近年、テレビやインターネットなどのメディアで「介護難民」というキーワードを見聞きすることが増えてきました。
介護難民は少子高齢化が加速化する現代日本において、特に深刻な課題の一つといわれており、早急な解決策が求められています。
そこで今回は、介護難民の基礎知識や、介護難民が増えている主な原因、介護難民に関する対策について詳しく解説します。
将来の介護について不安や悩みを抱えている方や、介護難民の事情について知りたい方はぜひ参考にしてください。
介護難民とは?
介護難民とは、介護を必要としているにもかかわらず、適切な支援やサービスを受けられない人のことです。
介護難民のパターンはさまざまですが、具体的な事例として以下のようなものが挙げられます。
- 介護をしてくれる身内がいない
- 経済面の問題で介護サービスを受けられない
- 介護施設に空きがなく、入所できない
なお、介護難民になった場合、次のような問題が生じる恐れがあります。
QOLの低下
必要な介護を受けられないと、食事の準備や掃除、洗濯といった日常の家事を十分に行えなくなります。
その結果、生活の質(QOL)が著しく低下し、心身の健康に悪影響を及ぼす原因となります。
場合によってはフレイルや認知症の発症につながり、要介護度が上がってしまうこともあるでしょう。
家族の負担が大きくなる
介護福祉施設への入居や介護サービスの利用がかなわない場合、同居あるいは別居している身内が介護や介助を行う必要があります。
仕事や家事、育児などと並行して介護を行うのは簡単なことではなく、家族の生活に大きな支障を来す原因になりかねません。
実際、日本では働きながら在宅介護をするビジネスケアラーや、18歳未満の子が介護を担うヤングケアラーの増加が社会問題となっています。
介護難民が増えている原因
近年介護難民が増加している原因は大きく分けて「2つ」あります。
需要と供給のバランスが崩れている
少子高齢化が進む現代日本では、要介護者の数が年々増え続けています。
厚生労働省が公開している「令和4年度 介護保険事業状況報告」によると、令和4年度における要介護認定者数は6,944人となっており、平成12年度(2,562人)を100とした場合の指数は271に達しています。[注1]
少子高齢化は今後も加速していると見られていることから、要介護者は将来的にさらに増えていくと予想されています。
中でも介護業界は慢性的な人手不足に陥っているため、増え続ける需要に供給が追いついていないのが実状です。
実際、全国の介護保険指定介護サービス事業所を対象に実施された調査の結果によると、従業員の過不足状況について、「不足」と回答した事業所は全体の64.7%にも上っており、深刻な人手不足に悩まされている事業所が多いことが分かります。[注2]
供給不足の理由は少子高齢化の影響に加え、介護業界自体が抱える諸問題(仕事内容の割りに賃金が低い、身体的負担が大きいなど)も大きな要因となっているようです。
>>[注1]厚生労働省「令和4年度 介護保険事業状況報告」p2
>>[注2]公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査結果報告書」p40
ヘルパーの高齢化
介護難民が生まれる要因の一つに、ヘルパーの高齢化が挙げられます。
介護労働に従事する労働者を対象に実施した令和5年度介護労働実態調査によると、調査に回答した介護職員の年齢は45歳~49歳が最多で14.3%、次いで40歳~44歳と50歳~55歳が同率で13.9%、55歳~59歳が11.1%となっており、全体における45歳以上の割合は全体の半数を超えています。[注1]
高齢ヘルパーが定年退職した場合、介護の担い手が大幅に減少してしまい、人手不足を理由に介護サービスの利用者を受け入れられない状況に陥る可能性があるでしょう。
なお、ヘルパーの高齢化は訪問介護事業所の事業継続にも大きな影響を及ぼしており、令和6年3月に廃止した訪問介護事業所のうち、「人員不足・高齢化等」を廃業の理由に挙げた事業所は全体の46%を占めています。[注2]
>>[注1]公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査結果報告書」p20
>>[注2]厚生労働省「第242回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料 訪問介護事業への支援について(報告)」p5
介護難民に関する対策
介護難民にならないよう、今からやっておくべき対策を「4つ」ご紹介します。
日常生活の改善を図る
要介護状態になってしまう原因は複数ありますが、厚生労働省が発表している国民生活基礎調査(令和4年)の結果によると、介護が必要になった主な原因は認知症が最多(16.6%)で、次いで脳血管疾患(16.1%)、骨折・転倒(13.9%)となっています。[注1]
これらの原因を引き起こす要因には、生活習慣病や筋力の衰えなどが考えられるため、日頃から生活習慣の見直しや、運動習慣による筋力アップなどを心掛けることが要介護リスクの低減につながります。
具体的には、「3食バランスの良い食事を摂る」、「ウォーキングやストレッチといった軽い運動を生活に取り入れる」など。
健康年齢を延ばせば、介護難民になるリスクも減少させられるでしょう。
介護サービスや施設の情報を収集する
介護サービスを提供する事業所や施設は数多く存在する上、施設ごとに利用・入居条件やサービス内容などに違いがあります。
いざ介護が必要になってから情報を収集し始めると、実際に事業所や施設を絞り込むまでにかなりの時間がかかってしまう恐れがあります。
特に老人ホームは、人気のある施設は入居待ちが発生しているケースが多く、申し込んでもすぐに入居できるとは限りません。
以上の点を考慮すると、介護に関する情報の収集や施設探しはなるべく早い段階で始めておくのがおすすめです。
介護に必要な資金の準備を始める
要支援や要介護と認定された場合、介護サービスの利用に介護保険を適用できるようになりますが、老人ホームなどへの入所費用は自分で負担する必要があります。
具体的な費用は入居した施設やサービスによって異なりますが、入居一時金に数十万円以上のお金がかかるところも少なくありません。
また、入居後は毎月一定の利用料金を支払わなければならないため、年金などでまかなえない分は貯金でカバーする必要があります。
いざ介護が必要になったときに資金不足で困ることのないよう、今のうちから資金の準備を始めておくと良いでしょう。
家族と将来の介護について話し合っておく
介護はいつ、どのような原因で必要になるか分からないため、今のうちから家族と介護について話し合っておくことが大切です。
例えば外部の介護サービスを利用するのなら、どのようなサービスを受けたいのか、何を重視して施設を選ぶのか、予算はどのくらいを想定しているのか、などについて話し合っておけば、施設選びの基準や現時点の課題(資金が足りない場合はどうするかなど)が明確になります。
特に課題や問題は早いうちに洗い出しておけば、解決までにかけられる時間にゆとりを持たせられるでしょう。
以上、介護難民にならないためのポイントを紹介しましたが、介護サービスの情報を収集したり、予算や希望に合った施設を探したりするのは簡単なことではありません。
「別居している両親の介護が心配だけど、施設を探す時間がない」「まだ入居は先になりそうだけど、今のうちから必要な情報を集めておきたい」という方は、老人ホーム探しのプロに相談することをおすすめします。
「あなたらしく」では、介護福祉施設に詳しいスタッフが現地で入手した情報を基に、一人ひとりのニーズに合った施設探しをサポートします。
施設探しや施設見学への同行、入居後のアフターフォローまで、無料でお手伝いしますので、「介護難民になりたくない」「今からプロの力を借りて準備しておきたい」という方は、ぜひ「あなたらしく」までお気軽にご相談ください。