内閣府の令和4年版高齢社会白書によると、65歳以上で要介護または要支援の認定を受けた人の割合は年々増えており、2019年には2009年の469.6万人から186.2万人も増加しています。[注1]
高齢者の介護で発生する問題が、要介護者への虐待と介護うつです。
とくに介護うつになると、さまざまな症状が発生するため、対策をとって予防しましょう。
本記事では、高齢者の親の介護に疲れたときの対処法を解説します。
[注1]内閣府「令和4年版高齢社会白書(第1章 高齢化の状況 第2節 2)」
高齢者の介護ストレスにより発生する問題
高齢者の介護ストレスにより発生する問題は、「要介護者への虐待」と「介護うつ」の2点です。
要介護者への虐待
厚生労働省の統計によると、養護者(家族、親族、同居人など)による高齢者への虐待は、令和3年度だけで16,426件発生しています。[注2]
生命保険文化センターの調べによると、親などの介護に要した期間の平均は「5年1カ月」です。[注3]
要介護度が高くなると、ほとんど終日介護に従事しなければならない人も多く、大きな負担になっています。
たとえば、要介護度4の家族を「ほとんど終日」介護している人の割合は45.8%、要介護度5の人の場合は56.7%です。[注4]
こうした状態が続くと、慢性的な介護疲れやストレスにより要介護者への身体的虐待や、暴言・無視などの心理的虐待、介護放棄などの虐待につながる場合があります。
[注2]厚生労働省「令和3年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果」P1
[注3]生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」
[注4]生命保険文化センター「介護をする人が介護にかける時間はどれくらい?」
介護うつ
介護ストレスが生み出すもうひとつの問題が、介護うつです。
介護うつとは、介護の疲れやストレスが原因となって発症するうつ病を指します。
介護うつの主な症状は「6つ」あります。
- 体のだるさや倦怠感
- コントロールできない不安や焦り
- 慢性的な食欲不振
- 不眠症や睡眠障害
- 気分の落ち込みや憂鬱
- 無気力や意欲の減退
とくに「真面目で責任感が強い人」や、「完璧主義の傾向がある人」は介護うつになりやすいタイプです。
うつ病になるとなかなか完治せず、精神科や心療内科での治療が必要になります。
高齢者の親の介護が必要になったら、介護うつになりにくい環境づくりに取り組みましょう。
介護うつになる前に注意すべきこと
介護うつを予防するため、以下の「5つ」の点を意識しましょう。
- 「100点の介護」を目指さない
- 親の介護を一人で抱え込まない
- 介護の負担をなるべく分散する
- 十分な睡眠時間を確保する
- 自分の時間を作る
「100点の介護」を目指さない
親の介護を自分でするときは、「100点の介護」を目指さないようにしましょう。
完璧主義な人や何事にも几帳面な人は、介護がうまくいかないと精神的に追い詰められ、介護うつに罹患するリスクが高まります。
とくに要介護度が重くなったり、認知症を発症したりすると、介護はうまくいかないことばかりです。
「介護で失敗するのは当たり前」という認識を持つことで、心の余裕が生まれます。
親の介護を一人で抱え込まない
親の介護を一人で抱え込まないようにしましょう。
「親の介護は一人でしなければ」という思い込みが介護者を追い詰め、介護うつの発症につながります。
介護でうまくいかないことがあったら、身近な家族や親戚、友人に相談し、不安や悩みを共有しましょう。
また、地域包括ケアセンターの窓口に相談するのもおすすめです。
介護の負担をなるべく分散する
介護うつを予防するには、介護の役割分担が大切です。
ほかの家族と話し合い、小さなことから協力してもらいましょう。
長時間の介護は、介護者の心身に大きな負担がかかり、介護うつを発症する原因のひとつとなります。
介護の役割分担が難しい場合は、後述するとおり、介護サービスを利用することをおすすめします。
十分な睡眠時間を確保する
うつ病の患者に共通してみられる特徴が、不眠や睡眠不足です。
睡眠時間が十分でない人は、そうでない人と比べてうつ病の発症リスクが大きく高まります。
親の介護が始まると、なかなか睡眠時間がとれなかったり、不規則な生活を強いられたりして、慢性的な睡眠不足に陥りがちです。
睡眠不足を解消するため、定期的にショートステイ(短期入所サービス)を利用し、一人でゆっくり休める時間を確保しましょう。
要介護者が施設入所を希望していない場合も、一時的なショートステイなら受け入れてくれる可能性があります。
自分の時間を作る
ときには趣味に没頭したり、ストレスを発散したりする時間を確保しましょう。
介護から離れることで、心身をリフレッシュさせられます。
「自分は大丈夫」と思っていても、知らないうちに介護の疲れやストレスが溜まっているかもしれません。
ショートステイなどを活用し、自分の時間を確保することが介護うつの予防につながります。
高齢者の介護に疲れたときの対応
高齢者の介護に疲れたら、無理はせずに介護サービスを利用しましょう。
また、ケアマネジャーと話し、介護の悩みを相談することもできます。
ここでは、高齢者の介護に疲れたときの対応を紹介します。
介護サービスを利用する
高齢者の介護を一人で行うとなると、かなりの時間や体力が必要です。
すべて一人でやろうとせずに、公的な介護サービスや民間の老人ホームを利用しましょう。
親が要介護認定を受けている場合は、介護保険制度を利用できるため、介護費用の自己負担額も少なくなります。
食事、入浴、排せつなどの介助から、掃除や洗濯、買い物などの生活援助まで、さまざまなサービスを利用可能です。
ケアマネジャーに相談する
親が要介護認定を受けた場合、ケアマネジャーと相談しながらケアプラン(介護の方針)を作成します。
ケアマネジャーは「介護の専門家」です。
介護に関して悩んでいることや、不安に感じていることがあれば、ケアマネジャーに相談できます。
高齢者の介護に疲れた場合は、担当のケアマネジャーに相談してみましょう。
介護保険制度を利用する場合、ケアマネジャーが月に1回以上、要介護者の居宅を訪問する仕組みになっています。
ケアマネジャーの訪問機会などを利用し、介護の悩みや不安を相談しましょう。
また、ケアマネジャーによっては、電話やメールで介護に関する相談を受け付けている場合があります。
【まとめ】高齢者の親の介護に疲れたら周囲への相談や介護サービスの活用を
介護の疲れやストレスは、要介護者への虐待や介護うつの発症につながる可能性があります。
とくに介護うつは、自分では気づかないうちに進行していることが多く、介護ストレスを溜めない環境づくりが大切です。
高齢者の親の介護に疲れたら、介護サービスを有効活用し、介護の負担を軽減しましょう。
ケアマネジャーに相談し、介護の悩みや不安を打ち明けることもできます。
老人ホーム探しを始めるのなら、「あなたらしく」のご利用がおすすめです。