「認知症」はシニア世代に多い病気のひとつです。
認知症が進むと、脳の記憶力や判断力が低下し、自立した暮らしを送ることができなくなります。
内閣府の令和4年版高齢社会白書によると、65歳以上で介護が必要になった人のうち、認知症が主な原因の人は18.1%です。[注1]
シニア世代に現れる認知症の兆候を知り、早期発見早期治療を心掛けましょう。
また、認知症の人をむやみに叱ったり、現実を突きつけたりせず、本人のペースに合わせて接することが大切です。
本記事では、「認知症の人への対応方法」や「接し方のポイント」を解説します。
シニア世代に現れる認知症の兆候
厚生労働省によると、認知症の主な症状(中核症状)は以下の「4点」です。[注2]
- もの忘れが多くなる(記憶障害)
- 時間・場所がわからなくなる(見当識障害)
- 理解力・判断力が低下する
- 仕事や家事・趣味、身の回りのことができなくなる
少しでも心当たりがある場合は、家族が認知症にかかっているかもしれません。
シニア世代に現れる認知症の兆候を知り、早期発見早期治療に努めましょう。
もの忘れが多くなる(記憶障害)
認知症にかかると、急にもの忘れが多くなります。
以下は認知症の患者によく見られる兆候の一例です。
- 数分前、数時間前のできごとをすぐ忘れる
- 同じことを何度もいう・聞くようになる
- しまい忘れや置き忘れが増えて、いつも探し物をしている
- 約束を忘れる
- 昔から知っている物や人の名前が出てこなくなる
- 同じものを何個も買ってくる
ただし、シニア世代になると、「加齢によるもの忘れ」も増加します。
以下の表を参考に「加齢によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違いを知っておきましょう。[注2][注3]
加齢によるもの忘れ | 認知症によるもの忘れ | |
---|---|---|
体験したこと | 一部を忘れる (例)朝ご飯のメニュー |
すべてを忘れている (例)朝ご飯を食べたこと自体 |
もの忘れの自覚 | ある | ない |
探し物に対して | (自分で)努力して見つけようとする | 誰かが盗ったなどと、他人のせいにすることがある |
日常生活への支障 | ない | ある |
症状の進行 | 極めて徐々にしか進行しない | 進行する |
時間・場所がわからなくなる(見当識障害)
認知症の患者は、自分が今いる時間や場所がわからなくなり、混乱をきたすことがあります。
この症状を「見当識障害」と呼びます。
たとえば、以下の兆候が見られる場合、見当識障害があるかもしれません。
- 日付や曜日がわからなくなる
- 慣れた道で迷うことがある
- できごとの前後関係がわからなくなる
理解力・判断力が低下する
認知症の中核症状のひとつが、「理解力」や「判断力の低下」です。
以下の例のとおり、今まで理解できていたことが急にわからなくなったり、日常生活に必要な判断ができなくなったりした場合、認知症の疑いがあります。
- 手続きや貯金の出し入れができなくなる
- 状況や説明が理解できなくなる、テレビ番組の内容が理解できなくなる
- 運転などのミスが多くなる
仕事や家事・趣味、身の回りのことができなくなる
認知症が進行すると、仕事や家事などの身の回りのことが自分でできなくなり、自立した暮らしを送れません。
以下の兆候のいずれかが見られる場合は、認知症の治療を受けさせるだけでなく、身体介助や生活援助などの介護サービスの利用も検討する必要があります。
- 仕事や家事・趣味の段取りが悪くなる、時間がかかるようになる
- 調理の味付けを間違える、掃除や洗濯がきちんとできなくなる
- 身だしなみを構わなくなる、季節に合った服装を選ぶことができなくなる
- 食べこぼしが増える
- 洗面や入浴の仕方がわからなくなる
- 失禁が増える
シニア世代が認知症になったときの対応方法
公益社団法人 認知症の人と家族の会は、「認知症」の人のために家族ができる10カ条を公開しています。[注4]
- 1. 見逃すな「あれ、何かおかしい?」は、大事なサイン。
- 2. 早めに受診を。治る認知症もある。
- 3. 知は力。認知症の正しい知識を身につけよう。
- 4. 介護保険など、サービスを積極的に利用しよう。
- 5. サービスの質を見分ける目を持とう。
- 6. 経験者は知恵の宝庫。いつでも気軽に相談を。
- 7. 今できることを知り、それを大切に。
- 8. 恥じず、隠さず、ネットワークを広げよう。
- 9. 自分も大切に、介護以外の時間を持とう。
- 10. 往年のその人らしい日々を。
認知症の患者と初めて向き合う場合、大きな不安や戸惑いを感じるかもしれません。
「認知症」の人のために家族ができる10カ条を踏まえて、以下の2つの対応をしましょう。
- 認知症の兆候を感じたら、すぐに専門医に相談する
- 認知症向けの介護サービスを利用する
[注4]公益社団法人認知症の人と家族の会「「認知症」の人のために家族が出来る10ヵ条」
認知症の兆候を感じたら、すぐに専門医に相談する
認知症の兆候に気づいたら、すぐに専門医に相談することが大切です。
認知症に対応した診療科は、精神科、脳神経外科、脳神経内科(神経内科)、もの忘れ外来(認知症外来)などがあります。
また、かかりつけ医がいる場合は、認知症の診療が可能な病院の紹介状を書いてもらいましょう。
認知症かどうか迷う場合も、日頃から家族を診ているかかりつけ医の判断が参考になります。
認知症向けの介護サービスを利用する
家族の認知症が進行しており、一人暮らしをさせるのが難しい場合は、介護サービスの利用を検討しましょう。
認知症に対応した介護サービスは「2つ」あります。
- 認知症対応型通所介護(デイサービス)
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症対応型通所介護は、日帰りで利用できる介護サービスです。
認知症の人向けの専門的なケアを提供しており、一般的なデイサービスと同じ感覚で利用できます。
また、グループホームは「5~9人」の利用者が共同生活を送り、自立した暮らしを目指して認知症ケアを受ける施設です。
認知症の家族との同居が難しい場合は、入居型の介護サービスであるグループホームを利用しましょう。
シニア世代が認知症になったときの接し方
シニア世代が認知症になったら、どのように接したらよいのでしょうか。
認知症の人と接するときは、以下の「2点」を念頭に置くことが大切です。
- 記憶はなくなっても感情は残る
- 認知症の人も不安や恐怖を抱えている
認知症が進行すると、判断力や記憶力が低下します。
しかし、感情の働きは残っています。
そのため、認知症の人をむやみに叱ったり、怒鳴ったりすると、不安や恐怖、ストレスなどの感情だけが強く残ってしまい、信頼関係を築けません。
認知症の人と接するときは、なるべく「本人のペースに合わせる」ことが大切です。
認知症の人がおかしな行動をしても、本人にとっては「当たり前」の行動をとっているにすぎません。
認知症の人の行動を否定したり、現実を突きつけたりせず、遠くからやんわりと見守ることが大切です。
もし認知症が悪化し、これ以上介護をつづけられなくなったら、デイサービスやグループホームなどの利用も検討しましょう。
【まとめ】シニア世代に多い認知症への対応や接し方を知ろう
シニア世代に多い認知症には、記憶障害や見当識障害、理解力・判断力や生活能力の低下など、さまざまな兆候があります。
認知症の兆候を見逃さず、少しでも違和感を覚えたら医療機関を受診しましょう。
また、家族の認知症が進行していて自立した暮らしが難しい場合、介護サービスを利用するのもおすすめです。
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