の介護施設が見つからない恐れもあります。
誰が介護するか話し合う
在宅介護では誰が実際に介護するのか、家族で話し合う必要があります。
また、施設介護では、親の年金などで足りない場合、費用をどのように負担するかの確認も必要です。
詳しい分担のコツは後ほど解説します。
介護費用を蓄えておく
介護に必要な平均費用のうち、自宅の改造や介護用ベッドの購入などに必要な「一時費用」は平均74万円、一ヵ月あたりの「介護費用」は平均8.3万円です。[注1]
なお、介護を行う場所により月々の費用は異なり、「在宅介護」では月額平均4.8万円、「施設介護」では月額平均12.2万円です。[注1]
これらの費用を両親の年金や貯蓄だけで賄えるか確認し、難しい場合は早めに介護費用を蓄えておきましょう。
[注1]公益財団法人 生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」p201〜202(参照 2023-07-25)
介護施設情報を入手する
親を施設で介護するときは、早めに施設情報を入手しておきましょう。
介護施設といっても、月額費用、利用できるサービス、居室の作り、入居条件など、それぞれ違いがあります。
また、民間施設と公的施設による違いもあります。
介護と仕事の両立ができるようにする
在宅介護など、介護負担が大きいと予想されるときは介護と仕事が両立できるように調整も必要です。
まずは、現在の勤務先に相談し仕事量の変更などができるか確認しましょう。
勤務時間や働き方を調整しても両立が難しい場合は、勤務形態の変更や転職も視野に入れる必要があります。
親の介護に関する家族の役割分担のコツ
親本人の配偶者や子どもなど、介護は身近な人が担うことが多いです。
しかし、同居の家族に介護を任せきりにしていると、家族間のトラブルにも発展します。
ここでは、役割分担のコツを解説します。
親の介護はチームワークを意識すること
始めに、親の介護は誰がする必要があるかというと、民法第752条では夫婦は互いに扶養する義務があるとしています。[注2]
また、民法877条第1項では、直系血族と兄弟も互いに扶養をする義務があるとしています。[注2]
親の介護は誰か一人に押し付けるのではなく、親の配偶者・親の兄弟・子・孫など、チームで行わなければいけません。
[注2]e-Gov法令検索「民法」(参照 2023-07-25)
全員のできること・できないことを明確にする
兄弟の中には親と離れて暮らす人もいます。
また、それぞれ金銭的な事情も異なるでしょう。
そのため、それぞれが親の介護で「できること・できないこと」を明確にします。
たとえば、遠方に住む親族も、帰省時には率先して親の面倒を見たり、自宅の掃除を手伝ったりなど、できることは多くあります。
主体的に介護を担う人を決める
次に、主体的に介護を担う人を決定しましょう。
介護を担う人が決まったら、周りの家族はできるだけ、介護者をサポートできる仕組みを作ります。
たとえば、母が夫の面倒を見ているのであれば、食事作りや掃除は子どもが行うなどです。
金銭的な援助の割合を決める
遠方に住む親族は直接介護ができない代わりに、経済的な援助をすれば不公平感の解消にも役立ちます。
とはいえ、介護でどのような費用が生じているかわからないと、「必要以上に金銭を要求されている」と猜疑心が生まれる親族もいるかもしれません。
金銭の負担割合を決めたり、援助を申し出たりするときは、介護費用の内訳を記録しておくとスムーズでしょう。
親の介護に関して活用できる制度
親の介護に活用できる代表的な制度には、自治体の窓口に申請する「公的介護保険制度」と、会社で申請できる「介護休暇・介護休業制度」があります。
それぞれ解説します。
介護保険制度
介護保険制度とは、被保険者に認定されると1~3割の自己負担で介護サービスを受けられる公的制度です。[注3]
なお、給付方法には「現物給付」と「償還払い」の2種類があり、それぞれ対応するサービスも異なるため確認しましょう。
介護保険で利用できる制度は以下に分けられます。
訪問系
ホームヘルパーが自宅を訪問し、調理・洗濯・掃除などの家事援助や、入浴・排泄・食事などの身体介助を行うサービスです。
リハビリなどを行うこともあります。
通所系
自宅で暮らす要介護者・要支援者を対象に、日中は施設に通い生活支援やリハビリなどを受けられるサービスです。
自宅からの送迎も行います。
宿泊系
要介護者が1泊から数週間程度、施設に宿泊できる仕組みです。
介護者の負担が大きいときなどに利用し、在宅介護の負担を軽減できます。
償還払い
償還払いとは、自己負担額を除いた介護サービス利用料を払い戻してもらう方法です。
介護者が介護に必要な物品などを購入する際、いったん全額立て替えて支払い、後日、自治体の窓口で手続きをして請求します。
福祉用具の購入や住宅改修時に申請できるものの、償還払いを利用するためには、それぞれ利用条件が設けられているためよく確認しましょう。
[注3]厚生労働省老健局「介護保険制度の概要」p4(参照 2023-07-25)
介護休暇・介護休業制度
介護休暇と介護休業はどちらも勤務先に申請できる制度で、介護のために所定の休暇を取得できる仕組みです。
介護休暇
介護休暇とは、対象家族1名につき年間5日まで休暇を取得できる制度です。
1日休暇だけでなく、時間単位の休暇取得も可能です。
手続き方法は口頭でもよいものの、社内で様式が定められているときは様式に沿って申請しましょう。
対象となる家族の範囲など、詳しい内容は以下を確認してください。[注4]
[注4]厚生労働省「介護休暇について」(参照 2023-07-25)
介護休業
介護休業とは、対象家族1名につき3回まで、通算93日まで休業できる制度です。
介護休業を利用したいときは、休業開始予定日の2週間前までに、指定の書面にて事業主に申請します。
なお、より詳しい条件は以下を確認してください。[注5]
[注5]厚生労働省「介護休業について」(参照 2023-07-25)
【まとめ】親の介護が難しいときは施設の入所も検討しよう
親の介護準備では、家族との話し合い、介護方法の検討、介護制度の理解など、やるべきことが多くあります。
また、在宅介護を行うとなれば、家族で役割分担も必要です。
もし、兄弟の多くが遠方に住んでいるなど、介護が難しいときは老人ホームへの入所を検討してもよいでしょう。
老人ホームなどに入るときも、事前に施設情報の確認などが必要なため、早めに準備をすすめましょう。
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