老人ホームでは、提携先の病院から医師が施設を訪問して医療を行う訪問医療を提供しているため、基本的に施設にいながら診察や薬の処方を受けられます。
しかし、施設に入所する前から検査で通っていた病院に、入所後も通わなければならない場合などもあるでしょう。
外部の医療機関への通院を許可している施設もありますが、通院してはならない施設もあるため、入居前に確認しておきましょう。
今回は老人ホームに入った後の医療機関の受診について詳しく紹介します。
老人ホームに入所してからも通院できる?
老人ホームには、入所してからもこれまでのかかりつけ医に通院しても良い施設と、外部の医療機関を受診してはいけない施設があります。
特に、介護老人保健施設は原則、外部の医療機関に通院することはできません。
通院できるかどうかは各老人ホームによって違う
老人ホームに入所してもこれまで通っていた病院に通院できるかどうかは、各施設によって違います。
通院を許可してくれる施設もありますが、病院が遠く通院が入所者にとって大きな負担となる、交通費が多くかかるなどの場合は、施設と提携している医療機関の受診を勧められる場合もあるでしょう。
老人ホームでは医療を受ける際は訪問診療が一般的です。
訪問診療では、施設と提携している医療機関の医師が月に1回~2回施設を訪問し、入所者の診察や健康管理、薬の処方を行ってくれます。
体調の急変など緊急の場合でも往診に来てくれるため、安心して生活できるでしょう。
しかし、昔から診てもらっていた医師にこれからも診てもらいたい、施設に入所する前から検査で通っていた病院にこれからも通う必要があるなどの理由で、通院する場合もあるかもしれません。
外部の医療機関に通院したいときは、施設の協力医療機関ではない病院を受診しても良いか、受診が無理なら自分の症状を協力医療機関で診てもらえるかなどを、入居前に相談してみましょう。
介護老人保健施設では外部の医療機関を受診できない
介護老人保健施設に入所した場合は原則、外部の医療機関を受診できないため注意が必要です。
介護老人保健施設には医師が常駐し、基本的な医療は施設内で受けられます。
それ以外の不必要な往診や通院は、原則認められていません。
また、介護老人保健施設は介護保険の施設のため、入所中は医療保険が使えません。
介護保険と医療保険は同時に利用できない決まりがあるためです。
外部の医療機関を受診する場合、医療保険が適用されず全額自己負担となりますが、介護老人保健施設に支払い義務があるため、その医療費を負担することになります。
そのため、介護老人保健施設では原則、外部の医療機関を受診できません。
今までのかかりつけ医に通院できなくなることを知ったうえで、介護老人保健施設への入所を検討しましょう。
老人ホームから通院するときの付き添い
老人ホームから通院するときは、入所者が一人で行くと転倒や交通事故のリスクがあるため、付き添いがいた方が良いでしょう。
付き添いには次のようなケースがあります。
- 家族が付き添う
- 老人ホームのスタッフが付き添う
- 訪問介護の通院介助サービスを利用する
- 介護タクシーを利用する
家族が付き添う
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など多くの老人ホームでは、入所者が外部の医療機関に通院するときに、家族に付き添いをお願いする場合が多くなっています。
多くの施設は人手不足のため、入所者の通院にスタッフを割けません。
そのため、緊急時を除いて、入所者の家族に通院の付き添いをお願いしています。
外部の医療機関に通院するときは、朝から診察を受けることもあるかもしれません。
老人ホームでは開門時間や入所者の朝食の時間などが決まっています。
診察時間に間に合うように、通院日は何時から家族が施設に入れるようになるのか、入所者の朝食は何時からかなどをあらかじめ確認しておきましょう。
老人ホームのスタッフが付き添う
老人ホームのスタッフが通院の付き添いをしてくれる施設もあります。
しかし、通院のサポートは施設の通常業務の範囲から外れるため、別途費用が請求されるのが一般的です。
例えば、30分で1,500円など時間や回数によって料金が決まります。
また、施設の車で病院まで送迎してくれる場合もありますが、その際は別途交通費が請求されることもあります。
施設によって送迎の有無や料金形態などのサービス内容が違うため、確認が必要です。
訪問介護の通院介助サービスを利用する
家族や老人ホームのスタッフの付き添いが難しいときは、訪問介護を利用して通院介助をしてもらう方法もあります。
通院介助とは、訪問介護員(ホームヘルパー)に病院へ向かう準備や病院までの移動、受診手続きなどのサポートをしてもらえる介護サービスです。
利用するには要介護1~5の認定を受け、担当のケアマネジャーにケアプランを作成してもらい、訪問介護を組み込んでもらう必要があります。
ただし、通院介助には病院内で一緒に待ってもらえなかったり、診察時に同席してもらえなかったりするなどのデメリットもあります。
病院内のサポートは介護保険の対象外のためです。
また、どこまでが通院介助に含まれるのかは、市区町村によって違います。
訪問介護の通院介助サービスを利用したいときは、どこまでサポートしてもらえるのか、事前にケアマネジャーに確認しておきましょう。
なお、民間事業者などが提供する介護保険外の(介護保険を使わない)通院付き添いサービスもあります。
このサービスでは、事業所のスタッフが病院と施設間の送迎の他に、診察中も同席して一緒に医師の説明を聞くなどのサポートを行ってくれます。
介護保険外サービスは全ての高齢者が利用でき、利用できる範囲が広い点がメリットですが、全額自己負担のため大きな出費となるのがデメリットです。
どうしても付き添いが見つからない場合に、利用を検討してみましょう。
介護タクシーを利用する
介護タクシーを使って通院する方法もあります。
介護タクシーとは、要介護者が医療機関に通院する交通手段として利用できるサービスです。
介護タクシーには、介護保険を使ったタクシーと介護保険外のタクシーがあります。
介護保険を使ったタクシーは、要介護1~5の認定を受け、ケアマネジャーにケアプランを作成してもらえば利用できます。
ただし、基本的に家族は一緒に乗れない、運転手は病院の中までは同行してくれないなどのデメリットがあるので、注意が必要です。
介護保険外の介護タクシーは要介護度に関係なく利用でき、家族の同乗も可能です。
運転手に病院の中まで付き添ってもらうこともでき、自由度が高いのがメリットですが、利用料金は全額自己負担となるため費用がかかります。
介護タクシーを使いたい場合は、担当のケアマネジャーに相談してみましょう。
介護保険外の介護タクシーでも、ケアマネジャーが事業所を紹介してくれる場合があります。
急な搬送が必要になったときの対応
老人ホームで入所者の体調が急変し、次のような症状があるときなどは、救急車で病院に搬送されます。
- 呼吸困難
- 頭を強く打ったことによる吐き気や嘔吐
- けいれん
- 強い腹痛
- 重度の熱中症
- 転倒などによる大量出血
- 骨折の疑い
救急車の到着までにAEDの使用など必要な処置があれば、施設の看護師やスタッフが対応します。
同時に入所者の家族に連絡をして、状況の報告と救急車への同乗を依頼します。
救急車には、基本的に家族の同乗が望ましいとされています。
これは、搬送先の病院で入院や手術が必要になる場合、家族の同意書が必要になることがあるためです。
また、入院時の病室の選択なども、施設のスタッフではなく家族が決める必要があります。
どうしても家族が間に合わないときは、スタッフが同乗して搬送先へ向かう場合もあります。
緊急時の対応は、施設によってマニュアルが違います。
希望する施設が緊急時にどのような対応をしているのか、入居前に確認しておいた方が良いでしょう。
外部の医療機関に通院できる老人ホームをお探しの方は、ぜひ「あなたらしく」をご活用ください。