特別養護老人ホームに入所するには、必要書類を揃え、所定の手続きを行う必要があります。
入所手続きの内容は施設によって若干異なることもありますが、基本的な流れはほぼ共通しています。
入所可能になった場合にスムーズに手続きできるよう、大まかな流れを把握しておきましょう。
今回は特別養護老人ホームに入所するまでの基本的な流れや、手続きに必要な書類、早く入所するための方法を解説します。
特別養護老人ホームに入所するまでの流れ
特別養護老人ホーム探しから、実際に施設に入所するまでの基本的な流れを「7つのステップ」に分けて解説します。
入所条件を満たすか確認する
特別養護老人ホームに入所するには、以下の条件を満たしていることが必要です。
- 1. 65歳以上かつ要介護3以上の方
- 2. 40~64歳で特定疾病が認められた要介護3以上の方
- 3. 特例入所が認められた要介護1~2の方
特別養護老人ホームは原則として1の条件に該当する方が対象ですが、例外として2または3が認められています。
ここでいう特定疾病とは、末期がんや関節リウマチ、初老期における認知症などが挙げられます。
また、要介護1~2の方であっても、認知症によって日常生活に支障を来すような症状・行動があり、在宅生活が困難な状態にある方や、単身世帯あるいは同居家族が高齢または病弱であるなどの理由によって家族による支援が期待できず、かつ地域の介護サービスや生活支援の供給が十分に受けられない方は、特例として入所が認められることもあります。
ただし、何を持って特例とするかは施設の判断によるため、入所する際はあらかじめ施設に問い合わせ、条件を満たしているかどうか確認しておきましょう。
施設を探す
特別養護老人ホームと一言にいっても、施設ごとに立地やサービス内容、設備、費用などに違いがあります。
まずは立地要件(家族が往き来しやすいかなど)から施設を絞り込み、ホームページなどをチェックして希望や要望に合ったところを探してみましょう。
めぼしい施設を見つけたら、電話で問い合わせるか、ホームページなどから資料請求を行い、より詳しい情報を入手します。
見学に行く
気になる施設を見つけたら、電話やホームページなどから見学の申し込みをします。
見学は随時行っているところが多いですが、ほとんどは事前予約制です。
急に訪問しても担当者に対応してもらえない可能性があるので、予約を取ってから見学に行きましょう。
見学の際は自宅から施設までのアクセスは良好だったか、居室や共用部分の面積や使いやすさはどうか、施設全体の雰囲気やスタッフの対応は良かったか、などを現地で確認します。
これらは資料やホームページを見ただけでは分からない部分であると共に、施設での生活のしやすさや満足度を測る基準となるポイントなので、入念に確かめておくことが大切です。
見学の際、スタッフから施設や設備、費用の説明などを受けますが、分からないことがあれば、その場で質問して不安や疑問を解消しておきましょう。
施設を見学する際にチェックしたいポイントについて、詳しくは以下のページを参考にしてください。
『老人ホームを見学するときの8つのチェックポイントを徹底解説』
⇒ ご参照ください。
入所の仮申し込みを行う
見学を経て入所を希望する施設が決まったら、入所の仮申し込み手続きを行います。
ほとんどの特別養護老人ホームは空室が少なく、空きが出るまで待たされることになるため、この時点ではあくまで仮申し込みの状態です。
仮申し込みでは、所定の申込書に入所希望者の氏名や生年月日、年齢、性別、住所、連絡先などを記載します。
面接を行う
待機期間を経て入所できる順番になったら、施設から面接の連絡が入ります。
面接では入所希望者の健康状態や生活習慣、要介護度、その他要望などをヒアリングし、入所しても問題ないかどうかが審査されます。
面接で提示する情報は入所後に作成されるケアプランに反映されるので、正しい情報を提供しましょう。
契約手続きを行う
面接を経て入所が正式に決まったら、本契約を締結します。
このとき、施設側から必要書類の提出を求められるので、本契約日までに不備なく揃えておきましょう。
必要書類について、詳しくは後述します。
施設への入所
本契約を締結したら、施設への入所が可能になります。
入所の際は、日常生活に必要なものを自分で準備して持ち込みます。
「一般的に必要となるもの」は以下の通りです。
- 普段着
- 肌着
- 靴下
- パジャマ
- バスタオル、フェイスタオル
- 室内履き
- 湯呑み、カップなど
- 歯ブラシ、コップ
- ひげ剃り
- 化粧品
- 処方薬 など
衣類は洗い替え用に複数枚用意するのが基本です。
上記以外にも、衣装ケースやタンス、テレビ、ラジオなどを持ち込むことも可能ですが、持ち込みのルールは施設ごとに異なるので、事前に問い合わせておくことが大切です。
施設によってはレンタル可能なものもあるので、自分で用意するのは面倒という方はレンタルの利用を検討しても良いでしょう。
特別養護老人ホームに入所するための必要書類
特別養護老人ホームに入所する際は、以下の書類を準備します。
- 介護保険被保険者証
- 介護保険負担割合証
- 健康保険証やマイナンバーカードのコピー(75歳以下の方)
- 後期高齢者医療被保険者証(75歳以上の方)
- 印鑑(入所者、身元引受人)
- 印鑑証明書
- 戸籍謄本
- 住民票
- お薬手帳 など
上記の他にも、施設や状況に応じた書類の提出を求められる可能性があります。
必要書類は仮申し込みや入居可能の連絡があったときなどに施設側から伝えられるので、分からないことがあったらその場で質問しておきましょう。
特別養護老人ホームに早く入所したいときは?対処法を紹介
特別養護老人ホームは他の老人ホームに比べて比較的費用が安いこと、終身利用が可能であることから、非常に人気が高く、全国的に空きが少ない状態が続いています。
実際、厚生労働省の発表によると特別養護老人ホームの入所申込者のうち、まだ入所できていない人(要介護3以上の人)は25.3万人にも上っています[注1]。
具体的な待機期間は施設によって異なりますが、ある調査によると、申し込みから1年以内に入所できた人の割合は4割を超える一方、2年以上掛かったと回答している人も4割近くいるそうです[注2]。
特に人気のある施設は申し込みが殺到するため、実際に入所できるまで長い年月が掛かるケースも少なくありません。
入所を急がないという場合は問題ありませんが、なるべく早い入所を希望する場合は、以下の方法を実践してみましょう。
>>[注1]厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)」
>>[注2]三菱UFJリサーチ&コンサルティング「特別養護老人ホームの入所申込者の実態把握に関する調査研究 報告書」p67
複数の施設に仮申し込みをしておく
待機している人数や、空きが出るタイミングは施設によって異なるので、複数の施設に仮申し込みをしておいた方が早めに入所できる確率が高くなります。
仮申し込みの段階なら、いつでもキャンセルすることが可能なので、施設探しのときは複数の候補を決めておき、並行して仮申し込みを行っておきましょう。
なお、入所が決まった場合は、他の施設にはキャンセルする旨を伝えておく必要があります。
対象の範囲を広げてみる
家族の往き来を考えると、なるべく自宅から近い施設を選びたいところですが、特定の地域にこだわりすぎるとなかなか入所の順番が回ってこない恐れがあります。
地元の施設の待機人数が多い場合は、近隣の市町村まで範囲を広げて施設を探してみるのも一つの方法です。
自宅から距離が離れてしまう場合は、なるべく交通アクセスの良い施設を重点的に探してみると良いでしょう。
ユニット型を探す
特別養護老人ホームには、1室に複数のベッドがある「従来型」と、それぞれのベッドがパーティションで区切られている「ユニット型」の2タイプがあります。
ユニット型は従来型よりもプライバシーを保護しやすいところが利点ですが、利用料金はやや割高になります。
そのぶん、コスパ重視の方は従来型に人気が集中しやすいため、ユニット型の方が空きが出やすい傾向にあるようです。
多少お金が掛かってもよいから早く入所したい、という場合は「ユニット型」を狙うのもありでしょう。
特別養護老人ホームに早めに入所するための対処法を紹介しましたが、どの施設にどのくらいの空きがあるか、どの地域なら空きが多いのか、などを調べ上げるのは簡単なことではありません。
自分で施設を探すのは難しいと感じたら、老人ホーム探しのプロを頼ってみましょう。
「あなたらしく」では、入所希望者の方のニーズや要望を基に、適切な施設を探すサポートを行っています。
「なるべく早く入所できる施設を探したい」「範囲を広げて施設を探したいけど下調べする時間がない」などのお悩みがある方は、ぜひ「あなたらしく」のサービスをご利用ください。