老人ホームの施設数と利用者数は年々増加しています。
しかし、施設数が増えても、特別養護老人ホームなどの一部の施設では入居待ちが多く、入居するまでに数年かかることも珍しくありません。
これは、高齢者の増加・需要に対して、施設の整備・供給が間に合っていないことが一つの原因として挙げられるでしょう。
すぐには入居できない場合も多いため、利用すべきタイミングを知っておき、早い段階から施設入居を検討することが重要です。
今回は、老人ホームの施設数や利用者数について解説するとともに、老人ホームを利用すべきタイミングについても紹介します。
【種類別】老人ホームの利用者数
高齢化社会により老人ホームの利用者数は増加しています。
中でも利用者数が64万人以上と最も多いのは「特別養護老人ホーム」です[注1]。
公的施設である特別養護老人ホームは要介護3以上の方しか入居できませんが、民間企業が運営する有料老人ホームなどと比べると利用料金が比較的安いため、入居希望が集中しやすい傾向にあります。
2番目に利用者数が多いのが、61万人以上が利用している「有料老人ホーム」です[注1]。
有料老人ホームは利用料金は高い傾向にありますが、特別養護老人ホームと比べると入居待ちが少なく、入居しやすいのがメリットです。
特別養護老人ホームへの入居は数年かかることもあるため、有料老人ホームがその受け皿となっています。
一方、利用者数が減少している施設に介護老人保健施設があります。
減少している理由はさまざまですが、理由の一つに入居期間の制限があることが挙げられるでしょう。
介護老人保健施設は入居期間に制限があり、3カ月~6カ月しか入居できません。
そのため、長期入居を希望している方にとっては選択肢に入れにくく、利用者が確保しにくい傾向にあります。
>>[注1]厚生労働省老健局「有料老人ホームの現状と課題・論点について」P17(2025-04-14)
老人ホームの施設数はどのくらい?
老人ホームの施設数は、一部を除いて年々増加傾向にあります。
老人ホームの中で、15万施設以上と最も数が多いのは「有料老人ホーム」です[注1]。
有料老人ホームの施設数が多い理由は、介護保険制度が始まり民間事業者でも運営がしやすくなったことが挙げられます。
他にも、定員要件が緩和された、対象サービスが増えた、高齢者向け住宅へのニーズが拡大している、なども増加の理由です。
2番目に多いのが、14万施設以上ある「認知症高齢者グループホーム」です[注1]。
グループホームの需要が増えている背景には、自立支援が充実していることが挙げられます。
自分でできる家事を自分で行うことは、認知症の方にとって良い刺激となり、認知症の進行を遅らせる効果が期待できます。
また、グループホームは地域密着型の施設です。
自分のいる場所がわからなくなるときがある認知症の方にとって、住み慣れた地域での生活は認知症の悪化を防ぐ効果が期待できます。
住み慣れた地域で生活できるメリットも、グループホームの需要が増えている理由の一つといえるでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅も増加傾向にあります
増加理由には、施設の建設や改修時には国が補助金を出しているため、多くの民間企業が参入していることが挙げられます。
また、指定の期日までに施設を新しく建設すると、固定資産税と不動産取得税の減税を受けられる期間があることも、サービス付き高齢者向け住宅が増えている理由の一つです。
>>[注1]厚生労働省老健局「有料老人ホームの現状と課題・論点について」P16(2025-04-14)
老人ホームを利用すべきタイミング
老人ホームの入居には要介護度や年齢などの要件があります。
それ以外にも、心身の状態や介護をする人の負担具合で、利用した方が良いタイミングもあります。
老人ホームを利用すべきなのは、次のようなタイミングです。
- 日常生活の動作が難しくなってきたとき
- 退院した後
- 介護をする方の負担が重くなってきたと感じたとき
- 介護を受ける方の認知症の症状が進んできたとき
日常生活の動作が難しくなってきたとき
次のような日常生活上での動作が難しくなり、自宅での生活に不安を感じ始めたら、老人ホームへの入居を考えるタイミングです。
- 起き上がる・立ち上がる・座るなどの動作
- 歩行
- 食事
- 着替え
- 排せつ
- 入浴
- 洗顔・歯磨き
上記の動作が難しくなってくると、自宅の段差につまずく、浴室の中で滑るなど転倒するリスクが増えてきます。
他にも、調理後の火の消し忘れ、薬の飲み間違いなどの危険も高まります。
特に、一人暮らしで周りに助けてくれる人がいない場合は安全に関わるため、施設入居を考えた方が良いでしょう。
上記の日常生活に必要な動作は緩やかに低下していくことが多いため、自分では平気だと思っていても、周りの人から見ると生活の質がかなり落ちている可能性もあります。
老人ホームはすぐに入れるわけではなく、入居待ちをしなければならない場合があるため、身体機能に余裕のあるうちから施設への入居を検討してみましょう。
退院した後
病気やけがで入院していた方が退院して自宅に戻ったあとに、老人ホームへの入所を検討するケースが多く見られます。
長期入院をすると、特に高齢者は運動機能や体力が低下しやすくなり、以前と同じような水準での生活が難しくなる場合があるためです。
また、退院後に介護が必要となるケースもあり、自宅に介護をしてくれる家族がいない、自宅の環境は介護ができる状態ではない、などの理由で老人ホームを検討する場合もあります。
退院後も医療が必要になる場合は介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、介護老人保健施設といった、看護師が常駐している施設などを選ぶと良いでしょう。
介護をする方の負担が重くなってきたと感じたとき
介護をする方が、介護による精神的・肉体的な負担が重くなってきたと感じたら、施設への入居を考えるタイミングです。
デイサービスや訪問介護などを利用していても、それ以外の時間は介護者が面倒を見なくてはなりません。
夜間も介護をすれば十分に睡眠が取れず、介護者が体調を崩す可能性があるでしょう。
介護による負担がかかり続けると、介護をする方に次のような症状が出る場合があります。
- 慢性的な睡眠不足
- 社会的孤立感や経済的不安感
- コントロールできないイライラや怒り
- ゆううつ感や無気力感
上記のような症状は、介護負担が限界に近づいているサインです。
介護によるストレスは高齢者虐待や介護する方のうつにつながるリスクがあるため、介護する方される方の将来を考えて、早いうちから老人ホームへの入居を考えましょう。
介護を受ける方の認知症が進んできたとき
介護を受ける方の認知症が進んできたと感じたら、老人ホームに入居するタイミングです。
認知症は悪化すると、徘徊や昼夜逆転が起こりやすくなります。
昼夜逆転とは、昼間に寝て夜になると活動的になる症状で、家の中を歩き回る他、外に出て徘徊することもあります。
また、夜になると興奮して大声を出すなどの行動が見られる場合もあるでしょう。
そうなれば、介護者が夜に眠れず介護負担が大きくなり、精神的に追い詰められる恐れもあります。
認知症の進行スピードは人によって違い、ゆっくり進む人がいる一方で、急激に悪化する人もいます。
老人ホームへの入所によって得られるメリットは、専門的なケアを受けられること、施設で多くの人と関わるため脳に刺激を受けられることなどです。
軽度の認知症の方に適した施設には、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、グループホームがあります。
重度の方には特別養護老人ホームが適しています。
どのような老人ホームを選べばよいのか迷った場合は、「あなたらしく」にご相談ください。