特別養護老人ホーム(特養)は公的な介護保険施設の一つで、介護老人福祉施設と呼ばれることもあります。
特別養護老人ホームでは、生活の介助や機能訓練などの介護サービスを低料金で利用できますが、要介護度が低い方は入所できません。
本記事では、特別養護老人ホームの特徴や魅力、一般的な老人ホームとの違い、入所を申し込む際の流れを分かりやすく説明します。
特別養護老人ホームとは?
特別養護老人ホームは、正式な名前を「介護老人福祉施設」といい、要介護度が高く常時介護が必要な高齢者のための生活施設です。
2019年の統計によると、特別養護老人ホームは全国で10,502施設あり、サービスを利用している人の数は61.96万人に上ります。[注1]
特別養護老人ホームでは、入浴・排せつ・食事などの介助の他、機能訓練やリハビリテーションなどの介護サービスを利用できます。
また、施設によっては看取りケア(終末期介護)も可能です。
特別養護老人ホームは介護保険制度の対象となるため、民間施設よりも介護費用がかからず、低料金でサービスを利用できます。
[注1] 厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」P2
特別養護老人ホームと老人ホームの違い
特別養護老人ホームと民間の有料老人ホームの違いは以下の表のとおりです。
特別養護老人ホーム | 老人ホーム | |
---|---|---|
運営母体 | 地方公共団体や社会福祉法人 | 民間企業 |
入居条件 | 原則として65歳以上の要介護度が高い方 | 自立~要介護5までの幅広い身体状況の方 |
職員体制 | 医師、介護職員または看護職員、生活相談員、栄養士または機能訓練指導員、介護支援専門員の配置が必要 | 利用者3人当たり常勤の介護スタッフ1名がおり、看護師の設置義務あり |
居室 | 比較的施設の築年数が経過しており、相部屋や多床室が多い | 築年数が浅い施設が多く、個室の場合もある |
待機状況 | 入所希望者が多く、数カ月~数年の待機期間が発生するケースがある | 定員や施設数が多く、入居難易度が比較的低い |
看取り | 対応している施設が多い | 介護付き有料老人ホームは対応 |
ここでは、特別養護老人ホームと老人ホームの違いについて、入所条件、職員体制の2つの視点で説明します。
1. 入所条件の違い
特別養護老人ホームは「常時介護が必要な方向け」の施設です。
そのため、やむを得ない理由がある場合を除いて、要介護3以上の高齢者しか利用できません。[注2]
- 介護老人福祉施設は、要支援1・2の人は利用できません。
- また、新たに入所する要介護1・2の人もやむを得ない理由がある場合以外は利用できません。
2022年の統計によると、要介護3以上の方の申込数は25.3万人です。
一方、要介護1~2の方(特例入所の対象)の申込数は2.2万人にとどまります。[注3]
[注2] 厚生労働省「どんなサービスがあるの?-介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」
[注3] 厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)」
2. 職員体制の違い
厚生労働省は、特別養護老人ホームの職員体制について以下の規定を設けています。
医師 | 入所者に対し健康管理および療養上の指導を行うために必要な数 |
介護職員または看護職員 | 入所者の数が3またはその端数を増すごとに1以上 |
生活相談員 | 入所者の数が100またはその端数を増すごとに1以上 |
栄養士 機能訓練指導員 |
1以上 |
介護支援専門員 | 1以上(入所者の数が100またはその端数を増すごとに1を標準とする) |
特別養護老人ホームには、配置医師と呼ばれる常勤の医師がおり、入居者の健康管理や定期健康診断などを行います。
他の高齢者施設と違って、施設内に「かかりつけ医」が存在するのが特別養護老人ホームの特徴です。
特別養護老人ホームの費用
特別養護老人ホームを利用する場合、施設のサービス費に比べて、居住費や食費、理美容代などの日常生活費がかかります。
特別養護老人ホームの費用=施設サービス費+居住費・食費+日常生活費(理美容代など)
施設サービス費の利用者負担は、介護保険制度の保険給付の対象となるため、介護サービスにかかった費用の1割(一定の所得がある方は2割または3割)です。
1日当たりの利用者負担の目安は以下の表のとおりです。[注2]
要介護度 | 1日当たりの利用者負担(1割) | |||
従来型個室 | 多床室 | ユニット型個室 | ユニット型個室的多床室 | |
要介護1 | 557円 | 557円 | 636円 | 636円 |
要介護2 | 625円 | 625円 | 703円 | 703円 |
要介護3 | 695円 | 695円 | 776円 | 776円 |
要介護4 | 763円 | 763円 | 843円 | 843円 |
要介護5 | 829円 | 829円 | 910円 | 910円 |
例えば、要介護5の方が多床室を30日利用した場合、1カ月の施設サービス費は829円×30日=2万4,870円です。
施設サービス費に加えて、1日当たりの居住費、食費、毎月の日常生活費が加算されます。
1カ月当たりの利用限度額に注意
ただし、特別養護老人ホームを利用する場合、1カ月当たりの利用限度額に注意する必要があります。[注4]
要支援1 | 5万320円 |
要支援2 | 10万5,310円 |
要介護1 | 16万7,650円 |
要介護2 | 19万7,050円 |
要介護3 | 27万480円 |
要介護4 | 30万9,380円 |
要介護5 | 36万2,170円 |
例えば、要介護3の方は1カ月当たり270,480円、要介護4の方は1カ月当たり309,380円を超えないよう、サービスの量を調節しなければなりません。
もし1カ月当たりの利用限度額を超えた場合、超過分は全額自己負担となってしまいます。
特別養護老人ホームに入所を申し込むときの流れは以下のとおりです。
- 1. 特別養護老人ホームの申し込み書類を取り寄せる
- 2. 入所申込書や介護保険証のコピーなどの必要書類の他、必要に応じて医師の健康診断書や介護認定調査票の写しを準備する
- 3. 特別養護老人ホームで申し込み手続きをする
- 4. 審査に合格した場合、入居予定日の調整をする
- 5. 身元引受書や重要事項説明書についての説明を受け、契約書に記名押印する
- 6. 特別養護老人ホームの所在地に入居者の住民票を移動させる
特別養護老人ホームの申し込み書類は、施設の窓口や郵送で入手する他、公式ホームページからダウンロードできる場合があります。
希望の施設がなかなか見つからない場合は、老人ホーム探しに役立つ検索サイトを利用しましょう。
【まとめ】特別養護老人ホームの特徴や費用目安を知り、早めに申し込もう
特別養護老人ホームは、要介護度が高い高齢者を対象とした施設です。
民間の老人ホームと違って、原則的に要介護3以上の方しか入所できません。
ただし、公的保険制度の保険給付を受けられるため、施設サービス費の自己負担額が低いのがメリットです。
特別養護老人ホームは入居希望者が多く、施設によっては数カ月~数年の待機期間が発生する可能性があります。
そのため、特別養護老人ホームの特徴や費用目安を知り、早めに申し込みを行うことが大切です。
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