「住み慣れた自宅で暮らし続けたい」という高齢者の気持ちに配慮し、施設入居ではなく在宅介護を選択する方は少なくありません。
しかし、たとえ住み慣れた場所であっても、事故が起きる可能性は十分に考えられます。
在宅介護での事故は命に関わることもあるため、充分な対策が必要です。
そこで今回は、「在宅介護における事故の原因と対処法」について詳しくご紹介します。
在宅介護で起こりやすい事故4種類
まずは、在宅介護で起こりやすい事故を「4種類」、ご紹介します。
転倒
在宅介護では、高齢者の転倒事故に十分注意しましょう。
転倒事故と聞くと外を歩いているときに転ぶイメージを持つ方が多いかもしれません。
しかし、実際には住宅内での転倒事故も起きています。
特に多いのは、居室でベッドから下りるときにうまく立ち上がれずに転んでしまう事故です。
電気コードやカーペットの端に引っかかったり、新聞やビニールを踏んでしまったりするケースもあります。
その他に考えられるのは、ズボンや靴下、靴をはくために片足立ちをした際にバランスを崩す事故です。
骨が弱くなっている高齢者は、転倒をきっかけに骨折などのトラブルを引き起こすことがあるため、注意が必要です。
骨折などのダメージが原因で介助が必要となり、結果的に寝たきりになってしまうケースも少なくありません。
誤嚥や窒息
誤嚥とは、飲み込んだ食べ物が正常に食道に入らず、気道に入ってしまうトラブルです。
気道は吸い込んだ空気を肺まで送り届けるための気管で、食事をするときにはこの気管が閉じるような仕組みになっています。
加齢によって神経や筋肉の働きが弱ると気道が充分に閉じなくなり、誤嚥が起こりやすくなります。
誤嚥をすると激しいむせ込みが起き、気道の食物が排出されるのが一般的です。
しかし、誤嚥が起きてもうまく咳が出ない場合、呼吸困難や窒息などの大きなトラブルに発展することもあるため、十分な注意が必要です。
窒息によって必要な酸素が体に行き渡らなくなると、一命をとりとめても、認知機能の低下やまひなどの後遺症が出る恐れがあります。
また、誤嚥が原因で細菌が気管や肺に入ると、誤嚥性肺炎が起きるケースも少なくありません。
お風呂での溺水やヒートショック
体を清潔に保つためには入浴が欠かせませんが、お風呂での事故にも注意する必要があります。
特に、お風呂での溺水には命の危険が伴うため、事故防止に努めましょう。
また、冬場は入浴前後の温度差が原因で、ヒートショックが起きる可能性があります。
ヒートショックを起こすと、そのまま浴槽内で溺水することもあるため、事故防止に十分努めましょう。
服薬ミス
在宅療養では、毎日の薬の服用が欠かせないケースも多いでしょう。
しかし、高齢の方や認知機能が低下している方は、薬の飲み忘れや飲み間違いといった服薬ミスを起こすことがあります。
また、大切な薬をどこかに置き忘れてしまうようなトラブルも考えられます。
在宅介護における事故を防止する方法
在宅介護の事故は深刻な症状につながることもあるため、十分な対処が必要です。
ここからは、在宅介護で事故を防ぐための「ポイント」をみていきましょう。
転倒を防止する方法
転倒事故防止のためには、室内の段差をできるだけなくす対処が必要です。
可能であればバリアフリーリフォームを施す、リフォームが難しい場合は段差を解消するスロープを導入するなどの方法を検討しましょう。
階段や玄関の段差にも、手すりや滑り止めを付けるのがおすすめです。
また、転倒につながりやすいものを床に置かないよう心掛けることも大切なポイントです。
介護を必要とする方はゆっくり動くケースが多く、行動を急かすと転倒のリスクが上がってしまいます。
事故を防ぐためにも、行動を急かさず本人のペースに合わせることが大切です。
誤嚥や窒息を防止する方法
在宅介護をするときには、飲み込みやすい食材を用意したり、食材を細かく刻んだりと工夫しましょう。
ペースト状にしたり、とろみを付けたりすれば、誤嚥トラブルのリスクが下がります。
食事中に誤嚥のむせこみが起きたときには、前かがみの体勢で咳をするよう促しましょう。
むせているときに白湯やお茶などを飲ませるとかえって症状が悪化することもあるため、注意が必要です。
誤嚥がきっかけで呼吸がしにくくなったり肺炎のような症状が出たりしたときには、早めに医師の診察を受けましょう。
お風呂での事故を防止する方法
お風呂でヒートショックが起きると、そのまま意識を失って溺水につながる恐れがあります。
脱衣所にヒーターを置く、蒸気で浴室を温めるといった工夫をするだけでも、ヒートショックのリスクを大きく下げられます。
また、お風呂のお湯を熱くし過ぎるとのぼせてしまう可能性があるため、温度は41度以下に設定すると良いでしょう。
長時間の入浴を避けることや、湯船から出る際に急に立ち上がらないことも大切です。
高齢者が一人で入浴する場合には、声かけをして安全を確かめましょう。
普段よりも入浴時間が長いと感じたときにも、声をかけ、見守ることが大切です。
服薬ミスを防止する方法
薬の服用ミスを防ぐためには、壁掛けタイプのお薬カレンダーやピルケースの導入が効果的です。
服用が必要な薬を見えるように整理しておけば、飲み忘れや飲み間違いなどのトラブルを防止できます。
また、ご家族が声かけをし、適切な時間に服薬を促す方法も考えられます。
在宅介護に限界を感じたときはどうする?
事故に注意しながら介護を続けるのは簡単なことではありません。
休みのない介護が続く中で、自宅で介護を行うのに限界を感じる方もいるでしょう。
ここからは、在宅介護で心身の疲れを感じたときや、つらさに悩んだときの「対処法」をご紹介します。
介護保険サービスを十分に活用する
家族だけでの介護は負担が大きいため、介護保険サービスを柔軟に活用することが大切です。
訪問介護やデイサービスをはじめ、介護を必要とする方が利用できるサービスは数多くあります。
介護保険サービスを利用すれば家族の負担が和らぎますし、「介護のプロに任せている」という安心感も得られます。
また、家族以外の人と交流する機会が増えるのも、介護保険サービスを利用するメリットです。
在宅介護の難しさを感じている方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
『在宅介護に限界を感じたら?無理なく続けるコツや対処法を紹介』
⇒ ご参照ください。
専門家に相談する
在宅介護の限界を感じるときには無理をせず、公的な機関やかかりつけの医師、ケアマネジャーなどに相談しましょう。
特に、ケアマネジャーは介護に関する豊富な知識を持っており、状況に応じて適切な提案をしてくれる頼れる存在です。
普段からさまざまな話をして情報を共有しておけば、困ったときにもすぐにサポートしてもらえます。
老人ホームの利用を検討する
介護する方が疲弊している場合には、老人ホームへの入居を選択肢の一つとして考えてみましょう。
老人ホームには介護や看護のプロが多数在籍しており、身体状況に応じて適切なケアを受けられます。
また、常に見守ってもらえるため、困ったときにも迅速な対応が期待できるでしょう。
限界がきてからでは施設入居の対処ができないことがあります。
介護の負担を感じる場合には、限界がくる前に老人ホームの利用を検討しておくのがおすすめです。
老人ホームや介護サービスをお探しなら、「あなたらしく」をご利用ください。