ホスピスとは、心身の苦痛を和らげ、終末期を穏やかに過ごすことを目的としたケアや、場所のことです。
ただ、近年はホスピスの利用範囲も広くなり、施設側でも多様なニーズに応えるサービスを提供するところが増えてきています。
本記事では、ホスピスの基礎知識や、利用するための費用、一般的なホスピスで受けられるケアについて解説します。
ホスピスとは、緩和ケアを提供する場所
ホスピスとは、根治の難しい病気にかかった方の痛みや不安を和らげる緩和ケアを提供する施設のことです。
WHOでは、緩和ケアについて命を脅かす病気によってさまざまな問題に直面している患者さんとその家族に対して、痛みや心理的な問題についてきちんとした評価を行い、それを予防・対処してQOLを改善するアプローチであると定義しています。
この緩和ケアの定義を基に、ホスピスでは以下のようなケアを行っています。
- 痛み・不安などからの解放を目指す
- 最期を迎えるまで、患者さんが前向きに生きられるように支える
- 患者さんの家族が、患者さんの闘病中、あるいは死後の生活に適応できるよう支援する
かつては、上記のようなケアを行っている場所は少なく、ホスピスは一部の病院の緩和ケア病棟に限定されていました。
しかし、少子高齢化が加速化する現代日本において、ホスピスの需要が年々高まってきたことから、近年は緩和ケア病棟だけでなく、ホスピスケアを行う入居型介護施設であるホスピス型住宅や、自宅にいながらホスピスケアを受けられる在宅ホスピスなど、さまざまなニーズに対応するホスピスが誕生しています。
ホスピスの入居・入院条件
ホスピスへの入居・入院条件は、施設によって異なります。
まず緩和ケア病棟への入院条件は、根治の難しい疾患を抱えており、かつ主治医から緩和ケアが適切と判断されている方です。
現在の病状や、今後の見通しについてきちんと説明を受け、その上で患者さん本人が緩和ケアへの入院を希望すれば、条件を満たすことになります。
なお、病院によっては緩和ケア病棟の空きが少ないため、条件を満たしてもすぐ入院できない場合があります。
入院の順番は先着順ではなく、基本的にがん末期患者など、症状が重い方が優先される仕組みになっているようです。
また、病院によっては入院期間に制限を設けているところもあります。
一方、ホスピス型住宅の入居条件は施設によって異なりますが、一般的には厚生労働大臣が定める疾病であると診断された方や、医療依存度が高い方を条件としているケースが多いようです。
厚生労働大臣が定める疾病には、以下のようなものが挙げられます。
- 末期の悪性腫瘍(がん)
- 多発性硬化
- 重症筋無力症
- スモン
- 筋萎縮性側索硬化症
- 脊髄小脳変性症
- ハンチントン病
- 進行性筋ジストロフィー
- パーキンソン病疾患 など
医療依存度が高い方とは、主に人工呼吸器の使用が不可欠である方などを指します。
なお、ホスピス型住宅は緩和ケア病棟とは異なり、入所期間に制限は設けられていません。
希望すれば一生涯にわたって利用できるところがホスピス型住宅ならではの魅力です。
ホスピスを利用するために掛かる費用
ホスピスを利用するために支払う費用は、病院とホスピス型住宅で異なります。
病院の場合
病院のホスピスは公的医療保険の対象であり、医療費や食費は地域を問わず一律に定められています。
そのため、費用は入院日数と、入院した施設の基準(緩和ケア病棟入院科1・2)によって変化します。
以下では入院日数と入院した施設の基準ごとの入院費をまとめました。[注1]
施設基準 | 入院日数 | |||
---|---|---|---|---|
1~30日 | 31~60日 | 61日以上 | ||
緩和ケア病棟入院科1 | 5万510円 | 4万5,140円 | 3万3,500円 | |
緩和ケア病棟入院科2 | 4万8,260円 | 4万3,700円 | 3万3,000円 |
緩和ケア病棟入院科1は、2よりも十分な受け入れ体制を整えており、かつ在宅における緩和ケアの提供について相当の実績を有していることが条件となっている分、2よりもやや費用が割高に設定されています。
上記以外にも、施設によっては個室料金が発生する場合があるため、入院の際は施設側に具体的な費用について問い合わせておくことをおすすめします。
なお、病院のホスピスは公的医療保険の対象となるぶん、介護保険は利用できないので注意が必要です。
>>[注1]東京都保健医療局「ホスピス・緩和ケア病棟の入院費はどのくらいかかりますか?」
ホスピス型住宅の場合
ホスピス型住宅の費用は、家賃や管理費といった固定費と、各種保険料、保険サービス利用料に、食費や寝具レンタル代といった生活費を合算したものです。
このうち、訪問看護や訪問診療、訪問介護サービスといった保険サービスの利用料には公的医療保険や介護保険が適用されます。
訪問介護サービスを利用した場合の自己負担額の限度額は要支援度・要介護度に応じて以下のように定められています。[注2]
要支援・要介護度 | 1カ月あたりの利用限度額 |
---|---|
要支援1 | 5万320円 |
要支援2 | 10万5,310円 |
要介護1 | 16万7,650円 |
要介護2 | 19万7,050円 |
要介護3 | 27万480円 |
要介護4 | 30万9,380円 |
要介護5 | 36万2,170円,380円 |
自己負担額を超えた分については全額自己負担になるので要注意です。
また、上記は1割負担の場合の限度額です。
所得が一定以上あり、自己負担割合が2割、3割の方は自己負担額が変わってくるので注意しましょう。
その他の家賃や管理費、保険料、生活費などには施設による差と個人差があるので一概に言えませんが、1カ月につき15万円~40万円程度がおおよその相場とされているようです。
より具体的な費用が知りたい場合は施設に問い合わせ、詳細な料金体系を尋ねてみましょう。
老人ホームとの費用の違いを知りたい場合は、以下のページを参考にしてください。
『老人ホームの相場ってどれくらい?相場を知る10のポイント』
⇒ ご参照ください。
一般的なホスピスで受けられるケア
ホスピスで受けられるケアは施設によって異なりますが、ここでは一般的なホスピスで受けられる基本のケアを「3つ」に分けて説明します。
精神面のケア
根治の難しい疾患を抱えている患者さんの多くは、死への恐怖や不安、怒り、絶望など、さまざまな精神的苦痛を感じています。
こうした精神的苦痛を和らげるために、ホスピスでは専門家によるカウンセリングや、抗うつ薬などを用いた薬物療法、リラクゼーション、自律訓練法などの行動療法を行ったりするのが一般的です。
また、病気とその治療に関する理解を深め、適切な情報を提供する患者教育を行ったり、患者さんが安心できる保護的環境を整えたりすることもあります。
身体面のケア
病気による痛みがある場合は、鎮痛薬を用いた治療を行うのが一般的です。
がん患者さんには、鎮痛薬に加え、放射線療法など2種類以上の方法を組み合わせて治療することもあるようです。
痛み以外の症状、例えば食欲不振の場合は、薬物による治療の他、口当たりのよい食べ物を用意する、栄養価よりも患者さんの嗜好を優先するなどの処置を行います。
呼吸器の症状がある場合は、薬物療法の他、ネブライザーや理学療法、痰の吸引などが行われます。
このように、症状や患者さんの状態に応じて、都度適切なケアを実施するのが基本です。
経済面の支援
ホスピスを利用するには、入所・入院費の他、介護費用などが掛かるため、経済的な負担は大きなものになります。
ホスピスでは、医療ソーシャルワーカーなどの専門家が医療費や介護費を軽減する方法や、利用できる支援制度などの情報を提供し、できるだけ経済的負担を少なくするお手伝いをしてくれます。
家族のケア
難病にかかった患者さんの家族は、大切な身内が大病を患ったことに対し、大きな不安や悲しみ、ストレスを覚えやすいことから、第二の患者とも呼ばれています。
ホスピスではそのような家族の精神的苦痛を緩和するため、患者さんの病状や今後の見通しについて早めに説明をしたり、ニーズに応じて介護方法の指導などを行ったりします。
以上が一般的なホスピスのケアとなりますが、前述した通り、ケアの内容は施設ごとにさまざまです。
受けられるケアにこだわりや要望がある場合は、ニーズに合ったケアを実施している施設を探してみましょう。
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