介護予防とは、高齢者が自立した生活を送り自分らしく暮らしていけるよう、要介護状態になるのをできるだけ防ぐ、または遅らせるための取り組みや活動を言います。
介護事業者が提供している介護予防サービスもありますが、介護予防は早い段階から、日常生活の中で自分から主体的に行っていくことも大切です。
今回は介護予防の段階や自分でできる介護予防方法、介護予防サービスを利用する方法を解説します。
介護予防の3つの段階
介護予防は高齢者の状態変化に応じて段階的に行うことが大切で、介護予防には一次予防・二次予防・三次予防の「3つ」があります。
一次予防
一次予防は、高齢者が健康で活動的な状態のときに行う介護予防です。
一次予防は、高齢者の生活機能(心身の働きや活動量、社会参加など)を維持・向上させ、そのまま健康に自立して暮らしていけることを目指します。
一次予防には、日常生活の中で自分で行える介護予防方法があり、バランスの良い食事を摂る、適度な運動をする、地域の集まりに参加して人との交流を持つなどの方法があります。
二次予防
二次予防は高齢者がフレイル状態にあり、要支援・要介護となる恐れのある場合に行う介護予防です。
フレイルとは心身の働きが弱くなってきた状態(虚弱)を言い、疲れやすくなってきた、外出が億劫になってきたなどの症状が見られます。
二次予防は、フレイル状態の早期発見・早期対応を行い、状態の改善や重度化を予防し、要介護状態になるのを防ぐために行います。
二次予防で行う主な取り組みは、自分で行う介護予防方法の他に、定期的な健康診断、フレイル状態の高齢者に特化した介護予防プログラムの提供などです。
三次予防
三次予防は、要支援・要介護状態の高齢者を対象に行う介護予防で、要支援・要介護状態の重度化の抑制や改善を目的として行います。
三次予防では、事業者が提供する適切な医療・介護予防サービスや介護サービスを通して、高齢者の生活機能の維持・向上を行います。
介護予防サービスとは、既に支援が必要となった方の状態悪化を防ぎ、要介護状態へ進行しないように、介護の事業者が提供する機能向上のためのサービスです。
自分でできる介護予防方法
日常生活の中で自分でできる介護予防方法には、社会参加や食事、口腔ケア、運動などがあります。
社会参加を行い人とつながりを持つ
積極的に社会参加を行い、人とつながりを持つようにしましょう。
高齢者にとって、社会参加は非常に重要です。
高齢者は社会とのつながりを失うと、以下のような変化が表れ、フレイルのリスクが高まります。
- 生活範囲が狭くなる
- 筋肉量が減少する
- 筋力が低下する
このような状態を未然に防ぐためにも、高齢者の方は社会活動に参加して、人とのつながりを持つようにした方がよいでしょう。
社会参加には、以下のような例があります。
- 仕事
- ボランティア活動
- 趣味のサークル
- 町内会の手伝い
- 食材の買い物
- 病院への通院
- 近所の人とのおしゃべり
高齢者が役割を持ち自分の力を発揮すれば、気持ちに張りができ認知症予防も期待できます。
社会参加にはさまざまな種類があるので、自分ができるものから始めてみましょう。
栄養バランスの良い食事を摂る
栄養バランスの良い食事を摂ることも、自分でできる介護予防方法の一つです。
高齢者の多くは、足腰の衰えによる買い物の困難さや、調理への意欲低下、経済的な理由による食費の節約などから、低栄養の傾向にあります。
低栄養状態が続くと、免疫力の低下による感染症のリスク、筋力低下による転倒や骨折のリスクを増大させるでしょう。
栄養バランスの良い食事は免疫機能を高め、筋肉や骨が衰えにくい体を作ってくれます。
また、筋力の低下による転倒や骨折のリスクを軽減でき、骨粗鬆症の予防も期待できます。
高齢者は特にタンパク質が不足しやすくなるため、肉・魚・卵・牛乳を積極的に摂るのがおすすめです。
他にも緑黄色野菜やカルシウムもなるべく摂るようにしましょう。
食事は主食・主菜・副菜を取り入れ、バランス良く食べることが大切です。
口腔ケアを行う・口の筋肉を鍛える
口腔ケアで口の中をきれいに保つ他、口の働きを維持するために口腔体操などを行って口の筋肉を鍛えることも、介護予防に役立ちます。
口腔ケアを行うと歯周病予防ができ、歯周病菌が関係する病気のリスク回避につながります。
毎食後に歯磨きやうがいをして口の中をきれいに保つ、入れ歯の手入れを行う、定期的に歯医者に行くなどの口腔ケアを行いましょう。
また、口の働きを維持するためには、口や口まわりの筋肉を鍛えることがおすすめです。
これは、顔・口・のどの筋肉には、食べる・飲む・話す・表情を作るなどの重要な役割を担っているためです。
このような筋肉が衰えると噛む力や飲み込む力が低下し、食事量の減少や窒息のリスクが高まります。
また、しゃべりづらさから人との関わりを避けるようになり、認知症のリスクが高まる可能性もあるのです。
食事は良く噛んで食べる、普段から会話をして口や舌を良く動かすなど、自分で意識して口や口まわりの筋肉を鍛えるようにするとよいでしょう。
他にも、口の中や口まわりのマッサージ、唾液腺のマッサージ、口腔体操などを行うのもおすすめです。
日常生活に運動を取り入れる
日常生活に運動を取り入れ、習慣にしていきましょう。
運動で足腰を鍛えられ筋肉もつくため、転倒や骨折のリスクを軽減できます。
さらに、運動は心肺機能を高め感染症予防が期待できる他、ストレス発散やリフレッシュに役立ち、高齢者の生活の質を高める効果も期待できます。
運動をする際は、激しいものではなく、以下のような適度な運動がおすすめです。
- ジョギング
- ウォーキング
- 水中ウォーキング
- ストレッチ
- 軽い筋力トレーニング
筋力トレーニングは、片足立ちや足の上げ下げなど、体に負担がかかりにくいものが高齢者には向いています。
また、外に出て運動するのが大変と感じたときは、テレビを見ながら「ながら運動」をする、床掃除や窓拭きなど、あえて体を大きく使う掃除をするなど、日頃から体を動かすようにしてみましょう。
大切なのは運動を長続きさせることです。
簡単に実践できるものから始めましょう。
介護予防サービスを利用する方法
介護予防サービスを利用する場合は、住まいのある市区町村もしくは地域包括支援センターに相談しましょう。
地域包括支援センターとは、保険・福祉などのサービスを紹介してくれる公的機関です。
センターでは社会福祉士や保健師、ケアマネージャーなどの専門資格を持ったスタッフが、地域に住む高齢者のさまざまな相談に乗ってくれます。
介護予防サービスを利用できるのは、「要支援1」または「要支援2」の認定を受けた方です。
利用を開始する際は、地域包括支援センターに在籍しているケアマネージャーに、ケアプランの作成を依頼することが必要です。
作成されたケアプランを元に利用できる介護予防サービスが決まり、利用をスタートします。
介護予防サービスには、訪問介護員や看護師が自宅を訪問し、生活サポートやリハビリテーションなどを提供する訪問型のサービスがあります。
他にも、デイサービスに日帰りで通って機能訓練やレクリエーションなどを受けられる通所型のサービスなど、さまざまなサービスがあります。
介護予防サービスにご興味をお持ちの方は、老人ホーム検索サイトにご相談ください。