老人ホームへの入所には、身元引受人が必要とされるのが一般的です。
これは、緊急時の連絡対応をはじめ、入居者に代わって行う意思決定や、手続きの代行など、身元引受人が多くの役割を持つためです。
しかし、身寄りがなく頼れる人がいない、子どもが遠くに住んでいて頼めないなどの理由で、身元引受人を確保できないこともあるでしょう。
そのような場合でも施設に入所できるように、成年後見制度や身元保証サービスなどの対応方法が用意されています。
今回は身元引受人について解説するとともに、いないときの対応方法についても詳しく紹介します。
老人ホームに入るときは身元引受人が必要?
老人ホームでは、入所時に身元引受人が必要とされるケースが多いです。
身元引受人は、入所者に何かあった際の対応や身柄の引き受けなど、入所者が安心して暮らすために重要な役割を担います。
また、利用料の支払いが難しくなった場合などは、身元引受人が代わりに対応することも求められる場合があります。
家族や友人・知人が身元引受人になれる
身元引受人は、入所者の配偶者や子どもなどの家族がなる場合が多いですが、友人や知人を選ぶことも可能です。
ただし、高齢では責任を果たせない恐れもあるため、年齢要件がある施設もあります。
身元引受人になるためには、収入状況が分かる書類を施設に提出し、身元引受人にふさわしいか審査を受ける必要があります。
身元引受人は後から変更できる
身元引受人は後からでも変更ができます。
高齢になったり、資産状況が変わったりして身元引受人を続けられなくなった場合、新しく身元引受人になる人の書類をそろえて審査を受け直します。
特に身元引受人が死亡した場合には早めに施設に伝え、新しい人を立てる手続きをしなければなりません。
身元引受人の役割
身元引受人は多くの役割と責任を負います。そのため、安易な気持ちで引き受ければ、心身ともに負担が大きくなるかもしれません。
あらかじめ、どのような役割や負担があるのか、しっかり確認しておきましょう。
施設からのあらゆる連絡の窓口となる
身元引受人には、施設からのあらゆる連絡の窓口となって対応する役割があります。
施設からの連絡には次のようなものがあります。
- 入所者の生活の様子や体調などの定期報告
- 施設で必要になった日用品の購入の依頼
- 入所者がけがや病気で救急搬送されるなどの緊急時の連絡
入所者が救急搬送された場合は、身元引受人は搬送先の医療機関に駆けつけ、入院が必要になれば手続きを行います。
入所者が施設で問題を起こしたときに、解決に向けて施設側から対応を求められることもあるでしょう。
施設と連絡が取れないと、施設側が事態に対応できずトラブルになる場合もあるため、身元引受人には施設と常に連絡を取り、コミュニケーションを図ることが求められます。
さまざまな事柄の意思決定や手続きを代わりに行う
入所者本人が認知症などで判断能力が低下している場合は、施設入所中に発生するさまざまな事柄の決定や手続きを、本人に代わって身元引受人が行います。
例えば、次のような行為を行います。
- 入所者が入院した場合、入院手続きを行う
- 病院での治療方針へ同意する
- ケアマネジャーから提供されたケアプランを確認し同意する
- 入所中のサービス提供方法について施設側と相談し、選択や決定を行う
入所者本人にとって適した治療やサービスを選択するために、身元引受人は入所者と深く関わり、施設での生活内容をよく理解している人が適しているでしょう。
入所者が利用料を滞納したときに代わりに支払う
入所者が老人ホームの利用料を払えなくなったときには、身元引受人が代わりに支払わなければなりません。
有料老人ホームの場合、サービスの利用料は数十万円ほどかかるため、高額な利用料金を代わりに支払う可能性もあるでしょう。
利用料金の滞納が続くと、施設を強制退去させられる場合があります。
入所者の料金支払いが難しくなる前に、施設のスタッフに相談する、別の低額な施設へ移るなどの方法を検討してみましょう。
入所者が亡くなったときに身柄の引き受けや退去手続きをする
身元引受人は、入所者が亡くなったときに遺体や遺品の引き取りを行います。
その他、施設の退去手続きや、未払い利用料の支払い、次の入所者のための部屋の原状回復なども担います。
身元引受人がいないときの対応方法
身寄りがない、親族がいても関係が冷え込んでいる、親族が高齢などの理由で身元引受人を確保できない場合もあるかもしれません。
そのような場合は、次の「3つの方法」を検討してみましょう。
成年後見人を立てる
1つ目は、成年後見制度を利用して成年後見人を立てる方法です。
身元引受人の代わりに成年後見人を選べば、入所できる老人ホームもあります。
成年後見制度とは、認知症などで物事の判断が難しくなった方を法的に保護するため、利用者本人または家庭裁判所が選んだ、支援を行う人(成年後見人)に財産管理や施設の契約などの法律行為を行ってもらう制度です。
利用者の親族や、法律や福祉の専門家、これら以外の第三者などの中から成年後見人が選ばれます。
成年後見人ができることには次のようなものがあります。
- 施設との契約
- 施設利用料金の支払い
- 自治体窓口での手続き
- 入院した場合の手続き
ただし、病院での治療方針の決定、入所者が亡くなった後の遺体や遺品の引き取り、葬儀・納骨などは行えません。
成年後見制度を希望する場合は、地域包括支援センターや各自治体に相談してみましょう。
身元保証サービスを利用する
2つ目は、身元保証サービスを利用する方法です。
身元保証サービスとは依頼人の身元を、民間企業やNPO団体、公益社団法人などが保証してくれるサービスです。
身元保証サービスでは次のような内容を提供しています。
会社によって提供されるサービスは違うので、利用前に確認しておきましょう。
- 緊急連絡先、入所のときの連帯保証、入所中のさまざまな手続きなどの身元保証サービス
- 入所者が死亡した際の死亡の確認、葬儀や火葬、納骨の手続きなど、死後に関するサービス
- 通院の付き添い、買い物の同行などの日常生活のサポート
- 生活費の管理、印鑑などの保管、税金の手続きなどの財産管理
身元保証サービスを利用するメリットは、身元保証以外のさまざまなサービスも受けられることです。
また、会社がサービスを提供しているため、サービス契約時の担当者が変更になっても別の担当者に引き継がれ、サービスが継続できる点もメリットです。
デメリットとして、サービスの利用開始時に100万円以上の費用が必要となる場合があり、高額な費用がかかることが挙げられます。
受けるサービスの数が多ければその分料金も上がるため注意しましょう。
身元保証サービスを利用するときは、地域包括支援センターや消費生活センターに相談してみましょう。
身元引受人がいなくても入れる施設を選ぶ
3つ目は、身元引受人がいなくても入れる施設を選ぶ方法です。
ただし、そのような老人ホームは非常に少ないのが現状です。
多くの施設では、身元引受人の代替手段として、入居前の保証金の納付や提携している身元保証会社とのサービス契約を求めたり、成年後見制度のサポートをしたりしています。
その他の代替案を用意している施設もあるため、まずは施設に相談してみると良いでしょう。
身元引受人についてさらに詳しく知りたい方は、「あなたらしく」にお気軽にご相談ください。