家族が認知症と診断されたときには、症状が進む前に対処を検討する必要があります。
認知症にはいくつかの種類があり、起こる症状も個々で異なることが想定されるため、ケースに応じた対応を行うことが肝心です。
そこで今回は、「認知症の症状」や「適切なケアの手法」について詳しく解説していきます。
認知症はどのような病気?
認知症とは、記憶力や判断力などの認知機能が低下した状態を指します。
認知症が起きる原因は脳の病気や障害などさまざまですが、年齢を重ねるほど認知症発症のリスクは高まるといわれています。
認知症にはアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、脳血管性認知症といった種類があります。
認知症の患者のうち最も多いのは「アルツハイマー型認知症」です。
健康な方の脳からは、脳神経細胞の老廃物であるアミロイドβが代謝されますが、アルツハイマー型認知症になるとこの代謝がうまくいかなくなります。
脳内にアミロイドβが蓄積することで脳の機能に障害が起こり、次第に認知機能が低下してしまいます。
アルツハイマー型認知症の症状は抗認知症薬でやわらぐといわれますが、現状では病気を完全に治すことはできません。
認知症と診断されたら、症状をゆるやかに抑える治療をしながら、今後の方針を考えていく必要があります。
日本は超高齢化社会を迎えており、今後は認知症を抱える方がますます増えると推測されています。
身近な方が認知症を発症したときに、家族のみでケアを続けていくのはかなり難しいでしょう。
そのため、家族で抱え込むのではなく、必要に応じて介護や福祉の専門家に相談したり、介護サービスを利用したりと工夫することが必要です。
状況に応じて、認知症対応が可能な老人ホームを探すのもよい方法です。
「認知症でも老人ホームに入れる?入所可能な施設について徹底解説」
⇒ ご参照ください。
認知症の中核症状とは
認知症の症状は大きく中核症状と周辺症状に分けられます。
ここからは、「認知症の具体的な中核症状」についてみていきましょう。
記憶障害
認知症の症状のうち、早い段階で現れることが多いのが記憶障害です。
人は年齢を重ねるごとに物忘れが激しくなりますが、認知症になると覚えること自体が難しくなっていきます。
さらに、最近のことや過去のことなど、覚えていたことも次第に忘れていってしまいます。
見当識障害
見当識障害とは、自身が置かれている状況をうまく把握できない症状のことです。
認知症の進行とともに日付や時間の感覚、季節感が分からなくなってしまうケースは少なくありません。
また、道が分からなくなって迷子になる方や自宅のトイレなどの場所が分からなくなる方、人を間違える方もいます。
失語
失語とは、聞くことや話すこと、読むこと、書くことなど言葉に関する機能が衰えることをいいます。
失語の症状が進むと、うまく話ができなくなったり、相手の話を理解できなくなったりすることが増えていきます。
失行
失行とは、これまでできていた動作ができなくなることです。
洋服を正しく着られなくなったり、ボタンを掛け違えたりするケースのほか、ハサミなどの身近な道具を思うように使えなくなるケースもあります。
失認
失認とは五感の機能に異常が生じることをいいます。
視覚や聴覚、嗅覚、味覚、触覚などが正常に働かなくなるのが失認の特徴です。
失認の症状が進むと目の前のものや自分の体の状態が把握できなくなるため、生活のさまざまな場面でトラブルが起こりやすくなります。
実行機能障害
実行機能障害とは、ものごとを論理的に考えたり、効率よく動いたりする機能が衰えることです。
実行機能障害が起こると段取りや計画がうまく立てられなくなり、一度に2つ以上のことを行えなくなってしまいます。
また、家電を上手に使いこなせなくなるのも実行機能障害の症状の1つです。
認知症の周辺症状とは
認知症の周辺症状には幻覚や妄想、不安や抑うつ、興奮、抵抗、徘徊などがあります。
認知機能が低下すると自分ひとりでできないことが増えるため、日常生活に支障が出やすくなります。
これが原因で不安を抱えたり、事実をうまく受け入れられなくなったりするケースは少なくありません。
また、思うように言葉を伝えたり、体を使ったりできず混乱や興奮状態に陥ったり、記憶が抜け落ちて妄想が激しくなったりすることもあります。
家族が認知症になったときの対応方法
家族が認知症を発症したときには、本人を不安がらせたり自尊心を傷付けたりしないよう配慮しながらケアしていくことが重要です。
ここからは、「認知症を抱える方との触れあい方」についてご紹介していきます。
優しくはっきりと話しかける
認知症の症状を持つ方と会話をするときには、相手と目線を合わせながらはっきりと話すように意識しましょう。
認知症を抱える方は、相手の言葉を理解しにくい傾向にあります。
また、高齢になり耳が聞こえにくい方もいるため、話すときには明瞭な発音を心がけることが肝心です。
ただし、認知症の方に大声で話しかけると、驚かせてしまうこともあるので注意しましょう。
また、怒りっぽく話すと感情を高ぶらせてしまうことがあるので、声を荒げることもできるだけ避ける必要があります。
ちょうどよい声の大きさを保ちながらゆっくりと明瞭に話せば、言葉が伝わりやすくなります。
できるだけ1人で対応する
認知症の方に対して複数人で対応すれば、より手厚いケアができるように思えます。
しかし、認知症の方は判断能力や認知能力が低下しているため、複数人が一度に話しかけると混乱してしまいます。
また、多くの人に注目されることで恐怖心を抱く方もいるため注意が必要です。
認知症ケアをする際には、混乱を避けるためにも1人で声を掛けるよう配慮しましょう。
周囲の人に相談する
認知症を抱える家族を介護し続けるうちに孤立してしまう方もいます。
認知症の介護は非常に困難を伴う場面もあるので、困ったときには抱え込まずに周囲にどんどん相談しましょう。
医師や看護師のほか、ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーなど、相談できる相手は多いです。
また、各地にある家族の会には、同じように認知症介護をしている方が参加しているため、経験談や介護に対する気持ちを共有できます。
人と話すことで意外な解決策が見つかることもあるので、まずは話しやすい方を選んで困り事を相談してみるのがおすすめです。
福祉サービスの利用を検討する
認知症と診断されたら、介護サービスの利用を選択肢の1つに入れてみましょう。
介護保険に入っている方は、介護の相談やケアプランの作成、福祉用具の貸与や購入、訪問介護や通所介護、老人ホームの利用などさまざまなサービスを利用できます。
「認知症の症状があると老人ホーム利用を断られる」というイメージを持つ方もいますが、認知症対応が可能な老人ホームも多くあります。
「認知症対応型通所介護」や「認知症対応型共同生活介護」など最適なサービスを選べば、よりよいケアを受けられるでしょう。
認知症でも入れる老人ホームをお探しなら、「あなたらしく」をぜひご活用ください。