老人ホームを「終の住み家」として選ぶ方は少なくありません。
しかし、いったん老人ホームに入居したものの、さまざまな事情で退去せざるを得なくなることもあります。
今回は、老人ホームを退去する事情やタイミングについてご紹介いたします。
老人ホームから退去する理由
老人ホームにいったん入居した方が退去を考える理由はさまざまです。
まずは、退去に伴う事情について考えていきましょう。
入居者やその家族が退去を望んでいる
入居した老人ホームの雰囲気になじめなかったときやサービスに満足できなかったときには、入居者またはそのご家族が退去を希望することがあります。
スタッフや他の入居者との相性が悪かったり、レクリエーションや食事の内容が気に入らなかったりと、退去を希望する原因は他にも数多くあります。
入居前に資料を読み施設を見学したという方でも、入居後にミスマッチに気付かされる可能性は少なくありません。
施設に不満があるときには、施設長やスタッフなどにいったん相談して対処をあおいだ方がよいでしょう。
しかし、それでも解決しないときには残念ながら退去を選択することになります。
老人ホームの費用が支払えなくなった
老人ホームの費用が支払えなくなったときには、老人ホームの住み替えなどの対処が必要です。
入居後に家族の経済状況が変化した場合、想定通りに入居費が払えなくなってしまいます。
また、入居後に要介護度が上がり、サービス利用にあたっての負担額が跳ね上がってしまうこともあります。
経済的な負担が大きいときには、経済状況に合う他の老人ホームを探すなどの対処が必要となります。
老人ホームの費用支払いが規定の期日に間に合わない場合、一定の猶予期間があります。
しかし、期間内に所定の費用を支払えなかったときには退去を勧告されてしまうので気を付けましょう。
介護度や身体状況が変わり対応が難しくなった
老人ホームに入居した後、身体状況が大きく変わる方は少なくありません。
病気でケアが必要となったりケガをしてしまったり、認知症の症状が進んだりした場合には、現在の老人ホームではケアしきれなくなることがあります。
要介護度が軽い方、食事やトイレを自分で行える方を対象とした老人ホームには、寝たきりの方を介助する設備がなく、専門スタッフも在籍していないことがあります。
その老人ホームでの対処が難しいと判断された場合には、他の老人ホームなどへの転居を勧められるのが一般的です。
一定以上の医療行為が必要となったときには、専門的な対処ができる環境の整った老人ホームへの転居を考えましょう。
在宅復帰の準備ができた
老人保健施設など、医療やリハビリを通して在宅復帰を目指す老人ホームもあります。
こういった老人ホームの入居者は、在宅復帰の準備ができれば晴れて施設を退去するということになります。
老人ホームを一時的な居場所としていた方にとって、住み慣れた家に戻れる在宅復帰はやはり嬉しいものです。
迷惑行為やトラブルがあった
老人ホームに迷惑がかかるような行為が続いたときやトラブルが起きたときには、退去を勧告されてしまいます。
老人ホームは集団生活の場なので、相性の合わない入居者やスタッフとコミュニケーションを取る場もあります。
しかし、関係性をうまく構築できずにケンカになったり、暴力行為などに発展したりするケースも残念ながらあるものです。
施設側が対応できないと判断したときには退去を選択せざるを得なくなってしまいます。
老人ホーム側の事情
まれに、老人ホームの業務縮小や倒産といった事情で退去を求められることもあります。
老人ホームがやむなく閉鎖するという場合には、退去する他に道はありません。
老人ホームから退去するタイミング
老人ホームを退去したいときには、契約の際に受け取った重要事項説明書を参照します。
重要事項説明書には退去時の条件やタイミングに関することが記されています。
事情があって退去する場合には何日前に申し出たらよいのかを参照すれば、手続きをスムーズに進められます。
老人ホームからの退去を求められるケースでも、即座に退去しなければならないということはありません。
ほとんどの老人ホームでは勧告から退去までに猶予期間を設けています。
この猶予期間の間に別の老人ホームを探したり、手続きを進めたりする必要があります。
退去を求められるケースでも、重要事項説明書に退去対象となる事例や退去までの時期について明記されているので、詳しく確認したいものです。
退去勧告に納得がいかないなど不服があるときには、自治体の介護保険課や都道府県の国民健康保険団体連合会、全国老人ホーム協会などの相談窓口を頼ってみましょう。
老人ホームから退去するときの注意点
老人ホームを退去する際には費用の精算などの手間が生じます。
お金を受け取れることもあれば支払うこともあるので、退去に伴うお金のルールをよく確認しましょう。
また、退去にあたって本人のケアを行うことも大切なポイントです。
ここからは、老人ホームを退去するときに気を付けたいことをチェックしていきましょう。
入居一時金の返還を受けられることがある
老人ホームへの入居にあたって入居一時金を支払ったときには、これが返還されることがあります。
入居一時金とは、居住期間にかかる費用の一部を前払いする方式です。
入居一時金を支払った後には居住期間に応じて一時金が償却されますが、未償却残高があるときには返還を受けられるのです。
契約から90日以内に退去するときにはクーリングオフ制度の対象となるため、入居一時金が全額返還されるのが一般的です。
ただし、入居一時金の規定がない老人ホームや初期償却を行わない老人ホームでは、費用が返還されることはありません。
老人ホームを退去するときには、入居一時金がどれだけ返還されるのかを詳しく確認しましょう。
原状回復費用を求められることがある
原状回復費用とは、入居にあたって室内の劣化や損傷が起きた際に支払わなければならない費用です。
ただし、通常使用による自然劣化に対して原状回復費用を支払う必要はありません。
車椅子で壁やドアを傷つけた、壁紙を破った、床に液体をこぼして変色させたといったときには、その修理費用を入居者が負担することになります。
老人ホームによっては、退去にあたってハウスクリーニング費用を請求すると規定していることもあります。
入居者本人のケアも必要
老人ホームを退去するときには、入居者本人に大きな負担やストレスがかかることがあります。
急に環境が変わることで体調を崩すなど調子が悪くなる方もいるものです。
特に、認知症を抱える方は環境の変化によって症状が重くなりがちなので、十分に注意したいものです。
老人ホームの退去時には、本人が新たな環境で気持ちよく生活ができるよう、丁寧なサポートを行いましょう。
【まとめ】老人ホームのミスマッチが起きたときには退去という選択肢もある
老人ホームは「終の住み家」というイメージがありますが、ミスマッチが起きたときには退去するのも1つの方法です。
また、老人ホームで問題が起きたときには施設側から退去を求められることもあります。
退去の際には費用面を確認し、手続きを早めに進めていくことが大切です。
住環境の変化が入居者本人に大きな負担を及ぼすこともあるので、丁寧にケアを続けていきましょう。
新たに老人ホームを探そうとお考えなら「あなたらしく」のご利用がおすすめです。