親が介護を必要としているときに「誰が面倒を見るの?」と兄弟間でもめてしまうケースがあります。
確かに、家庭内で介護をうまく分担できれば問題は起こらないのですが、もし誰かに負担が集中した場合にはトラブルに発展するおそれもあるので注意したいものです
そこで今回の記事では、そのような「介護における役割分担」について解説していきます。
親の介護の分担でもめやすい理由とは?
親の介護を兄弟間で分担する際には、十分な話し合いや意思確認をしておきましょう。
なぜなら、お互いの意向を確認しないまま介護が始まると、後々もめごとが起きてしまうことがあるからです。
まずは、介護の分担がうまくいきにくい理由についてチェックしていきましょう。
介護が突然始まるから
親の介護は少しずつ始まるのではなく、突然始まるケースが多々あります。
例えば、親が病気やケガをしたことをきっかけに体の自由がきかなくなった場合、準備ができていない状態から介護を始めなければならなくなります。
そのような介護の知識や技術をもたない人にとって、突然の介護はかなり大きな負担です。
つまり、突然介護が始まると、兄弟間の役割分担について話し合う余裕もなくなってしまうため、分担に関するトラブルが起きやすくなってしまうのです。
多忙で金銭的な余裕も少ないから
一般的に、介護を必要とする人の多くは70~80歳といった高齢者です。
そして、70代や80代の親をもつ子どもは40代から60代くらいなので、職場で責任のある立場に置かれていることがあります。
さらに、この世代は住宅ローンの支払いを抱えていることがあり、金銭的な援助が難しくなるケースも考えられます。
また、40代くらいの人は忙しく子育てをしている可能性も高いものです。
もし10代の子ども(介護を必要とする人の孫)がいるという場合、受験などの対応で忙しくなりますし、教育費もかなりかかってしまうでしょう。
このように、多忙や金銭面の問題を理由になかなか介護分担の話し合いが進まないときにも、兄弟間のトラブルが発生しやすくなります。
また、兄弟に独身の人や金銭的に余裕のある人がいる場合、その人に介護の負担がかかってしまう可能性も考えられます。
したがって、余裕がありそうだからと兄弟の誰かに介護を任せるのではなく、家族間でどのように介護を分担するのかを詳しく話し合うことが重要なのです。
兄弟がそれぞれ別の場所に住んでいるから
兄弟がそれぞれ別の場所に住んでいるケースでも、役割分担に関するトラブルは起こりやすくなります。
特に多いのは、遠方の兄弟が介護のサポートをせず、同居の兄弟や近距離別居の兄弟の負担が大きくなってしまうケースです。
このように、兄弟のうち、誰か一人に介護負担が集中してしまうと不公平感が起こりやすくなり、これがトラブルの種となってしまうのです。
親の介護分担でよくあるトラブル事例
上記のような理由から、家族間の介護分担が大きなトラブルに発生するケースもあるため、十分な注意が必要です。
ここからは、そのような「介護の分担を巡るトラブル」について見ていきましょう。
誰か一人に介護を押しつけてしまう
兄弟のうち誰か一人に介護を押しつけることでトラブルに発展する事例は少なくありません。
例えば、古い考え方が残る家庭では「介護は長子がするもの」「介護は長男の妻がするもの」と決めつけて押しつけるケースがあります。
このように、誰か一人に介護を任せっきりにし、ほかの家族が介護に非協力的な態度を取っていると、次第に家族間の関係性は険悪になってしまいます。
最悪の場合、介護分担をきっかけに次第に家族崩壊が起きてしまうケースもあるため、家族の誰かに対して強引に介護を押しつけるのは避けたいものです。
金銭的な援助を拒否されてしまう
親の介護をするにあたっては福祉的な援助を受けられるケースが多いものです。
とはいえ、援助を使った場合でも介護ケアには一定のコストがかかるため、親の介護を始める際には費用面についてしっかりと考えておく必要があります。
もし、近距離にいる兄弟が介護に対応し、遠方の兄弟が金銭的な負担をするといった介護分担の話し合いができれば、トラブルに発展する可能性を下げられます。
しかし、「別居している家族に対してお金を出したくない」という思いから費用援助を拒否する人もいるかもしれません。
そのような金銭的な負担をめぐって兄弟間でトラブルが起きると、話し合いはどんどん複雑化してしまいます。
介護うつに陥ってしまう
介護の分担がうまくいかず、一人に負担が集中してしまったことがきっかけで、「うつ状態」になってしまう方もいます。
実際、介護の負担は想定より大きくなるケースが多いため、介護を続けていると次第に心身の消耗が起きてしまいます。
さらに、ほかの人に介護を手伝ってもらえないことで追い込まれ、孤立してしまうケースも少なくありません。
このように、介護負担が大きくなると慢性的な疲労感や倦怠感、睡眠不足などが起きやすくなり、うつ状態が引き起こされやすくなります。
だからこそ、介護うつを防ぐためにも、ほかの家族と介護を分担するなどの工夫を講じる必要があるのです。
親の介護に関するお悩みを抱えている方にはこちらの記事もおすすめです。
「親の介護で悩まないために注意したい5つのポイント」
⇒ ご参照ください。
親の介護の役割分担をうまく進めるポイント
上記のように、親の介護をめぐって兄弟間で険悪になってしまうのはできれば避けたいものです。
そこで、円滑に介護を行うためにも、兄弟間で役割を分担するなどの工夫をしてみましょう。
具体的には、介護をうまく分担するためには、以下のような「ポイントをおさえておくことが肝心」です。
介護の具体的な内容を整理する
「介護が大変だから手伝って!」と兄弟に対して訴えても、具体的に何が大変なのかはなかなか伝わりません。
そのような場合には、具体的にどのような介護が必要なのか、どのようなスケジュールで介護をしているのかを整理して伝えましょう。
介護の一日の流れ、やっていることのリストを提示するほか、介護の様子を動画に撮影して見せるのも効果的です。
こうすることで、介護の大変さを具体的にイメージしてもらえば、役割分担の計画も立てやすくなります。
お互いの意向を確認する
兄弟にはそれぞれ仕事や家庭があるため、誰もが介護のすべてを担えるとは限りません。
そのため、介護の役割を分担しようとしても「自分は忙しいから」と断られてしまうことがあります。
そこで、うまく役割を分担するためには、お互いのできることとできないことを具体的に確認することが大切です。
例えば、「どのような介護なら対応できるのか」、「月々どれくらいなら費用を出せるのか」といったことを細かく確認し合えば、協力し合う気持ちも高まりやすくなります。
第三者に説得してもらう
兄弟間で話し合っても解決しないというときには、ケアマネージャーや主治医などの手を借りましょう。
介護の当事者がどれだけ大変な思いをしているかについて第三者が説得すれば、問題が可視化されやすくなります。
また、介護に関する詳しい知識をもつ第三者に相談することで、福祉サービスの利用を提案してもらえるなど、意外な活路が開けるケースもあるものです。
実際、老人ホームやデイサービスといった福祉サービスを利用すれば、親の介護の負担が和らぎやすくなります。
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