日本の介護保険制度には、要支援や要介護と呼ばれる段階が設定されています。
要介護度は、介護を必要とする度合いを自立、要支援1~2、要介護1~5の段階に分けた指標です。
また、介護サービスを受けるときにも、要支援と要介護の違いや、各段階の違いを押さえておくことが大切です。
今回の記事では、「各種介護保険サービスを受けられるのはどのような方なのか」、要介護認定の段階ごとに詳しくご紹介していきます。
要支援1〜要介護5までの状態の違い
まずは、要支援や要介護の段階別に、体の状態を詳しく解説します。
自立
要介護認定を申請した結果、申請者が健康な状態と見なされることがあります。
支援や介助の必要がない非該当の状態は「自立」と呼ばれます。
自立と認定された場合、基本的には介護保険サービスを利用できません。
要支援1
要支援1は、要介護状態とはいえないものの、社会的支援が必要と考えられる状態を指します。
食事や入浴、排泄などの動作を自身で行える場合には要支援1と認定されることがほとんどです。
しかし、要支援1の方は立ち上がりなどの動作に手助けが必要な場合があります。
また、室内の掃除やお風呂掃除など、生活をする上での行動の一部に支障が出るケースも多いでしょう。
生活習慣の見直しや適切なケアによって要介護状態の予防が期待できるのが、要支援1の特徴です。
要支援2
要支援1と比べて運動機能などにやや衰えが見られる方は、要支援2と判断されます。
要支援2の該当例としては、お風呂に入る際に浴槽をまたげなかったり、背中を洗えなかったりといった状態です。
自身で行えることが少なくなった要支援2の方は、多少の介助が必要となる場合もあります。
要支援2も要支援1と同じように、生活習慣の見直しやケアを通じて要介護状態の予防が期待できます。
要介護1
要介護認定の中でも、比較的状態が軽い方は要介護1に該当します。
「要介護1」の方は、身の回りのことをある程度自身で行えますが、日常生活の一部の動作に介助が必要です。
要介護1の方が必要とする介助には、立ち上がりの補助や歩行の介助、入浴時の着替え、排泄時のズボンの上げ下ろしなどがあります。
また、認知機能の低下が多少見られる場合にも、要介護1と認定されることがあります。
要介護2
「要介護2」は、要介護1と比較してより幅広いケアを必要とする状態です。
見守りや手伝いがあれば日常的な動作ができるものの、身の回りのことの部分的な介助は必須となります。
特に、立ち上がりや歩行の機能はかなり衰えているため、支えるなどの介助が必要です。
認知機能の低下、理解力や思考力の低下によって日常生活に影響が出やすくなるのも、要介護2の特徴です。
要介護3
日常生活の幅広い部分に介助が必要な場合には、要介護3と認定されます。
「要介護3」の方は立ち上がりや歩行を自力で行うのは困難なため、移動には第三者の手助けが必要です。
また、要介護3の方は排泄や入浴、着替えといった日常生活上の動作も難しくなります。
理解力の低下や認知機能の低下のほか、問題行動が見られるケースもあります。
要介護4
立ち上がりや歩行が自力では行えず、生活のあらゆる動きに対して介助が必要な状態は要介護4に該当します。
「要介護4」の方は自力での立ち上がりや歩行のほか、食事などの生活動作も介助を必要とします。
排泄や入浴、着替えといった動作も難しく、介助なしで生活をするのは困難です。
認知症による暴言や徘徊といった症状が出やすくなるのも要介護4の特徴です。
また、理解力の低下が起きているため、コミュニケーションを取ることがかなり難しくなります。
要介護5
ほとんど寝たきりの状態で立位保持ができず、最重度の介助を必要としている場合には、要介護5と認定されます。
「要介護5」の方は、食事や排泄など日常生活上の動作のほとんどが自力では行えません。
食事介助、おむつ交換や寝返りなどの介助がなければ日常生活を送ることはほぼ不可能です。
要介護5の方は理解力の低下も進んでおり、コミュニケーションを取りにくいという特徴があります。
話をしても応答がないなど、意思の疎通がほとんどできないのが一般的です。
要介護認定の基準や仕組みについてはこちらの記事も参考にしてみてください。
『要介護認定はどのように行われるの?認定基準や仕組みを解説』
⇒ ご参照ください。
要支援と要介護の違い
要介護認定は自立と要支援、そして要介護の3つに分類されます。
ここからは、「要支援と要介護の違い」について詳しくみていきましょう。
要支援とは
要支援は、日常生活を送るに当たって多少の支援が必要な状態を指します。
体もしくは精神上の障害がある場合、日常生活の動作に支障が生じやすくなるため、適切な支援が必要です。
「基本的には自力での生活ができるが、部分的な介助が必要」という場合には、要支援の認定を受けられます。
要介護とは
要介護とは、日常生活の中で介護を必要とする状態を指します。
厚生労働省は、介護サービスを必要とする65歳以上の方、または要介護状態にある40~64歳の方を要介護者と定義しています。
特に、食事や入浴、排泄といった日常的な基本動作を一人で行えない場合は、要介護状態と認定されるのが一般的です。
また、要介護では、認知機能の低下や理解力の低下といった症状も見られます。
介護を必要とする度合いが要介護の方が高いのが、要支援との大きな違いです。
自立とは
要支援や要介護に該当しない方は自立と呼ばれます。
「自立」とは、日常生活の基本動作を自身で問題なく行える状態のことです。
自立と認定された場合、基本的に介護保険サービスは利用できません。
しかし、自治体によっては、自立状態の高齢者が生活支援サービスを利用したり、介護予防のための事業を利用したりできます。
要支援と要介護で受けられるサービスはどう違う?
要支援や要介護の認定を受けると、各介護度に応じた介護サービスを受けられるようになります。
ここからは、「要支援と要介護の方が受けられるサービス」についてそれぞれご紹介していきます。
要支援認定を受けている方が利用できるサービス
要支援と認定されている方は介護予防サービスを利用できます。
要支援の方向けの介護予防サービスには以下のようなものがあります。
- 訪問看護
- 通所リハビリテーション
- 居宅療養管理指導
- 福祉用具貸与
- 特定介護予防福祉用具販売
- 小規模多機能型居宅介護
- 認知症対応型通所介護
要介護認定を受けている方が利用できるサービス
要介護認定を受けている方が利用できるのは介護予防サービスではなく、介護サービスです。
在宅介護を支援するサービスには以下のようなものがあります。
- 訪問介護
- 訪問看護
- デイサービス(通所介護)
- ショートステイ(短期入所)
- 福祉用具貸与
- 特定福祉用具販売
また、要介護認定を受けている方は要介護度に応じて、以下のような施設への入所が可能です。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
- 小規模多機能型居宅介護
- 夜間対応型訪問介護
- 認知症対応型共同生活介護
さまざまなサービスが提供されているため、地域包括支援センターやケアマネージャーなどを頼って相談してみるとよいでしょう。
また、要介護度に応じた介護サービスをお探しなら、ぜひ「あなたらしく」もご活用ください。