親の介護どうする?介護保険の仕組みや保険料が引かれ始める年齢を解説

2023年10月4日

親の介護どうする?介護保険の仕組みや保険料が引かれ始める年齢を解説

親が高齢になったら、介護問題について考える必要があります。

 

特に要介護認定を受けた場合、自立した暮らしが難しくなるため、生活上のさまざまなサポートが必要です。

 

本記事では、民法で定められた親の介護義務や、親の介護をするときに利用したい介護保険の仕組みについて解説します。

 

 

親の介護をする義務はある?

親の介護をする義務はある?
 
厚生労働省の「国民生活基礎調査(2019年)」によると、介護を担当する人の20.7%が「子」、7.5%が「子の配偶者」となっています。[注1]

 

【主な介護者の状況】

要介護者との続柄 構成割合
配偶者 23.8%
20.7%
子の配偶者 7.5%
別居の家族等 13.6%
事業者 12.1%
その他 0.5%
不詳 19.6%

 

そもそも親が高齢化し、自立した暮らしを送るのが難しくなった場合、子どもに介護する義務はあるのでしょうか。

 

民法の規定を元に解説します。

 

[注1] 厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」P3

 

子どもは親を扶養する義務がある

 
子どもは親を扶養する義務がある
 
民法では、家族は互いに助け合い、扶養する義務があると定めています。

 

例えば、民法第752条は夫婦の相互扶助について、民法第877条は直系血族(親を含む)や兄弟姉妹の相互扶養について定めた条文です。[注2]

 

第752条

 
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

 

第877条

 
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

 

この扶助や扶養には、自立した暮らしができなくなったときの介護も含まれます

 

そのため、親が病気や事故で動けなくなったり、加齢によって自立した暮らしが難しくなった場合、子どもは親を介護しなければなりません。

 

[注2] e-Gov法令検索「民法」

 

ただし、自分で介護する義務はない

 
ただし、自分で介護する義務はない
 
ただし、民法でいう扶助や扶養とは、「子どもが自ら親を介護する」ことを意味するわけではありません。

 

扶助や扶養は、あくまでもお互いの生活を助け合い、経済的に支援することを指します。

 

そのため、親の介護が必要になったら、地域の訪問介護を利用するなど、介護費や医療費を支給するだけで、民法上の義務を果たしたことになります。

 

経済的な余裕がない場合は扶養義務がない

 
経済的な余裕がない場合は扶養義務がない
 
また、過去の家庭裁判所の判例によると、子どもに生活上の余裕がない場合は、親への扶養義務は発生しません。

 

例えば、子どもが経済的に困窮しており、健康で文化的な最低限度の生活を送るための収入がないケースです。

 

要介護者の親を放置すると、刑事罰に問われる可能性も

 
要介護者の親を放置すると、刑事罰に問われる可能性も
 
しかし、自立した暮らしが困難な親を放置し、死亡させたり障害を負わせたりした場合、子どもが罪に問われることもあります。

 

刑事罰が科される可能性があるのが、生活上の保護が必要な親を死なせた場合の「保護責任者遺棄致死罪」と、親に障害を負わせた場合の「保護責任者遺棄致傷罪」の2つです。

 

現在の法律では、親子の縁を切るための手段はありません。

 

そのため、親の介護が必要になったら、子どもは生涯に渡って親を扶養する義務を負います。

 

自分で介護を行わない場合でも、介護費や医療費の支払いが必要です。

 

少しでも親の介護の負担を減らすため、介護保険制度を利用しましょう。

 

親の介護をするなら知っておきたい介護保険の仕組み

親の介護をするなら知っておきたい介護保険の仕組み
 
親の介護をするなら、介護保険制度の仕組みを知っておく必要があります。

 

介護保険制度は、「高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み」のことです。[注3]

 

高齢者の「自立支援」、利用者の主体的なサービス選択に基づく「利用者本位」の考え方に基づいて、現役世代の保険料を元に介護サービスの利用料の一部を給付します。

 

介護保険制度は、親の介護費の自己負担額が1割から3割になるため、積極的に利用しましょう。

 

[注3] 厚生労働省「介護保険制度の概要」P3

 

介護保険制度の被保険者

 
介護保険制度の被保険者
 
介護保険制度の被保険者は、65歳以上の方(第1号被保険者)と、40歳から64歳の方(第2号被保険者)の2種類に分かれています。[注4]

 

第1号被保険者と第2号被保険者の違いは以下の表のとおりです。

 

項目 65歳以上の方(第1号被保険者) 40歳から64歳の方(第2号被保険者)
対象者 65歳以上の方 40歳以上65歳未満の健保組合、全国健康保険協会、市町村国保などの医療保険加入者
(40歳になれば自動的に資格を取得し、65歳になるときに自動的に第1号被保険者に切り替わります)
受給要件 ・要介護状態
・要支援状態
要介護(要支援)状態が、老化に起因する疾病(特定疾病)による場合に限定
保険料の徴収方法 ・市町村と特別区が徴収(原則、年金からの天引き)
・65歳になった月から徴収開始
・医療保険料と一体的に徴収
・40歳になった月から徴収開始

 

介護保険制度は、65歳以下の方でも利用できます。

 

ただし、要支援・要介護の認定を受けており、以下の16の特定疾病のいずれかに当てはまる人のみが対象となります。

 

  • 1. がん(末期)
  • 2. 関節リウマチ
  • 3. 筋萎縮性側索硬化症
  • 4. 後縦靱帯骨化症
  • 5. 骨折を伴う骨粗鬆症
  • 6. 初老期における認知症
  • 7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
  • 8. 脊髄小脳変性症
  • 9. 脊柱管狭窄症
  • 10. 早老症
  • 11. 多系統萎縮症
  • 12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
  • 13. 脳血管疾患
  • 14. 閉塞性動脈硬化症
  • 15. 慢性閉塞性肺疾患
  • 16. 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

 

[注4] 厚生労働省「介護保険制度について」P1-2

 

介護保険制度で利用できるサービス

 
介護保険制度で利用できるサービス
 
介護保険制度で利用できるサービスは、在宅で介護を受けられる「居宅サービス」、利用者が介護施設に通う必要がある「施設サービス」、高齢者が住み慣れた土地で暮らしつづけるための「地域密着型サービス」の3種類に分けられます。

 

例えば、居宅サービスの一例として、訪問介護や訪問看護、訪問入浴、訪問リハビリテーション、健康管理についての指導を受ける居宅療養管理指導などが挙げられます。

 

なお、居宅サービスは法令により、介護保険の支給限度額が決められています。[注5]

 

利用者の身体状況 支給限度額
要支援1 50,320円
要支援2 105,310円
要介護1 167,650円
要介護2 197,050円
要介護3 270,480円
要介護4 309,380円
要介護5 362,170円

 

[注5] 厚生労働省「サービスにかかる利用料」

 

保険料が引かれ始める年齢は?

保険料が引かれ始める年齢は?
 
将来、介護保険制度を利用するには、現役世代のうちに介護保険料を納付する必要があります。

 

介護保険料の支払いが始まるのは、被保険者が満40歳に達した誕生月からです。

 

例えば、被保険者の誕生日が4月30日のときは4月から、5月1日のときは5月から保険料を納付する必要があります。

 

【まとめ】親の介護をする場合は介護保険制度を利用しよう

民法上、子どもは親を扶養し、生活を支える義務を負っています。

 

子どもが自ら親を介護する必要はないものの、地域の訪問介護などを利用し、安心して暮らせるようにサポートしなければなりません。

 

親の介護をする場合は、介護保険制度を利用しましょう。

 

「介護保険制度」は、介護者の負担を軽減するための制度です。

 

親が要支援・要介護の認定を受けた場合は、介護保険制度を利用し、公的な介護保険サービスの自己負担の割合を減らすことができます。

 

親の介護が必要になる前に、老人ホームについての情報収集を行うことも大切です。

 

老人ホーム探しなら、「あなたらしく」を利用しましょう。

 

親の希望を聞きながら、さまざまな検索条件で老後の住まいを探せます。

 

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