要介護者の心身の機能の維持回復を図ることを目的とした介護老人保健施設は、大きく5つの種類に区分されています。
それぞれサービスの内容や専門職の配置割合などに違いがあるため、施設を探す際は注意が必要です。
本記事では、介護老人保健施設の主な種類やそれぞれの特徴、介護老人保健施設を利用するメリット・デメリット、一般的な介護老人保健施設で受けられるサービスについて解説します。
介護老人保健施設は5種類に分類できる
介護老人保健施設は、以下「5つ」の種類に分類されています。
- 1.超強化型
- 2.在宅強化型
- 3.加算型
- 4.基本型
- 5.その他型
このうち、1~4については所定の在宅復帰・在宅療養支援等指標の値を満たしている必要があります。
在宅復帰・在宅療養支援等指標は全部で10個あり、項目に応じた値を合算した結果に応じて種類の区分が行われる仕組みです。
値については以下の条件に該当しない場合、一律0となります。[注1]
指標 | 値とその条件 | ||
---|---|---|---|
在宅復帰率 | 50%超:20 | 30%超:10 | |
ベッド回転率 | 10%以上:20 | 5%以上:10 | |
入所前後訪問指導割合 | 30%以上:10 | 5%以上:10 | |
退所前後訪問指導割合 | 30%以上:10 | 5%以上:10 | |
居宅サービスの実施数 | 3サービス:5 | 2サービス:3 | 1サービス:2 |
リハ専門職の配置割合 | 5以上:5 | 3以上:3 | |
支援相談員の配置割合 | 3以上:5 | 2以上:3 | |
要介護4または5の割合 | 50%以上:5 | 35%以上:3 | |
喀痰吸引の実施割合 | 10%以上:5 | 5%以上:3 | |
経管栄養の実施割合 | 10%以上:5 | 5%以上:3 |
また、上記の指標の他に、以下4つの評価項目の要件を満たしているかどうかが種類分けの基準となります。
- A.退所時指導
- B.リハビリテーションマネジメント
- C.地域貢献活動
- D.充実したリハビリ
以上の指標や評価項目を踏まえ、施設の種類ごとの特徴を説明します。
>>[注1]厚生労働省「介護老人保健施設(改定の方向性)」P9~10
超強化型
超強化型とは、在宅復帰・在宅療養支援等指標70以上に加え、A~D全ての評価項目の要件を満たしている施設のことです。
[注1]指標の合計の最大値は90なので、70以上という条件を満たすには、ほぼ全ての指標において最大値を満たしていなければなりません。
そのぶん、超強化型施設で受けられるサービスや支援は非常に手厚く、平均在宅復帰率も全種類の中で最も高い56.8%となっています。[注2]
また、介護老人保健施設全体を占める割合も、平成30年時点では7.8%と低い傾向にありましたが、近年はニーズに応じてだんだんと増加傾向にあり、令和5年2月時点では28.6%と、加算型に次いで多い割合を占めています。[注1]
>>[注2]厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(令和5年度調査) 」P91
在宅強化型
在宅強化型とは、在宅復帰・在宅療養支援等指標60以上に加え、A~D全ての評価項目の要件を満たしている施設のことです。[注1]
前述した超強化型に比べると指標の条件はやや下がりますが、在宅復帰率やベッド回転率、入・退所前後訪問指導割合などにおいて高い指標を求められるため、十分充実したサービスを受けられます。
実際、在宅強化型の平均在宅復帰率は46.7%と半数近くに及んでいます。[注2]
ただ、他の種類に比べると施設の数が少なく、令和5年2月時点でも全体の10.0%と、その他型に次いで少ない状態です。[注1]
加算型
加算型とは、在宅復帰・在宅療養支援等指標40以上に加え、A~Cの評価項目の要件を満たしている施設のことです。
超強化型、在宅強化型ほどの在宅復帰率、ベッド回転率などは見込めませんが、後述する基本型より充実したサービス、支援を期待できます。
ただ、評価項目Dに当たる充実したリハ(少なくとも週3回以上のリハビリテーション実施)が対象外となることに注意が必要です。
加算型の平均在宅復帰率は36.4%、施設全体に占める割合は全種類の中で最も多い31.6%となっています。[注1][注2]
基本型
基本型とは、在宅復帰・在宅療養支援等指標20以上に加え、A~Bの評価項目の要件を満たしている施設のことです。
その名の通り、基本的なサービス・支援を受けることができますが、他のサービスに比べると充実度は低く、平均在宅復帰率は18.9%に留まっています。[注2]
そのせいか、介護の社会的ニーズが高まるにつれて基本型施設は減少し、平成30年5月時点では全体の51.1%であったのに対し、令和5年2月には24.1%と半分以下に減少しています。[注1]
その他型
その他型とは、上記で紹介した4つの種類に該当しない介護老人保健施設のことです。
在宅復帰・在宅療養支援等指標や評価項目などに一定の要件がないため、同じその他型でもサービスや支援の内容などに違いがあります。
ただ、高い在宅復帰率は見込めない他、退所時指導やリハビリテーションマネジメント、充実したリハビリなども要件に含まれないため、きめ細かなサービスは期待できないでしょう。
実際、その他型の平均在宅復帰率は7.8%と低く、社会ニーズにも合致しないことから、令和5年2月時点の全体に占める割合は5.7%に留まっています。[注1][注2]
介護老人保健施設を利用するメリット・デメリット
介護老人保健施設を利用するメリットは、さまざまな専門家が在駐し、専門の支援・サービスを受けられるところです。
医師や看護師、介護士、リハビリテーション職員、薬剤師、管理栄養士などの専門家が、健康の管理や身の回りの世話、リハビリの支援、薬の調剤などを行ってくれるため、症状や状態に応じた適切な支援を受けられます。
施設によっては24時間医師や介護士が常駐しており、安心して暮らせる環境が整っています。
また、入居条件が他の施設に比べてやや低めになっているところも特徴の一つです。
例えば特別養護老人ホームの場合、入居できるのは要介護3以上という条件がありますが、介護老人保健施設は要介護1以上から入居することができます。
他には、在宅復帰を目的とした施設であることから、リハビリの設備が充実しているのも利点です。
一方で、利用期間が他の施設に比べてやや短いというデメリットがあります。
実際の利用期間は施設によって異なりますが、厚生労働省の実施した調査によると、平均在所日数は6~10カ月程度です。
介護療養型医療施設はおよそ1年~1年半程度、介護老人福祉施設はおよそ3年半~4年なので、かなり短期間であることが分かります。
期間が過ぎると、完全に自立できていない状態でも在宅復帰や他の施設への移転を促されたりすることがあるので要注意です。
また、有料老人ホームなどではリハビリとは別に、入居者同士のレクリエーション活動などが充実していますが、介護老人保健施設は余暇活動にはあまり注力していないため、生活に楽しみがないと見る人もいるようです。
介護老人保健施設と他の施設との違いについて知りたい場合は、こちらのページも参考にしてください。
『【一覧表あり】老人ホームの種類とそれぞれの特徴』
⇒ ご参照ください。
一般的な介護老人保健施設で受けられるサービス
一般的な介護老人保健施設では、以下のような「サービス」を受けられます。
医療ケア
常勤の医師や看護師が、入居者の健康状態をチェックしたり、風邪などの体調不良時のケアを行ったりします。
施設によっては、喀痰吸引や経管栄養などを実施しているところもあります。
リハビリ
医師やリハビリ専門職員、その他専門職員が、それぞれの専門的な知識や技術を生かし、リハビリテーションを行います。
お風呂や食事、トイレなど日常生活の全ての動作をよりできるようにするための生活期のリハビリテーションはもちろん、認知症の方に対して短期集中リハビリを行ったり、集中的に体の機能を上げるためのリハビリを実施したりすることもあります。
食事・入浴・排泄介護
介護士が食事やお風呂、排泄の介助を行います。
入居者の体や健康状態に応じて、食事内容を調整したり、入浴前に体温や脈拍チェックを行ったりもします。
生活支援
居室の掃除やリネン交換など、身の回りのものの状態を整えるサービスを行います。
着替えの洗濯については家族に持ち帰ってもらうか、あるいは外部業者を利用してクリーニングしてもらうのが一般的です。
なお、実際に受けられるサービスは施設によって異なります。
詳しい情報を知りたい場合は、施設のホームページをチェックするか、直接施設に問い合わせてみましょう。
条件に合う施設をお探しの方は、ぜひ「あなたらしく」をご利用ください。