老人ホームの種類によっては、平均的な年金受給額のみでの入所が可能です。
費用を抑えるためには、郊外に立地している、相部屋であるなど、老人ホームを選ぶときのポイントがあります。
受給できる年金が国民年金のみで貯金がないときは、生活保護などと組み合わせることで入居しやすくなります。
本記事では、高齢者が年金のみで老人ホームに入れるかどうか、施設選びのポイントや活用できる制度と合わせて紹介します。
高齢者が年金だけで入れる老人ホームはある?
結論としては、年金だけでも老人ホームに入ることは可能です。
年金受給額は個人により異なり、老人ホームの費用も立地や築年数により大きく異なります。
そのため、選び方によっては無理ではありません。
ここでは、年金だけで老人ホームに入りたいとき、事前に確認するべきことを解説します。
自分の年金受給額を確認する
まずは、自分の年金受給額を確認しましょう。
現在まだ年金を受給していないときは、日本年金機構のホームページ、または年金事務所窓口で年金見込み額の試算ができます。
なお、公務員など共済組合の年金は、それぞれの共済組合に確認が必要です。
受給できる年金額の相場
令和3年から過去5年間の平均的な年金受給額は以下のとおりです。[注1]
年度 | 厚生年金 | 国民年金 |
---|---|---|
2021年度 | 14万3,965円 | 5万6,368円 |
2020年度 | 14万4,366円 | 5万6,252円 |
2019年度 | 14万4,268円 | 5万5,946円 |
2018年度 | 14万3,761円 | 5万5,708円 |
2017年度 | 14万4,903円 | 5万5,518円 |
なお、国民年金(老齢基礎年金)を満額で受給する場合、月額は「66,250円」です。
また、標準的な夫婦2人分の年金(厚生年金+老齢基礎年金)は22万4,482円と発表されています。(令和5年4月分現在)[注2]
[注1]厚生労働省.「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」p12,p23(参照 2023-07-19)
[注2]日本年金機構.「令和5年4月分からの年金額等について」(参照 2023-07-19)
希望する老人ホームの費用を確認する
自分の年金受給額が分かったら、次に希望する老人ホームの費用を確認しましょう。
費用は「入居一時金」と「月額費用」からなります。
一般的に、民間施設の方が費用は高額で、公的施設の方が低い傾向です。
また、介護付き有料老人ホームなど、サービスが充実しているほど月額利用料も高額です。
なお、老人ホームには入居条件などもあるため、希望するホームがあるときは、事前に資料請求などをして確認するのがおすすめです。
老人ホームの費用相場
老人ホームの月額費用の相場は以下のとおりです。
種類 | 月額費用 | |
---|---|---|
公的施設 | ケアハウス | 9~13万円 |
特別養護老人ホーム | 10~14万円 | |
介護老人保健施設 | 8~15万円 | |
介護医療院 | 8~15万円 | |
民間施設 | 介護付き有料老人ホーム | 15~28万円 |
住宅型有料老人ホーム | 9~16万円 | |
サービス付き高齢者向け住宅 | 11~19万円 | |
グループホーム | 10~14万円 |
入居一時金は公的施設ではかからないことが多いものの、民間施設では「数十万円から多くて数百万円」程度かかることもあります。
年金で入れる老人ホームを選ぶポイント
年金だけで老人ホームに入りたいなら、費用の安い公的施設を選ぶのがおすすめです。
また、民間施設を選びたいときは、郊外の施設を選ぶと、費用を抑えることができます。
公的施設を選ぶ
公的施設のうち、「特別養護老人ホーム(特養)」、「介護老人保健施設(老健)」、「介護療養型病床(介護医療院)」は、介護保険3施設とも呼ばれ、入居一時金がかからず月額利用料も安い点がメリットです。
しかし、それぞれの施設により入居条件が異なる他、特養は介護度が高く家族など介護者がいない人が優先されます。
特養
「要介護3~5」の入居希望者が優先されます。
また、世帯全員が住民税非課税の場合、負担限度額認定制度の利用が可能です。
老健
入院治療後のリハビリ施設の位置づけです。
長期利用はできません。
介護医療院
長期的な医療と介護、どちらも必要な入居者向けの施設です。
長期療養に適しており、看取りケアも行います。
公的施設は倍率も高いため、早めに検討する必要もあります。
入居一時金のかからない施設を選ぶ
民間施設では入居一時金が高額になることも多いです。
年金のみで入居したい場合は、入居一時金がかからない施設を選ぶことがポイントです。
とはいえ、施設の中には入居一時金を設けない代わりに、月額利用料を上乗せしているケースもあるため注意しましょう。
郊外の施設を選ぶ
老人ホームの住居費は利便性の低いエリアほど安くなります。
これは、賃貸物件の家賃と同様です。
首都圏で年金のみで入れる老人ホームを探すのが難しい場合は、郊外まで視野に入れましょう。
郊外や地方に行けば、同程度のサービスや食事内容でも、より月額利用料を下げて入居できます。
築年数の経過した老人ホームを選ぶ
上述のとおり、老人ホームの住居費は賃貸物件の家賃と同様の考え方のため、古い老人ホームを選べば利用料も安くできます。
ただし、古くからある老人ホームの場合、バリアフリー化が不十分であったり、水回りが使いづらかったりすることもあります。
入居の前に見学をして、実際の施設を確認してから検討しましょう。
多床室の施設を選ぶ
老人ホームの費用は、個室か多床室(相部屋)かにより異なり、相部屋の方が安くなります。
また、共同生活スペースのあるユニット型よりも、居室だけの従来型の相部屋の方がより費用を削減できます。
相部屋では「2~4人」が同じ部屋で介護サービスを受けます。
なお、食堂やリビングは別の部屋にあります。
共同生活でも問題がないなら、相部屋のある老人ホームを探すのがおすすめです。
年金だけでは老人ホームに入れないときの対応方法
国民年金のみなど、年金だけでは老人ホームに入るのが難しいときは、「生活保護の申請」や「助成制度の活用」が有効です。
生活保護を申請する
年金を受給していても生活保護は受給できます。
また、生活保護法で指定されている老人ホームであれば入居も可能です。
生活保護の相談や申請は、福祉事務所の生活保護担当で行います。
生活保護利用時の老人ホームの利用料は、市区町村の規定により異なるため確認が必要です。
助成制度を活用する
老人ホーム利用料の負担が大きい場合、条件に当てはまれば介護保険の助成制度を活用できます。
代表的な制度は以下のとおりです。
特定入所者介護サービス費
住民税非課税世帯で資産が2,000万円以下(単身者は1,000万円以下)のとき、老人ホームの月額利用料のうち、食費と住居費が軽減される制度です。
申請は市区町村の窓口で行います。
高額介護サービス費
自己負担額の上限額以上介護サービス費を支払ったときに、還付を受けられる制度です。
介護サービスは1~3割の自己負担で受けられるものの、所得の低い世帯では負担が大きくなります。
そのため、課税所得別に負担上限額(月額)を設け、超過した場合、超過分の還付を受けられます。
申請は市区町村の窓口で行います。
【まとめ】高齢者の年金受給額によって選べる老人ホームは異なる!
平均的な年金受給額であれば、選択肢が限られるものの、年金だけでも老人ホームに入ることは可能です。
とはいえ、入居一時金や、身の回りのものを買う費用など、老人ホームの利用では月額利用料以外も発生します。
そのため、利用できる制度の活用はもちろん、事前の「貯金」も大切です。
年金で老人ホームに入りたいときは、複数の施設を見比べて検討しましょう。
条件に合った老人ホームを探したいときには、「あなたらしく」がおすすめです。
費用や場所を設定し、無理なく利用できる老人ホームを探せるため、ぜひご活用ください。