テレビのニュースや新聞でヤングケアラーという言葉を目にする機会が増えてきました。
「ヤングケアラー」とは、家族の世話や介護を日常的に続けている18歳未満の子どもを指します。
ヤングケアラーを減らすことは社会の急務となっていますが、まずはヤングケアラーが抱えている負担を軽減することが肝心です。
そこでこの記事では、「ヤングケアラーが増加している理由」や、「負担を減らす方法」について考えていきます。
ヤングケアラーとはどんな子どものこと?
ヤングケアラーとは、本来大人が担うべき家族の世話や介護、家事、感情面のサポートなどをしている子どものことです。
ヤングケアラーは家庭でどのような役割を担っているのでしょうか。
家族の世話をする
大人に代わって家族の世話をしているヤングケアラーは多いものです。
幼いきょうだいの世話、障害や病気をもつきょうだいや家族の世話を担うほか、ヤングケアラーが高齢の家族を介護するケースもあります。
入浴のサポートやトイレの付き添い、食事のお世話など、高齢者を介護するヤングケアラーの仕事は膨大です。
高齢の家族が認知症の症状を抱えている場合には、徘徊や危険行為が起こらないよう目を離さずに見守らなければなりません。
家族の介護や見守りを担いながら勉強に集中するのは非常に難しいことです。
中には、家族の世話や見守りが忙しいからと学校に通えなくなったり、進学をあきらめたりする子どももいます。
介護の負担やストレスにお悩みの方はこちらの記事も参考にしてみてください。
「介護ストレスの原因は?軽減方法や予防方法を分かりやすく紹介
⇒ ご参照ください。
家事を担う
ヤングケアラーが大人に代わって家事のほとんどを担うケースもあります。
料理や掃除、洗濯、買い物など、家族の生活環境を整えるために必要となる家事には多くの種類があります。
小さな子どもにとって、膨大な家事を毎日のようにこなすことは大きな負担です。
精神的なケアをする
障害や病気をもつ家族の精神的なケアを担うヤングケアラーもいます。
家族がアルコールや薬物、ギャンブルなどの問題を抱えている場合には、精神的に不安定な状態の相手に対して難しいケアを迫られることもあります。
家計のために働く
家計を支えるために若いうちから働いている子どももヤングケアラーに含まれます。
障害や病気をもつ家族がいる家庭では働き手が足りず、生活費が足りなくなってしまうことがあります。
こういった場合に、ヤングケアラーはアルバイトを掛け持ちして長時間働いたり、進学をあきらめて就職したりする選択を迫られるのです。
ヤングケアラーが増えている理由
ヤングケアラーを減らすことは社会全体の課題ですが、現在ではヤングケアラーは増加傾向にあるといわれます。
ここからは、「なぜヤングケアラーが増えているのか」について解説していきます。
高齢者の人口が増加しているから
少子高齢化の時代を迎え、長寿国日本における高齢者の割合は年々増えています。
しかし、出生数はどんどん減少しており、社会を支える世代の人口割合はかなり少ないのが実情です。
高齢になるにつれて身体機能は衰えやすくなるため、高齢化の時代には介護ケアを必要とする方も増加していきます。
しかし、高齢者を十分にケアできる環境はなかなか整わないため、子どもが介護や介助ケア、家事などを担うケースが増えてしまうのです。
共働き家庭が増えているから
不況の影響によって共働き家庭が増えていることも、ヤングケアラーの増加に拍車をかけています。
ケアをすべき家族がいるにもかかわらず、夫婦が外で長時間働かなければならないというケースは少なくありません。
親が仕事で忙しく家のことに時間をかけられない場合、必然的に子どもが家族の介護やケアを担うことになってしまいます。
家族の人手が減っているからら
かつての日本では、三世代が同居するケースがかなり多かったのですが、近年では核家族化により家族の人数が減少傾向にあります。
さらに、ひとり親家庭も増えており、家族の人手はかなり限られるようになってきました。
ケアを必要とする家族がいるにもかかわらず家族の人手が少なく手が回らないという場合、子どもが家族の介護やケアをすることになってしまうのです。
ヤングケアラーの負担を軽減するには?
ヤングケアラーは、ほかの子のように遊んだり勉強したりする機会を奪われてしまいます。
また、体力や精神面の負担も大きいため、負担を軽減する対策が必要不可欠です。
ここからは、「ヤングケアラーの負担を軽減するための対処法」について考えていきましょう。
相談できる環境を作る
ヤングケアラーは自身が抱える負担や悩みについて周囲の人に相談しない傾向にあります。
それは、ヤングケアラーの多くが「自分の家族の世話や介護について相談してもよいのか、または、誰に相談すればよいのかわからない」と感じていることが関係しているでしょう。
また、「家族のことを隠しておきたい」「家族のことは周囲の人には関係ない」と、相談を避けるヤングケアラーもいます。
人に相談せず大変な介護や世話を続けていると、体力面や精神面の負担はますます大きくなってしまうでしょう。
そこで、誰かに相談することでストレスが和らいだり視野が広がったりする可能性は十分考えられます。
また、大人に相談することで、意外な解決策が見つかるかもしれません。
学校や民間団体が相談に応じたり、SNSなどオンラインの相談窓口を作ったりと、子どもが相談しやすい環境を整えることが大切です。
ヤングケアラーの支援事業を活用する
最近では、ヤングケアラーやその家族を支えるための支援事業を展開する自治体が増えてきました。
ヤングケアラーの負担を和らげるためのサポーターを派遣したり、交流会や家族会の場を作ったりしている市区町村もあります。
ヤングケアラーを問題視する声は高まっているため、今後は自治体の支援事業もますます活性化すると予測されます。
まずはお住まいのエリアでどのような支援策が実施されているのかを詳しく調べてみましょう。
生活資金の援助を受ける
家族の介護やケアで生活に余裕がなくなっているときや、働き手がおらず生活費が足りなくなっているときには、市区町村の支援制度を活用したいものです。
生活福祉資金貸付制度を活用すれば、高齢の家族や障害をもつ家族がいる家庭、所得が低い家庭でも、安心して生活を送れるようになります(※)。
福祉サービスを受ける
家族が障害や病気を抱えているとき、介護を必要としているときには、公的な福祉サービスの利用を検討しましょう。
在宅向けの介護ケアを受けたり、障害や病気をもつ人を対象とした福祉施設を利用したりすれば、ヤングケアラーの負担は軽くなります。
高齢の家族の介護でヤングケアラーに大きな負担がかかっているのなら、老人ホームの利用を検討してもよいかもしれません。
老人ホームでは十分なスキルや知識をもつ大人が介護を担うため、安心してケアを受けられます。
このように、ヤングケアラーの負担も和らぐ以外にも、老人ホームの利用には多くのメリットが考えられます。
近隣で老人ホームをお探しなら、「あなたらしく」をぜひ活用してみてください。