内閣府の平成29年度高齢社会白書によると、2012年の時点で、65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症に罹っています。また、2025年には、認知症高齢者数の割合が約5人に1人へ増加するという推計もあります。[注1]
認知症の予防は、いつから始めればよいのでしょうか。
本記事では、シニア世代以外も覚えておきたい、認知症予防に取り組む時期や、認知症予防に効果的な習慣、認知症の恐れがある人に対してやってはいけないNG行動を紹介します
認知症予防はいつから始めるべき?初期症状に気づくことが大切!
認知症予防と聞くと、シニア世代を思い浮かべる人が多いかもしれません。実際、認知症予防はいつから始めるべきなのでしょうか。
一般的に、脳の老化が始まるのは40代後半からだといわれています。認知症の原因となる物質は、長い時間をかけて脳内に蓄積していくため、早い段階から認知症予防に取り組みましょう。
また、認知症による物忘れと加齢による物忘れの違いを知り、認知症の初期症状に気づくことも大切です。認知症の兆候を見逃さないことで、症状が悪化する前に適切な治療を受けることができます。
脳の老化が始まるのは40代後半から
認知症とは、「さまざまな脳の病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、認知機能(記憶、判断力など)が低下して、社会生活に支障をきたした状態」を指します。[注2]
一般的に、脳の老化が始まるのは40代後半からといわれています。また、認知症のなかでもっとも多い「アルツハイマー型認知症」の原因物質(アミロイドβ、リン酸化タウ)は、長い時間をかけて脳内に蓄積し、記憶障害(物忘れ)、失語症や失認症、失行症などの症状を引き起こします。認知症のリスクを抑えたい人は、40代後半から認知症予防に取り組むことが大切です。
また、認知症と深い関わりがあるのが生活習慣病です。生活習慣病を予防することで、認知症の予防にもつながります。[注2]
“認知症の多くを占めるアルツハイマー型認知症や血管性認知症は、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)との関連があるとされています。たとえば、バランスの良い食事を心掛けたり、定期的な運動習慣を身に付けたりと、普段からの生活管理が認知症のリスクを下げると考えられています。”
厚生労働省によると、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まるのは、45~49歳にかけての40代後半からです。[注3]
生活習慣病の観点からも、40代後半から認知症予防に取り組む必要があることがわかります。
- 世代ごとの気になる傷病
20~24歳 | 25~29歳 | 30~34歳 | 35~39歳 | 40~44歳 | 45~49歳 | 50~54歳 | 55~59歳 | 60~64歳 | 65~69歳 | 70~74歳 | 75~79歳 |
アトピー性皮膚炎 | その他 | うつ病やその他のこころの病気 | うつ病やその他のこころの病気 | その他 | 高血圧症 | 高血圧症 | 高血圧症 | 高血圧症 | 高血圧症 | 高血圧症 | 高血圧症 |
その他 | うつ病やその他のこころの病気 | その他 | その他 | うつ病やその他のこころの病気 | その他 | 糖尿病 | 糖尿病 | 糖尿病 | 糖尿病 | 糖尿病 | 糖尿病 |
その他の皮膚の病気 | アトピー性皮膚炎 | アトピー性皮膚炎 | 腰痛症 | 高血圧症 | うつ病やその他のこころの病気 | その他 | 脂質異常症(高コレステロール血症等) | 脂質異常症(高コレステロール血症等) | 脂質異常症(高コレステロール血症等) | 腰痛症 | 腰痛症 |
うつ病やその他のこころの病気 | その他の皮膚の病気 | 腰痛症 | アトピー性皮膚炎 | 腰痛症 | 腰痛症 | 腰痛症 | 腰痛症 | 腰痛症 | 腰痛症 | 脂質異常症(高コレステロール血症等) | 眼の病気 |
腰痛症 | アレルギー性鼻炎 | その他の皮膚の病気 | 肩こり症 | 肩こり症 | 糖尿病 | うつ病やその他のこころの病気 | その他 | 眼の病気 | 眼の病気 | 眼の病気 | 狭心症・心筋梗塞 |
認知症と加齢による物忘れの違い
認知症を予防するうえで、もうひとつ大切なのが「初期症状に気づくこと」です。認知症の兆候を見逃さないことで、適切な治療を受け、認知症の進行を遅らせることができます。
認知症の初期症状と誤解しやすいのが「加齢による物忘れ」です。
加齢による物忘れ | 認知症による物忘れ | |
体験したこと | 一部を忘れる(朝ごはんのメニュー) | すべてを忘れている(朝ごはんを食べたこと自体) |
物忘れの自覚 | ある | ない(初期には自覚があることが少なくない) |
日常生活への支障 | ない | ある |
症状の進行 | 極めて徐々にしか進行しない | 進行する |
加齢とともに脳機能が衰えると、どうしても記憶力が低下したり、物忘れが起きやすくなったりします。認知症による物忘れと加齢による物忘れの違いを知り、大切な家族に認知症の兆候が出ていないか確認しましょう。[注2]
認知症予防に効果的な3つの対策
認知症を予防するには、健康的な生活を心掛け、生活習慣病を予防することが大切です。認知症の予防につながる習慣は3つあります。
- 定期的な運動をする
- 30分以内の昼寝をする
- ガムを噛む習慣をつける
定期的な運動習慣を身に付けることで、脳や全身の血行を改善し、生活習慣病のリスクを下げることができます。
また、簡単なスポーツを始めるのもおすすめです。新しいルールを覚えたり、上達に向けて試行錯誤したりすることを通じて、認知機能を活性化させられます。
認知機能の衰えを防ぐには、30分以内の昼寝も効果的だとされています。加齢とともに眠りが浅く、睡眠不足に悩む人が増えてきます。慢性的な睡眠不足は認知機能の低下の原因となるため、短い昼寝をする習慣を取り入れてみましょう。
また、ガムを噛むのもおすすめです。ガムを噛むことで脳内の血流が増加し、認知機能の衰えを防止できます。キシリトール入りのガムを噛めば、むし歯や歯周病の予防にもつながります。
認知症予防におけるNG行動
家族に認知症の兆候がみられるとき、とってはいけないNG行動が2つあります。
- 大声で叱らない
- 一人にしない
認知症の症状が進行すると、記憶力などの知的能力がだんだん衰え始め、以前はできたことができなくなります。しかし、認知症患者は知的能力が衰えていても、感情に関する機能はあまり衰えていません。認知症患者を大声で叱ると、なぜ叱られているのかが理解できず、強いストレスを抱えてしまいます。結果として、認知症の随伴症状である不安や焦燥感、うつ状態などの悪化につながる可能性があります。
また、認知症の疑いのある家族を一人にしたり、放置したりするのもNGです。認知症患者が孤独を感じ、不安やストレスの原因になるためです。認知症による物忘れが始まっても、相手の気持ちに寄り添って、なるべく本人の話を聞いたり、共感してあげたりすることが大切です。
【まとめ】認知症の対策やNG行動を知り、早めに予防しよう
認知症の原因となる物質は、長い時間をかけて脳内に蓄積します。脳の老化が始まる年代や、認知症と関連性が高い生活習慣病のリスクが高まる年代を考慮すると、認知症の予防は40代後半から始める必要があります。
また、認知症と加齢による物忘れの違いを知り、認知症の初期症状に気づきましょう。
認知症を予防するには、定期的な運動によって生活習慣病を予防し、30分以内の昼寝やガムを噛む習慣などにより、認知機能の衰えを防ぐことが大切です。
もし家族の認知症が気になり始めたら、専門家によるケアや治療を受けることも考えましょう。お住まいの地域の老人ホームを探す場合は、「あなたらしく」への相談がおすすめです。
[注1] 内閣府「平成29年度高齢社会白書」
[注2] 政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」
[注3] 厚生労働省「年代別・世代別の課題」P2