内閣府の令和4年版高齢社会白書によると、65歳以上で一人暮らしをしている人の割合は増加傾向にあります。
昭和55年の調査では、一人暮らしをしている高齢者の割合は男性4.3%、女性11.2%にとどまるのに対し、令和2年には男性15.0%、女性22.1%と急増しています。[注1]
しかし、高齢者の一人暮らしには、健康問題や孤独死といったリスクがあります。そこで、親との同居を考える方もいるかもしれません。
本記事では、親と同居するメリットやデメリット、親との同居がどうしても難しい場合の対処法をわかりやすく解説します。
[注1]内閣府:令和4年版高齢社会白書(第1章 高齢化の状況 第1節 3)
親と同居するメリット
親と同居するメリットは3つあります。
- 親の健康状態を近くで把握できる
- 家事や育児を手伝ってもらえる
- 親に収入がある場合は経済的負担が軽くなる
親と同居することで、健康状態の変化を間近でチェックできるため、何かあった際にすぐ対処できます。また、親が元気なうちは家事や育児を手伝ってもらったり、経済的な支援を受けられたりするのもメリットです。
親の健康状態を近くで把握できる
高齢者の一人暮らしには、さまざまなリスクがあります。とくに大きいのが、健康状態が悪化した際に周囲に人がおらず、そのまま孤独死してしまうケースです。
内閣府の令和4年版高齢社会白書によると、東京23区内で孤独死(孤立死)と考えられる事例は、令和2年だけで4,238件も発生しています。[注2]
平成23年の2,618件と比較すると、約1,600件も孤独死が増加しているのが現状です。
そのため、高齢の親と同居する人も増えてきています。親と同居することで、健康状態の変化を間近でチェックできるため、万が一の事態が起きてもすぐに対処できます。
健康問題や孤独死のリスクを減らせるのが、親と同居するメリットのひとつです。
[注2]内閣府:令和4年版高齢社会白書(第1章 高齢化の状況 第2節 3)
家事や育児を手伝ってもらえる
親が元気なうちは、同居することで家事や育児を分担してもらうこともできます。とくに小さな子どもがいる子育て世帯の場合は、育児に慣れた親と同居することで、非常に大きなメリットを得られます。
たとえば、仕事中に子どもを親に預けたり、送り迎えをお願いしたりすることが可能です。仕事と育児を両立し、安定して働けるようになります。
親に収入がある場合は経済的負担が軽くなる
親に一定の収入がある場合は、同居することで経済的な援助を受けられる場合があります。家賃、水道光熱費、食費などを折半すれば、生活費の支出を抑えられます。
また、高齢の親を被扶養者にする(扶養に入れる)ことで、節税につながるのもメリットです。
親と同居するデメリット
親と同居するのはメリットだけではありません。同居によるストレスや、親の介護の負担、親の認知症が進んだ際のトラブルなど、親との同居にはリスクもあります。
- 同居によるストレスが生じる
- 親の介護に時間が取られる
- 親の認知症が進むとトラブルが増える
たとえば、生活リズムや価値観の違い、プライバシーを確保できないことによるストレスです。親に生活面や仕事、育児についてあれこれ口を出され、精神的なストレスを溜め込む人も少なくありません。
とくに義父や義母など、血のつながりのない親と同居する場合、同居によるストレスが大きくなります。
また、親が高齢化すると、介護の問題を考える必要があります。内閣府の令和4年版高齢社会白書によると、65歳以上で要介護または要支援の認定を受けた人(要介護者など)の割合が増えています。
令和元年度の要介護者などは655.8万人で、平成21年度の469.6万人から186.2万人も増加しました。[注3]
親の健康状態が悪化し、要介護度が3以上になると、ほとんど終日を介護に費やすケースも少なくありません。場合によっては、夫婦のどちらかが仕事を辞め、介護に専念しなければならないケースも出てきます。
介護や看護をきっかけとして離職する人は女性が多く、平成28年10月から平成29年9月にかけて約9.9万人の人が介護離職を経験しています。[注3]
将来の介護の負担をどうするか、早い段階から夫婦で話し合っておくことが大切です。
さらに、親の認知症が進めば、コミュニケーションを取ることも難しくなります。親の徘徊行動などをきっかけとして、近隣トラブルに発展するケースも珍しくありません。
このように、親との同居はメリットだけではありません。親と同居するデメリットを知り、お互いが気持ちよく暮らせる選択肢を選びましょう。
[注3]内閣府:令和4年版高齢社会白書(第1章 高齢化の状況 第2節 2)
親との同居が難しい場合の対応方法
親との同居が難しい場合、どのように対処すればよいのでしょうか。前述のとおり、親に一人暮らしをさせると、持病の悪化や孤独死のリスク、特殊詐欺をはじめとした犯罪に巻き込まれるリスクなど、さまざまなリスクが生じます。
その場合、親と相談の上で、老人ホームの利用を検討しましょう。老人ホームといっても、国や自治体が運営する公的施設から、民間企業が運営する民間施設まで、さまざまな種類の施設があります。
以下は老人ホームの種類を表にまとめたものです。
施設名 | 特徴 | |
民間施設
|
介護付き有料老人ホーム | 生活面のサポートだけでなく、介護や看護を受けられる施設 |
住宅型有料老人ホーム | 自立した暮らしが可能な方を対象として、入居者が共同生活を送る施設 | |
サービス付き高齢者向け住宅 | 介護施設よりも、快適な老後生活を送るための住宅に近い施設 | |
グループホーム | 主に認知症の方を対象として、少人数の入居者が共同生活を送るための施設 | |
公的施設
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ケアハウス | 経済的な負担が少なく、最低限の生活支援や介護を受けられる施設 |
特別養護老人ホーム | 要介護度が3以上(自治体の許可を得た人は1~2以上)を対象として、低価格で介護や看護を受けられる施設 | |
介護老人保健施設(老健) | 病気や怪我に遭った方や、リハビリが必要な方を対象として、在宅生活への復帰を目指す施設 | |
介護医療院(介護療養型医療施設) | 2018年4月に創設された新しい施設で、医師の配置人数が多く、医療設備が充実した施設 |
老人ホームを利用することで、親と離れて暮らしながら、親の生活支援や健康管理を行うことができます。老人ホームのなかには、入居者同士のコミュニケーションを重視する施設もあるため、孤独を感じることも少なくなります。
親がまだ元気なうちに将来の暮らし方について話し合い、同居が難しい場合は希望に合った施設を探しましょう。
【まとめ】親と同居する際はメリットとデメリットを理解しておこう
親が高齢になると、健康面のリスクや孤独死のリスクが増加します。親と同居することで、健康状態を間近でチェックし、万が一の事態に備えることが可能です。
しかし、親との同居はメリットだけではありません。同居によるストレスや、将来の介護の負担など、親との同居にはデメリットもあります。
親との同居がどうしても難しい場合は、老人ホームの利用を検討しましょう。老人ホーム探しなら、「あなたらしく」の利用がおすすめです。費用やサービスなど、さまざまな条件で老人ホームを検索し、希望に合った施設を見つけることができます。