人生の最期を迎える場所は多くの場合、病院または自宅となります。
とはいえ超高齢化や長寿化が続く近年では、特別養護老人ホームなどの介護施設における看取りニーズが高まりつつあります。
そこで今回は、「老人ホームでの看取りについて」詳しく解説していきます。
老人ホームにおける看取り介護とは?
看取りとは、近い将来に死が避けられない方に対して身体的苦痛や精神的苦痛を軽減し、人生の最期まで尊厳ある生活を支援することと定義されています。
看取りという言葉はもともと病人の世話や看病のことを指していましたが、近年では死期が近づいている方の看病を指す言葉として使われるケースがほとんどです。
多くの方は病院または自宅で最期を迎えますが、超高齢化社会と呼ばれる近年では死亡者数が増加し、病床が不足する可能性も指摘されています。
こういった問題を受けて、現在では特別養護老人ホームなどの介護施設での看取りのニーズが高まりつつあります。
2006年には介護報酬改定によって看取り介護加算が創設され、老人ホームで看取りを行うケースは今後ますます増えると予測されています。
老人ホームの看取り介護では、医療的なケアや延命のための治療が行われるわけではありません。
看取り介護はあくまで、終わりのときを自然に迎えるまでの過程を見守りながらサポートするケアとなっています。
具体的には、食事の介助や排泄介助、床ずれの防止など、「日常的なケア」が行われます。
また看取り介護には終末期を迎えた方の精神的なケアや、不安感を抱えるご家族に対するケアも含まれています。
最近では看取り介護を行う老人ホームが増加傾向にありますが、現状ではすべての施設で看取りを行っているわけではありません。
規模の小さい老人ホームや医療機関との連携が難しい施設では、看取りのサービスを提供していない場合もあります。
看取りと緩和ケア・ターミナルケアの違い
看取りとよく似た考え方に、緩和ケアやターミナルケアといったものがあります。
ここからは、病気の方や高齢の方に対して行われる「ケアの種類や特徴」についてみていきましょう。
緩和ケアとは
緩和ケアは、病にかかった方の苦痛を和らげるためのケアを指します。
がんをはじめとした重い疾患を抱える方にとって、病気の症状自体がもたらす苦痛や治療の苦痛や精神的な苦痛は決して小さくはありません。
体の辛さや心の辛さを和らげるためのアプローチは緩和ケアと総称されます。
緩和ケアには医師や看護師だけでなく、医療ソーシャルワーカー、薬剤師、栄養士、福祉関係者などさまざまな方がチームとして関わります。
緩和ケアは終末期のみのケアや看取りと同じようなものと誤解されることもあります。
しかし、緩和ケアはあくまで苦痛を和らげるためのケアなので、病の診断を受けた早期から行われる例も多いものです。
看取り介護は病気の終末期に行われるケアであるため、初期から行われる緩和ケアとは区別して考えられています。
ターミナルケアとは
ターミナルケアは終末期医療または終末期看護と呼ばれるケアです。
死期が近づいている方に対して、延命を目的とした治療をせずに苦痛や不快感を和らげるようなケアを行うことをターミナルケアと呼びます。
終末期とは、あらゆる治療をしても病気の回復が期待できないと医師が客観的に判断した時期です。
例えば、余命が数カ月以内と判断された終末期には、患者さんやその家族、医師や看護師といった関係者が死を予測して対応を考えていきます。
ターミナルケアでは、残された時間の身体的苦痛や精神的な不安を除去し、生活の質(QOL=Quality of life)の維持や向上を目指していきます。
ターミナルケアでは、患者さんの生活の質を向上させるケアが重視される傾向にあります。
医師だけが独断で終末期医療を決定するのではなく、本人や周囲の方が納得した上でケアを行うことが求められます。
患者さんの生活の質を重視するという点でターミナルケアと看取り介護は似通っていますが、ターミナルケアでは主に医療的ケアを行います。
これに対して看取り介護では、食事介助や排泄介助、床ずれの防止といった介護的ケアに重点が置かれます。
老人ホームにおける看取り介護の具体的な内容
老人ホームの看取り介護では、具体的にどのようなケアを受けられるの分からない方も多いでしょう。
ここからは、「看取り介護の対応内容について」詳しく紹介していきます。
日常生活のケア
看取り介護で重視されるのは、苦痛の少ない毎日を過ごすための日常的なケアです。
老人ホームでは看取り介護の一環として、食事や排泄、入浴などのケアを続けていきます。
栄養補給や水分補給が十分にできることや、排泄を済ませられること、いつも体が清潔な状態に保たれることは、病を抱える方にとって生活の質を向上させることにつながります。
また、口腔ケアや床ずれの防止ケア、身体的苦痛の緩和、生活環境の整備なども、看取り介護の一環として実施されます。
本人が心地よいと感じられるような環境を整備することは、入居者の尊厳を守るためにも重要です。
介護職員が定期的に居室を巡回したり、バイタルサインのチェックをしたりしている老人ホームを選べば、体の変化にもすぐに気づいてもらえるので信頼できるでしょう。
精神的なケア
看取り介護においては、身体的ケアとともに精神的なケアも重視されます。
死期が近づいた方にとって負担となる感情の1つが、死に対する恐怖心です。
また、病を抱えながらの生活に不安を感じたり、孤独感を募らせたりする方も少なくありません。
精神的に不安定になりやすい時期には、気持ちに寄り添い、コミュニケーションを図るケアが求められます。
老人ホームの職員は、看取り介護の一環として入居者と継続的に会話をするなどのコミュニケーションを行います。
入居者の不安感を和らげるため、ときには介護ケアをとおしてスキンシップを取ることもあります。
また、入居者が今いる場所は安心だと思えるように、適度に清掃や室内環境の整備を行うことも精神的ケアにつながっていきます。
老人ホームで十分な精神的ケアを受けることができれば、不安感や恐怖感、ストレスが和らぎやすくなります。
家族に対するケア
死期が近づいている時期は、ご本人だけでなくご家族も不安を抱えやすいものです。
老人ホームの看取り介護には、落ち着かない毎日を過ごすご家族をサポートするという意味合いもあります。
終末期には老人ホームがご家族と密に連絡を取ったり、入居者ご本人の状況や意向を伝えたりしてくれます。
ご家族からケアに関する要望があったときには、可能な範囲で対応してもらえるでしょう。
看取り介護には、ご本人が亡くなった後のご家族のケア(グリーフケア)も含まれています。
老人ホームのスタッフは、大切なご家族を亡くした方の悲しみや喪失感に寄り添ったケアを心掛けています。
終末期のケアや看取りに関して施設側と十分に話をして、納得した上でケアを任せれば、最期のときを有意義な時間として過ごすことができるでしょう。
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