要介護認定には要介護1~5と要支援1、2の7段階があります。
その中でも、最も介護状態が重いと判定されるのが要介護5です。
今回は、「要介護5」とはどのような状態なのかを詳しく解説します。
また、「要介護5と要介護4の違い」、「要介護5と判定される基準」についても解説します。
ぜひ参考にしてください。
要介護5における一般的な状態
要介護5は、介護がなければ生活できないような方が該当します。
では、要介護5の方は具体的にはどのような状態で、どのような身辺介護を受けているのでしょうか。
ここでは、要介護5の方の「身体機能」や「認知機能の状態」について詳しく解説します。
立ち上がりや歩行が難しい
要介護5の特徴として、立ち上がって歩くのが難しい点が挙げられます。
要介護5の方は筋力や身体機能の低下、病の後遺症などの影響で、身動きを取るのが困難です。
ベッドから起き上がれず寝たきりとなり、寝返りをうつことすら困難になるケースもあります。
寝たきりの状態が続くと、関節の動きに制限が起こる拘縮と呼ばれる症状のリスクが高まるため、要注意です。
また、寝返りを打てないことで、褥瘡(じょくそう)と呼ばれる床ずれが起きる可能性も考えられます。
ご本人やご家族の負担を軽減するためにも、介護の知識・技能を持つプロを頼り、専門的な介護サポートを受けるのが望ましいでしょう。
生活に必要な動作を行うのが難しい
要介護5の方は、食事や入浴、排泄など生活に必要な動作を自力で行えません。
もちろん、掃除や洗濯、買い出しといった家事も行えないため、日常生活のほぼ全ての場面で介助が必要です。
入浴の際には洗身や着替えのサポートが、排尿や排便の際には衣類の着脱などのサポートが欠かせません。
多くの場合、要介護5の方はおむつを使っての生活を余儀なくされるため、おむつ交換をする必要も出てきます。
その他、薬の服用や爪切り、歯磨きなどの日常生活能力も低下しているため、第三者のサポートが必須です。
自力での食事が困難
食べ物や飲み物の嚥下が困難なケースが多いのも、要介護5の特徴です。
普通食を食べられない場合には、食材を細かくした刻み食、軟菜を取り入れたソフト食、粒なしにしたペースト状の食事、ゼリー状の食事などを用意する必要があります。
なお、かむ力や飲み込む力が落ちている要介護5の方は、食事中の誤嚥によって窒息や誤嚥性肺炎につながる恐れがあります。
そのため、食事の際には介助や見守りなどの支援が欠かせません。
また、口から食事を摂るのが困難な場合には、経鼻経管栄養、胃ろうといった方法で栄養を摂取することになります。
認知機能が低下している
要介護5の方は、理解力や思考力といった認知機能も大きく低下しています。
要介護5は脳卒中や認知症といった症状の進行によって引き起こされるため、認知機能にも大きな影響が及びます。
基本的には、会話などの意思疎通はかなり難しい状態です。
また、短期的なことを記憶したり日常の意思決定をしたりすることもほぼ不可能です。
ただし、表情の変化からご本人が快適か不快かを感じ取れる可能性はあります。
問題行動関連行為がみられる
要介護5の方には問題行動関連行為がみられることがあります。
ただし、自分では動けないことが多いため、徘徊などのトラブルが起きる可能性は低いでしょう。
要介護5の方を介護する際に気を付けたいのは、食べてはいけないものを口にする異食行為です。
また、汚物を撒き散らしたりいじったりする不潔行為にも注意が必要です。
加えて、幻覚や妄想、興奮や不穏といった精神症状が出るケースも少なくありません。
要介護5の認定基準
厚生労働省は要介護状態を「日常生活上の基本的動作を自分で行うのが困難であり、何らかの介護を要する状態」と定義しています。
中でも、要介護5の状態像は「介護なしには日常生活を営むことがほぼ不可能な状態」とされています。
脳血管疾患(脳卒中)や認知症などを発症した場合、以前と同じ生活レベルで暮らすことは困難です。
また、転倒などで骨折した場合にもベッド上で過ごす時間が長くなり、認知機能が低下しやすくなります。
このような病気やけががきっかけで寝たきりになった方は、要介護5と判定される可能性が高いでしょう。
厚生労働省は、要介護認定や要支援の基準を細かく定めています。
要介護認定は基本的に、介護にかかる手間を基準となる時間に当てはめることで算定されます。
具体的には、以下のような介助・行為にかかる時間のことです。[注1]
- 直接生活介助:入浴や排泄、食事などの介護
- 間接生活介助:選択や掃除といった家事援助など
- 問題行動関連行為:徘徊時の探索や不潔行為の対応など
- 機能訓練関連行為:歩行訓練や日常生活訓練などの機能訓練
- 医療関連行為:褥瘡の処置や輸液の管理といった診療補助
上記の時間の合計(要介護認定等基準時間)が110分以上、またはこれに相当する状態であれば、要介護認定5とみなされます。
もちろん、介護にかかる時間を正確に測定するのは簡単なことではありません。
そのため、要介護認定に当たっては認定調査員や主治医のチェック、コンピューターによる判定などさまざまな対処が行われます。
>>[注1]厚生労働省「介護保険制度における要介護認定の仕組み」
要介護認定の基準や判定方法についてはこちらの記事にも詳しく紹介されています。
『要介護認定はどのように行われるの?認定基準や仕組みを解説』
⇒ ご参照ください。
要介護4と要介護5の違い
要介護4と要介護5は、日常のさまざまな場面で介護を必要とする点で似通っています。
要介護5の要介護認定等基準時間が110分以上とされているのに対し、要介護4の要介護認定等基準時間は90分以上110分未満となっています。
ここからは、「要介護4と要介護5の違い」についてみていきましょう。
必要とする介護の程度の違い
要介護4は「重度の介護を要する状態」、要介護5は「最重度の介護を要する状態」と定義されます。
具体的には、要介護4は日常生活の行動のほとんどで介助が必要な状態です。
要介護5は要介護4よりもさらに体の状態が悪く、生活の全てにおいて介助が必要となります。
体の状態の違い
寝たきりの状態に近い方は要介護4と判定されます。
また、介助なしでの立ち上がりが難しい方、自分の足で歩くのが難しい方も、要介護4と判定されることが多いでしょう。
筋力がさらに低下し、常に寝たきりの状態の方は要介護5と判定されます。
つまり、要介護5の方は立ち上がりや歩行ができない他、立ち姿勢を保つことも難しい状態です。
認知機能の違い
要介護度が高くなればなるほど、ご本人の認知機能は低下し、理解力や判断力が下がっていることを指します。
要介護4、要介護5の状態はともに、全般的な理解の低下がみられることがあります。
そのため、身の回りのことや家事などを一人で行うのはかなり難しいでしょう。
要介護4の方は、理解力の低下に伴って意思の疎通は難しい状態です。
一方で、要介護5の方は意思の疎通はほぼ不可能となります。
想定されるトラブルの違い
要介護4の方は介助なしでの立ち上がりや歩行は難しいものの、多少であれば移動が可能です。
しかし、ときに徘徊などの問題行動が起きることがあります。
要介護5の方は筋力の低下によって立ち上がりや移動がほぼ不可能のため、徘徊などのトラブルは起きにくいでしょう。
一方で、妄想や誤食などのリスクは高く、注意深く介護を行う必要があります。
要介護度の高い方を対象とした老人ホームをお探しの方は、ぜひ「あなたらしく」をご活用ください。